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NISMO、新社屋「グローバル新本社」を公開、2013年度のモータースポーツ活動計画も発表

「NISMOバッヂがつくモデルは特別な価値を提供する」とゴーンCEO

神奈川県横浜市鶴見区の新社屋「グローバル新本社」
2013年2月26日公開

 NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は2月26日、神奈川県横浜市鶴見区の新社屋「グローバル新本社」を報道陣に公開するとともに、2013年度のモータースポーツ活動計画を発表した。

 NISMOは日産自動車のモータースポーツ活動を担うメーカーで、レース車両の製作やパーツの開発・販売などを行っている。NISMOと言えば大森ファクトリーを思い浮かべる方も多いと思うが、日産自動車の横浜工場3地区が隣接する鶴見事業所内に移転し、グローバル新本社として3月1日から正式に活動を開始する(一部の業務は1月から開始)。

 グローバル新本社は最大8台を展示できるショールームを有するとともに、大森ファクトリー、レースカー整備場、工作室、研削室、カーボンコンポジット、部品庫等をワンフロアに集約。これにより作業効率は大幅に向上させることができると言う。

 NISMOは今後、上記の業務内容に加えメルセデス・ベンツのAMG、BMWのMのようなコンプリートカーの製作に着手することを明らかにしており、すでにコンプリートカーの第一弾として「ジュークNISMO」を日本、欧州で発売している。第二弾は欧州に投入予定の新型「370Z NISMO」としている。

グローバル新本社のエントランス
グローバル新本社の模型。社屋全景
こちらはショールーム全景
リフレッシュメニューやチューニングを受けるユーザー車両が入庫していた
エンジンの整備エリア。GT500用のエンジンなどの組立・メンテナンスなどを実施するところで、最大で6台のエンジンを整備できるキャパシティを有していると言う。そのほかにもRB26のコンプリートエンジン(写真はS2エンジン)などの製作も行われている
こちらはエンジンの性能や耐久性などをチェックするベンチテスト部屋。取材当日はGT500の車両に搭載するエンジンのテストを行っていて、実際にサーキット(当日は鈴鹿サーキット)を走るのと同じ負荷をかけられると言う。エンジンを置く室内は温度・湿度のコントロールもできる
カーボンコンポジット製品の試作・修理を行う部屋。フロントフェンダー程度の大きさまでであれば、室内でCADデータ作成から成形まで行えると言う
レース車両はここに置かれ、製作・修理した部品などをここで組み込む。すぐ隣にトラックヤードがあり、作業を終了した車両をすぐに運べるようになっている
アライメントテスターやシャシーダイナモ(ダイナパック)も設置される
トラックヤード

GT-R NISMOを12カ月以内に発表

NISMOの宮谷正一取締役社長

 同日オープニングセレモニーに出席したNISMOの宮谷正一取締役社長は、「本日は、我々が培ってきた技術と、モータースポーツ活動から得た知見のすべてを初めて1つ屋根の下に結集し、新生NISMOとして出発する大変重要な日であります」と述べるとともに、新社屋について「NISMOが創業してから30年近く、我々はレーストラックでの成功を築き上げるために一丸となって頑張ってきた。その成功にかける情熱の成果として、NISMOは今や日産のパフォーマンスブランドの象徴となった。この新しい本社はそのパフォーマンスブランドに相応しいショールームと最新の設備を用い、また作業効率を格段に高めるレイアウトを採用した。鶴見の社屋は新しいものだが、我々のスピリットとしては新しい場所に移ってきたというよりも、戻ってきたという感を強く持っている」と述べる。その理由について、鶴見は510ブルーバードやS30フェアレディZなどの生産を担った、日産にとって歴史的に重要な場所であること、さらに厚木のテクニカルセンターが創業するまで開発部門の総本山だったことを挙げた。

 グローバル新本社の建物については日産のデザイン部門と、世界のモーターショーで日産ブースのデザインを手がける片山デザインスタジオが協力して設計したもの。日本の伝統である“刀”に象徴される、緻密に磨き抜かれた感性と卓越した技術を表現したものとなっており、宮谷社長は「NISMO車が持つスタイリングの特性と一貫性のあるものとなっている」と説明するとともに、「NISMOは、日本のみならず世界で開催されるレースでの輝かしい戦績を持って、熱狂的なファンを世界中に増やしてきたと自負している。我々の情熱が新しい世代の人を惹きつけ、より多くのファンを魅了すること、それが我々のコミットメント」と述べ、挨拶を締めくくった。

日産自動車のカルロス・ゴーンCEO

 また、日産自動車からカルロス・ゴーンCEOが登壇して今後のNISMOの展開について説明。ゴーンCEOは、「ジュークNISMOはNISMOが手がける新しいコンプリートカー第一弾で、以降も数多くの商品が控えている。大きなクルマであれ小さなクルマであれ、NISMOバッヂがつくモデルは特別な価値を提供する。NISMOのラインアップは日産車ならではの特徴である、品質のよさ、機能性、効率性に加え、NISMO独自のデザイン、スポーティなハンドリング、高い動力性能などを併せ持つ」とその特徴を述べるとともに、NISMOのコンプリートカーは日産の生産拠点で他の生産車とともに生産されることを紹介。

 そして、「NISMOのコンプリートカーにはGT-Rも当然含まれる」(ゴーンCEO)とし、12カ月以内にGT-R NISMOを発表することを明らかにするとともに、今後NISMOブランドをグローバルに展開することが、日産にとっても重要なビジネスチャンスになると述べた。

2013年度のモータースポーツ活動

SUPER GTのGT500クラスに参加する各チームの監督・ドライバーが勢ぞろいした

 同日、グローバル新本社で2013年度のモータースポーツ活動についての発表を宮谷社長が行った。

 特に注目なのは、2014年のル・マン24時間レースにガレージ56車両として参戦すること。ガレージ56車両とは、特別枠で参加する環境志向の車両を指し、ゼロエミッションのEVレーシングカーで出場することを明らかにした。車両の詳細は伏せられたものの、新しいパワートレーンのテストとともに、将来ル・マン24時間のトップカテゴリーに復帰する際の、ACO(フランス西部自動車クラブ)とFIA(国際自動車連盟)への必要なデータ提供という目的があるとしている。

 また、国内ではSUPER GTに引き続き参戦。GT500クラス、GT300クラスそれぞれ4チーム体制で挑む。今年はNISMOチームから本山哲選手が離れ、柳田真孝/ロニー・クインタレッリ選手の体制となったほか、KONDO RACINGのドライバーをミハエル・クルム選手が務める。クルム選手はNISMOグローバルアンバサダーも兼任し、車両開発にも携わるとともに、ゴーンCEOから発表のあったGT-R NISMOの開発も担うとしている。

 こうした新体制になったことについて、総監督を務める柿元邦彦氏は「日産のドライバーはNISMOワークスの23号車に乗ることを目指して色々と頑張っている。23号車に乗るためには“結果がすべて”と日頃から言っているので、結果を出した柳田真孝選手、ロニー・クインタレッリ選手を23号車に乗せない手はないと思い抜擢した」と説明。

 一方、昨年のチャンピオンであるMOLAチームに移った本山哲選手については、「昨年は運・不運に見舞われて中々結果に結びつかなかった。そういった中で、MOLAチームに移籍して新しい環境で結果を出しつつ、関口雄飛選手を育ててもらうことにした。これはかつて星野一義監督がドライバー時代に本山選手にしたことと同じ」と述べ、引き続き重要な役割を担ってもらうと説明した。

今年はNISMOチームから本山哲選手が離れ、柳田真孝/ロニー・クインタレッリ選手の体制となったほか、KONDO RACINGのドライバーをミハエル・クルム選手が務める

 SUPER GT参戦車両の改良については、GT500車両は空力とエンジンに重点をおいて開発が行われ、空力面ではリアまわりに特徴的なシャークティース形状を採用するとともに、床下まわりの形状を最適化して、ダウンフォースを維持しつつドラッグを大幅に減少したと言う。

 またGT300車両では、エンジン出力と耐久性の向上、空力性能向上、ブレーキ配分の適正化、空力性能向上に伴うサスペンションセッティングの見直しなどが行われている。

2013年度のGT500車両では空力とエンジンに重点をおいて開発が行われ、空力面ではリアまわりに特徴的なシャークティース形状を採用した

GT500クラス参戦体制

カーナンバーエントラント車両名監督ドライバータイヤメーカー
23NISMOMOTUL AUTECH GT-R鈴木豊柳田真孝/ロニー・クインタレッリミシュラン
1MOLAREITO MOLA GT-R大駅俊臣本山哲/関口雄飛
12TEAM IMPULカルソニックIMPUL GT-R星野一義松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラブリヂストン
24KONDO RACINGD'station ADVAN GT-R近藤真彦安田裕信/ミハエル・クルムヨコハマ

GT300クラス参戦体制

カーナンバーエントラント車両名監督ドライバータイヤメーカー
3NDDP RACINGS Road NDDP GT-R長谷見昌弘星野一樹/佐々木大樹ヨコハマ
7Bonds RacingOGT Bonds Racing GT-R橋本洋之イゴール・スシュコ/TBA
48DIJON RacingDIJON Racing GT-R井上恵一高森博士/千代勝正
360RUN UP SPORTSRUN UP GROUP GT-R中野啓吉白坂卓也/田中篤

(編集部:小林 隆)