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マツダ、新型コロナ軽症者等向け搬送車両のオンライン説明会

車両製作の要望があれば相談可。車両があれば架装は最大3日で可能

2020年6月5日 開催

CX-8をベースに架装した新型コロナウイルス感染症の軽症患者や無症状の病原体保有者等を搬送する車両を製作し、広島県に納車

 マツダは6月5日、新型コロナウイルス感染症の軽症患者や無症状の病原体保有者等を搬送する車両を製作し、広島県への納車を開始。同日オンラインにて、同車両の説明会が開催され、車両を開発したマツダの商品戦略本部長 本橋真之氏と、実際の架装を行なうマツダE&Tの常務執行役員 内藤久佳氏が説明を行なった。

 本橋氏は今回の搬送車両の開発コンセプトについて2つあると言い、1つは行政の要望に迅速に応えることだとし、マツダグループが保有する技術と設備、人材を集結させることで、今回の開発はおよそ1か月という期間で実現したという。

 2つめは医療従事者や患者などを支援し、困っていることを解決できるものであることだとして、現場の声を聞いて要望に応える形で開発したという。

 今回は9台を広島県に販売する形になるが、その売り上げの中から1台につき10万円を、広島県の新型コロナウイルスに関する寄付金に寄付させていただくとした。

 具体的な車両の改良部分については、内藤氏より説明がされた。

 まずは運転席に座る医療従事者への感染リスクを低減するため、前席と2列目以降との間に隔壁を設け、さらに前席側は外気導入固定とし、後席側はブロアファンの追加で排気をすることで、前席空間と後席空間の間に圧力差が生まれる形とした。

 さらに、現場の声としてあった感染搬送車両への要望として、搬送される人の快適性の確保、運転手の後方視界の確保、患者と医療従事者が隔壁越しで会話をする際の会話のしやすさ、そして実際にちゃんと圧力差が生じているのか確認したい、といった声があったといい、それに応える形のものを開発したという。

圧力差を生じさせることで医療従事者への感染リスクを低減
現場の声を聞いて車両を開発

 具体的には隔壁をFRPで製作し、できるだけ大きな窓を設けることで後方視界を確保した。さらにFRPで立体的に成型することで、後席の広いスペースを確保した。

 前席の空調については既存のエアコンを外気導入モードに固定することで陽圧とし、後席空間はリアラゲッジ部分に後席排気システムを追加することで陰圧に。前席空間と後席空間の圧力差を生じる形とした。なお後席側の排気システムには病院などでも使われる高性能なHEPAフィルターを搭載し、排出される空気にも配慮がされる。

 また、後席の空調についても既存の仕組みを使うが、3Dプリンターで作った配管をレイアウトすることで、後席空間から空気を取り入れる形に変更し、後席空間だけで循環させるように変更している。

架装の詳細
隔壁には大きな窓を設けることで運転席からの後方視界を確保
ベース車をCX-8とし、隔壁を立体的な造形とすることで、広い後席空間を確保
車両後方に排気用のブロアファンを追加。HEPAフィルターも装備される

 さらにオプションとして、前席空間と後席空間の圧力差を前席で確認できる差圧計、そして隔壁越しでも前席と後席でスムーズな会話を可能とする通話システムも用意している。

オプションも設定
前席で圧力差を確認できる差圧計
隔壁の中央にあるのが通話システム

 こうした隔壁などは取り外すことも可能で、コロナ禍の収束後には取り外して通常の公用車として使用できるとした。

 なお、今回の車両販売価格については明らかにされていないが、社会貢献性を考慮して車両本体価格に架装に必要な最低限の価格を上乗せした形になっているという。また、現在広島県への9台の納車が決まっているが、他に要望があれば、相談に応じていくとのこと。車両などがそろっている状態であれば、架装は最大で3日あれば可能だとした。

架装は最大で3日程度の工程。また、隔壁は後に外して通常の公用車として使うこともできる