試乗レポート

スバルの新型バッテリEV「ソルテラ」を雪上試乗

大雪に見舞われた群馬サイクルスポーツセンターを走るスバルのバッテリEV「ソルテラ」

雪に映えるスバルのバッテリEV「ソルテラ」

 スバルのバッテリEVである「ソルテラ」はラテン語の太陽を意味するSOLと地球を意味するTERRAを組み合わせた造語で明るい未来への願いを込めたようなネーミングだ。

 共同開発のトヨタ「bZ4X」はすでに袖ケ浦フォレストレースウェイでオンロード試乗を行なっている。今回のソルテラはスバルらしく雪上試乗だ。試乗コースとなった群馬サイクルスポーツセンターは折からの大雪で深雪となり、途中の山道も結構な雪でグンサイは空いているんだろうか心配になるほどだった。

スバルの新型バッテリEV「ソルテラ」を雪上試乗した

 ソルテラのデザインはbZ4Xと基本的に共通だが、フロントマスクのデザインはスバルらしくヘキサゴングリルが特徴となっている。バッテリEVなのでエンジン車のような大きな冷却開口部は必要ないが、歩行者保護の観点から両車ともフロントマスクが立ち上がったデザインとなっている。

 開発はトヨタとスバルの得意分野を持ち寄って行なわれた。例えば車体の設計には4WDで培ったスバルのノウハウが反映されている。バッテリEV専用のプラットフォームはフォレスタ比でねじれ剛性は1.3倍にもなり、軽量高剛性が特徴だ。ガソリン車では床下に前後に入るフレームがバッテリEVではフロア下にバッテリパックを配置し、それ自体が構造材となるような設計を行なっている。バッテリ保護は徹底しており、側面衝突でも横方向に入ったメンバーで充分な安全性が担保されているという。

スバル「ソルテラ」はトヨタ「bZ4X」とフロントやリアまわりのデザインが異なっている
デザインだけでなく、走りにもそれぞれのメーカーの考え方が反映されたチューニングが行なわれていた
ヘッドライト
コの字状の意匠が組み込まれている
リアコンビネーションランプも同様に

 ホイールベースは2850mm。奇しくも新型ノア/ボクシーも2850mm。3列シートのミニバンと同じロングホイールベースで足元の伸びたフラットなフロアが特徴だ。またボディの環状構造は強固でスバルの得意とする技術でもある。

回生量をコントロール可能なバドルシフトを装備するソルテラ

ソルテラのコクピット

 インパネもbZ4Xと共通で小径ハンドルの上からメーターを見るスタイルだ。スバル専用なのはパドルシフト。減速時の回生量を変えることでブレーキを活用できる。トヨタとスバルのキャラクターの違いはこのパドルにも表われており、トヨタはこれから展開していくバッテリEV第1号の自負を持ち、スバルはスバルらしい走りを打ち出した結果となる。

 ショクアブソーバーの減衰力もソルテラ専用となる。bZ4Xではバランスを優先しているのに対し、ソルテラでは旋回時のロール特性を重視した結果、圧側を強くしている。

ステアリングホイールまわり
トヨタ「bZ4X」とは異なる装備、パドルシフト

 重量配分は4WDでは前後50:50に近く、各軸に垂直方向に荷重が乗るようにレイアウトされている。駆動力配分は50:50がベースで概念的には40:60ぐらいに前輪の駆動力を下げて後輪駆動的な動きを可能とする。

 4WDモデルの場合、駆動モーターは前後とも80kWの出力を出しトータル出力は160kWになる。ちなみにバッテリ容量は71.4kW、車両重量は2020kgだ。

 スバル専用チューニングの3点目は電動パワーステアリングだ。操舵力をコントロールしてスバルのこだわる操舵感としている。

フロントシート
リアシート
ラゲッジルーム
リアシートを倒してラゲッジスペースを最大に

スバル主導で行なわれたツインモーター4WDの制御開発

大雪の中を走るソルテラ

 早速ソルテラで積雪路面に乗り出そう。装着タイヤはブリヂストンのスタッドレスタイヤ ブリザック 235/50R20である。コースは約6Kmのワインディングロード。ドライならばミニニュルブルクリンクのようなアップダウンの大きな道幅の狭いコースだ。

 アクセルストロークはそれほど大きくないが、踏み始めのトルクが上手にコントロールできており、雪の中をスマートに走り出す。強くアクセルを踏んでも左右輪均一にトルクが伝わり直進安定性が高いのは気持ちがよい。4WDのジワリと路面を踏みしめながら走る感触は安心感がある。

 コースはまっすぐなところがないほどで雪面には轍ができており、ときおり姿勢制御のためにトラクションコントロールが作動する。

 全幅1860mmは雪で狭くなったコースにはちょっと幅広だが、コントロールは意外と楽だ。前後輪のトルク配分は前述のように基本50:50だがコーナーでハンドル角やスリップ量を検出して相対的に後輪の駆動力が増すのが分かる。旋回力はかなり高くライントレース性は優れている。アクセルを浅く開けている場面でのライントレース性は予想以上に高いかった。その潜在力に感心する。

 ちなみに曲がるための左右ベクタリング制御は行なわないが、危険を検知した場面ではVSCが介入し左右ブレーキ制御が入る。

 タイヤのグリップ限界以上のことはできないが、雪の中でモーター4WDの実力を体感することができた。

 これらの4WDの制御はスバル側が主導して行なったという。試乗後のワークショップで「EVでやりにくかったことは?」との質問に対して、「電気モーターのためにできることが多すぎたのが大変だったが、結局はスバルがこれまで培ってきた4WD制御と考え方が変わらないことを確認した」との回答だった。

 改めて感心したのはボディ剛性の高さ。路面はフラットではなく常にショックが入ってくるがボディはミシリとも言わない。最低地上高は200mmと高く、荒れた路面でも轍の山と接触することはない。また凹凸の波状路でもサスペンションはよくストロークしてくれる。大きなギャップでない限り底づき感はなかった。

 EPSは切り込んでいくと操舵力は微妙に重くなるよう設定にされており雪の中でも手応えを常に感じられる。bZ4Xと同じ路面ではないので比較するのは難しいが、ソルテラは荒れた路面で比較的フラットな姿勢を保てたと思う。

 エンジンを搭載しないバッテリEVはいつの間にか速度が上がっていく。キャビンは静かで乗り心地もよく、厳しい外界と隔絶した空間だ。そんな空間でブレーキペダルを踏むと想定以上にストロークが短く、コントロール幅が狭くABSが作動する。タイトコーナーのアプローチで一回ABSが作動したが、すぐに姿勢を回復してグイグイと曲がっていった。

 ソルテラの雪上ドライブはバッテリEVでの低ミュー路の可能性を示してくれた。ポテンシャルは高い。

Xモードで走行中
Xモードに設定し、グリップコントロールで5段階に走行速度を固定できる
ドライブセレクタの左側にXモードやグリップコントロールのスイッチ類が並ぶ

 もう一つの体験はXモードだ、滑りやすいモーグル路面をXモードにし、さらに速度をグリップコントロールで微低速に固定すると2輪が浮いた状態でも脱出できる。スリップしてもう少し駆動力がほしいと感じた時は少しアクセルを足せば簡単に脱出できた。駆動力は直結4WDに匹敵する可能性を持っている。Xモードはハンドルに集中できるのが利点だが、ドライバーのブレーキやアクセルでそれをオーバーライドすることが可能だ。

 ソルテラ、bZ4Xは寒冷地などの環境でもバッテリの経年劣化が小さく、性能維持ができるように温度コントロールされており大切な資源を有効活用することにも力が注がれているという。これからリアルワールドでさらに多くのデータが集まるだろう。バッテリEVの今後の進展も占う意味でもこの両車は注目される。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛