ニュース

三菱自動車、新型「エクリプス クロス」は「上昇に転じるための重要なクルマ」と加藤CEO

販売方針や今後のパワートレーン施策、ラインアップなどについて語った

2020年12月4日 実施

メディアからの質問に答えた三菱自動車工業株式会社 代表執行役CEO 加藤隆雄氏(右)と代表執行役Co-COO兼 開発担当 長岡宏氏(左)

 三菱自動車工業は12月4日、マイナーチェンジして登場した新型「エクリプス クロス」の発表のあと、代表執行役CEOの加藤隆雄氏と代表執行役Co-COO兼 開発担当の長岡宏氏が報道陣の質問に答えるラウンドテープルをオンラインで開催。エクリプス クロスの販売方針や、今後の三菱自動車のパワートレーン施策、ラインアップなどが語られた。

 代表執行役CEOの加藤氏はエクリプス クロスの登場について、過去の問題を乗り越えるためにも、明るく前向きな楽しいクルマを出して世間にメッセージを出すという狙いを説明。今後続々登場する三菱自動車のラインアップのトップバッターという位置付けとした。

 また、広告宣伝の展開のなかでPHEV車の電源供給能力を特にアピールしている点については、加藤氏が全国の販売会社を巡回するなかで上がってきた要望の1つ「PHEVの魅力が伝わっていない」という点を反映したものだとした。

 そのほか、エクリプス クロスのディーゼルエンジン仕様がなくなった理由や、次世代のアウトランダーに刷新されたPHEVシステムが搭載されること、小型車へはPHEVのシステムがベースのハイブリッド車の投入の方針が示されたほか、日産自動車と協業している軽自動車では“三菱らしいもの”とした車種を検討していることも明らかにされた。

 以下、報道陣との主なやりとりを分野別に紹介する。

エクリプス クロスは、上昇に転じるための重要なクルマ

──エクリプス クロスにかける期待感は?

加藤氏:いま、業績をみると、当社は他社に比べて少し台数の回復傾向が遅いという事実があります。言い訳をするわけではないですが、安い価格でのロット販売をやめたり、赤字でのフリート販売を一切やめたりしているが、台数が下がってるのはまぎれもない事実です。

三菱自動車工業株式会社 代表執行役CEO 加藤隆雄氏

 エクリプス クロスのPHEV登場以降は、アウトランダーの後継車も出て、そのPHEVも出てきます。ASEANでエクスパンダーのビッグマイナーチェンジなどのクルマも出てきます。電動車も連続で出てきます。そういったクルマの先頭バッターになるのがエクリプス クロスです。

 新型コロナウイルスの影響もあって、若干下降気味だったのですが、これを底にして転機として上昇に転じたいと思っていて、たいへん重要な意味を持ったクルマかなと考えています。

──先行受注の台数の手応えは?

加藤氏:先行受注につきましては当社の最初に立てた目標をオーバーし、月販の計画を2.5倍~3倍程度予想を上まわる台数を先行受注でいただいています。そのなかで8割がPHEVということですので、たいへん注目をしていただいて、期待が伝わってきました。台数的にも力強い手応えを感じているところです。

──アウトランダーPHEVとはどのように売り分けるか?

長岡氏:もともと出していたアウトランダーPHEVは、落ち着いたファミリー向けとして売っていましたが、今回は、プラグインハイブリッドも含めてあえてスポーティな方向に振っているので、ご夫婦2人で楽しまれる方、スタイルに惹かれる若い方、そういった方をターゲットに、新たなお客さまをこのエクリプス クロスで拡大していきたい。そういう思いのもとで出しています。

 そのため、ファミリー層に向けてアウトランダー、より活発な人生を歩まれる方にエクリプス クロス、と売り分けていきます。そういうわけでエクリプス クロスのほうが少しお買い求めいだきやすい価格にしていて、しっかりと売り分けいきたいと考えています。

──販売会社の言う「伝えきれていない魅力」とは?

加藤氏:伝えきれていない魅力というのは、PHEVの魅力そのものが全体があまり伝わっていないことです。1つは、給電機能がたいへん便利なのにお客さまは知らない。災害時協力協定を各自治体と結ぶ際、ちょっとしたデモンストレーションをするのですが、(PHEV車の)コンセントに差し込んでランプをつけるとほとんどのみなさんが「たいへん便利なんですね」と言われる。ということは給電1つをとっても、われわれのアピールが足りていません。

 PHEVの特徴も、最初の何kmかはEVとして走行でき、非常に力強くて静かに走れる。これも十分伝わっていません。特に自宅に充電設備をお持ちの方だと、電気代がかかるが、ガソリンの給油が非常に減りお得です。そういったことも伝わっておらず、あらゆる魅力のアピールが足りなかったと感じております。

──エクリプス クロスの国内投入から2年半が経過、PHEVの追加が今になった理由と、ディーゼルモデルがなくなった理由は?

長岡氏:PHEVの登場が今なのは、これは、予定どおりと考えています。モデルライフのなかで少しずつ拡充し、今、出すものを今出したということです。

 ディーゼルは、正直悩んだ点もありますが、環境に優しいと考えたときに、PHEVとかぶる部分がある。そしてディーゼルはエンジンのトルクが魅力だったのですが、それについてもPHEVでしっかりと出せていくので、同じような商品を2つ持つよりは、販売をしっかりとやっていくためにも整理したというのが今回のエクリクスプロスです。

三菱自動車全体ではPHEVをベースにHEVを展開、三菱自動車らしい軽自動車も検討

──2030年に純ガソリン車の販売禁止と報じられるなかでの、三菱自動車の展開は?

長岡氏:PHEVはエクリプス クロス以上(の車格のクルマ)に搭載し、次のアウトランダーに向けて大きく刷新を検討しているところですので、進化したPHEVシステムを皆さんにお見せできるのではないかと思います。

三菱自動車工業株式会社 代表執行役Co-COO兼 開発担当 長岡宏氏

 そのシステムの技術を使って、HEV(ハイブリッド)化を考えておりまして、HEV化をすることで、コンポーネントをうまく使い、より安い価格で提供できる電動システムを作るということであります。ASEANにも投入していくことを検討しております。さらに、PHEVそのものをさらに広げていきます。電動システムを先進国ばかりではなくASEANにも広げていきます。

 世の中のカーボンニュートラルの動きのなかで、2030年代を超えていくとEV、PHEVを軸にさらに環境にやさしいクルマを増やしていく必要がありますが、完全なゼロ・エミッションであるバッテリーEV(BEV)は1つの大きな方向であることに間違いありません。

 しかし、ライフサイクルアセスメントを考えた場合に、電気を化石燃料で作っている国では、BEVが必ずしもCO2を最も減らす手段ではないと議論も行なわれています。

 合成したE-FUELやバイオFUELが今後、BEVと同じがそれ以上の可能性を持ったシステムと考えておりますので、われわれ、BEVとPHEVの両方を視野にいれて、今後の環境対応を考えていきたいと考えております。

 ご存知のように、われわれのPHEVはBEVから派生したものでありますし、アライアンスを組んでいる日産、ルノーはBEVを持っていますので、アライアンスとしては、幅広いものに対応できる技術を有しておりますし、われわれはPHEVをしっかりやっていくことになります。

──小型車へのPHEVの搭載の可能性は?

長岡氏:当面、小型車はPHEVをベースにしたHEVが入っていくのではないかと思います。PHEVをベースにしたHEVにすれば、将来、PHEV化ができますし、さらに、それをベースにBEV化もできるわけですので、小さいクルマについては、まずはHEVから入っていくのが妥当ではないでしょうか。

──今後、国内ではディーゼルの新モデルはない?

長岡氏:そのように考えています。

──ディーゼルをどうしていくか。

長岡氏:ディーゼルを乗用車用に開発していくよりは、PHEVなどに置き換えていくのが今後の方針になります。

 ASEANなどで、フレームベースのトラックなどをベースにしたSUVを出しているが、そのようなクルマに関しては根強くディーゼルの要望があるので、新しいエンジンを開発しても対応していく。フレーム車用のディーゼルエンジンを開発しているところです。

 ただ、それらの国々で燃費規制が厳しくなっていったとき、いつかは電動化していかなければならない。2025年くらいからはそういう雰囲気になってくるかもしれません。どのように実現するか、ディーゼルにモーターを組み合わせる方向性もあるが、われわれの持っているPHEVをベースに、フレーム車のためのものを作っていくというもあるでしょうし、実は両方を視野に入れて検討しているところです。

 そのときに、お客さまにとってディーゼルが大事なら、ディーゼルの電動化もありえるでしょうし、われわれはPHEVをベースにやったほうが強みも活かせるが、そこについては、お客さまのご意見を聞きながら考えていきたい。今、はっきり決まったところはありません。

──車種ラインアップはSUV以外は考えているか?

長岡氏:中期経営計画でも、SUVをメインで考えるとしていて、セダンタイプを出すことは正直ありません。

 SUVを出していくなかで、いろいろなタイプのSUVを今まさに検討しているところでありまして、販社からご意見など、注文をもらっていますので、いろんな検討をしているところです。なので、セダンタイプは考えていませんが、SUVの範疇のなかで、いろんなものをいろいろ考えている。あとは弊社の非常に強いカテゴリーである「デリカ」をどうしていくかも考えています。

 日産と協業の軽自動車も、三菱らしいものができないか、いろいろな検討をしていますので、ご披露できるようなことになったら、お話をしていきたいです。

純電気自動車は単独で出す計画はなく、アライアンスで一緒に競争力を持つ

──EVの商品展開について。日産とどう連携、開発の役割分担があるのか?

加藤氏:EVはバッテリーが高額で、全世界の自動車会社のなかで、EVで本当に利益が出てるところはほとんどない。テスラが最近利益が出だしたのかなと。そういう意味では、大きな利益が見込めないEVを単独でやるのは現実的ではありません。

 そのため、日産と共同開発で、軽自動車のEVを今度投入していくわけですが、今後、EVというのは単独でやるよりも日産やアライアンスを活用して出していくのが現実的。今、単独でEVを出していく計画はありません。

──バッテリーの進化の見通しについてはどうか、全固体電池はどうか

長岡氏:バッテリーはリチウムイオンから全固体電池に移っていき、それによって安全性やコストが大きく下がり、EVが広がっていくというのが数年前の見立てであったわけですが、そのときに2020年過ぎには全固体電池が広がり一気に加速していくだろうとしていました。ところがなかなか進んでいないのが事実です。

 全固体電池は小さいものはできてきましたが、自動車を動かすだけのバッテリーが全固体電池になり、製造も含めて商業ベースに乗せるとなりますと、正直、あと5年では足りないんだろうなと思います。なかなかバッテリーは予想どおりいかないというのが現状と思っていますが、全固体電池が実用になるのは2030年くらいではないでしょうか。

 それらを踏まえて、ライフサイクルアセスメントまで考えると、発電を化石燃料でやっていくには、BEVよりもPHEVのCO2が少なくなります。

 BEVについては日産とルノー、PHEVは三菱。分担をしながらしっかりと技術交流をして、バッテリーについても一緒に考えていくことができれば、かなり競争力のあるものをアライアンスとして持っていけるのではないかなと考えています。