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趣味としてモータースポーツを楽しむ人にピッタリなレーシングギア選びとは? 現役SUPER GTドライバーに聞いてみた
世界で愛用されているアルパインスターズには幅広いユーザーをカバーするラインアップがあった
- 提供:
- SPK株式会社
2023年3月31日 00:00
趣味の多様化が進むなか、クルマの世界でもモータースポーツを趣味とする人が増えていて、週末のサーキットなどクローズドコースでは、趣味の走行会イベントが数多く開催されている。
モータースポーツが市民権を得たことについては、従来からモータースポーツに携わっていた人達が積み上げてきた魅力が世に知れたことのほか、自動車メーカーや自動車部品メーカー、販売会社などもモータースポーツを後押ししはじめたのが大きな転機。
一般ドライバーに近い立場の企業が、率先して走りを楽しむ場を提供してくれるようになり、モータースポーツを始める敷居はグッと下がったのだ。また、モータースポーツは年齢や性別、身体能力にあまり左右されないスポーツであるため、幅広い層から参入しやすいというのも大きな特徴である。
レーシングギアで世界的なブランドといえばアルパインスターズ
モータースポーツを始めるうえで大事なことは「安全」を重視するということ。つまり整備と準備はキチンと行なったうえで走る、無理はしても無茶はしない、まわりをよく見て他車の動きにも気を配るなどいろいろあるが、本稿ではレーシングスーツなどドライバーの装備を揃えることを紹介していきたい。
レーシングドライバーが必ず着用しているレーシングスーツを作るメーカーは世界中にあるが、そのなかでもイタリアのアルパインスターズはとくに有名な存在になっている。
アルパインスターズ製品は「F1」「ル・マン24時間耐久レース」「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」「インディ500」「SUPER GT」などなど、世界中のトップカテゴリーのレースに参加するドライバーが好んで着用する一流品だけに、アマチュアドライバーにも愛用者が多く、それは日本も同様。そして日本では、モビリティビジネスのグローバル商社である、SPKが日本総輸入元となっているので、入手しやすくサポート体制も整っている。
SUBARU BRZ GT300をドライブする井口選手と山内選手に聞くアルパインスターズの印象
アルパインスターズ製品は世界のトップドライバー達が選ぶギアなので、レーシングギアとしての最先端技術が盛り込まれたハイスペックなものだ。それを趣味で走るドライバーが使用するのは、いささかオーバーではないかと思うこともあるだろうがそれは違う。
趣味としてクルマを楽しむ人の中には、メカニズムや最新技術に対しても興味を持っている人もいると思うが、レーシングギアの世界の「最先端を身に付ける」のも同様に、趣味として深くて楽しいことだと思う。
そこでSUPER GT GT300クラス 61号車「SUBARU BRZ GT300」をドライブする井口卓人選手と山内英輝選手に、それぞれが愛用するアルパインスターズギアの印象を聞いてみたので、そのコメントを紹介していこう。
体力と集中力をキープするためには通気性のよさが大事
まずは通気性のよさについて。井口選手は「ツーリングカーでは冷却水を通して冷やすクーラーのような装備もありますが、それでも車内の温度も高くなります。その状況ではレーシングスーツに風が通ることで身体が感じる涼しさは大きく変わりますし、身体から出る熱がレーシングスーツ内にこもらないのも通気性がいいスーツの利点です」と答えてくれた。
市販車はエアコンが装備されているが、スポーツ走行中はクルマのパフォーマンスを発揮させることからエアコンはオフにするのが定石なので、スポーツ走行中の車内が「暑い」のはレースで走る車両と同じだ。
そして暑さは体力を奪い集中力も低下させるので、プロドライバーのように日頃から鍛えていない一般的なドライバーであっても、スーツの通気性がいいことは多いにメリットがあると言えるだろう。
ちなみにプロドライバーが着るスーツには各種のスポンサーロゴがあしらわれているが、井口選手と山内選手が着用するスーツは、刺繍ワッペンではなく、スーツの生地自体に色を付ける昇華プリントを用いてロゴを印刷しているので、多くのロゴが入るデザインでも、アルパインスターズのスーツの利点である通気性のよさはスポイルされないという。
フィットしつつ、身体の動きを損なわないストレッチ感が欲しい
井口選手、山内選手はともにフルオーダーモデルを着用している。チームデザインを施したり、たくさんのスポンサーロゴが入ったりすることもオーダーモデルにする理由の1つだが、それ以上に重視してるのがドライバーの体形にフィットさせるためである。
言うまでもないが、レーシングドライバーは全神経を集中してクルマを繊細にドライブしているので、手足が「動きやすい」ということをかなり重視している。
そのためアルパインスターズのスーツはシートに座った状態で最も身体にフィットする裁断になっていて、さらに腕や腰、股といった部分にはストレッチ素材を使うことでドライブ中の身体の動きをスポイルしない作りとしている。
井口選手からは「街乗りではあまり意識する部分ではないと思いますが、クルマを速く走らせようと思ったときは繊細で確実な操作をするため、設計やストレッチ性がよく、手足が動かしやすいことがとても大事です。僕らが着ているフルオーダーモデルや上位モデルはもちろんのこと、アルパインスターズ製であれば手ごろな価格帯のスーツでもこうした面については満足できると思うので、いちばん最初に買うレーシングスーツとして選ぶのはいいと思います」と教えてくれた。
次に取り上げるのはグローブとシューズ。井口選手が最も気に入っているのは「滑り止め」の機能という。アルパインスターズのグローブには、手のひらにシリコングリップテクノロジーという技術を用いた滑り止め加工がされているが、井口選手が使用する「TECH-1 ZX V3 GLOVES」にはグローブ内側にもシリコングリップテクノロジーが使われている。そのためステアリングとグローブの密着度だけでなく、グローブと素手との密着度も高くなっている。そんなことから井口選手はこのグローブがとくに気に入っているということだった。
山内選手は、スーツに関しては井口選手と同じく通気性のよさと動きやすさを利点としてあげていた。そしてグローブとシューズでは、とくにシューズについての話に力が入った。
山内選手が使用するのは「TECH-1 Z V2シューズ(カラー/デザインは特注)」。このシューズはアッパー素材に軽くて柔らかいカンガルー皮を使用しているので、足へのフィット感がとても高い。
それに加えて足の甲部だけでなく、甲から靴底にかけての横面(内、外とも)が甲部と同様に締めつけできるアルパインスターズ独自の「ワイヤークロージャーシステム」もあり、さらに靴底の固さ、厚みも山内選手の好みにピッタリなので、シューズと足の一体感はこれまで履いたどのシューズより印象がいいという。
そんなシューズだけに印象を伺うと「とても操作しやすいです。僕のドライビングでは、クルマの前後の動き、コーナリング時の荷重の掛け方はペダル操作で行なうので、シューズの性能は速さに直結します。そんなことから足にフィットしてくれるTECH-1 Z V2 SHOESのことはとても気に入っています」と語ってくれた。
趣味として楽しむモータースポーツでは、どのモデルを選べばいい?
ここからはアルパインスターズのラインアップから、趣味として楽しむレベルのモータースポーツで使用するのに適した製品を紹介していこう。まずはレーシングスーツから。
アルパインスターズには大きく分けて「オートレーシングスーツ」と「カートレーシングスーツ」の2つのラインアップがあるが、自動車で行なうモータースポーツでは「オートレーシングスーツ」を使用する。
そして「オートレーシングスーツ」のなかには男性向け・女性向けなど、さまざまなモデルが設定されている。その中でもこれからモータースポーツを始める方や走行会に参加する方にお勧めしたいのが「GP PRO COMP V2 SUIT」だ。最新の耐火ホモロゲーションである「FIA8856-2018公認」を取っているので公式レースに参加できるのはもちろん、ナンバー付き車両でのモータースポーツ参加に適した機能を持たせているのが特徴だ。
ポイントは通気性のよさと動きやすさ
GP PRO COMP V2 SUITは、軽量であり通気性にも優れた生地を使用したマルチレイヤースーツだ。
現代のレーシングスーツは以前より薄手になっているが、気温が高い時期の着用はやはり暑く、運転中も汗をかく。そんな状況では身体の熱の発散性がよく、風が当たったときにそれを身体で感じられる通気性のよさはまさに「あってよかった」の機能だ。暑い時期でも走りたいと考えている人は、ここの性能を重視したい。
次に形状。GP PRO COMP V2 SUITはアスリートレギュラーフィットなので、サイズ選びも比較的容易だ。
なお、ぴったり目に着ても、腕の付け根部分は伸縮性のある生地を使ったフルフローティングアームになっているので、ステアリングのロックtoロックまでの回転が多い市販車でも窮屈さは感じることはない。
さらに腰(背中側)と股にはストレッチメッシュパネルを使用しているので、下半身も動かしやすい。スポーツモデルのクルマや、スポーツシートに交換していたりロールケージを装備している場合は、スーツにストレッチ性があると乗り降りが非常に楽になる。
また、パドックを歩いて移動するときや、ピットやレストハウスで休憩用のイスに座るときなども、ストレッチ性があると便利に感じるはずだ。
レーシングスーツに盛り込まれている機能とは?
モータースポーツでは上級者、初心者問わずに「必ず」クラッシュへの備えをしなければならない。それがシートベルトでありヘルメットだが、クルマやタイヤの高性能化により、クラッシュ時のスピードが高くなる傾向もある。するとドライバーが受ける衝撃の強さも増すので、よりいっそうの対策をしておく必要がある。
そこで使われるのが頭部前傾抑制装置である「HANS(Head and Neck Support)」というアイテム。本体に加えて、ヘルメットに打ち込むアンカーと、そのアンカーとHANSをつなぐベルトで構成され、クラッシュ時に頭が前方へ大きく振られるのを防ぐ頭部の保護装置として機能するものだ。
そしてGP PRO COMP V2 SUITは、ちょうどHANSが被さる部分(左右の肩から胸)にシリコングリップテクノロジーと呼ぶ滑り止め加工をすることで、衝撃を受けたときでもHANSがずれることを抑制しているのだ。
また、シリコングリップテクノロジーは背中(腰の付近)にも入っているが、これはドライビング中に受けるGにより身体がシートからずれることを抑えるためのもの。スポーツ走行において「ドライバーの身体がシートからずれない」ことは、正確なドライビングをするうえでとても大事なことだけに、シートとの密着性を高めてくれるこの機能もとても有効なものといえる。
予算10万円で満足感の高いスーツが欲しいという人には
GP PRO COMP V2 SUITは優れたスーツだが、初めてレーシングスーツを買う場合は価格に躊躇してしまうこともある。そんなときに勧めたいモデルが「ATOM SUIT」だ。
ATOM SUITの利点は価格。9万7680円とグッと手ごろになる。それでいてFIA8856-2018公認。公式レースで使用できる本格的なレーシングスーツだ。
素材には優れた耐火性と難燃性を兼ね備えた100%アラミドのアウターシェルが使われていて、インナーは伸縮性のあるニット生地の2レイヤー構造。見た目も上位モデルに劣らないしっかりしたものなので、着たときにカッコよさもしっかり感じられる。カラーバリエーションが多いのもうれしいポイント。
ただし、上位モデルよりも生地が厚いので、熱がこもりやすいのとスーツ自体の重量は若干増える。とはいえ「GP COMP PRO V2 SUITと比べると」という話で、単体で持ったとき(着たとき)の差は約1kgと、実際に「重い」と感じることはまずない。
このようにGP PRO COMP V2 SUITより約6万円安価な分が、通気性や重量の差に表れたが、ストレッチ性については背中、ウエスト、股の部分にアラミドニットの伸縮性パネルを使用し、肩部分も伸縮性のあるニット生地を使用したフルフローティングアーム構造としているので、上位モデル同様に身体を動かしやすいもの。つまりレーシングスーツに欲しい基本性能は持っているので、こちらを選んでも満足感は十分に得られるだろう。
ATOM SUITのサイズ展開は46(Sサイズ)~54(XL)が標準設定。その他サイズは特注対応となっている。
シューズやグローブの選び方も重要
レーシングスーツ同様にシューズやグローブにもいくつかのモデルが用意されているので、これらのお勧めを紹介していこう。
記事の前半で紹介したレーシングドライバーの井口選手と山内選手のコメントでもシューズやグローブへのこだわりが強く出ていただけに、これらアイテムもモータースポーツにはとても重要ということが分かる。
レーシングシューズの特徴といえば足へのフィット感の高さと靴底が固く、ペダルを踏んだときの感覚が足裏に伝わりやすいところだ。
ラインアップは5つあるが、上位モデルであるSUPERMONO V2 SHOESとTECH-1 Z V2 SHOESは軽量を極めるために傷みやすい部分にプロテクターを入れていないのでそのぶん軽く、足へのフィット感も高いが、「ペダル操作特化型」なので「歩く」という動作への耐久性は追求しておらず、これらモデルは「運転するときだけ」履いて、車外に出たらすぐに別の靴に履き替えるという丁寧な扱いが求められる。
それに対してクルマを降りても履いていられる耐久性を持たせてあるモデルがTECH-1 T V3 SHOESと、新作のSP+ SHOES、そしてSP V2 SHOESだ。価格帯はTECH-1 T V3 SHOESが5万円台、SP+ SHOESが3万円台、SP V2 SHOESが3万円弱といったところで、どのモデルもFIA8856-2018公認だ。
TECH-1 T V3 SHOESは名前のとおり純レース用の上位2モデルの系統で、上位モデルが表革にカンガルーレザーを使っているのに対して牛革を使用。カンガルーレザーと比べると重くはなるが、革の耐久性は高い。また、プロテクターも入っている。本格的なシューズが欲しいけど、サーキットのパドックでも履いたまま過ごせる耐久性が欲しいならこのシューズがベストだろう。
また、TECH-1 T V3 SHOESには上位モデル同様、足を側面からも締めつけできる隠しループシステムを搭載している。固い靴底の特徴を生かすにはシューズ自体が足にフィットすることが必要なので、上部だけでなく側面からも締めつけできることはおおいにメリットがあることだろう。サイズはUS表記で7.0、7.5、8.5、9.0、10.0が標準設定。そのほかは特注となる。
以上が趣味のモータースポーツで使用したいアルパインスターズギアの紹介。登山やロードバイクなどにしても、臨むステージにあわせた装備を揃えることはそのスポーツを安全にそしてやり遂げるには必要なもの。モータースポーツもそれと同様であるから、本気で取り組もうと考えているならばぜひ、ステージにあったギアを揃えてほしい。そのほうがもっと楽しめるはずだ。
Photo:高橋 学/安田 剛/深田昌之