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岸田総理、COP26で自動車のカーボンニュートラルに言及 「次世代電池やモーター、水素、合成燃料の開発を進める」

2021年10月31日~11月12日(現地時間) 開催

イギリス グラスゴーにおいて開催されている国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に登壇した岸田文雄内閣総理大臣

火力発電のゼロエミ化を語った岸田総理

 イギリス グラスゴーにおいて10月31日~11月12日(現地時間)にわたって開催されている「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」。このCOP26は地球の気候変動に関する対策を話し合う国際会議であり、各国がカーボニュートラルへ向かうための協議や、各国の技術展示なども行なわれている。このCOP26に、衆議院選を終えたばかりの岸田文雄内閣総理大臣が11月1日(現地時間)に登壇し、日本としての取り組みを語った。

 岸田総理は「気候変動という人類共通の課題に日本は総力を上げて取り組んでいく」と語り始め、日本として2030年度には2013年度比で46%のCO2削減を行なうほか、50%削減の高みに挑戦していくことを約束。46%削減は必達目標、50%削減を挑戦的な目標であると位置づけた。

 その上で、カーボンニュートラル達成には、化石火力よる発電を置き換えていくことが大切とし、「化石火力をアンモニア、水素などのゼロエミ火力に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開します」という。

 化石火力は、石炭火力や石油火力が含まれ、日本では発電に占める化石火力の割合が大きく、たとえバッテリEVを大量に導入してもLCA(Life Cycle Assessment)的にCO2削減につながりにくいことが指摘されていた。そのため、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーによる発電が期待されていたが、国土に山などが多く、平地の利用率も高いため大容量発電などには向いていない部分もあった。

 それらを解決するものとして、火力発電のゼロエミッション化が期待されていたが、岸田総理はそのゼロエミッション化をCOP26で大きく打ち出した。火力発電用のエネルギーとしてはアンモニア、水素としており、これらを燃やしていくことで発電の脱炭素化を図っていく。

 また、6月に表明したアジア全体の脱炭素化に官民合わせて600億ドル規模の支援を行なうことに加え、新たに5年間で100億ドルの支援を行なうことを発表。アジア全体のゼロエミション化を力強く推進していく。今回のCOP26では1000億ドルの支援策が先進国に呼びかけられていたが、日本としては100億ドル規模の追加支援を発表した形になる。

自動車についてのカーボンニュートラル

 自動車におけるカーボンニュートラル化についても言及があった。「自動車のカーボンニュートラルの実現に向け、あらゆる技術の選択肢を追求してまいります」と、カーボンニュートラルへの選択肢を増やしていると語る。

 その方法としては、2兆円のグリーンイノベーション基金を活用して、「次世代電池やモーター、水素、合成燃料の開発を進める」ことを行なうとした。

 次世代電池やモーターの開発は、今後の電動化の基盤技術となるため当然とも言えるものだが、水素や合成燃料が自動車のカーボンニュートラルの選択肢に入っていることには注目したい。グリーンイノベーション基金で行なわれている水素開発は、水素サプライチェーン、Hydrogen Valleys(地域水素社会モデル)、燃料電池モジュール、水電解などがあり、岸田総理の発言はそうした取り組みを踏まえたものだと思われる。

 また、合成燃料についての言及はカーボンニュートラルフューエルなどを指していると思われ、既存の内燃機関によるクルマのカーボンニュートラル化や内燃機関そのもののカーボンニュートラル化へとつながっていくものだ。

 岸田総理は、世界に対する脱炭素の発言としてクルマを採り上げ、あらゆる技術の選択肢を追求すると語ったのは、バッテリEV一辺倒ではないという方針を示したことになるだろう。

 そのほか岸田総理は、世界の森林保全のために約2.4億ドルの資金支援を行なうことを発表し、「われわれが気候変動に向き合うとき、誰一人取り残されることがあってはなりません。日本は対策に全力で取り組み、人類の未来に貢献してまいります」と、発言を結んだ。

岸田総理は短いスピーチ時間の中で、火力発電のゼロエミ化、自動車のカーボンニュートラル化について言及した

【訂正】自動車関連の開発項目としてモーターを追記しました。