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北村友里恵のマツダ車が実現する“人馬一体”を一気乗りで体感!!
歴代ロードスター試乗や防府工場見学もしてきたぞい
2018年4月7日 17:31
マツダのクルマ作りで重要となるキーワード“人馬一体”。この人馬一体とはなんぞや? ということを身をもって感じる編集者向けの体験会が3月9日~10日に山口県で行なわれた。
この体験会では、マツダが“新世代商品”と呼ぶ「CX-5」、3代目「アテンザ」(海外名:Mazda6)、3代目「アクセラ」(海外名:Mazda3)、4代目「デミオ」(海外名:Mazda2)、「CX-3」、4代目「ロードスター」(海外名:MX-5)に「CX-8」を加えたフルラインアップの一気乗りや、歴代ロードスターの乗り比べ、防府工場の見学といったプログラムが行なわれた。
運転のしやすさに考慮したドライビングポジションのこだわり
試乗の前には人馬一体に関する説明が行なわれ、そのなかで特に印象的だったのが、マツダのクルマ作りは日常で使用する範囲の使い勝手を最優先で行なっているということ。
記者もこれまで“走り”というと、サーキットなど“走るための場所”での走行のことばかりを考えていた。しかし、マツダは限界性能域ではなく、街中で走行する際の低速~中速域での車両の扱いやすさや、高速道路を走行する際に疲れにくいドライビングポジションといった部分を中心にクルマ作りを行なっているという。
具体的には、マツダは腰に負担の少ない運転姿勢をとれるようにするための取り組みとして、これまでフロントのホイールハウスの横に位置していたため、左にオフセットしていたアクセルペダルとブレーキペダルの位置を、CX-5、アテンザ、アクセラで50mm、デミオでは80mmもフロントホイールの位置を前方へ動かすことで、アクセルペダルとブレーキペダルの位置を右へ寄せて最適化したのだという。
さらに、吊り下げ式ではなくオルガン式のアクセルペダルを採用し、足を床に置いたままふくらはぎだけで操作をできるようにした。このことで渋滞などの低速走行時に必要となる微妙なアクセルワークをしやすくしているほか、足の動きを減らし、高速道路など長時間同じ姿勢で運転するような場合でも疲れにくくなっているという。
これらのことにより、コンパクトサイズのデミオからSUVのCX-5、さらにはロードスターまで、新世代商品ではブレーキペダルとアクセルペダルがほぼ同じ位置に設置されることとなった。そのポジションは足下の写真だけでは車種を当てられそうにないほど本当にそっくり。そして、このどのモデルでもほぼ同じポジションが、クルマの個性をより分かりやすくしているということに試乗をして気が付いた。
ここまで違う!? モデルごとのエンジンや足まわりの“個性”
試乗はマツダのテストコースがある美祢試験場のサーキットコースで行なわれ、車種はSKYACTIV-Gを搭載したガソリンモデルの「デミオ」(1.3リッター、4WDモデル)、「アクセラ スポーツ」(1.5リッター、FFモデル)、「アテンザ セダン」(2.5リッター、FFモデル)、「ロードスター RF」(2.0リッター、6速AT仕様、FRモデル)と、SKYACTIV-Dを搭載したディーゼルモデルの「CX-3」(1.5リッター、4WDモデル)、「CX-5」(2.2リッター、4WDモデル)、「CX-8」(2.2リッター、4WDモデル)の7車種。
試乗の前には正確なドライビングポジションを決めるため、マツダの「人馬一体アカデミー」のスタッフが1人ずつ、細かく着座位置をレクチャーした。
簡単に説明すると、シートの前後位置をブレーキペダルがしっかりと踏み込めるところで合わせ、座面の高さをボンネットのワイパーに近い位置が少し見えるくらいに合わせる。ここで若干足下が狭く感じるようであれば再度シートの前後位置を調整。背もたれは最も立てた状態から徐々に倒していき、お腹に入っていた力がちょうど抜けるくらいの角度に合わせ、最後にステアリングホイールの位置を腕を伸ばした状態でステアリングホイールに手首が乗るくらいに合わせる。
そうすると、ちょうど身体のどこにも無駄な力が入っていないゆったりとした姿勢となり、マツダが考える理想の“脱力状態”となるのだ。
このドライビングポジションはデミオからCX-8まで全ての車種で合わせることができた。ただ、ロードスターだけは座面を高くすることができない仕様のため、少し前方が見づらいこともあったが、マツダのスタッフによると、これは今後発売される予定となるオプション品の専用クッションで解消することができるという。
そして、理想のドライビングポジションをとり、サーキットコースではありながらもおよそ30km/h~60km/h程度で試乗したマツダのフルラインアップは、どのモデルでも同じように運転操作ができるからこそ、それぞれの個性が引き立つのだと感じる楽しいものだった。
ボディが小さいデミオとCX-3はとても軽快に走るところは共通でありながらも、ガソリンエンジンを搭載するデミオはアクセルの踏み込みにとても素直で、日常でストレスなく使えそうな印象。一方で、CX-3はディーゼルエンジンならではのトルク感をしっかりと味わうことができ、日常使いはもちろん週末にちょっと足を伸ばしてドライブしたくなるようなワクワク感があった。
スポーティな走りを楽しませてくれたアクセラ スポーツとアテンザ セダンでは排気量の違いを肌で感じ、1.5リッターのアクセラは身近で手の届くところで楽しめるような、2.5リッターのアテンザは余裕があってどこまでもクルマがリードしてくれるような、そんな印象を受けた。
そして、同じ2.2リッタディーゼルエンジンを搭載するSUVのCX-5とCX-8は個性の違いがとてもはっきりとしていた。ステアリングの応答もよくキビキビと走り、しっかりとロールを感じる印象のCX-5と、ゆったりとしたハンドリングで身体に感じるGもふわっとして高級感のあるCX-8。近いスタイリングの2台でも走りはそれぞれ全く反する印象で、用途や好みによってきちんと選択肢が分けられているのだと思った。
最後に試乗したリトラクタブルハードトップのロードスター RFは、オープンの状態でも風の巻き込みが少なく、まさに路面に吸い付くような走りでATモデルでも十分にその性能を体感できた。コーナーでは狙い通りのラインにスッと入り、ブレーキを踏めば思った通りに減速をしてくれる。まさに人馬一体の走りを体感させてくれた。
思いっきりアクセルやブレーキを踏むでもなく、日常生活で多用する速度域で加減速がスムーズにでき、ステアリングを切れば素直に反応して、エンジンの違いや足まわりの違いといった個性を感じることができる。そうやって運転を楽しむことができる。マツダの方が話していた「日常ユースで意のままに操れることが、安心・安全で楽しい運転に繋がる」という言葉に納得したフルラインアップ試乗だった。
個性抜群の歴代ロードスター
歴代ロードスターの一気乗りでは、現行型のND型、初代のNA型、2代目のNB型、3代目のNC型の順に試乗することができた。どのロードスターもトランスミッションはMT仕様で、ワインディングコースとパイロンスラロームが用意されたフリーフラット路を走行した。
どのモデルもまるで1本の“ロードスター”という筋が通っているかのような印象。シフトチェンジの感覚は小気味よく、ワインディングコースでアクセルを踏み込んだときには心が沸き立つようなエンジン音と加速感を味わうことができ、スラローム路では足まわりを支える心地よい硬さのサスペンションと、素直なステアリングの応答性でストレスなくするすると走ることができた。
また、モデルごとにインテリアの質感が異なるところも興味深かった。特に、黒を基調にしてスポーティな印象のND型から、NARDI製のウッドステアリング&シフトノブを備える初代NA型に乗り換えたときには懐かしい気持ちになり、2代目、3代目と重厚感が増していくインテリアに時代を感じた。
そんな中でも、身体を適度にサポートしてくれるシート、低い視点、手の届く範囲にまとめられた操作器類は歴代モデル同じで、運転しやすい環境を整えるインテリアということは共通していた。
いくつもの車種が同一ラインで生産される防府工場
ほかにも、体験会では防府工場の見学も行なわれた。主に登録車を生産する西浦地区にある工場は、デミオ、アクセラ、CX-3を生産するH1工場と、アテンザ、CX-5を生産するH2工場の2つに分かれ、年間で合計41万6000台を生産。今回見学できたのはH2工場で、主に海外向けの車両が作られていた。
この防府工場では、シャシー設計の工夫により1本のラインで複数の車種を製作できるようになっていて、徹底的に管理された部品の発注システムや鉄板の型抜き技術により、ほぼ在庫を持たない状態で操業を行なっているという。
また、“見る人全ての心を豊かにする”という「魂動デザイン」の一端を担う塗装ラインも見学することができた。マツダを象徴する「ソウルレッドクリスタルメタリック」は、第1ベースには水平のアルミフレークを混ぜたメタリックカラーを塗布し、第2ベースは高彩度赤顔料を含んだ半透明ソリッドカラーの透過層とし、最後にクリア層を重ね……と、非常に手の込んだ塗装が行なわれている。
しかも、アルミフレークのばらつきを無くすために大きさの工夫を重ねたり、下の塗装が乾いていない状態で次の塗装を吹き付けるため、色が混ざらないようにする配合を考えたり、色むらが発生しないように塗装を吹き付ける機械のプログラミングを開発したりと、実現に至るまでもさまざまな試行錯誤が行なわれている。
そんな塗装ラインでも、ソウルレッドクリスタルメタリックの次は「マシーングレー」だったり、流れてくる車両に吹き付けるボディカラーはバラバラ。色が混ざってしまうことはないのかと思ったのだが、異なる色を塗布する前には機械が自ら塗料吹き出し口を洗浄して、次の色を吹き付けるようにプログラムされていた。
マツダのクルマ作りを学び、実際に試乗してそのこだわりを体感した体験会。ぜひ皆さんも、正しいドライブポジションでマツダ車を試乗して、そのこだわりを感じていただけたらと思う。