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藤島知子の「VITA-01」で2時間耐久 「鈴鹿クラブマンレース 2022 Round 4」男女混合“MIXジェンダークラス”に参戦!

「VITA-01」で出場!

 複数のドライバーがハンドルを握り、チェッカーフラッグまでを繋ぐ耐久レースの世界。日本国内においては誰もが気軽に参加しやすい“草レース”から、モータースポーツライセンスを取得したアマチュアからプロドライバーまでが参加するJAF戦まで、多種多様なマシンが走るさまざまなカテゴリーが存在している。

 レース専用車両の1つとして、いま各地のサーキットで盛り上がりをみせているカテゴリーの1つがウエストレーシングカーズ製の「VITA-01」を使ったレース。過去に鈴鹿サーキットで参戦したKYOJO CUPのレポートでご紹介したが、すでに数百台の車両が出まわっている。

 トヨタのVITZ RSなどに採用されていた1.5リッターエンジンをリアミッドに搭載する後輪駆動の本格派のレーシングカーは、スキルアップを目指すドライバーから、さまざまなレースを経験してきたベテランまで、腕を試すにはもってこいのマシンといえる。このVITA-01で戦うレースは鈴鹿サーキットを皮切りに、富士スピードウェイ、岡山国際サーキット、ツインリンクもてぎ、筑波サーキット、十勝スピードウェイといった日本のコースのみならず、フィリピンなどの東南アジアでも開催されているという。

 また、スポーツ競技は体格が異なる男女それぞれに大会が設けられているのが一般的だが、モータースポーツの世界は男性が大多数で女性が少数派。その点、VITA-01を使ったレースとして、女性ドライバーのみで競い合うスプリントレース「KYOJO CUP」が始まってすでに6年目を迎え、上級カテゴリーにステップアップし、活躍する女性ドライバーの数は着実に増えている。

 そのKYOJO CUPの発起人であるレジェンドドライバーの関谷正徳氏はこのマシンを使って男女混合で耐久レースを行なう“MIXジェンダークラス”を提案。耐久レースで複数のドライバーがレースに参加できる機会を活用し、女性ドライバーが活動できる場を広げる活動を進めようとしている。MIXジェンダークラスを設けた耐久レースは2022年5月の富士スピードウェイに始まり、6月の鈴鹿サーキット、10月にツインリンクもてぎで開催することが決定した。

レジェンドドライバーの見崎清志氏とタッグを組む

 そこで、今回は筆者である私自身が6月18日〜19日、2022鈴鹿クラブマンレース Round 4で行なわれた2時間耐久レースにエントリーした体験記をご紹介したい。私、藤島知子はレジェンドドライバーの見崎清志さんとタッグを組んで参戦することになったが、この2時間耐久レースは鈴鹿では「Clubman Sport 120 Minutes Endurance Challenge」(通称:MEC120)と呼ばれるカテゴリーで実施されるもので、同じくウエストレーシングカーズ製のレース専用車両でハイスペックな「CS2」とVITA-01が2時間の耐久レースで混走するというものだ。

 ドライバーは運転免許証、JAFライセンスのほかに鈴鹿サーキット(またはツインリンクもてぎ)のライセンスを所持していることが前提となり、1台のマシンに2名までのドライバーのエントリーが可能。車両規定に則ったマシンを持ち込み、走るために必要な装備品を用意。2時間の走行の間に2度のピットインとドライバーチェンジを行なう。1度ピットインしたら、180秒がたたないとコースインできないというルール。給油は20L以下の携行缶で行なうものとなるが、補給する量やタイミングに規定はない。

2021年のKYOJO CUPのレース以来、1年ぶりに走行する鈴鹿サーキット。MEC120の給油は20L以下の携行缶で行なわれる

 鈴鹿サーキットは2021年のKYOJO CUPのレース以来、1年ぶりの走行となるため、金曜日の専有走行でコースの感触を取り戻すところからスタート。富士スピードウェイで走らせた現段階のセッティングでどんな挙動が出るか確かめながら走行する。下りの1コーナーから一気に上りに転じる2コーナー、連続するS字などテクニカルな東コース。デグナーを飛び込むようにターンした先には車速が最も低くなるヘアピンコーナー。今度はハイスピードな西のゾーンに突入して、5速まで車速を高めてからスプーンを下り、130R、シケインを立ち上がってホームストレートを疾走する。様子をみながら走っていると、鈴鹿をホームコースとしている面々に軽々と追い抜いていかれてしまった。改めて鈴鹿は人もマシンも鍛えあげるすごいコースなのだなと思い知らされる。

 土曜日に行なわれた予選は始まる少し前に大降りの雨となり、スタート時間がディレイ。梅雨の時期とあって湿度も高いが、コースインしてすぐに雨量が増して赤旗中断となり、ピットロードでしばらく待ってから再度計測がスタートした。今回のレースウィークで初めて降った雨と見通しのわるさに戸惑い、思うようにタイムアップしていけない。タイヤがようやく温まってきた感触を得たところで、見崎さんにドライバーチェンジ。雨は徐々に上がり始めたものの、依然路面はウエット状態。決勝は41番グリッドからのスタートとなった。

 決勝レースの参加台数は47台。ハイパワーなCS2が11台、VITA-01は36台が出走する。各チームのドライバーは2名ないし、1名で走るケースも存在しているが、男女のドライバーがハンドルを握るMIXジェンダークラスにエントリーする場合、女性が必ずスタートドライバーを務めなければならない。

決勝レースの参加台数は47台
41番グリッドからのスタート

 日曜日の鈴鹿はレース日和のドライとなったが、気温は28度にもなる夏日。グリッドにマシンを並べて待つ間、照りつける日差しがジリジリと暑い。私たちのマシンである「ENEOS☆BBS☆VITA」はまずは私がハンドルを握ってローリングスタートを行なう。40台以上の出走は隊列が長くなることもあり、先頭集団がグリーンシグナルでスタートを切る時、私はまだ130Rの手前にいる状況。シケインを立ち上がって、コントロールラインをくぐるところからようやく競い合うことが許される。

ウエストレーシングカーズ製のレース専用車両「CS2」との混走

 序盤は各車の間隔がまだ近いこともあって、わずかなミスで遅れをとり、後続車に近づかれてしまうこともある。緊張感を高めつつ、冷静さを保つように心掛けて前方にいる車両の背後を追う。各車のペースが高まっていったころ、土煙が巻き上がり、コースサイドのグラベルに停車してしまうマシンの姿が。レースを続行する上で危うい場所に停車していたこともあって、予想通りセーフティカーを導入。各車がペースを落として周回する間にマシンの回収が行なわれた。

セーフティカー導入

 まだドライバーチェンジを行なうにはタイミングが早すぎるため、そのままピットに入らずに走行。路面温度が高め、なおかつ耐久レースであることを踏まえると、タイヤを痛めたり、オーバーヒートしたりすることは防ぎたいもの。S字のライン取りを工夫しながら走らせた。ピットサインがPを示した14周目でピットイン。給油を終えると、見崎さんがマシンに乗り込んでコースインした。

 見崎さんがペースを上げていこうとしたところで、コース上ではトラブルが発生し、2度目のセーフティカーが入る。ピットロードがクローズされる前にドライバーチェンジを行なったことは幸いにもロスは少なかったが、その後、2度にわたってセーフティカーが入り、見崎さんはレースらしいレースをしない状況の中、13周目でピットインとなった。

セーフティカー導入
ピットインに合わせて給油も行なわれる

 残り時間が40分を切ったところで再び私がハンドルを握ってコースインしようとするも、SC解除のタイミングでコース上を車両が通過していることもあり、赤シグナルで足止めをくらい、青信号を待ってからコースに復帰した。

 序盤で走った時の内容を頭の中で振り返り、反省点を整理して走らせかたを変えてみる。後半戦は連続走行しているので、序盤ほど条件はよくなかったはずだが、残り3周になって、ようやくベストラップを更新。本来はもっと早い段階でタイムアップしたかったが、限られた時間の使い方や走り込みに課題が必要だと感じた。

 2時間が経過したところで各車がチェッカーフラッグをくぐり抜けていく。VITAのトップチェッカーは#3 「LHG Racing MIX」の猪爪杏奈選手/岡本大地選手組。男女混合のMIXジェンダークラスでエントリーしたチームが優勝を果たしたのは見事だった。ちなみに、私たち「ENEOS☆BBS☆VITA」は34位、MIXジェンダークラスは5位でフィニッシュ。ペナルティを受けた車両がいたことで正式結果は33位となった。

VITAのトップチェッカーは#3 LHG Racing MIXの猪爪杏奈選手/岡本大地選手組
VITA-01クラスの表彰台
MIXジェンダークラスの表彰台

「お疲れさまでした!」という言葉とともに、見崎さんに鈴鹿の2時間耐久に初参戦した感想を伺ってみると、「20分程度のスプリントよりも長く走れるから、楽しさが倍増するね。VITA専用タイヤは2時間の走行で十分いけることも分かった。でも、鈴鹿はそんなに簡単に勝てるコースじゃない。上を狙うためにも、次は事前のテストを重ねて臨みたいね」と語ってくれた。

 見崎さんと私は富士スピードウェイで開催されている土曜日の「FCR-VITA」のレースと日曜日の「KYOJO CUP」で1台のVITA-01をシェアして戦っているが、耐久レースで力を合わせて走ることを含めて貴重な経験を積ませていただいている。体重はそれほど変わらない2人が同じセットで走らせかたがどう違うのか。データを比較しながら自分の課題を見つけてスキルを上げることに繋げるなど、得られるメリットは大きい。

 また、ウエストレーシングカーズはVITAレースが行なわれる際にレースの解説などでおなじみのレジェンドドライバーである福山英朗さんをアドバイザーとして招き、貴重なお話を聞かせていただくことができる。レースを楽しむ上で互いのラインを尊重しながら走ることの重要性、安全は相手に委ねるのではなく、自分の身は自分で守ることが大前提であること、チームプレーである耐久レースは独りよがりに走るとチームに迷惑がかかるなど、レース前のブリーフィングで皆と意識を共有できることは安全にレースを行なう上で大事なことだと思う。

 また、個人的に鈴鹿の走らせかたについて悩んでいたところ、福山さんが走る時との感覚の違いをズバリと指摘してもらうことができて、1つの希望の光が見えた気がした。実際にタイムアップできるかどうかは私次第だとしても、ライバルチームに囲まれている環境で、初心者でもベテランでも相談できる人がいてくれるというのはありがたい。

 レースにはさまざまなカテゴリーが存在するが、シリーズ戦を戦うには資金的な面やサポート体制を整えるのにハードルが高い。その点、今回のようなVITAの耐久レースは普段は違うサーキットのシリーズ戦に出ているチームも挑戦しやすい環境だし、1人でスプリントレースに参加できなかったドライバーがシートを得るチャンスに繋がることもあると思う。VITA-01は全国に数多く出まわっているマシンだけに、耐久レースからチャレンジしてみるのもいい。次に繋がる体験ができると思う。

CS2クラスの表彰台
CS2-Gクラスの表彰台