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SUPER GT開幕戦で、NSX-GTの1-2フィニシュの原動力となった100号車 RAYBRIG NSX-GT 山本尚貴選手に聞く
2018年5月3日 12:02
- 2018年4月7日~8日 開催
SUPER GTの開幕戦「2018 AUTOBACS SUPER GT Round 1 OKAYAMA GT 300km RACE」が、4月7日~8日の2日間にわたって岡山国際サーキット(岡山県美作市)で開催された。
レース結果は関連記事「【SUPER GT開幕戦 岡山】GT500は17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史組)がポール。注目のジェンソン・バトン選手は決勝レース5位からスタート」「【SUPER GT開幕戦 岡山】ツノが生えても17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史組)がGT500を優勝。2位は100号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン組)」で紹介したが、ここではタイヤ無交換作戦で2位に入り、NSX-GTの1-2フィニッシュを演出した山本尚貴選手のレース後のインタビューをお届けする。
山本選手:ホンダにとっては、去年の今頃は全車トラブルが出てくやしい思いをしたなか1年間過ごしてきて、リベンジという言葉がぴったりとあてはまるようなレース展開と、1-2を達成することができたのでみんなの努力が少し報われたかなと思いますし、本当に努力してくれたさくらとチームのみんなに、そして今年一緒に組んだJBに感謝しています。
──ピットストップの前に、JB(ジェンソン・バトン選手)から引き継いだときに6番手、7番手だったと思うのですが、そこから17号車の前に出ることができたのは、なにがよかったのか?
山本選手:(タイヤ)無交換です。順番がJBが8位とかまで1回ドロップしたのを見て。ただ、クルマの調子はウォームアップも含めて、調子がよいというのは分かっていたし、ちょっと彼がピックアップやタイヤの問題でテストの段階から苦労していたのは分かっていたのです。僕はその状況でもうまく乗れていたのも分かっていたので、JBがちょっとつらいって言っても、もうしわけないけど、自分ならまだやれるというのでチームにお願いして、ここからポジションを上げるにはギャンブルをするしか前に出られないし、最後タイヤがなくなったり、もっとピックアップがひどくなったら、ゴメンって先に謝っておいて。でも、「最後なんとかしてくるからこのまま行かしてくれ」って言って、チームもBS(ブリヂストン)もOKを出してくれて。結果それがウォームアップで苦しんでいる間に全部抜いてこられたし、最後楽ではなかったですけど、なんとかタイヤも持たせられたし。
──では、(タイヤ無交換は)今朝、決められたことですか?
山本選手:今朝ではないです。さっきです。JBが走っている間に。ピットインするというタイミングで「ゴメン換えないでくれ」ってお願いしました。昨日(予選日)のミーティングとかで、無交換ってあるのかなみたいな話は打診したのですが、「いやーっ」ていう感じでチームは悩んでいて、だけど無交換になってもいいように、内圧だったり、キャンバーだったり、タイヤのケアができるようにクルマをしておいてくださいとはお願いしたので。という準備があったので、その戦略を採れるなと思って。
──では、バトン選手は無交換だと思ってスタートしたわけではないのですね?
山本選手:(バトン選手はタイヤ無交換と思ってスタートしたわけ)ではないです。多分彼がセカンドで行くのであったら、タイヤ交換したほうがいいとは思っているし、言ってはいたのですが。だけど、彼とテストをしてきたなかで、彼の様子だったり、チームの様子を観察している中で、彼がちょっとだけピックアップに対して、クルマの状況に対して、まだ信頼し切れていなくて、不安な様子だった後に自分が乗り代わると、タイムがうまく出せていたので、その辺もテストのときから見ていたので、今回は自分のほうがうまくやれそうだなと思ったので、JBの無線を頼りに……。
──バトン選手が、タイヤを無駄に使わないというのは分かっていた?
山本選手:(うーんと考え込んで)。いや、無駄に使わないわけではないですね。ペース的にはそんなに早い(レースでは)なかったので、結果的にはそれがタイヤに対して攻撃性がなかったと自分では思っているので。だから、彼が今ペース的に苦しんでいるけど、逆に彼がそのペースで走ってくれているのも分かっていたから、自分ならちょっとタイヤを使っていてでも、今回は、とくに今回はウォームアップの差で違いが出るなと感じていたので、そこで逆転するしかないなと思っていた。
──予選終了後の時点で聞いたときには、「スタートドライバーはこれから決めます」と言っていましたが、するとそのときには山本選手の中では自分が後乗りだなと考えていたということですか?
山本選手:考えていました。ずっと。もちろんチームを信頼しているし、チームが最後は決めなければならいのですが、ドライバーとしての責任もあるし。もちろん今回はそれが当てはまったから胸を張って「自分で決めて、自分が(走りが)よかったです」と言えるのですが。ま、これが外れる可能性もあるし。
──予選もドライで走れていない、ロングランは見えているタイヤがない状況だったのでは?
山本選手:岡山のテストを頼りに決めました。ま、それはJBがずっと乗っていたというのを外から客観的に見られたというのも1日目はとくにあったし。その状況から、2日目に彼が乗った後で自分が乗ったら、彼よりもちょっとペースがよかったので。タイヤもうまく使えていたのが分かっていたので。その自信ですかね。そのときの確信と自信を今回信じて。
──岡山テストのときにJBが作ったクルマが、タイヤに優しい方向のクルマだったのですか?
山本選手:彼が作ったというよりは、もともとSAKURAとチームで用意したクルマでそのときのコンディションに合わせて微調整しただけになります。彼が今までよりもクルマを大幅に変えたかというと、正直そう言うことはないし、でも、彼の微調整はわるい方向ではなかったし、2日目一緒にクルマを作った中でうまい方向にいったなというのが、今回の結果から見て取れたかなと。
──岡山テストを外から客観的に見られたというのがポイント?
山本選手:正直、ドライバーとして乗れない時間がある、(乗れないまま)過ごさなければいけないというのはドライバーとしてつらい時間ではありましたし。その戦略を採りたくて採ったわけではなく、悔しい思いもあったのですが。だけど、前向きにポジティブに考えるしかないし。こうなった以上、自分に何ができるかなというので、クルマを降りて、彼の様子とチームの様子と、普段見られないところを見られたので、そういう意味では自分も1つ成長できたかなと。
──塚越選手に抜かれたときのことを教えてください。
山本選手:正直、17号車がタイヤの状況があまりおもわしくないのは前半スティントで分かっていました。彼は新品タイヤを履いていたので、絶対、最初ペースがよいけど最後苦しむだろうなと思っていました。あそこではあえて無理はしなかったけど、結果、あそこをもし抑えられていたならば、最後ペースは変わらなかったので、抑え切れていた可能性もあるので。そういう意味ではくやしい思いもなおあるのですけど。だけどちょっとペースの差があそこはありすぎたので。JBから引き継いだときにピックアップがものすごくて、この状態で引き渡されるのはきついなと思って、頑張って取っている間に17号車が来ちゃって、17号車が前に行った辺りでタイヤがクリーンになって。17号車に1回バーンと離された後に縮まったのはそういうことだったのです。
──最後までペースがよかったのですが。タイヤは最後までもったということですか?
山本選手:結果的にはもったという言い方ですが、ライフ的には結構きつかったですね。
──無交換で走っていた山本選手のタイヤのほうが、交換して走っていた塚越選手のタイヤよりよくない状態であったと思われるのですが、走行ペースが同じでした。そのように走るコツとかポイントとを見つけていた部分はあるのですか?
山本選手:これというのはなかなかコメントにはできないのですが。それは、岡山のテストから自分なりに習得して、今までの経験から学んで来たことが活かせたかなと思うので。
──確認ですが、タイヤ無交換はバトン選手が走っている最中に決めたということですね?
山本選手:最終的な判断はチームですが、僕が無交換をしたい、無交換で行くとは言いました。最後は、「分かった、じゃ無交換で行こう」というのはチームで決めました。
山本選手の発言から分かるように、タイヤ無交換を決めたのはジェンソン・バトン選手が走っている最中で、山本選手は岡山で行なわれた公式テストの感触からその進言をした。その進言がチームに採り入れられ、開幕戦におけるNSX-GTの1-2フィニシュを実現する力となった。
山本選手はその後、鈴鹿で開催されたスーパーフォーミュラ開幕戦鈴鹿でも優勝(山本尚貴選手が2年ぶりのポール・トゥー・ウイン)しており、日本のトップドライバーとしての力を遺憾なく発揮している。
この山本選手とペアを組むジェンソン・バトン選手のインタビューは予選後に行なっており(SUPER GTに参戦するF1世界チャンピオン ジェンソン・バトン選手に聞く)、そちらと合わせて100号車の両ドライバーに注目していただきたい。
第1戦はNSX-GT勢の活躍が目立ったSUPER GTは、第2戦が5月3日~4日に富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催中。濃霧のためスケジュール変更が行なわれ、GT500クラスの予選は15時15分開始予定となっている。