試乗インプレッション

最新のメルセデス・ベンツにイッキ乗り【メルセデスAMG編】(GT 53 4MATIC+/A 35 4MATIC)

滑らかさ際立つGT 53 4MATIC+、ハードな方向でまとめられたA 35 4MATIC Edition 1

 プレミアム性を謳うブランドには必ずスポーツモデルが用意される。メルセデスAMGもその1つ。メルセデス・ベンツ集中レポート第3弾にして最終回は、そのメルセデスAMGから最新の2台を紹介したい。

GT 53 4MATIC+は電動スーパーチャージャーとターボの連携が超絶滑らか

 まずは「メルセデスAMG GT 53 4MATIC+」から。2019年2月に国内で発表されたGT 4ドアクーペは、メルセデスAMGが独自に開発したスポーツモデルとの位置付けだ。

 ベースは現行EクラスのステーションワゴンであるS213型のMRAプラットフォーム。これにガセットプレートやクロスメンバーを追加しつつ、フロントの4リンク式サスペンションでは各部を見直してステアリングの支持剛性を高め、ライントレース性能やコーナリング性能を向上。リアのマルチリンク式サスペンションもフロント同様、外乱によるジオメトリー変化を最小限に抑えるよう取り付け剛性を含めて強化された。456L~最大1319L(数値はVDA方式で、最大値は4:2:4分割可倒式リアシートを倒した状態)を確保するラゲッジルームフロアには、軽量かつ高剛性なCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を部分的に採用する。

2019年2月に受注を開始した、メルセデスAMGが独自開発した新4ドアスポーツカー「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」。試乗グレードは「メルセデスAMG GT 53 4MATIC+(ISG搭載モデル)」(1623万円)で、ボディサイズは5050×1955×1440mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2950mm。ボディカラーのブリリアントブルーマグノはオプションのスペシャルマットペイント仕様
試乗車はマットブラックペイントの鍛造21インチAMG5ツインスポークアルミホイールを装着し、タイヤはミシュラン「パイロット スポーツ 4 S」(フロント:275/35ZR21、リア:315/30ZR21)
リトラクタブルリアスポイラーはメルセデスAMG GT 4ドアクーペの全グレードに標準装備される
GT 53 4MATIC+では円形の「デュアルエグゾーストエンド」を採用
インテリアでは高精細な12.3インチワイドディスプレイ2つを1枚のガラスカバーで融合させた「コックピットディスプレイ」、タービンエンジンを想起させるエアアウトレット、V型8気筒エンジンをモチーフにしたセンターコンソールなどにより、高級感とパフォーマンスの高さを表現
走行モードは「Slippery」「Individual」「Comfort」「Sport」「Sport+」を用意。モードはステアリングのロータリースイッチで切り替えることも可能
マキアートベージュ/マグマグレーのインテリアカラー。メルセデスAMG GT 4ドアクーペは5人乗り仕様になる

 搭載エンジンは直列6気筒3.0リッターガソリンターボで、これにISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と電動スーパーチャージャーが組み合わされる。衝突安全性能が担保されたこと、ISGによってベルト駆動の必要がなくなりエンジン全長のコンパクト化が実現したこと、シリンダー左右に補機類を配置するスペースがとれることなどから復活を果たしたメルセデス・ベンツの直列6気筒エンジン。ISGや電動スーパーチャージャー、そしてターボチャージャーとてんこ盛りだ。

メルセデスAMG GT 53 4MATIC+は直列6気筒 3.0リッターターボエンジンを搭載し、最高出力320kW(435PS)、最大トルク520Nmを発生。また、エンジンとトランスミッションの間に最高出力16kW(21PS)、最大トルク250Nmを発生する「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」を装着。WLTCモード燃費は10.3km/L

 ISGとは、エンジンとトランスミッションに間にある電動モーター(21PS/250Nm)のこと。これがエンジンの始動や充電、つまり従来のエンジンスターターやオルタネーターの役割を受け持つ。また、ISGは低速時にモーター駆動によるエンジン負荷低減を行ないつつ、減速時の回生制御も行ない、ここで得られた運動エネルギーは電気エネルギーとなって二次電池である約1kWhのリチウムイオンバッテリーに蓄えられる。ここまではマイルドハイブリッド的働きだ。

 さらに、エンジンに直結となるモーターの特性を活かし、アイドリング時にはオルタネーター機能によって充電機能に強弱をつけることでエンジンに連続可変的な負荷を与え、アイドリング回転数そのものを低回転化して安定させ燃料噴射量を抑えつつ、充電の高効率化も同時に図った。加えて、このモーター特性はシフトチェンジにも活用。シフトアップ時には回生による負荷をかけてエンジン回転を素早く落とし、シフトダウン時には駆動による補強をかけてエンジン回転を素早く上げるなどの働きも行なう。これにより遅れの極めて少ない変速制御をアシストする。

 電動スーパーチャージャーとは字のごとく、ハウジング一体型の専用小型電動モーターによりコンプレッサーホイールを回転させる過給機のこと。特徴はアクセルペダルを踏み込んでから0.3秒以内に常用回転数である約7万回転に達することで、これによりシリンダー内には求められる圧縮空気が効果的に送られる。

 電動スーパーチャージャーは電動モーターの強みであるON/OFFが瞬時に行なえるため、発進時などから効果的な過給ができ、エンジン回転が一定の回転数以上になった場合はすぐさま回転を停止することが可能。そのエンジン回転が一定以上となった段階とは、つまり排気エネルギーが十分に得られるようになった状況で、この先の過給はターボチャージャーが受け持つ。よって、この直6ユニットはダブル過給エンジンによってアイドリング回転直上からの十分なトルク(電動スーパーチャージャー)と、中~高回転域では圧倒的なパワー(ターボチャージャー)を両立させているのだ。

 こうして得られた駆動力を余すところなく伝えるのが「9速AMGスピードシフトTCT」と、専用の4輪駆動方式である「4MATIC+」(通常のメルセデス・ベンツは「4MATIC」)。AMGスピードシフトTCTは、一般的なATと同じくトルク増幅効果のあるトルクコンバーターと遊星歯車を使うトランスミッションで、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)ではない。

 メルセデス・ベンツでは、多くのモデルにトルクコンバーター方式の9速AT「9Gトロニック」を採用するが、カタログによるとその違いは「メルセデスAMG用に最適化、シフトタイムを大幅短縮、ダウンシフト時のブリッピング(エンジン回転上昇)」とある。よって、AMGスピードシフトTCTは9Gトロニックをベースに変速制御に特化したトランスミッションといえるだろう。

 駆動方式である4MATIC+の前後駆動力配分率は0:100~50:50の連続可変方式。メルセデス・ベンツの4MATICでは「GLE」の一部モデルを除いて、標準状態では前輪もしくは前後輪に駆動力がかかる方式が一般的だが、4MATIC+では後輪駆動力100%が標準状態で状況により前輪にも駆動力がかかる点が違う。なお、上位モデルでV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンを搭載する「メルセデスAMG GT 63 4MATIC+」には終始後輪駆動の「ドリフトモード」を備え、緻密なロック率制御を行なう「電子制御AMGリミテッド・スリップ・デフ」が標準装備(GT 53 4MATIC+にはパッケージオプションで試乗車には未装着)になる。

 運転席まわりはさながら航空機のコクピットで特別感が満載。ステアリングには、メルセデス・ベンツで慣れ親しんだ左右のスイッチ群のほかに、左右下部にはそれぞれダイヤル&プッシュ機能が付いた専用スイッチが用意されている。この専用スイッチはシフトノブ右側に設けられた「AMGダイナミックセレクト」と連動し、エンジンの出力特性/トランスミッションの変速タイミング/サスペンションの減衰力調整/エキゾーストノートの強弱/電動ステアリングのアシスト量調整などが瞬時に行なえる。

 435PS/520Nmとスペックは強烈だが、標準装備のエアサスペンションを通した乗り味はとても快適。正直、「最新技術でドーピングされたスポーツモデルだから手を焼くかな」と思っていたが、まったくの取り越し苦労。発進時から体感する電動スーパーチャージャー効果によるもりもりトルクは、往年のV型8気筒6.2リッター「M156」型エンジンを思わせる……、といったら明らかに言い過ぎだが、電子制御スロットルの緻密な制御も相まってじんわり踏み込めば紳士的に、意図的にガバッと踏み込めば背中をドンと押されたような強烈な加速度がいつでも、何速からでも体感できる。

 電動スーパーチャージャーとターボチャージャーの連携にしても超絶滑らか。というより、バリバリに体感センサーを働かせてもまったく分からず……。もっとも、それが分かるほど荒削りな設定ではプレミアムスポーツは謳えないから、世に送り出すはずはない。ともあれ、現代版「ジキルとハイド」のようなエンジンキャラクターがGT 53 4MATIC+の真骨頂だ。

 ハンドリングもそうしたエンジン特性に合わせ基本は紳士的。サスペンションの減衰力調整を高めにセットしてもガツンと体全体を揺さぶるような強いショックは皆無だ。また、エアサスペンションの特徴を活かした制御も組み込まれる。ハイスピードコーナリング時の横揺れや、ハードなブレーキングによって前のめりな姿勢が想定される際にはAMGダイナミクスセレクトのモードによらず、一時的に減衰力が高められて強い横Gや減速Gに耐えることで車両の挙動は安定方向へと自動的に導かれる。

ハードな方向でまとめられたA 35 4MATIC Edition 1

 続くAMGは、「メルセデスAMG A 35 4MATIC Edition 1」。クローズドコースによるロードインプレッションはこちらに詳しいので限界性能など詳細は割愛するが、メルセデス・ベンツ自ら「公道での気持ちよさを追求する」というだけあって、確かに前後Gをなるべく抑え、40km/h程度で山道をスムーズに走らせているだけでも気持ちがいい。体にフィットしたスポーツウェアで身を包み、衝撃吸収性に優れたランニングシューズを履いて街を走る、そんなイメージだ。

 直列4気筒2.0リッターガソリンターボは306PS/400Nmを発生し、デュアルクラッチトランスミッションである「7G-DCT」が組み合わされる。前後駆動力配分は100:0~50:50の間での連続可変式で、車両重量は1555kgとのこと。お分かりのとおり、公道で使い切るには当然オーバースペックだし、受け止めるサスペンションは引き締められ、エンジン特性も3000rpmあたりから本領を発揮するなどわりとハードな方向でまとめられている。乗り味にしてもガチガチというほどではないが、Aクラスの美点である、しなやかにロールして段差もフワッといなすというキャラクターとは明らかに違う。「今日も走るぞ!」という明確な意思をドライバーが持って運転操作に臨むくらいがちょうどいい。

2019年8月に受注を開始した「メルセデスAMG A 35 4MATIC」。試乗車は同モデルの導入を記念した特別仕様車「メルセデスAMG A 35 4MATIC Edition 1」(743万円)。ボディサイズは4436×1797×1405mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2729mm(数値はすべて欧州参考値)
Edition 1のボディカラーはデニムブルーで、サイドにマットテックゴールドの専用デカールを採用。一部がマットテックゴールドにペイントされた19インチAMGマルチスポークアルミホイールも装着する。タイヤはミシュラン「パイロット スポーツ 4 S」(235/35ZR19)
A 35 4MATICは直列4気筒DOHC 2.0リッターターボ「M260」型エンジンを搭載し、最高出力225kW(306PS)/5800rpm、最大トルク400Nm(40.8kgfm)/3000-4000rpmを発生
インテリアではマグマグレー/ブラックの2トーンレザーDINAMICAのAMGパフォーマンスシートを装備。インテリアトリムにはAMGのロゴが入ったアルミニウムシルバー/ブラックの専用トリムが与えられるとともに、ステアリングホイールはナッパレザーの“EDITION”ロゴ入りAMGパフォーマンスステアリングが採用される

 試乗したEdition 1はカタログモデルとなる「メルセデスAMG A 35 4MATIC」に特別装備を加えた600台の台数限定グレード。デニムブルーのボディカラーは落ち着いているし、マットテックゴールド塗色が施された19インチホイールとの相性も抜群だ。ただ、個人的にはボディサイドの専用デカールと大きめのリアウイングはなくてもいいかなと思う。もっとも、デカールは大変な作業になるが剥がせる(?)のかもしれないし、リアウイングにしもておよそ60km/h以上では整流効果が高まり、車体を路面に押しつけるダウンフォースが発生して車両安定性を高めてくれる機能部品なのでむげにはできないが……。

 一方で、専用デザインのフロントバンパーや先の19インチホイール(カタログモデルは18インチ)、さらにはAMGパフォーマンスシートや360°カメラが標準装備になるなど、カタログモデルでパッケージオプションとなる装備や、そもそもオプションとしても用意されていない数々のアイテムがリーズナブルな価格で装着されていることを考えると、実に悩ましいところだ。

 セダン編SUV編、そして当レポートの3回に渡ってメルセデス・ベンツの集中レポートを行なってきた。実はこの取材、正味1日半で行なわれた。合計8台の試乗車を撮影中心に取材したわけだが、正直なところ体力的にしんどかった。でも、同時に楽しく、そして勉強になることばかり。

 そもそも、多彩なバリエーションを持つメルセデス・ベンツのようなブランドについて理解度を深めるには、こうして連続した乗り換えが効果的。外観や内装に用いられるデザインの方向やHMIに関する考え方がよく分かるし、乗り味にしてもカテゴリーに共通する部分と、同じSUVなのにまるで違う作り込みが行なわれていることなど、まとめて体感することができた。最新のメルセデス・ベンツブランドを当集中レポートで味わっていただければ幸いです!

西村直人:NAC

1972年東京生まれ。交通コメンテーター。得意分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためWRカーやF1、さらには2輪界のF1であるMotoGPマシンの試乗をこなしつつ、4&2輪の草レースにも参戦。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。著書に「2020年、人工知能は車を運転するのか 〜自動運転の現在・過去・未来〜」(インプレス)などがある。

Photo:安田 剛