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自工会会長 豊田章男氏、スタートアップも参加するジャパンモビリティショーについて「自動車というものを追い風として使っていただきたい」

スーパー耐久レースに挑む直前、日本自動車工業会会長としての豊田章男氏にジャパンモビリティショーについて話をうかがった

日本自動車工業会会長としての豊田章男氏

 スーパー耐久第5戦もてぎで、32号車 ORC ROOKIE GR Yaris DAT concept(MORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏)という新型8速AT搭載GRヤリスを走らせるモリゾウ選手こと豊田章男氏は、トヨタ自動車会長であるとともに、日本自動車工業会会長でもある。

 先日、自工会は10月26日~11月5日(一般公開は10月28日から)の日程で開催する「ジャパンモビリティショー2023」の概要を発表。このジャパンモビリティショーでは、前回開催の192社を超える400社以上の出展、水素を使って音楽イベントやお笑いライブを実施する「H2 Energy Festival(H2エナジーフェスティバル)」、賞金総額1200万円のスタートアップ企業向けコンテストを含む「Startup Future Factory(スタートアップフューチャーファクトリー)」など、新しい要素を多く取り込こんでいることを明らかにした。

練習走行後の豊田章男会長。会長というより、単なるクルマ好きとして富士6時間のために帰国した中嶋一貴氏、平川亮選手、小林可夢偉選手らと会話を楽しむ

 スーパー耐久第5戦もてぎで、モリゾウ選手の姿ではあったものの自工会会長でもある豊田章男氏に会うことができたので、東京モーターショー改めジャパンモビリティショーで新たな試みが多くなされていることに関してうかがってみた。

 豊田会長によると、まず知ってほしいのは自動車産業のすそ野は広く、前回の東京モーターショーで100万人を集客(コロナ禍前の2019年開催、約130万人を集客)するほどのものだということ。その100万人以上集客したイベントを、新しいモビリティや要素をも含んで開催するため「ジャパンモビリティショー」へと拡大した。

スタートアップ企業を呼び込むスタートアップフューチャーファクトリー

 その中で、新たにスタートアップ企業を呼び込むスタートアップフューチャーファクトリーを用意。自工会 モーターショー委員会 委員長 長田准氏によると、400社のうち80社程度がスタートアップ企業などになる(現在も参加社募集中)という。

 このように新たに加わる多くの新しい会社に対して豊田会長は、「100万人以上を集めた実績と自動車。自動車でイベントを行なえば、日本もスタートアップなど新しい会社が自動車と一緒に成長できる。自動車というものを追い風として使っていただきたい」と語る。

 自動車は、電動化、自働化、コネクテッドなどに加え新しいモビリティの登場で大きな変革期にある。よく日本の自動車産業は遅れているという批判を見かけることはあるが、ではどうしたら世界をリードできるのかというのに対してはあまり具体策を見かけたことはない。それに対して自工会は、東京モーターショーをジャパンモビリティショーへとすることや今回のスタートアップ企業の取り組みなどで、1つの回答は出そうとしているように見える。

 もちろん大切なのは、日本最大級の賞金総額のスタートアップイベントで何が成し遂げられるのか、どの程度の規模のビジネスを作り上げられるのかということだが、スタートアップ企業に対して自動車産業とのビジネスマッチング、IT企業や経団連企業とのビジネスマッチングを提供する貴重な機会を提供し、成長の一助になってほしいとの思いを感じる。

「水素社会を作る上では、身近なものから」というのがH2エナジーフェスティバル

 新しい試みとしては、水素由来のエネルギーで音楽イベントやお笑いライブを実施するH2エナジーフェスティバルもある。ジャパンモビリティショーの入場料金とは別料金で行なわれ、水素の社会実装を先取りするようなイベントになる。このイベントについて豊田会長は、「水素社会を作る上では、身近なものからやっていったほうがいい。自動車だけじゃなくてね」と語る。

 水素エネルギーというと、すでに実用化しているFCEV(燃料電池車)の話になることが多く、販売台数は?水素ステーション数は?という、細かい話になることがしばしば。豊田会長は、そこだけに注目するのではなく、まずは水素で何ができるのか体験してほしいという。

 その1つがこの音楽イベントやお笑いライブで、原理的にはエネルギー変換時にCO2排出を伴わない水素でのイベントを行なうことで、まずは体験してみてくださいということだろう。

 モーターショーで音楽ライブというと、比較的珍しいものと思われるが、自動車イベントという形で視野を広げると特に珍しいものではない。記者は1日で30万人以上を集客する世界最大の自動車イベントとして知られている「インディ500」を取材したことがあるが、多くの観客は確かにレースを見に訪れているものの、数万人規模の人たちはインディ500のオーバルコース内で行なわれているライブ目当てで訪れていた。ル・マン24時間レースも、多くの人が一晩中飲んだり食べたりしながらレースを楽しんでいる。世界的な大規模イベントは、複合的な構造で成り立っている。

 自工会は東京モーターショーをジャパンモビリティショーに改めるにあたって、複合イベント化したように見える。ただ、まったく関係ないイベントではなく、水素という要素を持ち込み、水素イベントを実施することで、水素社会を誰よりも早く体験できるように用意している。ジャパンモビリティショーはモーターショーでもあるため、クルマ好きなら訪れるべきイベントだが、クルマに興味のない人にも新しいビジネスや新しい社会の体験ができるように配慮されているようだ。