ニュース
ジープ「コンパス」のインテリアデザインが大きく変わった理由とは? チーフインテリアデザイナーが解説
2021年6月25日 06:30
- 2021年6月24日 実施
「インテリアを保守的なものにしたくなかった」。チーフ インテリアデザイナーのクリス・ベンジャミン氏が解説
ジープ(FCAジャパン)は6月24日、新しくなったジープ「コンパス」のインテリアデザインに関するオンライン説明会を実施した。
新しくなったコンパスは、インテリアデザインの刷新が大きなトピックとなっており、大幅に変更されたインテリアデザインの概要に加え、新たな試みとしてデザインに取り入れたものなどについてが語られた。
今回のオンライン説明会は米国のジープ本社の協力で行なわれ、米国とオンラインで結び、ジープのインテリアデザインの統括をするチーフ インテリアデザイナーのクリス・ベンジャミン氏による解説や質疑応答が行なわれた。ベンジャミン氏は、ステランティスに入社して8年、ジープのインテリアデザインスタジオを6年率いてきた、ジープのインテリアデザインにおいて中心となる人物。
ベンジャミン氏はまず、「インテリアはスペース感やより多くの機能性、クリーンなデザインといった側面から“もっとやれることがあるのではないか”と感じて、今回の変更に至りました。インテリアを保守的なものにしたくなかったのです」とインテリアデザインの刷新に至った経緯について語った。
新しいコンパスのインテリアデザインでは、ジープファミリーのDNAを反映させつつ、開放感や幅広さを強調するとともに、インテリアを構成する材料や素材には上質感のあるものを使い、ユーザーからのフィードバックにあった「収納スペースが足りない」という部分を改善していったという。そして、今回採用したインテリアデザインは、近代的なデザインの家具やアーキテクチャなどからインスピレーションを得つつ、テクノロジー面や、スクリーンサイズにも注目したと語った。
特にフォーカスしたのは「コントラストとスペース感」だと言い、コントラストについては「快適性を提供する部分については柔らかさを、テクノロジーについては、よりモダンさを表現しました。これらがそれぞれ対比という形で強調されているのではないかと思います」とし、スペース感については「体の向きを変えたり、違った方向を見たりしても、常に快適な開放感を得られるようにした」という。
これまでのコンパスのインテリアデザインは、「筋肉質な丸みのある印象で、個々の要素は“島”のように独立していた」とベンジャミン氏は述べ、新しいコンパスではこれを「水平のシームレスな流れのある、クリーンでモダンなインテリアデザイン」へと変更。スペースを感じることができるように、強い水平のラインをインパネに向けて作り出し、コンソールに流れ込むようなデザインとしつつ、インパネ中央に“ボルスター”と呼ばれる特徴的な要素を盛り込むことで、幅があるように見せつつ、よりオープンなスペースを創出したという。
ベンジャミン氏は「この“ボスルター”を囲むように金属の“ウイング”が、インストルメントパネルからベントに向かい、ぐるっと回り込んでくるようなデザインが気に入っています」と車幅を広く感じられるようなデザインのポイントに触れつつ、スペースをラインでしっかりと切り分けて、それぞれのスペースに設けたテーマを分かりやすくしていると紹介。「これらのデザインは、カラーパレットが重要になってくると思います」と話し、インパネのアーキテクチャを分けて示すことにより、異なったパーツでそれぞれのパーソナリティを感じられるようにするとともに、個々の要素をシンプルな形として、それぞれをシームレスかつモダンにまとめていると、インパネの造形の特徴を解説した。
細かい部分まで上質さを突き詰めたデザイン
そして「極めて正確なクラフトマンシップ」「機能性・快適性」「プレミアムテクノロジー」の3点に注力し、細かいパーツの表現もしっかりとケアすることで、上質感を確保したと言い、実際にインテリアで使われているテクスチャーの手触りはそれぞれの調和を重要視することによって、上質さを感じとれるようにしたと語った。
この上質さについてはプッシュスタートボタンを例にとり、宝石のような装飾感のある印象を付与して、クルマに入ってまず行なう「エンジンをかける」という最初の行為で“スペシャルさ”を感じられるようにしたとベンジャミン氏は紹介。さらに、“テーラーメイドのスーツを着ているような快適性”を得られるよう、ひじをかける部分や体の一部が接触する部分といった、乗員のまわりの部分についても快適な感触が得られるように追求していると語った。
コンソールについては、上方向に伸長させてインパネに滑り込むようなデザインとし、シームレスな流れやフローを作り出すことでラグジュアリー感を演出。合わせて、ユーザーから要望のあった収納スペースの改善にも寄与し、コンソールの容量はグローブボックスとともに2倍以上に拡大されたという。
加えて、セレクテレインシステムの操作にトグルスイッチを使うようにしたほか、USB-AのほかにUSB-Cのポートを設けるなど、細かい部分への気配りも行なわれていると、ベンジャミン氏は紹介した。
テクノロジーについては、新たに10.25インチのメータークラスターを導入。24以上のコンテンツが用意され、カスタムできる5つのタイルメニューで多くの情報を表示できるようにするとともに、ステアリングスポークの左側に設置されたボタンで簡単に操作できるようにされている。
センターディスプレイは、薄く、フローティングしたモダンなデザインの10インチのものとして、個人の好みに応じてパーソナライズできる「Uconnect5」を搭載。処理能力はこれまでの5倍となり、ベンジャミン氏は「タッチフィードバックやルート案内、音声機能についてもより早いものとなっている」と、機能面での向上も図られているとした。
ベンジャミン氏は「新しいコンパスでは、インパネにカラースペースが提供されているので、これらを活用することでパーソナライズ化がより楽しめるようになりました」と、インテリアデザインに個性を持たせられるようになったとし、さらに「コンパスは、新しく、モダンで、クリーン、そしてアップスケールな要素が、インテリア空間にすべてまとまっています」と、力強く語った。
質疑応答で、ダッシュボードにファブリックやレザーを用いた理由について聞くと、ベンジャミン氏は「ファブリックはシートだけに使われていることが多いのですが、われわれはベースモデルであってもファブリックがシートに使われているのであればそれをインパネに反映したかったですし、シートにレザーが使われているのであればレザーを使いたかった。それによって、もっと上質感を演出したかったのです。それに加えて、今までとは異なった取り組みとなるのでユニークですし、より先を行くようなファッション性というものも表現できるのではないかと思いました」と回答。
また、注目してほしいデザインのこだわりについて「まずクルマのドアを開けた瞬間に第一印象として受けるのがモダンさや素材と色の組み合わせといった部分だと思います。ただ、実際にクルマのインテリアによって得られる感覚や感触は実際に目で見えたり触って感じたりするものよりも無意識な部分において感じる部分の方が多いのではないかと思っていて、その個々の小さな要素についても考えていました。例えば同じパターンを繰り返していたり、インパネからシートに向けて同じような素材を活用したり……。車内におけるさまざまなラインの動きなどによって、快適性と上質さを無意識に感じられるように考えています。例えば“好きだな”と思っても何で好きなのかは分からないということがあると思うのですが、これはたぶん無意識のレベルで細かいところに気付いていて、それが好きにつながっているのではないかと思います」と、意識せずとも新しいコンパスのインテリアデザインを好きになれるような工夫が凝らされていると語った。