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日産、2017年度第3四半期決算説明会。「通期見通しの下方修正に対策を打っている」と田川常務

2018年2月8日 発表

2月8日に行なわれた決算説明会で2017年度 第3四半期の累計9カ月(2017年4月~12月)の決算について紹介する日産自動車株式会社 常務執行役員 田川丈二氏

 日産自動車は2月8日、2017年度 第3四半期の累計9カ月(2017年4月~12月)における決算を発表。同日に神奈川県横浜市にあるグローバル本社で決算説明会を開催した。

 第3四半期累計9カ月の売上高は前年同期(8兆2648億円)比で3.2%増となる8兆5280億円、営業利益は同(5032億円)27.6%減の3642億円、営業利益率は同1.8%減の4.3%、当期純利益は同(4142億円)39.6%増の5781億円。また、第3四半期累計9カ月のグローバル販売台数は同(399万3000台)2.9%増の410万9000台。このほか決算内容の数値については関連記事(日産、2017年度 第3四半期決算。米国の税制改正の影響で9カ月累計の当期純利益は前年同期比1639億円増の5781億円)を参照していただきたい。

第3四半期累計9カ月の主要財務指標

 決算説明会では日産自動車 常務執行役員の田川丈二氏が登壇し、決算内容について紹介。第3四半期累計9カ月の主要財務指標について田川氏は、国内の完成検査問題、米国でのタカタに関わる集団訴訟の費用などによる特別項目、米国で想定以上に全体需要が落ち込んだことと合わせて第3四半期に販売会社の在庫を削減する方策をとったことが減益要因になったと語り、一方で米国で2017年12月22日(現地時間)に決定された税制改革による改善影響が2077億円となり、営業利益の減少分を大きく上まわる結果になったことを解説した。

 販売状況では、第3四半期の累計9カ月におけるグローバルでの全体需要が前年同期(6716万台)比2.0%増の6852万台となっており、日産ではグローバルで同(399万3000台)2.9%増の410万9000台となり、市場占有率も0.1%向上して6.0%となっている。

 地域別では、日本では全体需要が4.5%増の366万台で、日産では前年同期(34万4000台)比9.7%増の37万8000台を販売。登録車の販売台数は完成検査の問題を受けて同3.4%減の25万2000台に止まったが、軽自動車は同50.6%増の12万6000台となったことで合計では増加という結果になった。販売を牽引しているのは軽自動車の「デイズ」「デイズ ルークス」となっている。

 会計年度が暦年ベースとなる中国では2017年1月から9月の9カ月間に全体需要が2.6%増の1908万台となり、日産は前年同期(92万9000台)比9.8%増の102万台を販売。中国では「エクストレイル」「シルフィ」が販売を牽引している。

グローバル販売台数の全体需要と日産の販売台数
日本では前年同期に販売がストップしていた時期のある軽自動車が販売台数を牽引
中国市場では「エクストレイル」「シルフィ」が好調で販売台数を伸ばした

 北米市場は米国の全体需要が1.1%減の1320万台となったが、日産は「ローグ」「ローグ スポーツ」が好調で前年同期(116万4000台)比1.1%増の117万7000台を販売。カナダでは全体需要が4.6%増の162万台で日産は同8.6%増の11万3000台、メキシコでは全体需要が8.3%減の115万台で、日産も同13.7%減の27万台の販売となっている。

 ロシアを含む欧州で、日産は前年同期(54万000台)比0.3%増の54万4000台を販売。ロシアを除く場合は同2.2%減の46万4000台となっているが、ロシアでは景気の回復基調が続いていて同17.8%増の8万台を販売している。

 その他市場では全体で前年同期(59万600台)比2.0%増の60万7000台を販売。中南米とアフリカなどで販売台数が増加し、ダットサンブランドの「redi-GO」や「キックス」などが販売を牽引しているという。

北米では全体需要が減少に転じたが、日産は「ローグ」「ローグ スポーツ」などの人気で販売増を維持
欧州ではロシアの景気回復を受け、日産も販売増となった
その他市場は中南米の販売が好調だが、中東では全体需要減少の影響を受けている

 また、第3四半期(2017年10月~12月)3カ月の営業利益は824億円としており、前年同期の1635億円から減少した理由について田川氏は「主に2つの要因が原因」と解説。米国では市場環境を反映して418億円の減益要因となったことについては、モデルイヤーの2017から2018の切り替えに伴う販売費の増加、販売会社在庫を削減して米国の全体需要に対応したことが販売パフォーマンスに影響したことなどを理由として説明。また、国内での完成検査問題は396億円の減益要因としている。

第3四半期累計9カ月の財務実績
2017年10月~12月の第3四半期における営業利益は、米国の販売状況と完成検査問題で営業利益が減少する結果となった
2017年4月~12月の累計9カ月でも営業利益は前年同期から減少となっている
中国合弁会社の数字を比例連結ベースでまとめた場合の主要財務指標

 2017年度通期見通しの見直しでは、グローバル販売台数で日本、メキシコ、欧州の台数減少を販売好調な中国、その他市場の販売増でカバーしきれないとの判断から、販売台数見通しをこれまでの583万台から5万台下方修正となる578万台に変更。為替レートは対米ドルで108.0円から111.0円に修正し、売上高は11兆8000億円で変わらないが、営業利益は完成検査に関わる追加の影響、米国での市場環境変化に対応する方策によって800億円下方修正となる5650億円、当期純利益は中国合弁会社などのしっかりとした業績、米国での税制改革の改善影響などを受けて1700億円上方修正の7050億円としている。

グローバルでの販売台数見通しを5万台下方修正
営業利益は800億円下方修正、当期純利益は1700億円の上方修正を行なった
営業利益の増減分析。
2018年1月~3月の2017年度第4四半期の見通し
課題に直面しているが、配当は53円/株を維持する計画

 最後に田川氏は「当社は今年度に入ってからの9カ月間、とくに第3四半期は数々の課題に直面しました。国内の完成検査の影響、想定を下まわる米国の全体需要、業界全体のインセンティブの上昇、原材料価格の高騰などです。今後も市場の逆風と、完成検査の問題に起因する状況に対応する中、着実に基礎体力の向上を図るとともに、財務実績の改善を果たしていきます。当社は米国の市場環境に対応すべく、在庫調整などの対応を行なっているほか、年度末までの国内の完成車検査問題からの完全な回復に向けた取り組みを順調に進めております。これにより、年度末までに事業を正常化できると見込んでいます。事業の持続的な成長、確かな利益とフリーキャッシュフローを実現し、魅力ある株主還元を実施していくことをお約束します」と締めくくった。

 説明会後半の質疑応答では、米国の税制改革の影響で上方修正となった当期純利益についての受け止めを問われ、田川氏は「正直、この1700億円の上方修正で過去最高の利益となりますが、このうち2077億円は税制改革による一時的なものです。これで将来に支払いをすることになる税金も減るのでプラスの効果があるのは事実ですが、当期利益が2000億円ほどかさ上げされていることについて『素晴らしい結果』というつもりはありません。むしろ社内では、営業利益が昨年11月に1回下方修正しているにも関わらず、再度の下方修正をせざるを得ないことになったということ。さらに販売台数も約束したものに対して5万台下方修正となって、こちらのほうを重く受け止めていろいろと対策を打っているというのが実情になります」と回答。

通期見通しの下方修正を重く受け止め、さまざまな対策を打っていると語る田川氏

 また、完成検査の問題について現時点での回復状況を説明してほしいとの質問については、日産自動車 専務執行役員の星野朝子氏が回答。星野氏は「受注に関しては、(2017年)10~12月は月によって10~20%の受注減できましたが、1月には昨年を超える受注をいただいております。1月は『ノート』が登録車ナンバーワンを取りましたし、カレンダーイヤーでもコンパクトカーでノートがナンバーワンになりました。『リーフ』もローンチされ、強いクルマが受注をカバーしてくれまして、今はほぼ昨年並みに戻りました。昨年1月はセレナとノートが30何年ぶりにワンツーフィニッシュをしたときで、そのレベルにオーダーは力強く戻ってきたかなと思っています」とコメントしている。

「オーダーは昨年並みまで力強く戻ってきた」と語る星野氏