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ブリヂストン、S耐SUGOに最新ウエットタイヤ投入 ジェントルマン モリゾウ選手とプロ 佐々木雅弘選手に印象を聞く

スーパー耐久に参戦する32号車 ORC ROOKIE GR Yarisのモリゾウ選手と佐々木雅弘選手。モリゾウ選手こと豊田章男会長はジェントルマンドライバーだがプロ並みに速く、佐々木選手はブリヂストンタイヤの開発ドライバーでもある

新型ウエットタイヤを持ち込んだブリヂストン

 7月8日~9日の2日間にわたってスーパー耐久第3戦SUGOがスポーツランドSUGO(宮城県柴田郡村田町菅生)で開催されている。今回のスーパー耐久の決勝は3時間耐久レースとなり、Gr-2(ST-4/ST-5/ST-Q[#28、#61])、Gr-1(ST-X/ST-Z/ST-1/ST-2/ST-Q[#271、#32])の2つの決勝レースが行なわれる。7月8日には練習走行や予選が行なわれた。

 この第3戦からは、ブリヂストンがレーシングスリックタイヤに加えレーシングウエットタイヤの供給を開始。本来2023年のスーパー耐久シリーズはハンコックがタイヤ供給を行なう予定であったが、工場火災などで供給量が逼迫。そのため第2戦富士24時間からは、2024年からのワンメイクタイヤ供給メーカーに決まっていたブリヂストンが急遽対応。ST-4、ST-5クラスはブリヂストンの市販ラジアルタイヤであるポテンザ RE-12DとRE-71RSを供給し、それ以外のクラスはブリヂストンがレーシングスリックタイヤを、ハンコックがウエットタイヤを供給してきた。

株式会社ブリヂストン モータースポーツオペレーション課長 鈴木栄一氏
ブリヂストンが第3戦SUGOから持ち込んだウエットレーシングタイヤ。ドライのスリックタイヤともブリヂストン製になった
左が幅280以上で使われている高剛性ウエットタイヤパターン、右が280未満で使われている高排水性ウエットタイヤパターン。いずれもコンパウンドは同一。配合は内緒とのことだ

 この第3戦では3時間レースということもあり、ブリヂストンの供給量も上がり、ウエットタイヤの供給も開始された(ST-4、ST-5クラスはブリヂストンの市販ラジアルタイヤを継続)。そのためSUGOでは、ブリヂストンの最新レーシングウエットタイヤを見ることができた。

 ブリヂストンがSUGOに持ち込んだレーシングウエットタイヤのスペックは2種類。タイヤ幅によってパターンが異なり、280以上はワイドなイメージの高剛性パターンで、280未満は細かく排水をしていくような高排水性パターンのものとなっていた。

 ブリヂストン モータースポーツオペレーション課⻑ 鈴木栄一氏によると、これらのレーシングタイヤはSUPER GT用のタイヤなど特別なタイヤを製造する同社の小平工場で製造。富士24時間のときは24時間レースということで4000本の生産を行ない、今回のSUGO 3時間ではスリック約1400本、ウエット約850本の特別生産を実施。約2250本のタイヤを持ち込んでいる。

前戦からの装着変更ということもあり、4ラインのタイヤ組み付けラインをブリヂストンは用意していた

 この小平工場はF1用タイヤなどを生産してきたことで知られる工場で、特殊なハイスペック用タイヤのため、人の手による生産を今でも行なっている。そのため世界トップクラスのタイヤメーカーとして知られる同社としても、現在の生産量は非常に大変なもので、スーパー耐久への供給前倒しはロジスティックス構築など大きなチャレンジだったという。

 そのような大きなチャレンジでありながら、雨用の溝があるウエットタイヤについてはタイヤ幅によって2パターンを用意。それぞれの車種によって、できるだけ最適なタイヤを供給していくという。レギュレーション上温度スペックなどの作り分けは1種類とのことで、コンパウンドはどちらも同一。サイズとタイヤパターンの作り分けが行なわれている。

新型ウエットタイヤの高剛性パターンは好印象

雨の中を走る32号車 ORC ROOKIE GR Yaris

 この新型ウエットタイヤについて、32号車 ORC ROOKIE GR Yaris(MORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏)で参戦しているプロドライバーの佐々木雅弘選手に雨中走行の性能を確認してみた。

 佐々木選手はブリヂストンのタイヤテスト開発ドライバーとしても知られており、ポテンザ RE-12DとRE-71RSの開発にも深く携わっている。佐々木選手によると、「ウエットタイヤならではの柔らかさは感じるものの、ゴム自体の強さもありグリップも高い」とのこと。佐々木選手は、雨が降った後の乾いてくる路面で使ったとのことだが、そのような乾きかけの路面でもパターン剛性も高く、内圧調整だけで持って行ける強さがあるとのことだ。

 同じ32号車 GRヤリスで参戦しているジェントルマンドライバーのモリゾウ選手(トヨタ自動車 豊田章男会長としても知られている)は雨中走行も体験。雨中走行の印象を聞くと、「雨なのでタイムは雨なりに落ちるが、それ以上に落ちない印象。タイムは落ちるが、(ドライ路面と比べて)同じような感触で走れている」とのことだ。

 また、モリゾウ選手は富士24時間から始まったブリヂストンの緊急タイヤ供給体制にも触れ、「ブリヂストンのおかげで大変助かった。とても感謝している」ともコメント。富士24時間レースが成立したのも、ブリヂストンが4000本以上のタイヤを持ち込んでくれたことに、感謝の意を深く示していた。

 ブリヂストンの鈴木氏にドライバー全体のコメントの印象を聞くと、高剛性パターンの印象はおおむねよいとのこと。高排水性パターンは、ドライバーによってコメントが異なる印象のものが帰ってきているとのことで、排水性を高くしたがゆえの使い方の難しさがでているようだと語る。

 ブリヂストンとしては、プロドライバーに加えジェントルマンドライバーの出場するスーパー耐久における開発はさまざまなコメントがもらえ、開発にとっても有用とのこと。今後の開発の方向性としては、できるだけ多くのドライバーが使いやすいタイヤを開発していくとし、スーパー耐久で得られた多様なレーシングドライバーのコメントを次のタイヤに盛り込んでいくようだ。