レビュー
【ナビレビュー】カロッツェリアの最新「楽ナビ 2023年モデル」フローティングタイプを試す! オンライン対応などその魅力を解説
2023年9月6日 09:30
2つのラインアップを持つパイオニアの市販カーナビ。1つはいわゆるハイエンドモデルとなる「サイバーナビ」、もう1つはベーシックモデルに位置付けられる「楽ナビ」だ。
楽ナビがデビューしたのは1998年。当時、年々高性能化とともに製品価格が上昇し、高機能化により操作が複雑になっていったこともあり、「高性能を使いやすく、より多くのお客さまにナビのよさを体験してもらいたい」をコンセプトに誕生したのだ。以来、求められる機能の変化や市場動向に応じたモデルチェンジを実施しつつ、同社のボリュームゾーンを担うモデルとして着実に進化を遂げてきている。
この1月に発表された2023年モデルは、25周年を迎える楽ナビの集大成ともいえるもの。一番大きなトピックといえるのが、オンライン化に対応したこと。いち早く(2019年)対応したサイバーナビに続き車載用Wi-Fiルーター、ディスプレイオーディオ、ディスプレイを持たないドライビングパートナー「NP1」と、オンライン化を果たしてきたが、その波がついに楽ナビにも到達したことになる。
今回ラインアップされたのはなんと15モデル。ディスプレイサイズが7V、8V、9V型と3サイズから選択可能なほか、ここ数年のトレンドとなっているフローティングタイプも用意されている。今回、レビュー用にピックアップしたのは「AVIC-RF920-DC」。9V型ディスプレイを採用したフローティングタイプで、通信用のネットワークスティックも同梱されているモデルだ。
手軽に大画面ナビが装着できるフローティングタイプ
まずはフローティングタイプとはなんぞや、というところから。一般的に乗用車にはAV機器などを装着するためにDINスペースが用意されている。1DINのサイズは180×50mm(幅×高さ)で、今はこれが縦に2つ並んでいる(2DIN)タイプが多い。このスペースに収まるディスプレイのサイズが7V型までということで、長らくこれがカーナビの標準サイズとなっていた。その後、カーオーディオメーカーなどはDINサイズの開口部分を拡大するために車種専用のパネルを用意することで、インパネ内に8V型を超える大画面を収めることに対応。
ただ、当然ながら余分にコストが必要になってしまうし、DINスペース周辺に余裕が必要なことから対応可能な車種は限られてしまっていた。で、もっと多くの車種に大画面ナビを装着できるようにしよう、と考えられたのがフローティングタイプだ。カーナビ本体は2DINサイズのままで、ディスプレイをインパネから離して装着することで、車種別専用フィッティングなどを使わずとも大画面への対応が可能になったのだ。もちろん、インパネ周辺の形状によっては装着できない場合があるものの、楽ナビの場合は上下、左右、前後(奥行き)、さらに角度まで調整幅を持たせており、548車種以上に適合するというから驚く(2022年12月現在)。
また、装着性のよさだけでなく画面が物理的にドライバーに近づくというのもフローティングタイプのメリット。画面やボタンが近くなることで操作がしやすくなるのはもちろん、画面サイズが見かけ上大きくなるため地図が見やすくなったり、映像の迫力がアップしたりするのも侮れない部分だ。
一方、メリットばかりではなくデメリットもある。一番大きいのはディスプレイ部を本体から離すことで振動しやすくなってしまうこと。「少しぐらい振動してもいいじゃん」なんて思うかもしれないけれど、常にドライバーの視線に入る場所にあるだけに、グラグラとまではいかないブルブル程度でも結構気になるもの。
そのうえ、走行中ずっと振動していては故障やトラブルの遠因にもなりかねない。インパネ内蔵タイプなら周囲のパネルを使って「面」で抑えこむことができるけれど、「脚」でディスプレイを支えるフローティングタイプではそれが不可能なため、いかに振動を抑え込むかがフローティングタイプのキモになってくる。このモデルは脚部分の剛性を高めることで、走行中でもビシッと安定していて振動をほとんど感じさせない。大画面の恩恵だけを受けられるってわけだ。
オンラインによる便利さを身近に
長々とフローティングの話をしたけれど、新型で一番のトピックとなるのはオンライン対応という部分。このモデルはネットワークスティックと呼ばれる通信端末が同梱されており、それを楽ナビと接続するだけで簡単に楽ナビを常時オンライン状態にすることができる。それによりこのあと説明するさまざまなオンライン機能(自動地図更新やオンライン検索など)が追加費用なしで利用することが可能となる。
そのうえ、「docomo in Car Connect」に追加で申し込みを行なえば、楽ナビを車内Wi-Fiスポットとして利用することも可能で、映像や音楽のストリーミングサービス、携帯ゲーム機などを接続すればネットワークゲームも楽しめる。車内Wi-Fiについては走行中や一部の停車中に限られるなど制限はあるものの、通信容量制限なし、通信データ量超過による速度制限なしと、まさに使い放題なのだから驚く。このdocomo in Car Connectは「1日」「1か月」「1年」と3つのプランが用意されており、費用は順に550円、1650円、1万3200円となっている。車内Wi-Fiスポットのオンライン機能については手持ちのスマートフォンのテザリングやWi-Fiルーターを接続しての利用も可能。ネットワークスティック同梱モデル以外でも通信機能を活用できるから、コストを抑えたいなんて人でも問題なし。もっとも、ネットワークスティックをつないでおくだけで済む方が、手間いらずなのは間違いない。クルマを利用する頻度が多いなら、このサービスを利用するのが間違いなくオトクといえる。
もう1つ、ネットワークスティックをつなぐだけで利用できる機能で大きいのが地図の「鮮度」を保つことができる点。車載専用カーナビの場合、地図データの収録からカーナビの発売までは最短でも1年程度が必要となるため、道路やスポットなど収録されている情報がどうしても古くなってしまう。通信機能をもつこのモデルならサーバーにアクセスすることで最新のスポットの情報を検索できるし、地図だって自動的に更新してくれる。従来のカーナビで必要だったPCやSDカードを使ってのアップデートなんて必要ないわけだ。
ちなみに今回発売された楽ナビのネットワークスティック同梱モデルは最大3年分、それ以外は最大1年分の自動地図更新が付与されている。また、カーナビ性能を飛躍的に高めてくれる機能「スマートループ渋滞情報」も利用可能だ。VICSなど一般的な渋滞情報が道路上のセンサーなどにより収集されたデータなのに対し、こちらは対応カーナビなどユーザーによりアップロードされたプローブ情報を活用することで、約70万kmにおよぶ全国の情報を網羅。よりスムーズに目的地を目指すことが可能なのだ。そのほか、サイバーナビにも採用されていた「ガススタ価格情報」「駐車場満空情報」「ウェザーライブ」なども利用できる。このように、ネットワークを活用したさまざまな機能が充実したことにより、楽ナビはさらに便利に使いやすいモデルとなった。
ナビゲーションはレスポンスよくストレスフリーの操作感
冒頭にも書いたように、楽ナビは「高性能を使いやすく」をテーマにしたベーシックモデル。上位モデルとしてサイバーナビが存在するからこその立ち位置になる。新型においてもその点は継承されており、シンプル操作でナビ機能を利用できる「Doメニュー」が用意されているほか、サイバーナビから一部機能を省くことで操作系の簡略化を図っている。
ただ、だからといって「機能を省いてお安くしました!」なんて方向にいかないのはパイオニアらしいところで、ルート案内においては専用の交差点案内が用意されているほか、方面案内看板や走行レーン表示といった基本的な部分もしっかりしており、カーナビという芯の部分はぶれていない印象だ。
基本機能をきっちり抑えたうえで、今回はナビの心臓部ともいえるSoCを強化。スクロールや縮尺変更といった地図表示はもちろん目的地検索、ルート探索など、あらゆる操作がサクサクなのだ。大きく地図の場所を移動したり縮尺を変えたりしても、すぐに地図が表示されるのはストレスを感じさせず、とても快適。一時期、市販カーナビは機能アップや低価格化に伴ってこうした基本性能のパフォーマンスアップが停滞していた感があるけれど、ここ数年は右肩上がりで良くなっている印象だ。このモデルはその大本命といったところで、まさに最新型ならではの恩恵が受けられる。
そのうえ、新型はすべてのモデルがIPS方式のHD(1280×720ピクセル)パネルを採用しており、キレイな地図画面をこれだけスムーズに扱えるのは、正直サイバーナビより快適で満足度はすこぶる高い。もちろん、サイバーナビならではの高性能、多機能を重視するならばこの限りではないのは当然。
その立ち位置ゆえ、目的地検索の項目はシンプルに仕上がっている。とはいえ、一般的な住所や電話番号、周辺検索といった基本的なモノは用意されているし、通信機能を使えば新しいスポットの検索もOK。とくに周辺検索では駐車場やガソリンスタンド、ファミリーレストランなどでは営業時間内、時間外が分かるように表示してくれるなど、カーナビならではの親切機能もしっかり継承。
目的地までのルート探索は「より早く」「より快適」に着くルートをチョイス。「所要時間」「距離」「料金」を組み合わせて「推奨」「距離優先」「幹線優先」など最大6本のルートを提示してくれる。レビュー時に毎回試しているいくつかの目的地を設定して試してみたところ、以前のモデルだとすべてのルートを探索するまでに少し待たされる印象があったけれど新型はここでも爆速。本当にあっという間にすべてのリストを用意してくれる。
加えて過去の渋滞データはもちろん、スマートループ渋滞情報も加味したルートを示してくれるから、ルート品質という意味でもハイレベルだ。従来モデルと変わったところはといえば、若干ルートチョイスのアルゴリズムに変更があったようで、特におすすめでは「できるだけ最短ルート」だったのが、「幹線優先」にウエイトが置かれるようになった印象を受けた。まぁ、このあたりは当日の道路状況によっても変わってくるので確実とは言えないけれど。
パイオニア製カーナビならではの高い自車位置精度は新型でも健在だ。ビル街を走ろうが、高速高架下を走ろうが、トンネルを走ろうが、地下駐車場だろうが自車位置はビシッと安定。交差点では新たに採用された「信号機カウント交差点案内」や従来通りの「交差点拡大図」で分かりやすく案内してくれるし、高速の入口や分岐、料金所などもしっかりと教えてくれるので安心感満点。初心者キラー的な分かりにくい出入口やジャンクションの構造をしている首都高速などの都市高速でも、この精度の高さと分かりやすい案内のおかげでスムーズに走ることができるのは間違いなし。このすごさは「あまりクルマに乗らないからスマホナビで十分」なんて思っている人にこそ、ぜひ体験してほしいところ。
また、パイオニア製カーナビならではの機能として、自車だけでなくスマートループユーザーからも情報を得て駐車場入口を記録する「オートパーキングメモリー」なんて機能も。テーマパークやショッピングモールなど広い敷地に複数の駐車場があるなんて場合でも、駐車場入口を探して右往左往なんてことをしなくてもすむのだ。
上位モデル譲りのハイスペックを実現
AV機能においてはこのフローティングモデルは少しばかり対応が異なっている。というのも、DVD/CDプレーヤーを搭載しない、いわゆる「メカレス」なのだ。こうしたモデルは最近少しずつ増えてきており、その背景には映像配信サービスの利用増加がある。とくにdocomo in Car Connectを利用するなら通信費用を気にすることなく映像のオンデマンドサービスを利用することが可能。わざわざ自前でメディアを用意する必要ナシ、ってわけだ。
ただ、それ以外、地デジやBluetoothオーディオ、USBメモリーやSDカードに記録した映像や音楽データ再生、もちろんUSB接続によるiPhone/iPodの楽曲にも対応する。こうしたソースを再生するハードウェアにもサイバーナビ譲りの高音質パーツが投入されているほか、ひと昔前には上級モデルにしか用意されていなかったタイムアライメント機能などよりよいサウンドを楽しむための数々のチューニング機能も用意されている。また、HDMI出力が用意されているため、オプションのフリップダウンモニターやプライベートモニターなどを接続すれば、リアシートでもナビで再生しているソースの映像が楽しめる。
最近では必須となりつつあるドライブレコーダーは、オプションとして前後2カメラタイプのドライブレコーダーユニット「VREC-DS810DC」(オープン価格)を用意。フルHD対応の画質の良さはもちろんナビ画面上で再生や設定ができるため使い勝手も上々だ。
ハイスペックを身近に楽しめる万能モデル
スマホやディスプレイオーディオの台頭で肩身が狭くなりつつあるカーナビ専用機。だが、そんな状況をひっくり返すゲームチェンジャーとして期待できるのが、この新型「楽ナビ」だ。上位機種であるサイバーナビほどさまざまな機能を持たないとはいえ、地図表示や検索などのレスポンスではるかにそれを上まわり、通信機能により鮮度の高い情報の取得が可能。そしてカーナビ専用機ならではの高精度を実現と、ナビゲーションとしての基本性能はすこぶる高い。普段、クルマに乗っている人には操作性の良さや渋滞対応力の高さといったあたり、週末中心なんて人にも精度の高さや親切な案内といった部分ではとくに好印象を受けるはず。
加えて、ドライブレコーダーとの連携やリアモニター接続などにも対応するなど、ユーザーの使い方に合わせたシステムアップも可能となっている。この新型楽ナビは専用機ならではのパフォーマンスをリーズナブルに味わえるモデルといって間違いない。