試乗レポート

マイルドハイブリッド化したボルボ「XC60 R-Design」、新パワーユニットの実力を試す

 ボルボの売れ線SUVであるXC60に、新たなるパワーユニットであるB6ガソリンエンジンを搭載したR-Designが登場した。ボルボは2020年中にすべてのパワーユニットに対して何らかの電動化を完了させる。このB6もその流れに乗り48Vを搭載するマイルドハイブリッドである。

 ポイントとなるのは電動スーパーチャージャーが搭載されているところだ。48Vが搭載されることで可能になったこのシステムにより、CO2の排出量を低減させるだけでなく、ドライバビリティや高出力を可能としながら、エンジンの重量増をそれほどさせずに済んでいる。作動領域は3000rpmまでとなるから、発進やコーナーからの脱出加速時に主に効果を発揮しそうだ。

 そのXC60 R-Designに乗り試乗会場からゆっくりと走り出すと、2100-4800rpmまで400Nmを発揮するだけあって、XC60の巨体を見事に加速させていく。もたつく感覚が一切ないところは見事だ。スーパーチャージャーといえば「ミーン」という音が特徴的でそれが気になるところだが、このユニットからはそんなイヤミな音は聞こえない。快適性を備えながらも機敏に加速するところがマルだ。

 けれども、そこで終わりとならないところがこのB6エンジンの面白さだ。ターボも搭載されており、最高出力は300PS/5400rpmを発生するのだ。おかげで勾配のきついワインディングを走っても、爽快感溢れる吹け上がりをみせてくれる。8速ATギヤトロニックがきめ細やかな変速をしてくれるところも好感触の1つ。今回からのMY21よりディーゼルモデルがラインアップから落ちたが、低速からの力強さと高回転の伸びを併せ持ったこのユニットが代わるなら納得だ。

ボルボ「XC60 B6 AWD R-Design」(799万円)。ボディサイズは4690×1915×1660mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2865mm。車両重量は1940kg(チルトアップ機構付電動パノラマ・ガラス・サンルーフ装着車は+20kg)。R-Design専用フロントグリルを装着するほか、ドアミラーカバやサイドウィンドウ・トリムがブラックアウトされ、印象を引き締めている
マットブラックのペイントを施したダイヤモンドカットデザインの21インチ5ダブルスポークホイール。装着タイヤは255/40R21サイズのピレリ「P ZERO」
リアに「B6 AWD」のエンブレムを装着
エンジンユニットは、直列4気筒DOHC 2.0リッターガソリンエンジンにターボとスーパーチャージャーを搭載し、電気モーターを組み合わせるマイルドハイブリッドシステムを採用。エンジンは最高出力220kW(300PS)/5400rpm、最大トルク420Nm(42.8kgfm)/2100-4800rpmを、モーターは最高出力10kW/3000rpm、最大トルク40Nm/2250rpmをそれぞれ発生する。トランスミッションは8速AT、駆動方式は4WD。WLTCモード燃費は11.1km/L
専用メタルメッシュアルミニウム・パネルを用いてスタイリッシュに仕上げられた内装。シート表皮はR-Design専用オープングリッドテキスタイル/ファインナッパレザー・コンビネーションとなる
オプションのBowers&Wilkinsプレミアムサウンド・オーディオシステム(1100W、15スピーカー)
チルトアップ機構付電動パノラマ・ガラス・サンルーフはオプションで選択可能

 加えてこのR-Designはフロントのコイルスプリング、リアのコンポジットリーフスプリングがおよそ30%強化され、それに合わせたチューニングを行なった専用のモノチューブダンパーやアンチロールバーをセット。さらに電動パワーステアリングの制御も変更が行なわれている。おかげでワインディングではスタンダードなXC60とはまるで違うシャキッとしたフィーリングが得られる。クルマがひとまわりコンパクトになったかのような軽快さを実現するのだ。ステアフィールも確実なインフォメーションがあり、けれども重くは仕上がっていないところが好感触。PHEVと同じブレーキバイワイヤシステムが奢られているが、そのフィーリングも違和感なく仕上がっていたところも抜かりナシ。すべてがワインディングで気を遣わずに楽しめる仕上がりがあった。

 そんな状況を許してくれたのは、R-Design専用装備となるスポーツシートがあったからこそ。SUVであるXC60はもちろん着座位置が高く、目線も高くなるため揺らぎが気になるが、体をきちんとホールドしてくれる環境がなければワインディングでは疲れるばかり。だが、このシートは確実なサイドサポートで体の揺らぎを低減してくれる。それに加えて先述した引き締められたシャシーがあるのだから、車室内に無駄な揺らぎが無くなるのだ。

 インテリアについては大きな変更はないが、シフトノブ脇にスマートフォンを置き、非接触充電が行なえるようになったところはポイントの1つ。さらに、MY21より180km/hリミッターが入ったことや、ケアキーの標準化によってクルマを貸し出す際に任意のスピードリミッターを設定することも可能になっている。走りの性能が高く、自制心がなければかなりのスピードに達してしまうことが容易に想像つくクルマなだけに、この装備はありがたい。これなら、例えば運転ビギナーであるお子さんに貸し出す際にも安心できる。独自の安全思想を常に持ち、他社にリードしてスピードに対する回答を導き出しているところは、さすがはボルボといえる取り組み。これは他社も追従してくるのではないだろうか?

センターコンソールにはスマートフォンの非接触充電が追加された
搭載されるキー2本のうち1本がオレンジ色の「ケア・キー」となり、最高速を任意に設定できるようになっている

 電動化を突き進みつつ、走りも諦めないという姿勢をキープし、安全に対しても回答を備えるボルボの進化は、やはり見どころのあるものだった。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はスバル新型レヴォーグ(2020年11月納車)、メルセデスベンツVクラス、ユーノスロードスター。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学