長期レビュー
カメラマン高橋学のはたらくスバル「レヴォーグ」
第4回:雪道を走ってみました、の巻
(2015/1/22 15:05)
Car Watch読者のみなさま、あけましておめでとうございます。今シーズンの東京は西側の一部を除けば雪の降ることなく穏やかな新年を迎えました。そんな訳で2014年の11月にスタッドレスタイヤを導入するもその活躍の機会は少なく、嬉しいやら寂しいやら、の年末年始でしたが、わずかに経験した出先での雪道走行の印象を今回はお届けします。おさらいになりますがスタッドレスタイヤはミシュランX-ICE XI3。サイズはレヴォーグ1.6GT EyeSightの純正タイヤと同じ17インチです。
年末の伊香保~新潟
2014年のサーキット撮影の締めくくりはスバルのお膝元、群馬県の榛名モータースポーツランドでした。コースはドライコンディション。気持ちのいい1日でしたが。前泊した伊香保温泉(こちらも群馬県)のホテルの駐車場は前日降った雨の影響で朝凍結していました。雪が降らなくても気温が下がれば駐車場でも道路でもこういうことは当然ありうる訳で、撮影機材が多く、なかなか電車で現場に行けない筆者のような仕事の場合、転ばぬ先の杖となるスタッドレスタイヤはやはり必要不可欠だと再認識しました。もちろん何の問題もなく現場に向かったのは言うまでもありません。
さて、サーキットでの撮影が終わったら野暮用のため関越自動車道で新潟へ向かいます。群馬県と新潟県の県境の長い長い全長10kmを超える関越トンネルを越えると……確かにそこは雪国なのですがロードヒーティングや除雪により道路上には一切雪がありません。PA(パーキングエリア)も同様です。雪は降っていなかったので黒々としたアスファルトの路面を快適なドライブで新潟市内まで楽々到着です。
雪景色に変わってゆく北陸の風景は関東人には魅力的でもあるのですが、気温の下がる夜の走行はちょっと気をつけなければいけません。そんな状況の中、刻々と変わる路面を確認しながら日本海沿岸や市内をしばらく走りましたが、結局不安になるようなことはありませんでした。スバルの誇る4WDシステムとスタッドレスタイヤの組み合わせは本当に楽です。夜は市内のタワーパーキングに停めたので、翌日クルマの雪かきをする必要も一切なし。ここでは駐車場を選ばないレヴォーグのボディーサイズが功を奏します。
夜に雪が降り続けば当然翌朝は一面雪景色。とても水分が多いベタベタした雪です。もちろん走行には何の支障もなく、気をつけるのは雪によって道路幅が狭くなっていることくらいでしょうか。ただし路面は固まった雪とアスファルトが見える部分とが混在しボコボコの部分も多く、17インチのスタッドレスを履く我がレヴォーグでも乗り心地は最悪。常にドタバタしてます。18インチだとどんな感じなのか分からないけど、通常は18インチの夏タイヤを履くモデルでもスタッドレスだけは17インチって選択はアリだと思います。
初詣に日光へ
無事新年を迎えることができ、さあ今年も頑張ろう!ということで初詣は家族揃って日光(栃木県)へ。目的地は日光東照宮ではありましたが、その前に雪遊びでもしようかとタイトターンが連なるワインディングロード「いろは坂」を通って奥日光、湯ノ湖へ。日光東照宮には雪はほとんど見られませんが、標高差が900m程高いこちらは白銀の世界。年末訪ねた新潟とはがらりと違うパウダースノーです。
ひと口に雪道といってもまったく異なる路面ですが、こちらでも全域で4WD+スタッドレスは安心です。新潟でも日光でも感じるのは、その走行性能はもちろんですが「よく止まる」ってことです。走る・曲がる・止まる、どの要素も走行には不可欠な性能ですが、止まれるからこそ走ることができるし、しっかり減速できるからこそコーナーにアプローチできるし……って話ももちろんアリなんですけど、そういう話はもっと運転の上手い人に任せることとします。アチコチにそういうレポートは載っているでしょうから。
個人的に「止まる」を重視しているのは、レヴォーグがドライバーの意思とは別のところでブレーキが介入するEyeSight装着車だからです。もちろんプリクラッシュブレーキが介入するような運転などするつもりはありませんが、万が一の時の装備が万が一の時に役立たずじゃあガッカリですしね。特に今回のように家族を乗せているときにはその思いは一層強くなります。考えてみれば当たり前の話なんですけど、EyeSightのほとんどの機能ってクルマの旋回や制動の基本能力はもちろん、それを受け止めるタイヤあっての装備なんですよね。
意外な弱点
さて、そんな感じでスバルが誇るシンメトリカルAWDとミシュランX-ICE XI3の組み合わせは、雪のない東京から湿った北陸の道、さらさらした新雪、凍結路からウエットまで刻々と変わる路面に対し、シームレスにその能力を遺憾なく発揮してくれました。千差万別な道路のまだまだわずかなシチュエーションでの経験ではありますが今のところ大満足であります。
と言いたい所なのですがちょっと困ったことが……。
メーカー自身が「高速から悪路まで、変わらない安心」「さまざまなシーンで安心感に満ちた走りが愉しめます」とうたうバランスのよい設計のシンメトリカルAWDの優位性は間違いないと思うのですが、レヴォーグの場合は最低地上高130mm(17インチ車:カタログ値)というBRZと変わらぬ低さゆえに結構シャリシャリ腹を擦りながら走ることがあります。どの部分が一番低いのかは分かりませんけど、とにかく擦ります。
ちなみに最新型のレガシィは150mm、WRXは140mm、インプレッサスポーツは145mmです(すべてカタログ値)。日常的にその低さゆえにちょっと気を使わなければならないシチュエーションが多いと感じていましたが、雪道ではそれが露呈することになってしまいました。数値だけを見れば車高をアップさせるハイライダースプリングがSPKより発売されているプリウスは140mmです。本来雪道対策のためだけ商品ではないのでしょうが、物理的に15~30mm上がるパーツが出ているのは羨ましい限りです。擦ろうがグイグイ走る走破力は変わらないのでしょうが、やっぱり気持ちのいいものではありません。ましてやこれが雪ではなくて土だったら、なんて考えるとゾッとします。カメラで情報を得るEyeSight装着車の場合、純正で車高の変更パーツをオプション設定するのは期待薄ですし、仮にレヴォーグ版アウトバックが登場しても今までの傾向を見ると全幅の拡大とか装備の追加による価格アップとかいろいろありそうですし、ホント悩ましいところです。そういえばクルマを買う前に車体寸法は重視したものの最低地上高は見てませんでした(見てても結果は変わらなかったとは思いますが)。
何か路面状況も過酷なWRCから撤退し、WRXの戦いの舞台をニュルブルクリンク24Hに絞った今のスバルを象徴するような状況って言ったら言い過ぎですよね。でも、そんな気分。そういえばレヴォーグの主査の方が、発売よりかなり前にアウディのSシリーズをも意識しているような発言をしていたことを考えればブレていないとも言えるかもしれません。全高が1550mmでギリギリタワーパーキングの使用も可能で、かつ最低地上高がアウトバック並の200mmと大きく、EyeSight ver.3が備わったスバルXVがこの場合の最適解なのかもしれませんが、慣れ親しんだステーションワゴンの使い勝手とはちょっと違うのですよね。そういうことであまり頭を悩ましたくないのが正直な所ですが、理想の“はたらくスバル「レヴォーグ」”目指してこれから何か対策を練らなきゃ……。
高橋 学
1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員