試乗インプレッション

アストンマーティン史上最もパワフルなフラグシップモデル、新型「DBS スーパーレッジェーラ」は特別感のカタマリだった

スーパースポーツのようなアグレッシブさを上品に味わわせるのがアストンマーティン流

どこから見てもホレボレする

 久々にアストンマーティンに乗る機会が訪れた。「ヴァンキッシュ S」の後継として6月に登場し、その名のとおり軽量化とともに走行性能にも本格的に力を注ぎ、新たな高性能版フラグシップの座に君臨した「DBS スーパーレッジェーラ」だ。

 実車を目にしての第一印象は、予想以上にグラマラスな迫力ある姿に衝撃を受けた。大きな開口部にハニカムグリルを配したアグレッシブなフロントフェイスもインパクト満点。前後とも大きく張り出したブリスターフェンダーを備え、全幅が2mにも達する低く構えたボディは、細部にいたるまで見事なまでに美しい曲面を描き造形されていることも印象的だ。

 さらにはフロントフェンダー後方のエアアウトレットも目を引き、ダブルディフューザーや両サイドに存在感のあるマフラーを配したリアデザインも凝っている。どこから見てもホレボレするほどスタイリッシュだ。いわゆるスーパースポーツの面々とは違った常識的なカタチの中で、これほどカッコよさを感じさせるクルマはそうそうない。

6月に発表し、2018年第3四半期から納車を開始した“アストンマーティンの究極のスーパーGT”に位置付けられる新型「DBS スーパーレッジェーラ」は、「ヴァンキッシュ S」の後継モデル。ボディサイズは、4712×2146×1280mm(全長×全幅[ドアミラーを含む]×全高)で、ホイールベースは2805mm
エクステリアでは、自然界に最も多く存在するという形状のハニカムをモチーフとしたフロントグリルを採用し、ボンネットの長尺パワーバルジとボンネット・ベントがスピード感をダイナミックに表現。撮影車はオプション設定の21インチ鍛造ツインスポークホイールを装着し、専用開発のピレリ製「P ZERO」(フロント:265/35 ZR21、リア:305/30 ZR21)を組み合わせる。最新世代のCCBカーボンディスクブレーキはフロントの直径が410mm、リアの直径が360mm。キャリパーはフロントが6ピストン、リアが4ピストンとなる
シャシーには「DB11」とともにデビューした最新世代軽量接着固定アルミニウム構造の発展進化バージョンを採用。外装にカーボンファイバー製ボディパネルを広く採用することで剛性を向上。乾燥重量は1693kgとした。現代風のシグネチャーLEDテールランプも特徴的

 伝統の斜めに跳ね上がるドアを開け、高いサイドシルをまたいでシートに収まると、黒で統一されたコクピットにただよう凛とした空気を感じる。アストンマーティンならではの奥ゆかしいクラフトマンシップの中に高性能版としての精悍さが同居するとともに、最新モデルらしく現代的なものも与えられている。新感覚のマーブル柄のようなパネルも目を引く。一応、2+2レイアウトとなっているが、後席はシートの形をした荷物置き場と捉えた方がよいだろう。

ドアは斜めに跳ね上がるタイプ
インテリアではソフトレザーとアルカンターラを採用するとともに、「Sports Plusパフォーマンス・シート」や「固定式フルレングス・パドルシフト」を装着した「Sports Plusステアリングホイール」を標準装備。インパネ中央に8.0インチ液晶パネルも備わる
パワートレーン、シャシーともに「GT」「Sport」「Sport Plus」の3種類から選択可能

サウンドと速さに圧倒される

 カーボン製のフロントフードを開いてタイヤがむき出しになった姿もまた絵になる。その両輪の間、フロントアクスル後方の低い位置に搭載されるのは、メルセデスAMGに頼らず新世代のV12として自社開発した、従来の6.0リッターV12自然吸気エンジンの後継となる「AE31」と呼ばれるアストンマーティン謹製の5.2リッターV12ツインターボだ。

 725PS、900Nmのパワー&トルクは、トランスアクスルレイアウトによりリアにマウントされたZF製8速ATを介し、より鋭い中間加速を得るためローギヤード化したファイナルドライブを備えた機械式LSDとトルクベクタリング機構により、着実に路面に伝えられる。

アストンマーティン製V型12気筒DOHC 5.2リッターツインターボエンジンは最高出力725PS/6500rpm、最大トルク900Nm/1800-5000rpmを発生。ZF製8速ATを組み合わせ、0-100km/h加速は3.4秒、0-160km/h加速は6.4秒、最高速は約340km/hに達する

 エンジンが刷新されても、独特の始動時のクランキング音からしてワクワクさせるのは、いつもながらアストンマーティンならでは。まずこの音を聴けるのがアストンマーティンに乗る醍醐味であり、その先に待っている魅惑の世界を大いに期待させる。

 実に725PSにも達するピークパワーはもちろん、900Nmものビッグトルクを1800-5000rpmという幅広い回転域で発揮するのだから、どれほど速いかは言うまでもない。湧き上がるような怒涛のトルクは、まさしくターボ化により得られたものに違いなく、それはもう目の覚めるような強烈な速さだ。

 回転の上昇に従ってドラマチックに音色が変化していく特有の乾いた咆哮も、非常に味わい深い。これを聴きたいがために、思わずアクセルを深く踏み込んでしまいがちになる。アストンマーティンというブランドにおいて、スタイリングはもちろんのこと、このサウンドと速さをもたらすエンジンもまた主役級の役を演じていることを痛感する。

 それでいて、時代に合わせて片バンクを休止する気筒休止機構を備えているが、いつ切り替わったのかまったく意識できないのも大したものだ。

アグレッシブながら上品に

 最新世代の軽量接着固定アルミニウム構造の発展進化版となるシャシーは、フロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクのサスペンションに、最新世代のアダプティブ・ダンピングシステムが組み合わされる。

 アクティブサスペンション的な理論に基づくスカイフックテクノロジーを導入したという先進的なダンパーや、相当に注力したというエアロダイナミクスの効果もあってかフラットライド感が高く、試乗時はかなりのウェットコンディションだったにもかかわらず接地性にも優れるおかげで、こうした性格のクルマながら安心して走ることができたのも印象的だった。

 スーパーレッジェーラとはいえ、それなりに車両重量はあるものの、それを感じせないハンドリングは正確性にも優れ、大柄ながら隅々まで神経が行き届くかのような一体感もあり、先の動きも読みやすい。おそらくサーキットで全開で走らせるとさぞかし楽しいことだろう、と感じさせるものがあった。

 むろんシチュエーションや好みに合わせてダイナミックモードを選択して乗り味をある程度は任意に変えることもできる。現代的に洗練された高級グランドツアラーとしての趣きを備えながらも、ときにはスーパースポーツのようなアグレッシブさを、あくまで上品に味わわせるのがアストンマーティン流で、DBS スーパーレッジェーラならではの境地である。

 世界の列強が性能やデザインを競い合うなか、アストンマーティンが業績を伸ばし続けているのは、他では得られない独特の世界観に共感するセレブリティがそれだけ多いということにほかならない。今回のアストンマーティン史上最もパワフルなフラグシップモデルも、とにかく全身が特別感のカタマリのような存在であり、非常に印象的な1台であった。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛