イベントレポート 東京オートサロン 2020

戦うための4WDスポーツ、「GRヤリス」をTOYOTA GAZOO Racing友山氏がプレゼン

モリゾウ氏もサプライズで登場したカンファレンスレポート

2020年1月10日~12日 開催

入場料:特別入場券3500円、大人一般入場券2500円、中・高校生一般入場券1800円(全日とも保護者同伴に限り小学生以下無料)

ワールドプレミアとなった「GRヤリス」

 幕張メッセ(千葉市美浜区)において「東京オートサロン 2020」(1月10日~12日)が開幕した。トヨタ自動車のブースでは、各メーカーの先陣を切って「TOYOTA GAZOO Racing プレスカンファレンス」が行なわれた。ヤリスWRCやセリカ(サファリラリー仕様)、そしてベールをまとったクルマが並ぶステージに登壇したのは、GAZOO Racing Company President 友山茂樹氏(トヨタ自動車 副社長)。

ステージ上にはヤリスWRCとベールを纏った謎のクルマ
GAZOO Racing Company President 友山茂樹氏

 冒頭、昨シーズンのレース活動における成績に触れ、FIA世界耐久選手権(WEC)でチームタイトル、ドライバーズタイトルを、FIA世界ラリー選手権(WRC)ではドライバーズタイトルを、国内でもSUPER GTやスーパーフォーミュラ、全日本ラリーにおいてもシリーズタイトルを獲得するなど、実り多い年になったと振り返った。今年度についてはWRCがセバスチャン・オジエ選手の加入など体制を一新したほか、SUPER GTではGRスープラのデビューといったトピックがあることについて触れた。

GRヤリス

 常々、「モータースポーツで鍛えられたノウハウと人材で、世界に通用する市販スポーツカーを世に出す」と宣言していたTOYOTA GAZOO Racing。その第1号となったGRスープラはレースから生まれたモデルであり、それに続くヤリスは「市販車ベースの車両で、お客様が普段使う一般道で行なう競技であり、世界中のあらゆる道を疾走する過酷なWRC」から生まれたモデル。「戦うための4WDスポーツ」だと説明し、「GRヤリス」をアンベールした。

アンベールされたGRヤリスとヤリスWRC
GRヤリスをラリー王国トヨタを不動のものとするウエポンと紹介

 ワールドプレミアとなった同モデルについて、友山氏は「ラリー王国トヨタを不動のものとするウエポン」と紹介。その誕生の経緯について、2014年の夏にトミ・マキネンと意気投合したモリゾウ(豊田章男氏)がWRC参戦を決意、2016年秋に完成したテストカーに試乗した際、「世界ラリーで通用する市販4WDスポーツ、しかも次期WRカーのベースとなり得る市販車」の開発を指示したと紹介した。ただし、トヨタにとってはセリカGT-FOUR以来、20年振りの本格的4WDスポーツ車の開発となることもあり開発は難航。まだ、モリゾウからは「合格点」をつけられておらず、発売ギリギリまで改善を続けているという。

 続けてGRヤリスの細部について触れ、「コンパクトな1.6リッター・ターボエンジン」「272馬力のパワーを伝達する新開発のフルタイム4WDシステム『GR-FOUR』」「リアに専用のダブルウィッシュボーン」「トレッドは86よりワイド」など述べるとともに、「フロントフード、左右のドアパネル、バックパネルはアルミ製、ルーフにはカーボンを採用し軽量化を図ると同時にバッテリーをリアに配置」するなど重量配分にも気を配っているとした。そのうえで、GRヤリスは「多くのお客様にクルマを操る楽しさを教えてくれる」クルマであり、「お客様の心に『FUN TO DRIVE AGAIN』の想いを呼び覚ましてくれることでしょう」と述べた。

GRヤリスはクルマを操る楽しさを教えてくれると紹介

 ここでモリゾウからのビデオレターを紹介。モリゾウは「自らの手で作るスポーツカーが欲しい」「(WRCからのフィードバックを活かして)トヨタのスポーツカーを作りたい」との思いを吐露。そのためにGRヤリスは、普通の市販車をスポーツカーに仕上げるのではなく、世界で勝つためにトヨタが一から作ってきたスポーツカーを普段使いできるようにするためにはどうあるべきか、とまったく逆転の発想で作り出したとコメントした。

 これを受けて友山氏はGRファクトリーを紹介。この新設された製造ラインは「複数のセルをAGVで繋ぐコンベアレスのボディと組立ラインで構成」することで「スポーツカーには不可欠なボディの高剛性化と、超高精度の組み付け作業」や、「少量生産車にありがちな変種、変量にも生産性を落とすことなく対応可能」だと紹介した。加えて「トヨタ全社から熟練工が集めらて技能伝承の場として活用」しており、「大量生産から造り手の意志がこもった多品種少量生産へ」と新しいモノづくりのあり方にも挑戦していると述べた。

発売時期は夏ごろ。同時に期間限定の発売記念モデルを発表

 気になる発売時期については「本年夏頃」だとしたうえで、同日(1月10日)から先行予約の受け付けを開始。さらに、6月30日まで期間限定で注文を受け付ける発売記念モデル「GRヤリス -1st Edition-」の存在を明かした。

 最後にGRヤリスについて「忘れかけていた喜びを呼び覚ますために生みだされたクルマ」であると述べるとともに、「次の100年もクルマが子供たちの心をときめかせる存在であり続けるために、TOYOTA GAZOO Racingの挑戦は続きます」と締めくくった。

ビデオレターでの登場のみかと思われたモリゾウがサプライズで登場し、友山氏と小芝居(?)を披露
タイの「トヨタプリティ」とステージに
「モリゾウis back!」と東京オートサロンに帰ってきたことを宣言

GRヤリス -1st Edition-

 GRヤリスの発売を記念して期間限定で受注を受けるモデル。通常モデルはまだスペックが公表されていないが、こちらはある程度細かな情報が発表された。このモデルにはマットブラックのラジエターグリルやフロントサイドディフューザーのほか、専用リアバンパー、専用リアスポイラーなどを装備する。

 グレードは「RZ」と「RZ “High Performance”」の2タイプ。後者はBBS製鍛造18インチアルミホイール、フロント&リアのトルセンLSD、冷却スプレー機能付きのインタークーラー、プレミアムスポーツシートなどを装備する。価格は順に396万円、456万円。ボディカラーは「スーパーホワイトII」のほか、オプションとして「プラチナホワイトパールマイカ」「エモーショナルレッドII」「プレシャスブラックパール」が設定される。

スペック

エンジン型式:G16E-GTS
排気量:1618cc
方式:直列3気インタークーラーターボ
トランスミッション:6速MT
駆動方式:電子制御4WD
乗車定員:4名
最高出力:200kW(272PS)
最大トルク:370Nm(37.7kgm)
ボディサイズ:3995×1805×1460mm(全長×全幅×全高 社内測定値)

撮影車両のグレードはRZ “High Performance”

GRヤリス プロトタイプ

 標準モデルに関してのリリースは行なわれず、会場に展示されているモデルはプロトタイプとなる。

GRヤリス プロトタイプ
市販(予定)パーツによるカスタマイズモデル
カスタマイズパーツも展示されている。ディーラーで販売するかは検討中とのこと
駆動系の展示もある

その他展示車両

GT500仕様やGT4仕様のスープラなど数多くの車両が展示されている
過去のスープラ用パーツの販売も予定。ユーザーからの希望も受け付けているという
トロフィーの展示。ル・マン24時間レースのトロフィーはブランド物バッグも込みだとか(ただし貸与品)

安田 剛

デジモノ好きのいわゆるカメライター。初めてカーナビを購入したのは学生時代で、まだ経路探索など影もカタチもなかった時代。その後、自動車専門誌での下積みを経てフリーランスに。以降、雑誌やカーナビ専門誌の編集や撮影を手がける。一方でカーナビはノートPC+外付けGPS、携帯ゲーム機、スマホ、怪しいAndroid機など、数多くのプラットフォームを渡り歩きつつ理想のモデルを探索中。