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ホンダF1 山本雅史MD、レッドブルとホンダの掛け算がF1最終戦勝利の要因

ホンダF1 田辺豊治テクニカルディレクター(左)、ホンダF1 山本雅史マネージングディレクター (C)Getty Images / Red Bull Content Pool

 12月13日(現地時間)、2020年シーズンのF1最終戦となる第17戦アブダビGPの決勝レースがヤス・マリーナ・サーキットで開催された。結果は、レッドブル・レーシング・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手がポールポジションからスタートして優勝と、メルセデス勢を完全に押さえ込む圧勝劇となった。

 この勝利はレッドブル・ホンダのフェルスタッペン選手にとってはシーズン2勝目、レッドブルとアルファタウリチームにハイブリッドパワーユニットを供給するホンダにとっては3勝目となる。

F1最終戦アブダビGPをトップでゴールするマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ) (C)Getty Images / Red Bull Content Pool

 決勝レース後、ホンダF1 山本雅史マネージングディレクター(以下、山本雅史MD)によるオンライン記者会見が行なわれた。山本MDは勝利について語るとともに、今シーズンのホンダのF1活動について総括。年間を通してトピックになったことについて語ってくれた。


ホンダF1 山本雅史MD:

 今シーズンは、F1 70周年の第5戦のシルバーストーンでマックスが優勝したこと。その後、8戦目のモンツァでホンダとトロロッソ-アルファタウリが50回記念ということで、グリッドでトストさん(アルファタウリ・ホンダ チーム代表 フランツ・トスト氏)と写真を撮って、いろいろ恵まれたんですけど、ピエール・ガスリーが初優勝したこと。この2つの大きなトピックに加えて、本日のレース、昨日のポールポジションを獲得し、非常に安定した走りでポール・トゥ・ウィンを取ってくれた今日のマックスのレース、この3つが大きな今シーズンのトピックです。

 ホンダ勢として昨シーズンと同様の3勝を獲得することができて、正直ほっとしているところです。

 また、思い出ってわけじゃないですけど一番やっぱり、ある意味苦い苦さも含めて、ラウンド11のアイフェルグランプリ、ドイツのニュルブルクリンクの前に「ホンダが2021年をもってF1を終了する」という発表をしたので、アイフェルGPはそういった意味では非常な、非常に貴重な経験体験をしたレースでもありました。

 ただレッドブル、アルファタウリのスタッフがですね、非常に友好的に、冗談交えて「なんでやめちゃんうんだ」という話ももちろんありましたけど、結果的には結束力が高まったように思ってます。

 毎戦毎戦レッドブルは、アルファタウリもそうですけど、特にレッドブルはエアロパッケージ含めて少しずつ前に、少しずつでもアップデートしてきてくれて、トルコ前後ぐらいから非常によい効果も見られてました。それに加えて今シーズン最後のパワーユニットの使い方も来シーズンにつながるということで、田辺含めてみなさんと一致団結をして来年につながるレースができたと思ってます。

 そういった意味で、特に2020年を締めくくるアブダビGPは、2014年にレギュレーションが変わってから常にメルセデスがポールポジションを取ってたのを、やっとほかのチーム、レッドブル・ホンダが取れたということも非常によかったレースだったと思います。

 1年を総じて言えば、非常に厳しいシーズンだったと思っています。今日のレース結果のいろんな知見をですね、年末年始には、先ほど田辺も言ってましたけどしっかりフィードバックして、来年のテストに向けて準備します。

 来年最後のシーズンとなります。ホンダとしても、しっかり来年1年やりきりたいと思っています。みなさん引き続きよろしくお願いします。


 今シーズン、ホンダPUを搭載する両チームは2019年の成績から、さらなる飛躍を期待されたが、シーズンが始まると圧倒的な強さを見せたメルセデス勢の前に苦戦を強いられた。とはいえ、マックス・フェルスタッペン選手はその中でも素晴らしい走りを披露し、常に表彰台に立ち続けるメルセデス勢に割って入る活躍で、ドライバーとしての才能を見せつけた形になる。

 とくに、中東3連戦では、従来は圧倒的に有利とされていたメルセデス勢に匹敵する速さを見せはじめ、最終戦では圧勝といってよい強さを印象づけた。山本MDも語っているようにアブダビGPではフェルスタッペン選手が優勝したほか、アレクサンダー・アルボン選手も4位という速さを見せたことから、チームとしても戦える体制になった。

 最終戦では遅すぎたとはいえ、このレベルまで進化できたレッドブル・ホンダの進化点はどこになるのだろう。改めてその点を山本MDに聞いてみた。


ホンダF1 山本雅史MD:

 そのまず一つはクリスチャンさん(レッドブル・レーシング代表 クリスチャン・ホーナー氏)からの言葉でいうと、CFD(Computational Fluid Dynamics、数値流体力学)でコンピュータ解析した空力性能と実走との乖離分が出るんですけど、これはもう当たり前で出るんですけど、その調整をする期間が序盤になかなか厳しかった。

 7月に入ってからすぐレースが開幕して、レースが続いていって、そのアップデートする時間がやっぱり非常に厳しかったっていうのが正直なところだと思います。

 本当にレッドブルに感謝してるんですけど、毎戦毎戦いろんなアップデートをしてきてくれて、それの積み重ねの結果と、ホンダが毎回パワーユニットの使い方、特に予選モードと決勝モードと一緒になった途端、いろいろちょっと手こずったことも正直あったと思うんですけど、そういったところで学んだ結果、この最終戦のポール・トゥ・ウィンにつながったと思ってます。レッドブルの積み上げた車体性能のアップとホンダのPUの使い方の精度が上がってきたことの掛け算だと思います。

 しっかり今日のデータをフィードバックして、来年を迎えたいと思います。今年は僕らもシリーズチャンピオンを戦いたいっていうふうに浅木も僕も田辺も最初に言ってたもんですから。そういった意味ではですね、まだまだ手探りのところは正直ありますけど、もちろんメルセデスだってこのまま終わってこないし。そういった意味では、ホンダにとって来年は最終年なので、気持ちはチャンピオンシップを取るべく準備もしたいし、実際その方向で戦えればと思ってます。

レッドブル・レーシング代表 クリスチャン・ホーナー氏とホンダF1 山本MD (C)Getty Images / Red Bull Content Pool


 山本MDは常々「仕事は掛け算」と語っており、レッドブルの車体の向上とホンダ側のPUの使い方精度向上との掛け算が、メルセデス勢に追いつけた要因だという。

 もちろんここまで追いつくのに時間がかかったのは、開幕戦がコロナ禍で遅れたため、追いつくための時間が稼ぎ出せなかったほか、予選モードと決勝モード統一というルール変更への対応にもあったという。当初、予選モードと決勝モードのモード統一はホンダに有利と見られていただけに、そこへの対応不足があったのは意外だった。

 しかしながら、レッドブルは開発、ホンダは最適化を進め、最終戦では追いつくことに成功した。その背景には、すでにチャンピオンを決めたメルセデスは来シーズンの開発に注力していることもあるかもしれないが、メルセデスが常に優位だったアブダビGPにおいて、フェルスタッペン選手+レッドブル+ホンダというパッケージで圧倒した。

 となると期待はホンダ最終年となる2021年シーズンだが、FIAは12月17日にF1の2021年開催スケジュールを承認し、3月21日にオーストラリアGP(メルボルン)で開幕することが正式に決まった。正直、コロナ禍しだいではあるのだが、わずか3か月後にはF1が開幕することになり、開発期間の短さを考えると、メルセデス勢を僅差で追いかけるレッドブル・ホンダという構図が見えてくる。

 ホンダに取って2021年は最終年。角田裕毅選手がアルファタウリ・ホンダからF1参戦することも発表され、鈴鹿サーキットでのF1日本GP開催も10月10日でFIAに正式承認された。2021年のF1の開幕を楽しみに待ちたい。