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日産とホンダの経営統合について、8月の共同会見をもとに考える 何よりも大切なのはスピード感

日産自動車株式会社 代表執行役 社長兼CEO 内田誠氏(左)と本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏(右)

3月に日産とホンダで、8月に三菱自動車を加えた戦略的パートナーシップの検討を開始

 日産自動車と本田技研工業、そして三菱自動車工業の経営統合に関して、さまざまな報道がなされている。各社は12月18日に「現時点で決定した事実はない」との発表を行なっているが、とくに報道を否定しているわけではなく、また自宅直撃インタビューが行なわれたホンダ 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏も「あらゆる可能性について話をしています」、経営統合については「上から下まで言えば可能性としてはあると思う」と語ったことから、さまざまな観点から経営統合に関する情報が流れている。

 その基本にあるのが、日産自動車と本田技研工業で2024年3月15日に行なわれた自動車の電動化・知能化に向けた戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書の締結になる。その後、8月1日には三菱自動車工業が加わり3社での覚書締結に発展。同時に、日産自動車 代表執行役 社長兼CEOの内田誠氏とホンダ 三部社長は会見を行ない、何を共通化するのか、どんな検討をしているのかまで踏み込み、両社が技術者レベルでの検討に入っていることを明らかにした。

 さらに両社長は質疑応答に丁寧に答える中、両社の電動化・知能化は、キーコンポーネンツ統合のへ進んでいることをうかがわせるものになっていた。

 そこまで踏み出している状態で、日産の決算内容の悪化が顕在化。11月7日の日産 2024年度上期(2024年4月1日~9月30日)決算では、営業利益が前年同期比90.2%減の329億円、営業利益率は0.5%という衝撃的なものになり、グローバル人員数の9000人削減を発表。人の削減まで発表したことも、今回の経営統合報道につながっている。

 そこで、今回は多くの内容が話された8月1日の会見を質疑応答も含めてすべて振り返ることで、経営統合をするのであればどのような経営統合がなされいくのかを考えてみたい。資本以外のことについては、この8月1日の会見で多くのことが明らかにされている。

【編集部追記】2024年12月23日17時より、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業の共同記者会見が開催されることが決まりました。

8月1日、ホンダ 三部社長と日産 内田社長による記者会見

戦略的パートナーシップ検討進捗に関する共同会見

三部社長:みなさま、本日はご多忙の中お集まりをいただき誠にありがとうございます。日産自動車とホンダは3月15日に戦略的パートナーシップに向けた検討を開始すると発表いたしましたが、本日はその進捗状況をみなさまにご説明するためにこの場を用意させていただきました

 前回は、まだ検討をスタートするという段階でしたので、握手をするのは時期尚早と考えていたのですが、思った以上にメディアのみなさまがこの点を取り上げられ少し心を痛めておりましたので、本日はこれまでの議論を踏まえ、しっかりと握手ができるまで進展が図られたことを、まず始めにご報告しておきたいと思います。

協業検討に至る背景

 前回の会見でも申し上げたとおり、今回のパートナーシップの検討はグローバルで自動車産業を取り巻く環境において、知能化、電動化という技術革新によって従来の構造がダイナミックに変化しており、「これに対応できない企業は淘汰される」と、こうした認識を両社トップが共有したところからスタートいたしました。

 従来、私たち自動車OEMは内燃機関を中心とした、緻密かつ効率的なものづくりの能力をコアコンピタンスとして成長をしてきました。しかし、現在進み行く構造変化に対しては、日産、ホンダが個々に従来の枠組の中でしのぎを削っていくのではなく、これまで両社が培ってきた強みを持ち寄って科学反応を起こすことで新たな自動車の価値、新たな技術コンピタンスを進化させることができないかと、こうした観点で検討プロジェクトがスタートしました。

 具体的にはまずは車載ソフトウェアプラットフォームの協業、バッテリEVに関するコアコンポーネントの協業、商品の相互保管、この3つのスコープを中心にそれぞれ詳細を検討するワーキンググループを作り、現場の第一線のメンバーも入れて、両社でスピード感を持って検討を進めてきました。

内田社長:とりわけスピードは、大きな企業規模となった今の私たちに最も求められる要素だと思います。今回それぞれの第一線で活躍するメンバーがワンチームで長期のビジョンをともに議論し合うことによって、お互いに気づきや刺激を得、切磋琢磨していくことでスピード感が増していく、そうした効果も期待できるはずだと私と三部さんは考え、「最初の100日間を駆け抜けていくぞ」と号令をかけ、「100day SPRINT」をスローガンに対等な立場で活発な検討を実施してきました。

新たな自動車の価値を進化

 文化の違う両社ではあるものの、課題認識はむしろ第一線の現場レベルにいくほど同じであることが分かりました。そして互いをリスペクトし合う総互信頼の精神のもと検討を進める中で、両社が力を合わせるメリットが想定以上に大きいことも確認できました。両社の現場レベルではこの協業の可能性に大いに沸き立っていると思います。

 お互いの強みを活かして1+1が2以上のシナジーを生み出せる協業分野を特定できたと思います。こうした検討の結果として、本日進捗をご紹介するアジェンダはご覧の5つとなります。

 次世代SDVプラットフォームの基礎的要素技術の共同研究、バッテリの補完供給、e-アクスルの共通化、車両の相合補完、国内のエネルギーサービス資源循環領域での協業。これらはすべて魅力あふれる将来モビリティを実現し、お客さまにより高い価値を提供していくための取り組みです。これにより5つの領域についての取り組みを説明してまいりますが、その中で特にキーとなるのがソフトウェアだと私たちは考えています。

3月に話をしたスコープ

 ソフトウェアを進化させることでクルマやサービスの価値が高まり、お客さまとクルマの関係が一新されます。このソフトウェアプラットフォームにホンダと日産はどう取り組んでいくのかについてご説明していきます。

三部社長:最初に知能化の領域として挙げた次世代SDVプラットフォームの基礎的要素技術の共同研究についてです。昨今のお客さまのニーズは多様化しており、それに応えていくためにはソフトウェアがもたらす自由度が必要となります。また変化のスピードが加速していく中、ハードウェア中心の進化ではそれに追いつくことはできません。そこでパーソナライズ化と短期開発を可能にするソフトウェアが価値を定義するクルマ作り、つまりSDVへの変革が必要となるわけです。SDVの変革に必要となるプラットフォームは、SoC、E&Eアーキテクチャ、ソフトウェアプラットフォーム、データプラットフォーム、開発環境などで構成されます。

 これらを高度に最適化することで競争力を生む源泉となります。このSDVプラットフォームをベースに両社がそれぞれアプリの追加やアップデートをすることで、新たな付加価値をお客さまに迅速に提供することが可能になります。

 また、電力マネジメントを高度に知能化することで、EVにおける省電力性能を大きく向上させ、航続距離を向上させていきます。

 さらに自動運転もSDVプラットフォーム上で進化する大きな価値の1つです。将来的には完全自動運転は達成される技術であり、これによりクルマと人の関係性や、移動そのものの体験価値は大きく変化していく、こうした考えのもと現在さまざまな企業が、さまざまなアプローチで自動運転技術の進化に取り組んでいます。

 その進化において競争力を左右する要素は技術者の質と数、データ量、計算処理能力、これらの掛け合わせだと言われています。これを実現するには、個社で取り組むよりも、志を同じにするものがチームを組んで取り組んでいく、つまりパートナーシップの方がメリットが極めて大きいと考え、検討を深めてまいりました。

 その結果、両社のエンジニアが考えるSDV構想や、技術アプローチにおいての共通の考え、思想があることが分かりました。

 そして何よりも文化の異なる両社のエンジニアが世界をリードする存在を目指すというビジョンを共有し、大いに沸き立っていること、こうしたことからこの度セントラルアーキテクチャを含む次世代SDVプラットフォームについて基礎的要素技術の共同研究に合意し、すでに研究をスタートさせています。

 スピード感を持ってまず1年を目処に基礎研究を終えることを目指していきます。そして成果が出れば、その後量産開発の可能性も検討していきたいと思っています。

両社での取り組み

内田社長:続いて電動化の領域です。電動化のキーコンポーネントであるバッテリとEアクスル、これはいわゆる装置産業であり、量産化には莫大な投資が必要となります。投資負担が大きいだけでなく、絶え間ない技術進化の中で計画どおりの台数を達成できなければ、投資分を回収できなくなるリスクもあります。

 OEMとしては慎重な舵取りが必要です。ホンダ、日産ともにこれまでバッテリやEアクスルの生産調達をそれぞれで行なってきましたが、両社の仕様を共通過できれば、投資負担やリスクを分散していくことが可能となり、またボリュームメリットによるコストダウン効果も期待できます。そのような観点で、中期および短期での協業について検討をしてきました。

主要協業領域
次世代SDVの共同研究

SDVについて
競争力の源泉

SDVの開発
両社の考え

 まずバッテリです。両社は独自にバッテリ技術を開発しており、両社が力を合せることで高出力型から廉価型まで幅広い選択肢を確保できます。ホンダはこれまでに米国においてLGエナジーソリューションとのジョイントベンチャー(L-H Battery Company)を立ち上げ、加えてGSユアサとの共同開発によるバッテリを、まずは日本、その後カナダで量産していく計画を立てています。他方日産は、10年以上にわたる世界各国での電気自動車の販売経験があります。その中で得た知見を活かし、地域特性に鑑みながら日本国内ではAESCとのパートナーシップによる調達を、また北米において廉価版バッテリを含むさまざまなオプションを検討してきました。

 こうした取り組みの中、今回中長期の視点で両社がそれぞれ供給を計画してるバッテリが、どちらのクルマにも搭載できるようにすることを目指し、両社のセルモジュールの仕様を共通化していくことに基本合意いたしました。

 これが実現すると、今後は両社が調達するバッテリがどちらのクルマにも搭載できるようになります。加えて北米でホンダとLGエナジーソリューションとのジョイントベンチャーが生産するリチウムイオンバッテリを2028年以降に日産が供給を受けることを検討していきます。これらの取り組みは市場環境の変化や技術進化への対応、さらには投資リスクの低減という視点で非常に大きなステップと認識しています。

次にEアクスルについてです。こちらも中長期的に両社のEアクスルの仕様の共通化を目指していくことに基本合意いたしました。その第1ステップとしてEアクルの基幹領域であるモーターとインバータを共用することに合意しました。

電動化領域の協業
狙い

バッテリの補完
相互補完

Eアクスルの共通化
狙い

車両の相互補完
エネルギー・サービスについて

今後の展開
知能化と電動化

 EVのコアコンポーネントであるバッテリとEアクスルについて、中長期的に仕様の共通化を進めていくことは、ボリュームメリットの獲得、投資リスクの低減、さらにはあらゆる変化へのレジリエンスを高めていくといった観点で非常に大きな成果であると考えています。

 もちろんEVのコアコンポーネントが共通化されるといっても、それだけでクルマの性能、そして魅力が決まってしまうわけではありません。使用部品の共通化によって獲得できる競争力を、日産、ホンダそれぞれが独自の魅力あるクルマ作りのベースとして活用していきたいと考えています。

三部社長:4点目の車両相互補完における検討状況をご説明します。これについてもグローバルの各市場を対象に、足元から中張期までを視野に入れて活発な検討を実施しています。その結果、特に短期的な対応としては、対象とするモデルや地域について基本合意しました。

 また、商品にこだわりを持つ両社ならではの取り組みとして、相互補完の対象となるモデルについては、両社で商品性を検討していく体制を採るなど、アウトラインの合意に至りました。

 まだ細部の詰めが残っている段階であり、本日は具体的モデル名までの公表は差し控えさせていただきますが、ガソリン車からEVなどの相互供給を検討しており、決定次第今後改めてお知らせしたいと思います。

 大事なことは、それぞれの商品のDNAやらしさを損なうことなく、必要なラインアップの拡充を実現することでお客さまに提供できる価値を向上させていくことです。

 最後、5点目ですが、国内を中心としたエネルギーサービス事業や資源循環の領域においても、今後両社で具体的検討を進めていくことに合意いたしました。

 今回、長期的にバッテリやEアクスルといった主要コンポーネントの仕様の共通化を目指していくということは、ライフサイクルの視点でもEVの活用についても、それを前提に検討していくことで従来以上の可能性を出すことができるのではないかとそんな議論に発展し、今回の合意に至りました。

 これらの領域においては、すでに両社ともえさまざまなパートナーとの取り組みを展開してることもあり、慎重かつ大胆に検討を進めてまいります。

内田社長:以上が具体的に検討を進めている5つの領域となります。

 最後にお話ししたいのが、これまで日産自動車とホンダが2社で検討してきたこの戦略パートナーシップの議論に、新たな仲間が参画することになったということです。それが三菱自動車です。本日3社での覚え書きを締結いたしました。

 三菱自動車がこの協業検討の枠組に入ることで、技術や知識の結集による新たな価値の創出と3社でのさらなる効率化が期待できると確信しています。本日ご説明した検討状況ベースに三菱自動車を含めて、さらなるシナジーを獲得すべく検討を深めてまいります。

三部社長:冒頭に申し上げたとおり今回のパートナーシップの検討は、グローバルで自動車産業を取り巻く環境において、知能化・電動化という技術革新によって、従来の構造がダイナミックに変化しており、これに対応できない企業は淘汰される、そういう認識からスタートしています。

 ここまでの議論でまずは最初のステップを踏み出すことができたと思います。しかし今後これらの構想をスピーディに実行に移し、成果を刈り取っていくことが重要です。

 すでにこれまでの検討の中で、第一線のエンジニア同士の科学反応も生まれているので、これを原動力に取り組みを加速させてまいります。

 矢継ぎ早に手を打っていきますので、みなさまには今後も継続して進捗のアップデートをお伝えしていきたいというふうに思います。みなさまの温かいサポートをこれからもよろしくお願いいたします。

 私どもからのご説明は以上となります。ありがとうございました。

質疑応答

──今回、三菱自動車が新たに加わるということで、トヨタグループとの2大勢力が動き出していくのかなという印象を受けました。この国内2陣営化ということで、競合同士が手を組めた決断ができた理由。EVのために生き残ることを選んだためだと思うのですが、改めて両社長に思いをお聞かせいただきたい。

内田社長:今の環境を見ると、やはりこれだけ分断化している中で、この中で我々が競争力をつけてくということを踏まえると、やはりそこには仲間を増やしていくことだと思っています。

 そういう観点から3月15日の際にも我々ホンダさんとこれからいろいろな検討を始める、その際に三菱さんはというご質問もあったと思うんですが、当然三菱さんの成長につながる話であれば、互いに一緒にやっていきながら仲間を増やしてスケールメリットを出したり、あらゆる面での競争力を担保していく点においては非常にメリットがありますし、もう今クルマの需要・環境がそうなってきているということから、この方向に進んでるとご理解いただければと思っております。

 当然、個社ではなかなか課題も厳しいとこもあると思っていますので、ここを3社の力を合わせながら、より効果を上げてくことができるように今後進めたいという思いが一番あります。

三部社長:みなさんご存じのように電動化・知能化という領域においては、新興勢力を含めて、かなり我々の想定を超える以上のスピードで変化してるということで、我々もがんばってきているわけですけども、個社の中でそれをやると今のままでは彼らの背中を捉えることはできないという風に思っております。

 じゃあじゃどうするのか?ということで、いろいろなやり方を検討してきましたけど、そういうトップグループを捉えるという上でも、技術なり共通の考え方が持てる会社が集まり、そんな中で技術だけではなくスケールメリットみたいなものを含めてですね。

 勝負所は2030年という風に見てますので、そのために今動かさないとなかなか追いつかないと、そんな思いもあり、えまずは日産さんと話をしたということで。

 検討する中でいうと、やはり数のメリット、スケールメリットはかなりありますので、そういった中で少し日産さんに話をしたのは、最近ではございます。

 日産さんはこれから、このホンダ・日産の中で考えてきた内容を十分理解した上で、三菱さんがどこに加わっていただくのいいのかという検討はこれからで。

 今日は3社のMOU、先ほどサインしたばかりなので、三菱さんについては(MOUは)これからですけども、3社のいい部分をうまく採り入れて今一度で世界をリードできるような自動車会社に3社でなっていこうという思いで考えております。

 3社集まるとスピード感が失われるんじゃないかという話をいろいろ聞いておりますけども、今は平常時というより、むしろ非常時でですね、かなり今までのやり方の延長戦上ではなかなか世界を捉えることはできないという風に考えています。そういった意味では、今回の3社の協業関係、これを武器に戦っていきたいという風に考えています。

──今回の発表からは気が早いかもしれないんですけれども、今後のいろいろな進め方ですが、研究なり開発なりに非常に資本を投入していかなければいけない中で、両社、三菱も含めた資本提携なり、資本についてはどういう風に両社長は考えているのかお聞かせください。

内田社長:現時点でそういった検討はまだしておりません。まだと言ったのは、今いろいろな協業の可能性、すなわちこのWhatの世界を一生懸命論議をしていますので、今後これからHowに変わってくると思います。そういったところからのご質問だと思うのですけど、やはりWhatは先ほど三部さんもおっしゃったように、期間というところから非常にいいドライブでこれをやっていかなきゃいけない。Whatの部分は相当できていると思うんです。

 ただ、これからこれをどうやっていくかっていうところが、やはり事業という観点から論議になってくると思うので、そういった中で両社にとって、3社にとって一番ウィン・ウィンになれるような形のHowをこれから作ってくということだとご理解いただければと思います。

三部社長:内田さんが今おっしゃったように、現時点で言うと資本関係の話はしておりません。ただ今後のビジネス含めて、その可能性としては別に否定するものではございませんので、いろいろな状況に応じて、それぞれの経営判断でいろいろな関係を築いていきたい、という風に思っております。以上でございます。

──内田社長は文化の違う両社ではあることを認識していた課題感が、第1戦の現場レベルに行くほど同じということをおっしゃられていました。課題感が一緒というのは分かるのですが、その課題をどのように解決するのか? 先ほどHowという風にもおっしゃられましたけれども、その辺りはやっぱり考え方が全く違うのかなと思います。特にその開発系の方は、それぞれうちの方が一番優れているという自信とかこだわりとかもお持ちだと思います。実際、本当にこの先スムーズに共業していけるのかどうか、現場のエンジニアさんたちが今どういった話し合いをされているのか、その辺りを教えていただきたいと思います。

内田社長:当初やはり、お互い技術を持っている会社が話をするという側面に置くと、少しこういろいろうまく進むかなという心配は当然のことながらあるんですけど、先ほど申し上げたように、現場・第一線で話ししてもらっている中で、本当に危機感、それと目的を共有できると、話がWhatの世界は大きく広がるんだなというのを感じてます。今日実は、その現場の第一線で論議をしていただいてる次世代SDVの関連になりますけど、あの当社の吉澤(日産自動車株式会社 吉澤隆氏、常務執行役員 電子技術・システム技術開発本部、コネクティドカー&サービス技術開発本部)と、ホンダの四竈さん(四竈真人氏、本田技研工業株式会社 電動事業開発本部 BEV開発センター ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部 統括部長)がいらっしゃるので、ちょっとよければどのような雰囲気で話しているのか、みなさんに話をしていただければありがたいと思うので、よろしくお願いします。

四竈氏:ホンダの四竈と申します。ソフトウェアの開発を担当しています、よろしくお願いします。今あのご質問いただいた現場の雰囲気がどうなのかということなのですけども、実際日産さんとお話する前は、今までライバルとして切磋琢磨してきたその日産さんとお話をしてうまくいくのかなってちょっと不安に思うところもございました。実際お話を始めてみると、ライバルだと思っていたということは、技術的に認めていたということがあるんです。実際に日産さんのエンジニアのみなさんと話をしていくと、みなさんが非常に優秀だということがよく分かり、その優秀な日産さんのエンジニアのみなさんと話を始めていくと、当然最初はどこまで話していいのかしらみたいな、こう探り探りで進めてきたのですけど、そこから結構、週に何度も実際顔を合わせて話をすることを繰り返していくと、不思議な化学反応が起きまして、現場のみなさんからこんなこともやったらいいんじゃないかとか、こういうことをやった、やりたいよねとか、あるいはこれは課題だからこんな体制を組んでいつまでに解決しようねとか、割と現場からどんどんどんどん提案が出てくるみたいな。そういう科学反応が起きてまいりました。

 割と密な100日間を過ごし今日に至るのですけど、確かに文化が違うっていろいろ言われているのは事実だと思うのです。けれども実際技術を目の前にしたときの、あるいはこの危機感の上においてはですね、文化の違いというのはエンジニアたちにとってはあまり関係なくて、科学反応を起こしながら、すごくお互いをリスペクトしながら、密なコミュニケーションが取れて今日に至ったという風に考えています。

 吉澤さんがどんな風に思ってるかちょっと気になりますけど。吉澤さんにバトンタッチします。

吉澤氏:ありがとうございます。日産自動車の吉澤です。やはり両社とも日本の自動車メーカーとして長い歴史を持っていて、当然ですけど文化も違うということなんですけど、実際にやっぱり技術に対しての思いとか、あるいは時には自社の技術に対する強いこだわり、こういったものっていうのは共通しているなっていうのは実感しています。

 ただ今回議論を通じて、我々が議論しているポイントというのは、これからSDVでもう1度、というかSDVで今テスラですとか、中国勢に少し先に行かれてるという理解のもとで、我々がこの日本の自動車メーカーで、ホンダさん、日産ともにやはりSDVでもう1度勝つ、リードする、そのゴールの思いというのが共通していること。それとやはりそこに向かっていくためには何を解決しなければいけないのかっていうその課題に対する理解が全く共通していた。それがすごく、その理解の共有化ができたことが大きな進歩になったのかなっていう風に思ってます。

 今回、四竈さんもおっしゃっていただきましたけど、本当に第一線のエンジニアを投入して、毎週議論をしてもらいました。お互いが、やっぱりエンジニア同士なんで理解をし合うっていうことが、結果的にリスペクトにつながって、今非常にいい議論が継続しています。

 両社のエンジニアが、科学反応という言葉がありましたけど、やはり新しいものを生み出す力っていうのはすごく持っていると信じていますので、我々が新しい世界を作れると確信しています。

──内田社長におうかがいしたいんですけれども、これまでSDVとうか、SDVの基盤になるビークルOSですとか、あるいはE/Eアーキテクチャについてはルノーさんとのアライアンスの中で開発をされてきた。かなりルノーさんが主導的な立場で開発を進めてきたと理解しているんですけど、今回のこのSDVの開発で、ホンダさんとの協業において、ルノーさんと日産さんとの関係は今後やめてしまって、ホンダさんとの関係に絞っていくのか? あるいはルノーさんとの関係も考慮しながら進めていくのか? この辺のところを可能な範囲で教えていただければと思います。

内田社長:SDV、今までのエレクトリカルアーキテクトですかね。それをパートナーのルノーが主体となってという理解は、お互いにシナジーの中でやってきたっていう理解があるので。

 今回、ホンダさんとお話してるのは次世代のSDVなので、今までやってきたものとは違うという風に見てます。また、それによってパートナーのルノーと我々が今後やっていかないのかというと、みなさんご承知のようにルノーはルノーの価値を上げるためにアンペアという会社を作って進めていく。そこに我々も出資をしていくということは今後も変わらないですし、ルノーとの中では、欧州の我々の成長戦略、ここに向けてともにやっていく。アンペアからのさまざまなサポートをもらいながらやってくということは、これからも変わらないです。

 当然のことながらルノーだけでなく三菱さんの視点で見れば、ASEAN、それと我々の中経(中期経営計画)で発表したArc(アーク)の中での数々のシナジーを、協業をやってくということです。

 ただそれだけでは我々日産がグローバルでやってく中においては、あまりにもまだまだ課題が多いと。その課題の多い中で、今回、ホンダさんとの話の中でうまくパートナーになりながら我々の成長にもつなげていきたいという思いからやってくということです。

 従って、よく聞かれるんですけど、「これによってルノーさんとの関係はなくなるんですか?」。決してそういうことではなく、我々がグローバルの中で、日産としてこれから成長していくためには、さまざまなパートナーとうまく協業しながら、個社の成長につなげていく、ということを進めるということです、よろしいでしょうか?

──2つ質問があります。SDVというと2つの旧態依然とした自動車メーカーがソフトウェアを製造するような気がします。外部のテックなどソフトウェアを熟地しているところと連携した方がいいのではないですか? その方がノウハウを持ち込んでくれませんか? そのような話は出ているのでしょうか? 外部のITパートナーとチームアップしてソフトウェアに関して貢献してもらうということについては、3社目の業界外の、例を挙げるとソニーとホンダがやっているような、そういったところからパートナーを呼び込むという話はありますか? あと時間軸で中長期というのはどのくらいですか? それは基本的に2020年代末までの2030年までという時間軸で正しいでしょうか? 最後にどういう共同投資が両社から必要になってくるのでしょうか? どういう投資を想定されていますか? SDVの共同研究などに関して、あるいはバッテリ、Eアクスルの仕様の共通化などに関してはいくらぐらいの投資になるんでしょうか?

三部社長:SDVの開発をホンダ、日産で進めていきますという話をしましたけど、これは完全に2社だけですべてを作るわけではなくて、現在でもホンダはいろいろなところとつながりながら、ソフトウェアの開発を行なっていますし、日産さんも同様なやり方をやっています。コアな部分の企画から設計みたいな部分は当然2社の間でやっていきますけど、そこにはかなり外部のいろいろなソフトウェア関連の会社との関係をうまくつなぎながら、新しい競争力のあるSDVのプラットフォームを作ってくということになりますので、そういった意味で(質問者である)ハンスさんの話でいうと、これから2社の取り組みの中に我々の関係のある会社がまたつながって、最終的にいいものを作っていくとになると思います。

 時間軸ですけど、基本的に次世代SDVプラットフォームという風に今日は言っておきます。現在、足元で言うと量産開発というと、25(2025年モデル)は終わっているかな。26モデルとか、27モデルぐらいいっているかな。すでに着手してますので、それ以降のモデルということになります。

 少し先の研究を開始したということで、現在の量産におけるSDVの仕様とはかなり違って、進化したシステムを目指しておりますので、正確にいつというお答えを今日はできませんが、次世代という風に理解していただければと思います。

 できればどうですかね、せっかく集まっていただいたので、強いて言えば、うまく研究が行けば2030年よりも手前には出したいなっていう、それぐらいですかね。時間軸で言うと。

 ソフトウェアで言うと、開発費、膨大な開発費がかかりまして、これもいくらとは申し上げられませんけども、ソフトウェアの開発費を按分するということだけでも、かなり額が大きいと思っておりますので、開発費についても大きな効果が期待できるということ。それからもちろん両社によって開発も加速されますし、より技術レベルの高いものができるということで、我々としてはお金の話も含めて、あとコスト。お金、コスト、それから開発、この3つに対して今回の取り組みは非常に効果があると思っておりますので、そのように理解をしていただければと思います。

 それからバッテリとEアクスル、バッテリも今日申し上げたのは、共通化しておこうというのは、例えばバッテリのサイズですね。そういうのを共通化しておけば、例えば廉価版のバッテリをどちらかの会社が作り、例えばもう1つは高出力型のバッテリを作ったとすると、それがホンダも両方使えるし、日産も両方使えるというようなところを目指していますので、いろいろな商品の自由度もかなり飛躍的に上がります。そういう効果が非常に大きいと考えています。

 それからEアクルについては今日申し上げたのは、モーターとインバータ、これは完全に同じものを使おうということで、それでスケールメリットを出してコストを下げていこうということです。今後のEアクスルアッシー(Assy)については、それぞれのサプライヤーといろいろ影響もありますので、最終的には同じものにできればいいということで今後話をしていきますけど、今日時点で言うと、モーターとインバータは同じものにするということで、スケールメリットを取っていこうと理解をしていただければと思います。

内田社長:ハンスさん、付け加えて言うと、三部さんがおっしゃっていたように、やはり技術、先ほどの(ホンダの)四竈さん、(日産の)吉澤の会話から感じていただいたと思いますけど、やはり技術の底上げというんですか、底上げ効果。1+1が2になるのではなくて、それ以上になることを期待するということを言ったのですけど。その点であったり、スピード感、こういったものが大きな将来の競争力につながってくるということを、我々は目指したいと思っています。

 もちろん次世代SDVというと、相当な規模の投資が必要だというのは我々も思っておりますし、そういった中でスピード感とその投資に対する規模を仲間と一緒にシェアできるようなこと。それが最終的には将来の競争力につながっていけばと思っております、タイミング論は先ほど三部さんがおっしゃったようなイメージなんですけど、ジャパンモビリティショーで出しているクルマがもっと早い時期に来るんじゃないかということを踏まえると、やはりそれに対して備えていかなきゃいけないという観点から、タイミングとしては今足元でやってる計画っていうのは、大体みなさんご承知のように自動車メーカーだとこのぐらいの先まではもう今のものが決まってるので、そういう視点からは新たな次世代が早く来てしまうんじゃないかという危機感を踏まえて動いてるという風に理解いただければと思います。

──非常に大きな発表でワクワクしております。1点おうかがいしたいです。商品の相互補完に関してです。2030年ごろに勝負どころ、あるいは何かの結果を出したいというお話がございましたが、日産さん、ホンダさんの両社の経営計画ですと、2030年の時点だとまだ半分ぐらいはガソリンエンジン搭載車を作って売っているタイミングだと思います。今回の発表、両社の提携というのはSDVが中心なんですが、これはBEV(バッテリEV)に関してという領域なのか、それともそれに限らずハイブリッド、プラグインハイブリッドも含めた商品の相互補完があり得るのかどうか? という辺りをうかがえればと思います。

三部社長:最初に私の方から。今日も少し発表のときに申し上げましたけども、相互補完についてはガソリンエンジンを積んだクルマからEVまで含めて検討をしていますということですね。やはり電動化・知能化に向けて進んでいくわけですけども、当然、今、寺崎さんがおっしゃったように、足元のビジネスも当然やりながらということですので、すべて全方位でですね、個社でやるのもなかなか厳しい状況だということで、少し足元のビジネスを含めてうまく相互補完ができないかと。

 それから中長期的にいい効果がある補完ができないかということで話をしてきて。100日も話をしてきましたので、だいぶ具体的な話になってきております。

 近いうちにこの辺の商品の補完の話を、みなさまにもお伝えできると考えております。

内田社長:そうですね、三部さんがおっしゃったように、できること、お互いにメリットがあることはどんどんとやっていくということです。範囲を狭めるつもりはないですし、そういう面では短期にすぐできるようなこともあれば、中長期を見据えてやってくこと、こういったま我々のスパンで今論議をしているので、今日まだ具体的なお話ができないんですけど、今後内容がもう少し進み次第、みなさんにきちっと示していけるような機会を設けてもらえればと思っています。

──重みがあるのはSDVプラットフォーム、ここだけ契約を締結したと。ほかは、基本合意とか検討という言葉ですので、少し決定の内容には重みがあるなという認識です。三部さんにこれをもう少し具体化してほしいと思います。基礎的要素技術の共同研究、これって具体的に何をおっしゃってらっしゃるのか。先ほどセントラルアーキテクチャも含めてという言葉を使ってましたけれども、基礎的技術を1年間もかけて研究していて本当に2028年に間に合うのかというのは心配なところでもあります。具体的に何をされるのでしょうか、もう少し見える形にしてほしいのと、やはり金軸、つまりお金ですね。ここでちゃんと合意に達して契約になってるのかどうか。具体的に言えば、例えばアップデートでおっしゃられた2兆円のソフトウェア投資に対してどういったインパクトがあるのか、この辺もう少し解像度を上げて説明いただけないでしょうか。

三部社長:かなりですね、今もう研究は始まっておりますので、現段階で明確に内容をお伝えできませんけども、SDVのプラットフォームを一緒にやるということで言うと、それにまつわる、今日いくつかの話を具体的に挙げましたけど。SoCというのは、System on Chipですので、ここにも当然半導体が入ってくるわけですし、E/Eアーキテクチャ、ソフトプラットフォーム、この辺にはビークルOSみたいなものも当然入ってきますし、データプラットフォームという部分で言うと、当然両社の持つデータ、これいろいろ個人情報ということもありますし、この辺も気をつけながらではありますが、できるだけ両社のデータを共通で、特にAIなんかの部分には使っていこうということ。

 それをやるにあたっては開発環境、違った開発環境ではできませんので、その辺をまず合わしていこうと。具体的には今、そういうところから入っていまして、最後はAD/ADASも含めて商品に向けてやっていくということで。

 研究を、足元のベーシックなところの研究を固めておいて、その結果を見て量産に向けて行くか行かないかという判断を、ちょうど1年後を想定していますけど、より商品側に振ったような話に移行できればと考えているということで。

 今日はそれぐらいでちょっと勘弁をしていただきまして。

 効果は当然あります。効果がなければやらないので。

 先ほど言いましたように、ソフトウェアの開発っていうのは非常に、4桁億円ぐらいの開発費がかかります。そういった意味では、そこを按分するというのは、ご想像できると思いますけども、かなりの開発費を圧縮できると。非常にメリットは大きいと思っております。

──両社の社長にうかがえればと思います。今回この部品共通化、バッテリとEアクスルのところを結構踏み込んでやるということなんですけれども、それぞれ両社、系列と言いますか、資本関係も入ってるサプライヤーなどもあると思うんですけれども、こうしたところとの形も必要だと思いますし、また納得してもらうことも必要だと思うんですが、今後これを進めていく上でどうやっていくのかもう少し具体的に教えてください。

内田社長:Eアクスルの共通化の話ですけども、すでにモーター、インバータは、我々共通のサプライヤーさんがいらっしゃるので、そういった方々の話をどんどん進めていけるのかなと。ただ先ほど三部さんが触れられたと思いますけど、最終的なそれの製造、インダストリゼーションをこれからどうやっていくのかというのは今後お話をしていく領域になると思います。

 ただ事業環境が非常にいろいろな面で厳しいので、そういう面では効果のあるいい方向に今後論議ができればと思っていますし、それは継続して話をしながら必要に応じた我々の体制というものも見ていかなきゃいけない事業環境だと思っています。

三部社長:今回、モーター・インバータをまったく共通のものを使うというのは、共通のサプライヤー、今日名前を挙げていいと言われているので日立アステモで。

 ここは両社共通のサプライヤーでございますので、そこはそれを使っていこうということで合意をしています。その先、もちろんコスト的な効果を含めて考えれば、EアクスルAssyを共通化していくのが一番メリットが大きいと思っております。ご指摘のとおりいろいろそれぞれサプライヤーも現在異なっておりますし、今後サプライヤーの部分も含めて、うまい回答を見つけながら、できればEアクスルそのものを共通化していくような検討をこれからさらに進めていきたいと、現時点ではそういう風に考えております。

──お2人におうかがいしたいのですけれども、今までの質問の関連ということで、今後スピーディな意思決定を行なうという意味で、3社でお金を入れて新会社を立ち上げて、それで進めていくということも選択肢としてあり得るのかどうか、その点について。特に両社とも基本的にはソフトウェアに関してはGoogleとの関係性も深いと思うのですけど、先ほど外部との協力もあり得るというお話でしたが、Googleというのが1つの選択肢になってくるのか、あるいは必ずしもそうとは限らないのか、その辺についても教えてください。

内田社長:まだ今日は具体的なことは、これから将来のことは先ほど言ったようにWhatの領域なので。今まさしく聞かれたのはHowのことだと思うんですよね。ただそれが競争力につがっていく方向になれば、さまざまなことは考えていかなきゃいけないと思っておりますし、それは今後3社の中でも、それが個社の成長につながる、個社の利益につがることであれば、それが引いては将来的な競争力を担保できるような形になるということであれば、さまざまなことは検討していくことになると思います。

三部社長:豊島さんご指摘のとおり、今後さらに進んでいく中で言うと、いろんなやり方があると考えておりますし、新会社設立なんていうのも1つの可能性としては捉えています。少しもうちょっと時間を使って今後どういう形が一番両社にとって最適なのかということを話し合いながら、決まればお話ができると思います。

 Googleは特に足元いろいろ関係は両社ともありますけど、今後、特に特定の会社を決め打ちしてやっていく話は現在のところまったくありません。

──両社長に質問なんですけど、先ほど冒頭の握手ですとかプレゼン時も信頼という言葉があったと思うのですが、信頼に基づいてお互いに具体的にどういうことに期待をしているのか? その期待を元にどういう風に成果を出していきたいのか? もっとストレートに言うと世界で勝っていきたいのか? どの分野で勝っていきたいのか? 改めて教えてください。よろしくお願いします。

三部社長:どの分野で……。もうすでにいろいろ申し上げておりますけど、まずは両社の技術を持ち寄って、はっきり申し上げて先行している新興メーカーがありますので、そこに対していち早くそれを捉え、またそれをリードしていくようなえ形に持っていきたいというのが、私の中では一番の狙いでございます。

 それに伴って両社でやることによって、当然スケールメリットがございますし、さっき言った開発費の効果みたいなものもありますし、付随した効果も非常にあらゆるところであると思っていますけども、一番重要なのは、今一度、新しい知能化・電動化の領域で世界をリードしていける力をつけるというのが一番重要だと考えております。

内田社長:これから本当に将来クルマの価値が変わっていく、将来って今まで言っていたんですけど本当に近い将来に変わったんだろうな、ということを踏まえると、そこに向けての競争力をいかにつけれるか、そのためには先ほどから申し上げているように、いろいろな危機感の共有をしながら技術力の底上げにもつながっていきますし、それをスピーディにやらないと今の競合他社、特に他国のOEMからすると、あのスピードに勝っていけるのかっていうのもあります。

 それをできるような業態を作っていかないと、本当に我々が成長できるのかと。特に当社もそうですけど。

 そういった視点から、そこで我々、きちっと自動車業界の中でそれなりのポジションを持っていけるというとこを目指して行かなきゃいけないと思っていますので、そういう点が一番の共有できてるポイントかなと思います。それを目指すべきだという風に思っています。

──今後モーターとインバータを完全に共通化していくということなんですけれど、特に日産さんはモーターはeパワーですとか、ハイブリッドにも関わる部分になると思います。EVだけでなくハイブリッドあるいはPHEVといった分野でどのように協業していくのかおうかがいしたいです。

内田社長:具体的なHEV、PHEVの話はなかなか今お話できないんですけど、モーター・インバータ。うちで言えばインバータのところもあるので。

 これからの将来の世代の中では、できることは一緒にやっていくことも含めて幅広く検討はしていきたいという風に思います。

三部社長:当然ハイブリッド、プラグインハイブリッド、こういう技術というのは、まだまだ非常に効な技術であるという風に思っておりますし、先ほど話し合った2030年に約半分EVになると言っても、逆に言うと半分はまだエンジン付きのいろいろなパワーユニットが残りますので、そういうところも踏まえると、そこに対して我々がどれぐらいのリソースを割いていくのか、どのくらいのビジネス規模をその時点で構えるのかという、そういう話もしながら、我々協業の選択肢としては双方にメリットがあるのであれば、まったく否定するものではないと思いますので、今後その辺の話は両社の中でしていくことになると思いますけど、今時点で言うとまだそういう話は具体的には固まってないということです。

──両社長におうかがいしたいんですけど、電動化で先行しているメーカーもいるというお話もありましたけど、例えばBYD、テスラと比べて2社で何が今決定的に足りないと考えていらっしゃるのか? 今回5つのメニューを発表されましたけど、これらを実行することで追いつくことはできるのか? ほかに必要な要素があるのか? その辺り、お聞きできますでしょうか。

内田社長:何が遅れている、何が足りないか。うん、やっぱりスピード感なのかなと思います。今、BYDとおっしゃったので。

 中国で言うと彼らのスケーラビリティ、相当大きなものがありますし。スピード感も速い点で。そこに付いていきながら、そこに対抗できるようなことをできるのかというと、今そこの部分をスピード感を持って進めないと我々が本当に対抗できるようなレベルになっているのか。時間軸の話だと思うので。

 素晴らしい技術があっても、それが事業化できなければ、事業化のタイミングがきちっと市場のニーズに合わなければ、ビジネスのメリットにつながっていかないので。そういった点では、何がと聞かれるとやはりスピード感ってものをどうこれから作っていけるかということだという風に思ってます。

三部社長:特に今日、BYDという会社を特定したわけではありませんけど、やはり先行している会社は、圧倒的にスピードが速いということは私も認識しております。

 その1つの理由としては、自動車会社という枠を超えて例えばIT企業みたいなものとうまく関係を築きながら、新しいSDVというようなものを作ってきているという認識をしておりますので、今回我々も2社でもちろんやっていくわけですけど、やっぱりスピードっていうのは非常に重要なので、元々のホンダや日産が持っている時間軸の中で開発するというのではなくて、できるだけ我々の今までの開発という概念を捨てて、かなりスピード感を持って彼らを、先ほども言いましたように彼らを捉え、超えていこうという風に考えています。

 まだまだ試合は始まったばかりなので、まだまだ全然試合を捨てるわけでもないですし、まだまだ十分戦えると私は思っていますので、こういった枠組を使いながら、それを目指していきたいという風に考えています。以上です。

内田社長、三部社長、両社長が語ったこと

 およそ1時間ほどの会見であったが、日産 内田社長、ホンダ 三部社長とも非常に細かく応えたものとなっている。BYD、テスラといった新興勢力に遅れていることを認識し、そこに追い付き、追い越すためのスピードを求めるために戦略的パートナーシップを選択した。

 すでにエンジニアの交流も3月から始まり、12月の段階では9か月ほど進んでいることになる。つまり、両社の2030年までの手の内は開示されていることになる。

 電動化に関するコンポーネンツやプラットフォーム、知能化に関する方向性やAD/ADASの部分まで踏み込んで話し合いがされており、100年に一度という自動車の変革期で最も大切な部分をすでに共有しているのが、日産、ホンダ、そして三菱になる。

 この状況で、日産の不調が顕在化。工場の操業をコントロールするための人員削減とはいえ、約9000人の人員削減も発表された。外資による日産の経営権の取得という話も出ているが、ホンダにとっては日産の経営権を握られてしまったら、自社の最も大切な時期の最も大事な部分が外資に開示されることになる。

 また、記者はIT業界の浮沈なども見てきたが、人員削減を発表した企業から退職していくのは、能力のある人からということが多い。能力がある人であれば転職は比較的容易で、円安の今、外資が人をリクルートする環境も有利だ。実際、液晶業界などでは研究所の向かいに外資が事務所をおき積極的に開発者をリクルート、それが現在の液晶の敗戦といってもよい状態につながった(もちろん液晶だけではなく、類似の話はたくさんある)。

 このように人が流出してしまえば、知的財産が日産、ホンダ、そして三菱と3社分流出するも同様なので、この日産の経営危機は、日産以外の会社においても回避する必要があるのは間違いない。

 であれば、それを回避するための持株会社による経営統合というのは、各社のブランドも残る形であり、三部社長の言うように「上から下まで言えば可能性としてはあると思う」という状態なのだろう。

 電機業界は、PCや液晶といった製品やキーコンポーネンツで多くが外資傘下となった。自動車もそうなってしまえば、系列企業も含め日本の大手企業がなくなってしまいかねない。自動車業界は厳しい選択を迫られる、そのような転換点にあるのは間違いない。