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趣味としてモータースポーツを楽しむ人にピッタリなレーシングギア選びとは? 現役SUPER GTドライバーに聞いてみた

世界で愛用されているアルパインスターズには幅広いユーザーをカバーするラインアップがあった

アルパインスターズのレーシングギアを着て国内最高峰の自動車レースSUPER GTに参戦している井口卓人選手(左)と山内英輝選手(右)

 趣味の多様化が進むなか、クルマの世界でもモータースポーツを趣味とする人が増えていて、週末のサーキットなどクローズドコースでは、趣味の走行会イベントが数多く開催されている。

 モータースポーツが市民権を得たことについては、従来からモータースポーツに携わっていた人達が積み上げてきた魅力が世に知れたことのほか、自動車メーカーや自動車部品メーカー、販売会社などもモータースポーツを後押ししはじめたのが大きな転機。

 一般ドライバーに近い立場の企業が、率先して走りを楽しむ場を提供してくれるようになり、モータースポーツを始める敷居はグッと下がったのだ。また、モータースポーツは年齢や性別、身体能力にあまり左右されないスポーツであるため、幅広い層から参入しやすいというのも大きな特徴である。

Car Watchでも「趣味として楽しむモータースポーツ」の取材を何度もしている。こちらは2023年2月に沖縄で開催された「D-SPORT&DAIHATSU Challenge Cup2023」の模様。1年を通して日本各地で開催している。ノーマルのクルマでも参加でき、クラス分けもあるので初心者のサーキットデビューに適したイベントの1つ

レーシングギアで世界的なブランドといえばアルパインスターズ

 モータースポーツを始めるうえで大事なことは「安全」を重視するということ。つまり整備と準備はキチンと行なったうえで走る、無理はしても無茶はしない、まわりをよく見て他車の動きにも気を配るなどいろいろあるが、本稿ではレーシングスーツなどドライバーの装備を揃えることを紹介していきたい。

 レーシングドライバーが必ず着用しているレーシングスーツを作るメーカーは世界中にあるが、そのなかでもイタリアのアルパインスターズはとくに有名な存在になっている。

 アルパインスターズ製品は「F1」「ル・マン24時間耐久レース」「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」「インディ500」「SUPER GT」などなど、世界中のトップカテゴリーのレースに参加するドライバーが好んで着用する一流品だけに、アマチュアドライバーにも愛用者が多く、それは日本も同様。そして日本では、モビリティビジネスのグローバル商社である、SPKが日本総輸入元となっているので、入手しやすくサポート体制も整っている。

日本のレース界でも愛用者が多い。SUPER GT GT500クラスの38号車 ZENT CERUMO GR Supraをドライブする立川祐路選手(左)と石浦宏明選手(右)も、アルパインスターズ製のスーツ、インナー、グローブ、シューズを愛用しているレーシングドライバーの1人
ZENT CERUMO GR Supraをドライブする立川祐路選手
ZENT CERUMO GR Supraをドライブする石浦宏明選手

SUBARU BRZ GT300をドライブする井口選手と山内選手に聞くアルパインスターズの印象

 アルパインスターズ製品は世界のトップドライバー達が選ぶギアなので、レーシングギアとしての最先端技術が盛り込まれたハイスペックなものだ。それを趣味で走るドライバーが使用するのは、いささかオーバーではないかと思うこともあるだろうがそれは違う。

 趣味としてクルマを楽しむ人の中には、メカニズムや最新技術に対しても興味を持っている人もいると思うが、レーシングギアの世界の「最先端を身に付ける」のも同様に、趣味として深くて楽しいことだと思う。

 そこでSUPER GT GT300クラス 61号車「SUBARU BRZ GT300」をドライブする井口卓人選手と山内英輝選手に、それぞれが愛用するアルパインスターズギアの印象を聞いてみたので、そのコメントを紹介していこう。

SUPER GT GT300クラス 61号車「SUBARU BRZ GT300」をドライブする井口卓人選手(左)と山内英輝選手(右)

体力と集中力をキープするためには通気性のよさが大事

 まずは通気性のよさについて。井口選手は「ツーリングカーでは冷却水を通して冷やすクーラーのような装備もありますが、それでも車内の温度も高くなります。その状況ではレーシングスーツに風が通ることで身体が感じる涼しさは大きく変わりますし、身体から出る熱がレーシングスーツ内にこもらないのも通気性がいいスーツの利点です」と答えてくれた。

 市販車はエアコンが装備されているが、スポーツ走行中はクルマのパフォーマンスを発揮させることからエアコンはオフにするのが定石なので、スポーツ走行中の車内が「暑い」のはレースで走る車両と同じだ。

 そして暑さは体力を奪い集中力も低下させるので、プロドライバーのように日頃から鍛えていない一般的なドライバーであっても、スーツの通気性がいいことは多いにメリットがあると言えるだろう。

 ちなみにプロドライバーが着るスーツには各種のスポンサーロゴがあしらわれているが、井口選手と山内選手が着用するスーツは、刺繍ワッペンではなく、スーツの生地自体に色を付ける昇華プリントを用いてロゴを印刷しているので、多くのロゴが入るデザインでも、アルパインスターズのスーツの利点である通気性のよさはスポイルされないという。

フィットしつつ、身体の動きを損なわないストレッチ感が欲しい

 井口選手、山内選手はともにフルオーダーモデルを着用している。チームデザインを施したり、たくさんのスポンサーロゴが入ったりすることもオーダーモデルにする理由の1つだが、それ以上に重視してるのがドライバーの体形にフィットさせるためである。

 言うまでもないが、レーシングドライバーは全神経を集中してクルマを繊細にドライブしているので、手足が「動きやすい」ということをかなり重視している。

 そのためアルパインスターズのスーツはシートに座った状態で最も身体にフィットする裁断になっていて、さらに腕や腰、股といった部分にはストレッチ素材を使うことでドライブ中の身体の動きをスポイルしない作りとしている。

 井口選手からは「街乗りではあまり意識する部分ではないと思いますが、クルマを速く走らせようと思ったときは繊細で確実な操作をするため、設計やストレッチ性がよく、手足が動かしやすいことがとても大事です。僕らが着ているフルオーダーモデルや上位モデルはもちろんのこと、アルパインスターズ製であれば手ごろな価格帯のスーツでもこうした面については満足できると思うので、いちばん最初に買うレーシングスーツとして選ぶのはいいと思います」と教えてくれた。

井口卓人選手が着用するのはアルパインスターズのフルオーダーモデル。通気性、伸縮性がよくドライブしやすいという
山内英輝選手も同様にフルオーダースーツを着る。ロゴ等は生地に色付ける昇華プリントで入れているので、生地の特性を損なうことはない。これだけデザインされていても通気性はいいそうだ

 次に取り上げるのはグローブとシューズ。井口選手が最も気に入っているのは「滑り止め」の機能という。アルパインスターズのグローブには、手のひらにシリコングリップテクノロジーという技術を用いた滑り止め加工がされているが、井口選手が使用する「TECH-1 ZX V3 GLOVES」にはグローブ内側にもシリコングリップテクノロジーが使われている。そのためステアリングとグローブの密着度だけでなく、グローブと素手との密着度も高くなっている。そんなことから井口選手はこのグローブがとくに気に入っているということだった。

井口選手が使うグローブ「TECH-1 ZX V3 GLOVES」。グローブの内側にも滑り止め加工があるのでステアリング操作に違和感がまったくないという

 山内選手は、スーツに関しては井口選手と同じく通気性のよさと動きやすさを利点としてあげていた。そしてグローブとシューズでは、とくにシューズについての話に力が入った。

 山内選手が使用するのは「TECH-1 Z V2シューズ(カラー/デザインは特注)」。このシューズはアッパー素材に軽くて柔らかいカンガルー皮を使用しているので、足へのフィット感がとても高い。

 それに加えて足の甲部だけでなく、甲から靴底にかけての横面(内、外とも)が甲部と同様に締めつけできるアルパインスターズ独自の「ワイヤークロージャーシステム」もあり、さらに靴底の固さ、厚みも山内選手の好みにピッタリなので、シューズと足の一体感はこれまで履いたどのシューズより印象がいいという。

 そんなシューズだけに印象を伺うと「とても操作しやすいです。僕のドライビングでは、クルマの前後の動き、コーナリング時の荷重の掛け方はペダル操作で行なうので、シューズの性能は速さに直結します。そんなことから足にフィットしてくれるTECH-1 Z V2 SHOESのことはとても気に入っています」と語ってくれた。

岡山国際サーキットで行なわれた公式テスト時に山内選手が履いていた「TECH-1 Z V2シューズ(カラー/デザインは特注)」。「クルマは足で操作する」と表現するくらい、足さばきに気を使う山内選手が絶賛するシューズだ
こちらは井口選手のシューズ。レーシングシューズではサイズ選びも大事で井口選手からは「あまりぴったりすぎると足の細かい動きが制限されたりします。また、きつめのサイズのものを長時間履いていると指先がしびれたり、痛みが出たりすることでドライビングの妨げになるため、足先は余裕を持たせたほうがいいです」とのことだった

趣味として楽しむモータースポーツでは、どのモデルを選べばいい?

 ここからはアルパインスターズのラインアップから、趣味として楽しむレベルのモータースポーツで使用するのに適した製品を紹介していこう。まずはレーシングスーツから。

 アルパインスターズには大きく分けて「オートレーシングスーツ」と「カートレーシングスーツ」の2つのラインアップがあるが、自動車で行なうモータースポーツでは「オートレーシングスーツ」を使用する。

 そして「オートレーシングスーツ」のなかには男性向け・女性向けなど、さまざまなモデルが設定されている。その中でもこれからモータースポーツを始める方や走行会に参加する方にお勧めしたいのが「GP PRO COMP V2 SUIT」だ。最新の耐火ホモロゲーションである「FIA8856-2018公認」を取っているので公式レースに参加できるのはもちろん、ナンバー付き車両でのモータースポーツ参加に適した機能を持たせているのが特徴だ。

こちらがGP PRO COMP V2 SUIT。FIA公認モデルで価格は16万2800円。カラーはASPHALT RED WHITE(9122)。フィット感はアスリートレギュラーフィットなので通常体型に対応。サイズは46、48、50、52、54(S、M、L、XL相当)がレギュラーのラインアップで44(XS相当)や56以上(XXL以上)は特注で対応
GP PRO COMP V2 SUIT。カラーはBLACK ASPHALT ORANGE FLUO(1204)
GP PRO COMP V2 SUIT。カラーはSILVER BLUE ASPHALT BLACK(1904)
GP PRO COMP V2 SUIT。カラーはBLACK ASPHALT WHITE(1128)
GP PRO COMP V2 SUIT。カラーはNAVY BLACK RED(7130)
GP PRO COMP V2 SUIT。カラーはASPHALT CYAN WHITE(9172)

ポイントは通気性のよさと動きやすさ

 GP PRO COMP V2 SUITは、軽量であり通気性にも優れた生地を使用したマルチレイヤースーツだ。

 現代のレーシングスーツは以前より薄手になっているが、気温が高い時期の着用はやはり暑く、運転中も汗をかく。そんな状況では身体の熱の発散性がよく、風が当たったときにそれを身体で感じられる通気性のよさはまさに「あってよかった」の機能だ。暑い時期でも走りたいと考えている人は、ここの性能を重視したい。

 次に形状。GP PRO COMP V2 SUITはアスリートレギュラーフィットなので、サイズ選びも比較的容易だ。

 なお、ぴったり目に着ても、腕の付け根部分は伸縮性のある生地を使ったフルフローティングアームになっているので、ステアリングのロックtoロックまでの回転が多い市販車でも窮屈さは感じることはない。

 さらに腰(背中側)と股にはストレッチメッシュパネルを使用しているので、下半身も動かしやすい。スポーツモデルのクルマや、スポーツシートに交換していたりロールケージを装備している場合は、スーツにストレッチ性があると乗り降りが非常に楽になる。

 また、パドックを歩いて移動するときや、ピットやレストハウスで休憩用のイスに座るときなども、ストレッチ性があると便利に感じるはずだ。

フルフローティングアームを採用。ぴったりフィットするサイズを着ても腕の動きが規制されない
股にはF1用スーツ由来のストレッチメッシュパネルを採用。クルマの乗り降りでも突っぱらない。また、スーツを着用したままパドックで過ごすにも便利な機能
腰にも同様のストレッチメッシュパネルを採用。上半身をひねったり前倒しにするなど大きな動作もしやすい

レーシングスーツに盛り込まれている機能とは?

 モータースポーツでは上級者、初心者問わずに「必ず」クラッシュへの備えをしなければならない。それがシートベルトでありヘルメットだが、クルマやタイヤの高性能化により、クラッシュ時のスピードが高くなる傾向もある。するとドライバーが受ける衝撃の強さも増すので、よりいっそうの対策をしておく必要がある。

 そこで使われるのが頭部前傾抑制装置である「HANS(Head and Neck Support)」というアイテム。本体に加えて、ヘルメットに打ち込むアンカーと、そのアンカーとHANSをつなぐベルトで構成され、クラッシュ時に頭が前方へ大きく振られるのを防ぐ頭部の保護装置として機能するものだ。

 そしてGP PRO COMP V2 SUITは、ちょうどHANSが被さる部分(左右の肩から胸)にシリコングリップテクノロジーと呼ぶ滑り止め加工をすることで、衝撃を受けたときでもHANSがずれることを抑制しているのだ。

 また、シリコングリップテクノロジーは背中(腰の付近)にも入っているが、これはドライビング中に受けるGにより身体がシートからずれることを抑えるためのもの。スポーツ走行において「ドライバーの身体がシートからずれない」ことは、正確なドライビングをするうえでとても大事なことだけに、シートとの密着性を高めてくれるこの機能もとても有効なものといえる。

肩の部分にある縦筋がシリコングリップテクノロジー。HANSが被さる部分になる。この装備があることでHANSがずれることを防ぐ
肩から背中にかけてもシリコングリップテクノロジーが入っている。襟には現行の耐火性規格であるFIA8856-2018公認の表記が入る
背中(腰あたり)の赤い部分もシリコングリップテクノロジーが装備される。こちらはシートとのずれることを防ぐため目的
無線ケーブルなどを通すことができる開口部。左胸下に設けてある
開口部の内側。開口部は広めに取ってあるのでドライブ中に身体が動いてもホース類が引っ張られにくい
ショルダーグリップにはアルパインスターズのロゴが刺繍で入っていて高級感もある
こちらは軽量化にこだわった上位モデルのGP TECH V3 SUIT。同じくロゴマークが入るが刺繍より軽量なプリントとしている。また、腰ベルトも省略されるなど徹底的だ
アルパインスターズのスーツは袖口、足の裾ともにリブ編みになっている。この形状は着用時にダブついたりずり上がったりしにくいのが利点。とくに足の裾はペダル操作のジャマにならないので、リブ編みを好むドライバーは多いという
GP PRO COMP V2 SUITは縦のラインで色を変えるデザインで、センター部に主要色を広めに配置。そしてサイドに色を変えたラインを入れることでスラッと見えるデザイン。そこに腰ベルトを締めるとよりスタイリッシュなイメージになる
GP PRO COMP V2 SUITには両サイドにポケットもある。走行会では1日中スーツを着ていることが多いのでポケットがあるのは便利
女性向けモデル「STELLA GP PRO COMP V2 SUIT」。FIA8856-2018公認。女性の身体の特徴に合わせて腕、ウエスト、足などの形状を設計していて、着用した際に綺麗なシルエットになるようにデザインされている。価格は15万7300円。カラーはBLACK TURQUOISE WHITE(1721)
形状はアスリートレギュラーフィット。サイズは36(XXS)~40(XS)が標準設定で、36は日本限定発売(1721カラーのみ設定)。42(S)以上は特注対応、こちらのカラーはBLACK PURPLE WHITE(1232)
女性向けモデル「STELLA GP PRO COMP V2 SUIT」を着用するD-SPORT Racing Teamの上原あずみ選手(左)と槻島もも選手(右)

予算10万円で満足感の高いスーツが欲しいという人には

 GP PRO COMP V2 SUITは優れたスーツだが、初めてレーシングスーツを買う場合は価格に躊躇してしまうこともある。そんなときに勧めたいモデルが「ATOM SUIT」だ。

 ATOM SUITの利点は価格。9万7680円とグッと手ごろになる。それでいてFIA8856-2018公認。公式レースで使用できる本格的なレーシングスーツだ。

 素材には優れた耐火性と難燃性を兼ね備えた100%アラミドのアウターシェルが使われていて、インナーは伸縮性のあるニット生地の2レイヤー構造。見た目も上位モデルに劣らないしっかりしたものなので、着たときにカッコよさもしっかり感じられる。カラーバリエーションが多いのもうれしいポイント。

 ただし、上位モデルよりも生地が厚いので、熱がこもりやすいのとスーツ自体の重量は若干増える。とはいえ「GP COMP PRO V2 SUITと比べると」という話で、単体で持ったとき(着たとき)の差は約1kgと、実際に「重い」と感じることはまずない。

 このようにGP PRO COMP V2 SUITより約6万円安価な分が、通気性や重量の差に表れたが、ストレッチ性については背中、ウエスト、股の部分にアラミドニットの伸縮性パネルを使用し、肩部分も伸縮性のあるニット生地を使用したフルフローティングアーム構造としているので、上位モデル同様に身体を動かしやすいもの。つまりレーシングスーツに欲しい基本性能は持っているので、こちらを選んでも満足感は十分に得られるだろう。

 ATOM SUITのサイズ展開は46(Sサイズ)~54(XL)が標準設定。その他サイズは特注対応となっている。

ATOM SUITは価格9万7680円と10万円を切る値段で購入できる。耐火性規格はFIA8856-2018公認なので公式レースにも参加できる。構造は2レイヤー。各部にストレッチ性を高める構造を採用していて動きやすい。手ごろな価格とはいえアルパインスターズの製品だけに十分な性能を持つ。カラーバリエーションも多く、これはSILVER ANTHRACITE YELLOW FLUO(1950)
こちらはクールなイメージのBLACK SILVER(119)。レギュラーフィット
こちらのカラーはANTHRACITE RED BLACK(1436)。目立つ配色だ。レギュラーフィット
シンプルなBLACK(10)
今年からラインアップの加わったATOM SUIT GRAPHIC4。胸とショルダーにグラフィックをプリントしている、カラーはBLACK SILVER BLUE(1972)で価格は10万8680円。レギュラーフィット
ATOM SUITもFIA8856-2018公認モデル。公式レースに参加できるスペックだ
アウターは100%アラミド。インナーは伸縮性があり、通気性もいいニット素材の2レイヤースーツ
GP PRO COMP V2 SUITと比較すると重量があったり通気性が劣ったりするが、レーシングスーツとしての基本性能は高いので安心して着られるスーツであることは間違いない
腰ベルト付きなので締めることでフィット感も増すし、お腹まわりをスッキリ見せることもできる
背中、腰まわり、股にはアラミドニットの伸縮性パネルを使う
袖口、裾は操作のジャマになりにくいリブ編み。レーシングスーツとしての機能を優先させた作り
ポケットはベルト下左右にある。パドックにいるときスマホやキーなど入れておくところがあるのは便利
フロントジッパーは上からも下からも開けられるダブルジッパー

シューズやグローブの選び方も重要

 レーシングスーツ同様にシューズやグローブにもいくつかのモデルが用意されているので、これらのお勧めを紹介していこう。

 記事の前半で紹介したレーシングドライバーの井口選手と山内選手のコメントでもシューズやグローブへのこだわりが強く出ていただけに、これらアイテムもモータースポーツにはとても重要ということが分かる。

グローブのバリエーションはまたの機会に紹介する。いまは内側に滑り止め加工がされているが、上位モデルは手のひらが触れる面も滑り止め加工があるのでよりフィット感が高い
タッチパネル対応のモデルもある。スマホを計測器にしている場合はタッチパネル対応のモデルが必須。また、指先にはパドル操作用の滑り止め加工があるのも最新モデルの特徴

 レーシングシューズの特徴といえば足へのフィット感の高さと靴底が固く、ペダルを踏んだときの感覚が足裏に伝わりやすいところだ。

 ラインアップは5つあるが、上位モデルであるSUPERMONO V2 SHOESとTECH-1 Z V2 SHOESは軽量を極めるために傷みやすい部分にプロテクターを入れていないのでそのぶん軽く、足へのフィット感も高いが、「ペダル操作特化型」なので「歩く」という動作への耐久性は追求しておらず、これらモデルは「運転するときだけ」履いて、車外に出たらすぐに別の靴に履き替えるという丁寧な扱いが求められる。

井口選手、山内選手が履くシューズと同等の純レーシング向きのシューズがSUPERMONO V2 SHOESとTECH-1 Z V2 SHOES(写真はTECH-1 Z V2 SHOES)。軽量であり高いフィット感を持つ

 それに対してクルマを降りても履いていられる耐久性を持たせてあるモデルがTECH-1 T V3 SHOESと、新作のSP+ SHOES、そしてSP V2 SHOESだ。価格帯はTECH-1 T V3 SHOESが5万円台、SP+ SHOESが3万円台、SP V2 SHOESが3万円弱といったところで、どのモデルもFIA8856-2018公認だ。

上位モデルの系統であるTECH-1 T V3 SHOES。牛革とプロテクターを使用することで耐久性を高めてある。趣味のモータースポーツ用としては最も優れたモデルといえる。価格は5万4780円。カラーはRED BLACK WHITE(312)

 TECH-1 T V3 SHOESは名前のとおり純レース用の上位2モデルの系統で、上位モデルが表革にカンガルーレザーを使っているのに対して牛革を使用。カンガルーレザーと比べると重くはなるが、革の耐久性は高い。また、プロテクターも入っている。本格的なシューズが欲しいけど、サーキットのパドックでも履いたまま過ごせる耐久性が欲しいならこのシューズがベストだろう。

 また、TECH-1 T V3 SHOESには上位モデル同様、足を側面からも締めつけできる隠しループシステムを搭載している。固い靴底の特徴を生かすにはシューズ自体が足にフィットすることが必要なので、上部だけでなく側面からも締めつけできることはおおいにメリットがあることだろう。サイズはUS表記で7.0、7.5、8.5、9.0、10.0が標準設定。そのほかは特注となる。

革の耐久性が高く、さらに傷みやすいつま先にプロテクターが入っている。趣味で楽しむモータースポーツなら、レーシングシューズを履いたまま歩く場面もあるだろうから、耐久性が高いことも選ぶポイントの上位に入れておきたい
足の甲の部分だけでなく側面にもループがあるので上を締めると側面も一緒に締まる。これで高いフィット感を作り出す
ソールは高いグリップ性を持った作り。固さもありそれでいて足裏への感覚も伝わりやすい
カカトに切り欠きを設けているので操作性がいい。また、カカト部分に入るミッドソールはクッション性を考えたもの
TECH-1 T V3 SHOES、カラーはBLACK COOL GRAY YELLOW(1055)
TECH-1 T V3 SHOES、カラーはBLACK SILVER(119)
TECH-1 T V3 SHOES、カラーはWHITE BLACK RED(213)
TECH-1 T V3 SHOES、カラーはORANGE FLUO BLACK WHITE(4512)
TECH-1 T V3 SHOES、カラーはLIGHT BLUE BLACK WHITE(7912)
TECH-1 T V3 SHOES、カラーはWHITE BLACK(21)
これはニューモデルのSP+ SHOES。価格は3万6080円。表側はレザーとスエードを組み合わせているのでより耐久性が高く、それでいてレーシングシューズに求められる柔軟性はキープ。フィット感については隠しループシステムを搭載していると機能面に不満はない作り。カラーは BLACK WHITE(12)
SP+ SHOES、カラーはBLACK RED(13)
SP+ SHOES、カラーはBLACK YELLOW FLUO(155)
SP+ SHOES、カラーはULTRAMARINE BLUE LIGHT BLUE(7179)
足先の感覚にこだわるならソックスもアルパインスターズ製をチョイスしたい。ZX V4 SOCKSは難燃性繊維を使用したアラミドソックスで、最新パターンのシームレステクノロジーを採用し、圧迫感とや重量感を軽減し、長時間でも快適に運転できる。段階的な着圧で、足・足首・ふくらはぎの筋肉、腱・靭帯を包み込むスポーツデザインを採用し、脚全体の血行・血流を促進し疲労も大幅に軽減してくれる。もちろんFIA8856-2018公認。カラーはホワイトとブラックが用意され、価格は9680円。サイズはS、M、L、XLの4種類

 以上が趣味のモータースポーツで使用したいアルパインスターズギアの紹介。登山やロードバイクなどにしても、臨むステージにあわせた装備を揃えることはそのスポーツを安全にそしてやり遂げるには必要なもの。モータースポーツもそれと同様であるから、本気で取り組もうと考えているならばぜひ、ステージにあったギアを揃えてほしい。そのほうがもっと楽しめるはずだ。

Photo:高橋 学/安田 剛/深田昌之