ニュース

マツダ、法務省 特別機動警備隊「SeRT」指揮官車として納入した「CX-8」公開

2021年12月2日 公開

特別機動警備隊「SeRT」指揮官車のCX-8

矯正施設において「非常事態」が発生した場合に対応するSeRT

 マツダは12月2日、法務省 特別機動警備隊「SeRT(Special Security Readiness Team、サート)」の指揮官車として特別カラーリングを施した「CX-8」を納車したと発表。SeRTが配置される東京拘置所において指揮官車を公開した。

 SeRTは法務省の刑務所や拘置所、少年院などの矯正施設において「非常事態」が発生した場合に対応するための矯正局長直轄の部隊。従来は管区機動警備隊を構成していたが、人員や機材を有効かつ速やかに運用することが難しかったため、2019年にSeRTとして発足、東京拘置所内に常設した部隊となる。

特別機動警備隊「SeRT」

 SeRTの活動は矯正施設の非常事態のほか、大規模災害の支援活動を実施している。2019年の台風被害による支援活動を長野県須坂市で行なったほか、矯正施設内においても新型コロナウイルス感染症拡大防止のためゾーニングの実施や防護服着用支援といった活動も実施。2021年は静岡県熱海市の土砂災害で捜索活動も行なった。

特別機動警備隊「SeRT」の本部は東京拘置所内にある

 車両公開に先駆けて、SeRTの隊長である大内広道氏が指揮官車のCX-8について「矯正施設の非常事態では指揮官が現地に直ちに赴くことが重要。このクルマで現地に行き、指揮をするために使用する」と、使用目的を説明、CX-8が隊に加わったことで「指揮命令系統の明確化をはかり、早期に収束をはかれる」と期待を述べた。

SeRT 隊長 大内広道氏

 販売を担当したマツダ 国内営業本部 法人営業部 東日本法人販売 統括部長の清水亘氏は、今回公開したクルマ以上に特別機動警備隊の活動に注目してもらいたいとの希望を示し、「動乱や治安維持に災害に命をかけて活動される、そこにCX-8が使われることに誇りに思う。マツダも社会貢献に尽力していきたい」とした。

マツダ株式会社 国内営業本部 法人営業部 東日本法人販売 統括部長 清水亘氏

 また、SeRT副隊長の長瀬真二郎氏がSeRTの活動を紹介。東京拘置所で矯正施設の非常事態に対応した訓練をしているが、刑事施設の外塀が倒壊した場合に仮塀を設置する訓練や、刑事施設の建屋に閉じ込められた要救助者を救出する訓練など、SeRTならではと言える活動を紹介したほか、拳銃の使用の訓練や凶器に対する訓練、不法侵入者の阻止の訓練などを紹介した。

SeRT 副隊長 長瀬真二郎氏

 災害時に避難所開設の要望があった場合に避難所の設営もSeRTの任務、設営や運営の訓練をし、昨今の新型コロナウイルスの影響もあって発熱している感染者の分離や、また、拘置所内で感染者が出た場合の病院への移送も訓練項目に入ってるという。なお、東京拘置所に隣接する河川の増水時に東京拘置所内に避難所を開設、周辺住民を受け入れた実績もある。

SeRTの活動を紹介した

 副隊長の長瀬氏は「SeRTは矯正施設で非常事態が発生した場合に、施設に出動して迅速な収束をはかってきました。今後も、矯正施設所在地の住民の皆さまをはじめ、国民の皆さまが安心して暮らせるように訓練を重ね、常に危機意識を持って職務遂行にあたっていきたい」と締めくくった。

特別機動警備隊「SeRT」の車両と隊長、副隊長

メーカーが架装する「業」と「こだわり」で安全性と“編成美”を追求

 車両の紹介については、マツダ 国内営業本部 法人営業部の南部敦氏が軽油の有用性を説明。今回導入したCX-8がディーゼル車であることを指摘しながら、ガソリン車と違いを解説。特に燃料の軽油は引火性が低く、安全面でも法的にも特別な輸送設備なしにガソリンの10倍以上を運ぶことができるとした。

マツダ株式会社 国内営業本部 法人営業部の南部敦氏

 災害派遣の際、「軽油も運べば行動範囲も航続距離も広げることができる」と災害時のBCP対策への有効性を強調するとともに、ディーゼル仕様のCX-8が「災害支援活動にお役に立てるのではないか」と述べた。なお、今回導入の入札にはディーゼル車であることが条件ではなかったという。

災害時における軽油の有効性

 最後に指揮官車の架装を担当したマツダE&T デザイン部 リードマネージャーの横谷昌位氏がCX-8を装備について説明。メーカー自らが架装に関わることで発生する「業(わざ)」と「こだわり」があるとした。中でもベース車両が持つ安全性を妨げないことは重要で、実際の車両の開発担当者の知見を活かせるメリットを強調した。

株式会社マツダE&T デザイン部 リードマネージャーの横谷昌位氏

 赤色の散光式警告灯は実際にルーフを設計したエンジニアも開発に参加したそうで、ルーフに補強を入れたこと、グリル内のLED赤色フラッシュは衝突安全のセンサー位置の関係も考慮し、装備によって衝突時の潰れしろの変化がないようにするなどの「業」を紹介した。

 また、外装のデザインについても「ご依頼をいただいたからには、期待を上まわりたい」とのことで、当初の要望を踏まえた初期デザインから、すでに配備されたトラックとの一貫性をマツダ側から提案。特に担当デザイナーがトラックや装備などを踏まえた“編成美”にこだわり、現在のものが採用されたという。

「SeRT」指揮官車のCX-8の外装
「SeRT」指揮官車のCX-8の走行イメージ

SeRT特別カラーのCX-8

 東京拘置所のグラウンドでは、指揮官車のCX-8が既存のトラックとともに公開された。ベース車のグレードは「XD Smart Edition」(4WD)で、内外装に警告灯や無線機、拡声器などを搭載したほかは、エンジンなど走行系に変更点はないという。

SeRTの装備をまとった隊員とCX-8

 外装の特別カラーは塗装で表現しており、「MOJ」のロゴはシート貼り付けで表現した。なお、装備の架装や塗装をするにあたり、外装の大部分を取り外す大掛かりな作業になったとしている。

 2021年11月に納車したばかりで、現時点では指揮車として現場に出動したことはないが、今後の活躍が期待される。なお、すでに2020年に配備されたトラックについては、静岡県熱海市の災害などに出動した実績を積み重ねている。

特別機動警備隊「SeRT」指揮官車のCX-8
指定カラーの青に塗り、白と灰色のラインは塗装によるものとなる
MOJの法務省のロゴはシート貼り付けによるもの
前後左右にロゴはある
MOJのロゴがある側面
近づくとラインが塗装によるものと分かる
赤色LEDがグリル内で点滅する。まぶしくない適度な光量もSeRTの要望に沿ったもの実現
赤色のLEDが点灯
ルーフ上には散光式警光灯を搭載
散光式警光灯と無線機用アンテナ
後部にものLED赤フラッシュがある
タイヤを含め走行系はベース車のまま
運転席
無線機や拡声器のマイクを装備
特別機動警備隊「SeRT」指揮官車のCX-8とトラック