試乗レポート

新型「レヴォーグ」と「アイサイトX」で首都高など走る 渋滞時ハンズオフアシストの動作条件に悩むも好印象

新型「レヴォーグ」で一般道や高速道を走行。「アイサイトX」の性能も体感した

 いよいよ公道試乗という段階に達した新型「レヴォーグ」。プロトタイプでのアイサイトX体験や袖ケ浦フォレストレースウェイでの試乗で、かなりの好感触を得ていたが、それが一般道でどうかは定かではない。リアルな環境でどう動くのか? 個人的にはプロトタイプの仕上がりがあまりに好感触で、すでにオーダーを済ませて11月27日に納車されるというタイミングであるから、期待と不安が交錯する中で公道ツーリングを始めることになった。

 東京 恵比寿にあるスバル本社からスタートすることになった今回の公道ツーリング。最初に乗ったのはSTIスポーツ EXだ。STI製のエアロパーツをフル装備しており、見た目のインパクトはなかなかだ。購入したクルマはエアロパーツが装着されていない。それは12月半ばまで30%OFFで販売されているから、これを見せつけられると心がグラつくばかりだ(苦笑)。さて、走りはどうか?

渋滞する首都高など、さまざまな道路を走ってみました

ZF製の電子制御可変ダンパーを装備したSTIスポーツ EX

 30km/hで恵比寿の市街地をゆっくりと走り出せば、そこでのマナーはなかなか。スポーツモデルとしての位置づけであるSTIのエンブレムを掲げているから、低速での乗り心地を心配していたが、突き上げもなく、すべてをするりと乗り越えて行くからひと安心。

 このグレードはZF製の電子制御可変ダンパーを装備し、減衰力をコンフォート、ノーマル、スポーツと選択可能だが、いずれも減衰力を変化させながらも、その中心値から強弱を動きに応じて変化させているから、どのモードを選択していても不快感はない。

 車線幅の広い道路でコンフォートにすれば、フットワーク系は一気に力が抜けた感覚になるが、動きが大きくなればしっかりと減衰。一方で継ぎ目の多い首都高速でスポーツを選択したとしても、瞬間的な突き上げを上手にいなしている。常にフラットに動きながら、快適性を確保しているところが好感触だ。

 気になるアイサイトXの動きも興味深い。プロトタイプの試乗会ではドライバーモニタリングシステムを正確に動かすために、「ドライバーはマスクを取って乗ってください」とのアナウンスが行なわれていたが、今回は黒いマスク以外であれば認識できるため、マスクは装着したままでOKであると伝えられたのだ。マスク必須の情勢を受けて即座にプログラムを見直したからこそ。これなら同乗者が家族以外であったとしても安心だ。

 首都高速に入ってアイサイトXを作動させれば、早くも車線を読みはじめ、ステアリングをシッカリとアシストしてくれていることを感じる。クルマは車線のセンターをピシッと走るように、ステアリングが左右にクルマ主体で切られて行く。ハッキリ言えばドライバーの両手は添えているだけで多くのコーナーをクリア。これは疲労軽減にかなり役立ちそうだ。

 ただし、話題の「渋滞時ハンズオフアシスト」については動いたり動かなかったりという状況が見られた。このシステムは50km/h以下で作動するもので、今回は首都高速都心環状線内回りでそれを体験できたのだが、クルマ側からは度々ハンドルを握るようにという警告が出ていたのだ。

 第一技術本部 先進安全設計部 主査 工学博士 関淳也氏によれば「メーターで白線が見えていてハンズフリーにならないのであれば、それは衛星の受信状況がわるいということですね」とのこと。また「ハンズオフに入る条件のもう1つとして、前にクルマがいるのも条件です。渋滞時は車間が詰まり白線が見えにくくなりますが、その際は前のクルマの中心を追うようにしています(ツーリングアシストが投入されたころからの考え方)」と語っていた。

 いずれにしても、ビル群や高架が続く場面はやや苦手。だが、上空が開けてくるとそれもしっかりと作動していたから、使う側もシッカリと認識しておいたほうがよさそうだ。できれば衛星の受信状況などがひと目で理解できるメーターなども欲しいところ。何で渋滞時ハンズオフアシストが作動していないのかを運転しながら考え続けるのは精神衛生上よくないと思うので。当たり前だが、自動運転ではなく、あくまでも運転支援システムという認識を忘れないようにしたい。

 関越自動車道に入り巡行走行を始めれば、やはりそこでもフラットな乗り味と確実にステアリングを導いてくれるアイサイトXの仕上がりに感心するばかり。アクティブレーンチェンジアシストは、自分でやるよりもスムーズに動くようにも見えてくる。今回はたまたま同じイベントに参加していたほかの新型レヴォーグをしばらく後ろから見ていたのだが、作動している後ろ姿に違和感はまったくなかった。

 アイサイトXの制御を外して自らの操作ですべてを感じてみたが、そこでもクルマの安定感、そして何より直進安定性が高かったことが収穫だった。フルインナーフレーム構造の採用をはじめ、クルマの基本性能をきちんと高めたからこそ、アイサイトX制御時の快適性も高いのだろう。

GT-H EXはSTIスポーツとは異なるセッティングで仕上げられていた

 寄居パーキングに入り、STIスポーツ EXからGT-H EXに乗り換える。これは電子制御可変ダンパーを持たないグレードで、こちらはKYB製を採用している。走れば先ほどよりはかなりソフトな乗り心地に感じられる。旧型よりもフロント25%、リア10%サスペンションストローク(STIスポーツはフロント25%、リア5%)を伸ばしたというその動きは、豊かに動くことで路面の荒れを吸収している感覚に溢れている。おかげでこちらも突き上げ感はほとんどない。

 ステアリングフィールはオンセンターが緩い感覚がある。これはフロントの減衰力がSTIに比べて小さく、さらに電子制御パワーステアリングの設定も専用としたことが緩さにつながっているようだ。STIスポーツのピシッとした剛性感とは対極にいる。だが、アイサイトXを起動させると、一気にステアリングをクルマ側が掴んでくれるから、高速巡行での不安感はない。ただ、アイサイトXを起動させないと、微操舵域の緩さと切り込んだときのドッシリした感覚にリニアさが足りない感覚があるから、そこは改めてほしい。ただ、よくよく考えてみれば、今回乗ったSTIスポーツはフルエアロを装備していたのだから、その安定感の高さもGT-Hの物足りなさにつながったのかもしれない。

 そこで、最後にエアロを装着していないSTIスポーツに乗り換えて走ってみた。すると、接地感はたしかに減少している感覚があるし、直進性についても違っていた。もちろん、一気にフィーリングがわるくなるわけじゃないが、初めに感じたよさは、エアロによるものも大きいということが理解できたのだ。やはりエアロを装着すべきか……。新たなる悩みが見えてきた公道ツーリングだった。続きはCar Watchで納車後開始する長期連載でお伝えする予定だ。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。