試乗レポート
プジョーの新型コンパクトハッチ「308」 ディーゼル&ガソリン両モデルを乗り比べ
2022年4月29日 08:00
デザイン・走り・使い勝手を高めたCセグハッチバック
プジョー「308」は、フォルクスワーゲン「ゴルフ」を筆頭にしたCセグメントの激戦区に投入されたプジョー最新鋭のハッチバック/ワゴンだ。実に9年ぶりのフルモデルチェンジとなる。
新生308は従来モデルよりもふたまわりほど大きく全幅はこれまでの1805mmから1850mmとDセグ並みだ。全長は4275mmから145mm長い4420mmに変わり、ホイールベースは2680mmと60mm伸びている。これによる後席の恩恵は大きい。
新生308はEMP2 Ver.3のプラットフォームを採用しているが、先代のVer.2から5割以上が変更されており、ほぼ新開発だ。今後の電動化にも対応したプラットフォームになっている。
今回試乗できたのは初期導入されたディーゼルとガソリンのハッチバック。グレードはアリュールとなる。ディーゼルは欧州車の中でも珍しい小排気量1.5リッターターボディーゼルの4気筒。一方のガソリンは1.2リッターの3気筒ターボ。いずれのエンジンも従来型からのキャリーオーバーだ。
販売ボリュームの大きなディーゼルから試乗する。タイヤはミシュランのプライマシー4、サイズは225/45R17を履く。ちなみにガソリン車も同じタイヤを履く。
デザインは308の大きな魅力の1つで、ロングノーズは最近の欧州車のトレンドだ。まるでFR車のような位置にタイヤを配置している。また、サイドはフロントのホイールアーチ上に入ったプレスラインとリアに至るの巧みな造形が、長くなったボディに冗長なイメージを与えない。エッジが効き、それでいてプジョーらしい優しい面構成で麗しい。
大きなフロントグリルには新しいプジョーのエンブレムが付く。その裏にはADASのレーダーが配置されデザインを邪魔しない。ヘッドライトは薄いマトリックスLEDで彫りが深く、正面からの空気を上に流し、リアに流れた空気をルーフ後端のロングスポイラーで整流する。これも308を特徴づけている。
プジョーらしく体全体をサポートする大きな高密度クッションのシートに座る。308のインテリアのもう1つの特徴であるi-Cockpitはドライバー前の10インチモニターとダッシュボードセンターの10インチタッチスクリーンで構成され、操作も感覚的にでき、簡単で使いやすい。
ステアリングに手を置くと最近のプジョー車で使われている楕円小径ステアリングで、ドライバー正面のモニターはそのステアリングの上から見る形になる。必然的に若干低い位置にステアリングが来るので独特なドラポジになるが、試乗中、郊外路からワインディングロードまで走るに従ってすっかり慣れてしまった。ステアリングのロック・ツウ・ロックは3回転。通常は2回転半ぐらいだが小径ステアリングで操舵量が多いという感覚はない。
最初にこのスタイルを導入した208ではスポーツグレードだったこともあり、少し過敏で苦手だった。しかし308 アリュールでははるかに落ち着いており安心した。
新世代のi-Cockpitと対をなすプジョー初となるi-Connectは、センターモニターの下部にナビやエアコン温度、電話、オーディオ、アプリケーションなどをショートカットできるタッチスイッチがあり、オーナーの嗜好に応じてカスタマイズできる。またセンターモニターはタッチスクリーンで、左右にスクロール、上下にスワイプしてそれぞれの表示を変えられる。さらに3本指でアプリケーションリストを表示させることができる。
GTグレードになるとi-Connect Advancedになり、音声認識が進化して「OKプジョー」でナビ、エアコン、オーディオなどを起動できる。音声認識はAIによってかなり柔軟な受け答えができるという。
まずはディーゼルモデルを走らせる
エンジンを始動すると聞きなれたディーゼル特有の音が入ってくるが、振動はかなり抑えられている。130PS/300Nmのクリーンディーゼルは低回転から力がありどんな場面でも使い勝手がよい。アイシン製の8速トルコンATもステップ比が抜群で細かく変速し、低回転でどんどんシフトしていくがショックをほとんど感じない。一定の回転で回るエンジンの鼓動はリズミカルだ。多段化による変速の煩わしさはない。
アップダウンのきつい山道ではトルクの大きさでグイグイと引っ張っていく。タイトなコーナーでも低い回転からも加速していき、力不足はまったく感じない。日本市場では最小排気量のディーゼル乗用車だがポテンシャルは高い。
ワインディングロードでも力強いドライブができたが、エンジン特性はやはり高速道路のクルージングでの相性がよさそうだ。多段化で低回転でユルユル回るエンジンで流すと気持ちがよいに違いない。WLTCモード燃費は21.6km/Lの実力を持つ。
高速道路ではACCを多用するが、これまでの308ではステアリングスポークの左側から出ているレバースイッチで操作する必要があり、ドライバーの視界からまったく隠れてしまっていた。308では一般的なステアリングスポーク上に移り、ストップ&ゴー機能も持っている。
ADAS系ではマルチファンクションカメラにフロント/両サイドカメラが加えられ、後左右レーダーを持つことでグレードアップしており、ADAS系の進化は目覚ましい。
ハンドリングでは車体剛性が飛躍的に高くなり4輪の接地力が高い。これまでのサスペンションとボディとのコンビネーションで旋回していく感触がガラリと変わって、ねじれ剛性の高いプラットフォームに合わせてサスペンションセッティングがされ、ドイツ車とも違うがこれからのプジョー量産車の方向を感じた。
308にはより重量の重いPHEVも控えており、プラットフォームもこれらに合わせて作られており、より軽量なICEでは余力ができるのも納得だ。
それゆえ、乗り心地も腰の強いものになっている。強いと言ってもゴツゴツとしたものではなく、バネ上の動きがフラットなのはプジョーらしい。サスペンションはフロントにストラット、リアはトーションビームを採用してよくチューニングされている。斜めに路面の継ぎ目を乗り越えるときには少しアシがバタつくものの、大きなウネリは強いショックを伝えることなく通過する。
遮音性も高く、走行中のロードノイズやディーゼルノイズは耳に入るものの突出した音はカットされているのでうるさく感じられない。
ガソリンモデルの印象は?
ガソリン車も試乗した。エンジンは1.2リッターの3気筒ターボだ。130PS/250Nmの出力は308のパフォーマンスにとって十分に軽快に走らせることができる。
ディーゼルはドッシリした走りが特徴だが、3気筒ガソリンターボエンジンはフロントノーズが軽く軽快だ。そのためステアリング回答性が高く、山道も気持ちよく走れ、重量バランスにも優れている。
またドライブモードもスポーツ、ノーマル、エコでメリハリがあり、スポーツモードでは出力特性がガラリと変わりグンと前に出る。8速のパドルシフトを積極的に使うとコーナーの形に合わせたギヤを自分で選択でき、さらに力強く感じる。エコではアクセルレスポンスが鈍くなるが、通常の走行では穏やかだ。燃費はWLTCモードで17.9km/Lとされる。
乗り心地はディーゼルと大きな違いはないが、突起乗り越しではガソリン車の上下動が少し大きい。
価格はガソリンのアリュールで305万3000円。ディーゼルのアリュールで327万7000円。基本的な装備は充実しており、SUVだけでなくCセグメントハッチバックももう一度振り返ってみてはいかがだろう。
【お詫びと訂正】記事初出時、一部表記に誤記がありました。お詫びして訂正させていただきます。