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奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ2022」(前編)

FP1、スプーンで撮影した角田のファーストラップ

3年ぶりの日本グランプリを「EOS R7」で撮った!

 3年ぶり、3年ぶり、3年ぶりにF1日本グランプリが帰ってきた。めでたい、うれしい、素晴らしい。Car Watch創刊の2008年から毎年掲載している「撮ってみましたF1日本グランプリ」も3年ぶり13回目となる。この記事はさして役に立たない話が多い筆者の私的な撮影記。個人のブログといった感じなのでご了承いただきたい。

チケット争奪戦

 今年のF1日本グランプリのチケットは7月と、例年より遅めの発売となった。3年ぶりの開催で人気は高く、ローチケ先行販売は完売、ローチケでB2を狙った知人は開始5分で売り切れだったとのこと。MOBILITY STATION(オンラインショップ)で全種類のチケットが販売となる一般販売も激戦が予想された。

 新型コロナウイルスの影響で2020年以降の国内レース取材は人数が制限されてきた。世界戦も同様で筆者(編集部)が申請したMotoGPもF1も取材パスの人数制限があるとのこと。F1はこれまでも開催ギリギリまで可否が分からない。取材パスがもらえるようになって10年ほど経つが、ずっと一般の人と同様にチケットは買い続けていて、今年は「取材パスが承認されないかも、チケットが完売するかも」と考えると例年より気合いを入れて臨むチケット販売となった。

 前日、超久しぶりにMOBILITY STATIONにアクセスしてSUPER GTのチケットで購入直前までシミュレーション。いろいろ確認しているとクレジットカードの期限が切れていることに気付き更新。本番の秒の争いに備えた。

クレカの有効期限が2020年で切れていた

 13時の販売開始は自動配席で席は選べない。15時から席を選んで購入できるが、その時点で完売になる可能性もあり、13時から参戦することとした。10時からVIPスイートなどが販売開始となったのでここでも練習。簡単にはつながらないが、そこそこつながることを確認。いざ本番。

 13時、チケット争奪戦のゴングが鳴った。2560×1440pのデュアルディスプレイにEdgeとChromeのブラウザを6個ほど立ち上げてリロードを繰り返すこと十数分。つながった。次の画面に移るときに切れないかドキドキしながら手続きをして無事チケットを購入。自動的に割り当てられた席位置は希望よりワンブロック左側でまぁまぁ。13時19分、チケット争奪戦に参加していた知人に「買えた~」とメッセージを送った。これで取材パスが出なくても34回目のF1日本グランプリが観戦できることとなった。

知人とのFacebook メッセンジャー

 まだこの日の作業は終わりではない。席を選んで購入できる15時にアクセス。その時点の各指定席の空席の状況を来年以降のチケット購入の参考にスクリーンショットで保存。結果としては自動的に配席されたものよりワンブロック右側の席に空席があったので、来年以降は今年くらいの争奪戦なら15時まで待って購入しても大丈夫そうな気がした。

席が選べる15時過ぎに全指定席の空席を確認。人気のB2中2階の空席はわずかだった。

 8月上旬にチケットが送られて来た。分かってはいたが今年は紙チケット。3年前は70種類のデザインが選べるプラスチック製のスペシャルチケットで、筆者は自分が観戦した1987年のゲルハルト・ベルガーがデザインされたチケットを選択。次は1988年のアイルトン・セナと決めていたので残念に思うも、コロナ禍の現状を考えると観戦できるだけで御の字。紙チケットでよしとしよう。

今年は紙チケット
2019年のスペシャルチケットと1987年のチケット

取材パスをゲット……購入したチケットは

 今年の取材申請はMotoGPもF1も今までと違い2段階の審査があり、予選Q1を通過して追加の申請書類を出し、Q2を突破すると取材パスがもらえるイメージ。Q2に進んだ段階で「大丈夫かな」と思ってはいたが正式な案内が届いたのは9月28日だった。ギリギリは例年どおりだが機材搬入の木曜日から逆算すると8日前だ。

FIAより最終承認されたとのこと

 これで購入したチケットは不要に。これまでも取材パスが出ると購入済みのチケットは余っていて、3年前は名古屋から鈴鹿まで同乗してきた知人(西エリアを購入)と一緒に入場ゲートを通過し、筆者自身を観戦者数にカウント、知人に渡して指定席で観戦してもらった。

 今年はチケット完売。無駄にする分けにはいかない。観戦者数を1人増やすためには誰かに観戦してもらうしかない。3年前に観戦した息子に「行く?」と問い合わせたが、直前ということもあり「行きたいけどパス」との返信。Car Watchの編集部に「誰か行きますか? タダです」と知らせたところ、手を上げたのはトラベルWatchの湯野編集長だった。

今年のF1日本グランプリのチケットは完売

 湯野編集長とはF1開催時に鈴鹿で何度か会っている。2015年はFP3のワンセッションでヘアピンから逆バンク、S字までカメラマンエリア4つを移動して撮影したときにバッタリ遭遇した(当時はケータイWatchの編集長)。普段からレーシングカートに乗っていてバリバリのレース好き。初サーキット観戦で「どうやって行くの? 何を持って行ったらよい?」的な質問を受ける心配はなく急ぎチケットを送付した。

いざ鈴鹿へ……でも仕事が終わらない

 筆者は仕事が遅い。老化と劣化が加わり近年はさらに遅くなっている。忙しさを加速させたのはキヤノンのミラーレスカメラ「EOS R7」だ。6月に発売されたEOS R7の撮影と執筆を8月20日発売の「デジタルカメラマガジン9月号」と9月29日発売の「キヤノン EOS R7 完全ガイド」で担当した。筆者の担当したページはわずかだが、慣れない紙雑誌の仕事は大変。Web記事とは異なり編集者とのキャッチボールは数えられないほどの回数、写真の差し替え、テキストの加筆・修正が多かった。

デジタルカメラマガジン9月号
キヤノン EOS R7 完全ガイド

「キヤノン EOS R7 完全ガイド」では“モータースポーツでのEOS R7の使いこなし”と“RFレンズとEFレンズの比較”などを担当。発売された本を読むと担当以外の誌面に「へぇ~、なるほど」と勉強になる内容が多く、手元の本は付箋をいくつも貼った状態だ。

「キヤノン EOS R7 完全ガイド」が終わるとMotoGPでモビリティリゾートもてぎへ。帰宅後MotoGPのフォトギャラリー作成の途中で編集部から「EOS R7のレビューを先に」と連絡があり「奥川浩彦のキヤノン『EOS R7』でモータースポーツを撮ってみた(前編)」を納品、後編はF1ウィークの木曜朝5時まで粘るも完成せず、書きかけの原稿を持って6時前に川崎を出て鈴鹿へ向かった。付け加えると仕事はカメラの原稿だけではなく住民税節電ホテルルーターなどの記事やクライアント企業から依頼を受けたものなど、近年はずっと忙しい。

 ETCの記録を見ると5時56分に東名川崎インターチェンジ(IC)を通過し、新名神の鈴鹿PAスマートICは10時02分に通過。10時30分過ぎに鈴鹿サーキットに到着した。当初の予定は深夜に川崎(オフィス)を出て名古屋の自宅に寄って一眠りして鈴鹿サーキットへ向かうつもりだったが、大幅に遅れたのでサーキットへ直行することとした。普段は伊勢湾岸道みえ川越ICから国道23号で鈴鹿に向かうが、みえ川越ICを通過したのが9時30分頃、平日の国道23号はそこそこ渋滞していたので久しぶりに新名神の鈴鹿PAスマートICを利用した。

 2019年にオープンした鈴鹿パーキングエリアはモータースポーツ色に特化していて、行く度に(筆者は滅多に行かない)展示内容が変更されている。今回は3機のF1エンジンが展示されていた。

左から1968年RA301に搭載されたRA301E、1988年マクラーレン・ホンダMP4/4に搭載されたRA168E、2004年B.A.Rホンダ006に搭載されたRA004E

 関東・名古屋方面から鈴鹿サーキットを目指す場合、東名阪道の鈴鹿IC、伊勢湾岸道のみえ川越IC、加えて新名神の鈴鹿PAスマートICが選択肢となる。筆者は名古屋市内の自宅から移動するので伊勢湾岸道のみえ川越ICをメインとしているが、多くの人が利用するのは東名阪道の鈴鹿ICで、ICとサーキットの距離が近く、鈴鹿ICの手前約2kmまで片側2車線と整備されていて、すいているときはお勧めのルートだ。ただし右折して料金所に向かう構造なのでレース終了後は激しく渋滞するため混雑時は避けたい。鈴鹿PAスマートICは距離的には遠いが渋滞がなく、その先の新名神も混雑しないので筆者はお勧めのルートだと思っている。

東名阪道の鈴鹿ICから鈴鹿サーキット手前約2kmまでの片道2車線道路



3つのICの位置関係。赤線が新名神の鈴鹿PAスマートICのルート。東名阪道の鈴鹿ICより少し遠いがレース後の渋滞時はお勧めのルートだ
2019年のF1終了後の渋滞。鈴鹿IC(赤線)は渋滞しているが、鈴鹿PAスマートIC(緑線)は渋滞していない(Googleマップ)

 メディア受付で取材パスを受け取りパドックへ。例年は木曜日にピットウォークが行なわれるが今年はなし。ピットレーンは閑散としていた。まだ完全復活とは言えない状況だ。荷物が多かったので駐車場に戻り残りの荷物を持ってもう一度パドックへ。駐車場とパドックを往復するメディア関係者用のシャトルで山本雅史氏と同乗。パドックに入ったときに「Car Watchで掲載しますね」と写真を撮らせてもらった。

ピットウォークは行なわれず閑散としていた
パドックに入る山本雅史氏
木曜日のパドック
アルファタウリに角田とガスリーの写真

 F1ファンならご存じの山本雅史氏、若い頃は全日本カート選手権に参戦していてチームメイトは本山哲選手。1990年の第14回ジャパンカートグランプリ(世界大会)のリザルトを見ると、2位:ヤン・マグヌッセン(ハースのケビン・マグヌッセンのお父さん、1997年F1スチュワート時代のチームメイトはルーベンス・バリチェロ)、13位:高木虎之助、16位:山本雅史、22位:ジャンカルロ・フィジケラといった顔ぶれのほか、予選14位には道上龍選手の名前もある。山本雅史氏の著書「勝利の流れをつかむ思考法」がF1日本グランプリ開催に合わせて発売となっている。

 機材搬入を終えて、メディアセンターで「奥川浩彦のキヤノン『EOS R7』でモータースポーツを撮ってみた(後編)」を書き上げて編集部に送信した。EOS R7の原稿で1番苦労したのは被写体追尾のイメージ動画。Digital Photo Professionalの画面を数十枚つなげたもので、AFフレーム(赤枠)がマシンを追尾していくファインダー内のイメージを再現してみた。YouTubeで大きなサイズで見るとAFフレームの動きを見ることができる。

キヤノン EOS R7 被写体追尾イメージ

 コロナ以降、国内レースは関係者と観客を分けているため、観客エリアへの立ち入りが制限されてきたが、メディアセンターで確認すると、このレースは観客エリアに行くことができるとのこと。パドックトンネルを抜けてグランドスタンド裏をチラ見して14時30分頃サーキットを出発。名古屋までの帰路は思い出せないくらい久々に東名阪道の鈴鹿ICを利用してみた。鈴鹿市内は少し渋滞。鈴鹿川を渡ると順調に流れ、東名阪道をくぐるあたりで急減速。料金所への右折車線は平日15時でもわずかに渋滞していた。

ショップはまだ準備中
ピットウォークなどのイベントがないので人もまばら
スタンド裏にはドライバー全員の顔写真
右折車線の手前くらいからプチ渋滞

 2週間前のMotoGPは雷雨で予選が1時間半ほど赤旗中断。コースサイドは長さ10mほどの水たまりができ、長靴は大活躍した。その長靴をMotoGPのメディアセンターに置き忘れ、モビリティリゾートもてぎの担当者に「SUPER GT最終戦で取りに行きます」と連絡した。F1が雨にならないことを願ったが金曜日は雨予報。自宅近所のホームセンターで長靴を購入。夜はともに30年以上F1観戦をしてきた高校の同級生3人で3年ぶりのF1飲み会。八王子方面に住む友人I氏とほぼ同じ早朝に移動したことが分かり「ポルシェって○○ナンバー?」と、新東名でポルシェに抜かれたときに「もしかして」とナンバーをチェックしたので、後日ドライブレコーダーの映像をキャプチャして送ると「それそれ」とのことだった。これで木曜日の予定はすべてクリアした。

金曜の雨に備えて長靴を購入。MotoGPに続き活躍してくれた
友人I氏の(古い)ポルシェに新東名で抜かれていた

金曜日の渋滞

 3年ぶりのF1日本グランプリ、いざ鈴鹿へ。金曜日は伊勢湾岸道のみえ川越ICと四日市の間が通勤のクルマとF1観戦のクルマが重なりもっとも混む日。自分の書いた過去記事を確認すると、みえ川越ICを朝6時チョイ過ぎに通過しないと渋滞に巻き込まれる。5時45分に名古屋の自宅を出発。5時49分に名古屋高速 呼続ランプから乗り5時55分に伊勢湾岸道 名古屋南IC、6時13分にみえ川越ICを出た。

 ダメじゃ~ん。3年間のブランクで道路事情が変化したのか、雨でクルマ通勤の人が増えたのか、料金所を通過するといきなり渋滞していた。瞬時にコース変更。混雑気味の国道23号を避けて目の前の二股を右に逃げ、4年前に開通した「四日市・いなばポートライン」へ。

みえ川越IC出口で久しぶりの渋滞を見た

 四日市・いなばポートラインはみえ川越ICから四日市霞ヶ浦埠頭まで海上を超えて結ぶ道で、みえ川越ICから出て右折する信号、その先の交差点の信号を過ぎると四日市港ポートビルの先まで約5km信号はない。国道23号に戻るときは「なか卯」のある信号手前で側道から合流する。

四日市・いなばポートラインはみえ川越ICと四日市 霞ヶ浦埠頭をつないでいる
四日市・いなばポートラインを通過中。開通直後は頻繁に利用したが最近の利用頻度は4回に1回程度

 ただし筆者は実際に利用することは少ない。例えば帰路、国道23号で鈴鹿からみえ川越ICに向かうときに特に混雑するのは四日市競輪付近「なか卯」のある2つ連続の信号を先頭に、長いときは鈴鹿川を渡った先の「かつや」付近まで渋滞する。ようするに「なか卯」を過ぎると流れ始めることが多い。

 四日市・いなばポートラインは快適な道で、過去4年間にF1やSUPER GTなどで何度も通っているが、ここ数年はレースが無観客や人数制限で渋滞が少なめだったこともあり明確に早いと思ったことはなかった。特に帰路は渋滞ポイントの先になるのでそのまま国道23号を進んだ方が無難だと思われる。海上を通るため悪天候で閉鎖されることもある。実際、土曜が台風でキャンセルとなった2019年のF1日本グランプリのときは金曜の帰路で通行止めにあい、Uターンして国道23号に戻ったこともある。

2019年は台風接近で通行止め。ここまで来て戻る時間のロスは大きい

 3年ぶりのF1ということもあり久しぶりにみえ川越IC出口から渋滞。この日は初めて四日市・いなばポートラインを通って早いと感じることとなった。ライターの笠原氏を近鉄四日市駅付近のホテルでピックアップするので、通常は吉野家のある交差点を右折して近鉄四日市駅に向かうが、Googleマップを見ると国道23号より国道1号がすいていたので国道23号をくぐって1号線へ。7時予定より早く6時半にホテル付近に着いた。

左下のホテルまでは国道1号線がすいている。ここまでみえ川越ICから6分
陸橋の上、国道23号は渋滞気味。左折すると国道23号に合流。この信号で待たされることが多いのもネック。ここまでみえ川越ICから8分。この日は直進して国道1号でホテルへ

 国道23号に戻り、途中でコンビニに寄りサーキット道路のF1マート前から渋滞。急ぐ時間ではなかったので10分ノロノロと走り7時30分に関係者駐車場に到着した。メディアセンターに入ると一番乗りだった。

サーキット道路のF1マート前から渋滞
中勢バイパス手前。左右の民間駐車場はまだすいているように見える。レース終了後の渋滞を考慮すると、サーキットから少し離れたこの付近の駐車場はお勧め
メディアセンターに一番乗り。窓際に笠原氏がポツンと一軒家
金曜日の8時前、雨のサーキットは閑散としていた

EOS R7で撮るF1日本グランプリ

 今回の撮影で使用するカメラはキヤノンのミラーレスカメラEOS R7。7月のスーパーフォーミュラ、8月のSUPER GT(富士、鈴鹿)で使用した機材はデジタルカメラマガジンが手配したもので返却済み。今回はCar Watch編集部が手配した別機材で、出発前に設定する時間がなかったので、早めにメディアセンターに入って準備をしたかった。

 動画撮影はNGという意味で義務付けられた「Photo」シールを貼り、EOS R7の膨大な項目を2台並行して設定する。この作業は1時間ほど要した。

撮影機材一式
F1の報道エリアではカメラ本体に「Photo」のシールが義務付け
2台のEOS R7を1時間ほどかけて設定をする

 レンズの構成は以下のとおり。

・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
・RF24-105mm F4 L IS USM
・マウントアダプター
・EF-EOS R
・EF-EOS R ドロップイン 可変式NDフィルター A付
・EF300mm F2.8L IS II USM
・EF24-105mm F4L IS USM
・EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM

 24-105mmがRF、EFで重複しているのは、EF24-105mm F4L IS USMは可変式NDフィルター付きのマウントアダプターと組み合わせてスローシャッター用、天候によってRFとEFを使い分けようという考えだ。

豪雨のFP1はスプーンへ

 F1の週末、天気予報は金曜は雨、土曜は晴れ、日曜は遅くなると雨だが決勝の時間は晴れ予報(だった)。土日がドライコンディションになると、金曜のウェットコンディションは走行しないことがある。雨足によっては赤旗が延々と続くこともある(2017年のFP2がそうだった)。マシンが走らなくても後悔しない場所は……と選んだのはスプーンカーブ。雨宿りを優先するとデグナーに行き立体交差下で雨をしのぐことも考えたが、翌日のFP3と予選でデグナーのイン側、アウト側を撮りたいので、ずぶ濡れ覚悟のスプーンだ。

 国内レースはセッションの15分ほど前にメディアシャトル(バス)がコースを1周する。コースサイドで数分待つとセッションが開始される。F1はセッションの1時間前にメディアシャトルが出発するので、コースサイドで走行開始を1時間待つことになる。加えてF1開催時のシャトルバスの乗り場は1コーナーのピット出口付近と遠く、セッション1時間15分ほど前に準備をしてコースに向かうこととなる。豪雨で待たされるのはつらい。

★印がシャトルバスの時間。FP1開始は12時だがシャトルバスは11時出発。メディアセンターを10時45分に出ることになる

 急遽10時30分から始まるピットウォークでレッドブルのマシンを撮影することになりピットへ。大急ぎでシャトルバスに乗りスプーンに到着。足下は至るところに水たまり。長靴は必須だ。降り続く雨の中、ここから長い待ち時間となった。3年ぶりのF1開催で、雑草が伸び放題だったコースサイドが整備されたのはうれしい。

至るところに水たまり
数年ぶりに草刈りされたコースサイド。巨大クモの巣は3つほどでしゃがんでくぐり抜けた
今年4月、2&4のスプーンコースサイド(反対側から撮影)。胸高の雑草に加え、複数の巨大なクモの巣を一脚で払いのけて移動した

 以前はFP1は90分だったが現在は60分に短縮されていて、セッション中の移動に限界がある。1時間待ちなのでスプーン2つ目まで移動し下見をしたり、コースマーシャルやカメラマンエリアの観客と雑談をして走行開始を待った。

スプーン2つ目まで下見に

 雨は強かったが「誰も走らない」ことはなく、開始5分ほどでコースインが始まった。マグヌッセンに次いで角田がコースイン。水煙を上げてスプーンに進入してきた角田がこの記事の冒頭の写真だ。レンズはRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM。路面はかなりの雨量でマシン後方は何も見えない。スプーン正面の撮影は背景にポストが写り込むが、水煙で消されるのは絵的にはわるくない。

 EOS R7の自動追尾はスプーンのように正面から向かってくるマシンを撮るときに威力を発揮する。フレームに入ったマシンを瞬時に認識して追尾するので、多少レコードラインが左右にズレてもフレーミングを変更する必要はない。

冒頭の写真、元画像からヘルメット付近を800×600ピクセルで切り抜いてみた。バイザーの文字はもちろん、左右のALPHATAURI F1.COMの文字も読み取れる

 1番撮りたいレッドブルが来ない。正面の撮影は簡単なのでワンラップ走ってくれればこの場所の撮影を終了して移動、スプーン進入を横から流し撮りしたいが一向に現れない。レッドブルを待つ間、ズーム位置を変更しながらお腹いっぱい撮影、結局セッションの半分くらいでレッドブルを断念し移動した。

焦点距離500mm
焦点距離254mm
焦点距離186mm

 スプーン進入を横から流し撮りできる場所に移動。雨で暗いのでNDフィルターは不要と考え、持ってきたレンズはRF24-105mm F4 L IS USM。最初はメカシャッターで撮影し、途中から電子シャッターの撮影に切り替えた。電子シャッターで気になるのはローリングシャッター歪み。背景が斜めになる現象だ。スプーン進入手前の50m看板が入るとローリングシャッター歪みが気になるが、その手前なら大丈夫と判断した。

メカシャッター。マシン手前の50m看板、前輪の上に見えるポストはローリングシャッター歪みが目立ちそう
電子シャッター。50m看板は傾きが目立つ

 流し撮りで電子シャッターを使うメリットは連写枚数。シャッター速度1/30秒までは30コマ/秒で撮ることができる。メカシャッターはシャッター速度を遅くすると10~14コマなので電子シャッターは2~3倍の高速連写ができる。確率の低い流し撮りでも撮影枚数を2倍にすれば、成功写真の枚数は2倍となる。

電子シャッターで撮影しフォトギャラリーに掲載した写真

 結局、レッドブルは30分を過ぎてコースイン。リザルトで確認すると全車中レッドブルの2台がもっとも周回数が少なく4周だった。撮るには撮ったがイマイチだった。

看板が重なってイマイチ
水煙が少なくてイマイチ

 セッション終了間際に正面に移動。セッション終了後のスタート練習にレッドブルが参加することを期待したが、帰宅後に録画を見るとワンアタックして早々にマシンを降りたようで正面の絵を撮ることはかなわなかった。

 13時セッション終了だが、チェッカー直前に計測ラインを通過したマシンはほぼ2周を周回する。スタート練習を加えると3周。最後に撮った写真は13時06分。コースに出てシャトルバスを待つ間に縁石の排水口をスマホで撮影。竹ぼうきでコース清掃をするマーシャルと「この穴、どこにつながってるんでしょうね」などと雑談。マーシャルの人が棒を差し込むとかなり深い。うーん気になる。ご存じの人がいたら教えていただきたい。シャトルバスが来たのは13時15分頃、10時半のピットウォークから2時間45分、長い雨の撮影だった。

スプーン1つ目の縁石に開けられた排水口。流れ込んだ雨水はどこへ行くのか気になる

FP2は60分? 90分?

 通常60分のFP2が来年のタイヤテストのために90分に延長される予定だ。テスト用のタイヤはドライ用でウェット路面になるとセッションは60分になるという意見が多いが、誰に聞いても正式なセッション時間を知る人がいない。

 90分になるとFP3、予選、決勝よりも長い走行となる。撮影場所の移動もしやすくなるので、60分か90分かで撮影場所の選択は変わってくる。90分を想定し(期待し)、決勝で行きにくいシケインから撮影を開始することにした。答えが分からないままFP2がスタート。大型ビジョンの残り時間に90分と表示されてやっと確定した。ピレリ指定の走行方式に縛られることなく90分の走行が見られた日本のファンはラッキーだったかもしれない。

 シケイン、最初は1つ目~2つ目の短いストレートをRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMでほぼ正面から撮影。気を付けたのはシャッター速度。車速が低いので1/1000秒で撮るとウェットタイヤのブロックがハッキリ見えてしまう。ほどよくタイヤが回転して写るように1/320秒で撮影した。

シャッター速度1/320秒で撮影

 130R方向に移動してシケインを立ち上がるマシンを背後から撮影。加速とともに水煙が舞い上がりマシンが見えなくなったので、そうなる手前を撮影。

シケインを立ち上がるマシンは背後から撮影

 撮影場所を最終コーナー側に移動。シケイン2つ目のクリッピングポイントをシャッター速度1/160秒で撮影。背景にフェンスが写っているのでローリングシャッター歪みを避けるためメカシャッターで撮っている。

シャッター速度1/160秒で撮影

 同じ場所でシャッター速度を1/15秒に落として撮影。ヘルメットが芯となるように写し止めたい。この手の撮影は確率が低いので数打ちゃ当たるが基本……当たった。

シャッター速度1/15秒。ヘルメットに芯が来てくれ

 さらに最終コーナー側に移動。レンズをRF24-105mm F4 L IS USMに変更し、シケインから最終コーナーへ駆け下るマシンを、Q2席スタンドをバックにシャッター速度1/30秒で撮影。もう少し水煙が多いとよかった。

もう少し水煙が多いとよかった

 シケインで珍しい光景に遭遇。ラティフィがシケイン手前の西コースショートカットに誤進入しドキッとした。帰宅後に録画を見るとガードレールで先がさえぎられていたのでトラブルになることはなかった。不確かな記憶ではシケインができた1983年、全日本F2でU選手(たぶん)が誤進入し左にターンして逆バンク方面に逆走し、他のマシンと正面衝突しそうになったことがあった。とっさにそれを思い出してドキッとしたが、程なくコースに戻ってきた。

誤進入から戻ってきたラティフィ

 シケインの撮影は終了。逆バンクからデグナーに向かうところに東コースのショートカットがある。そのショートカットのコース部分までガードレールが延長されていた。3年前のF1ではなかったような。国内レースでは撮影できない場所なのでB席スタンドを背景に入れて撮影。晴れていればスタンドの後方に伊勢湾、その先の知多半島が写るが、この日の天候では街並みがチラッと写るだけだ。

東コースショートカットコース上までガードレールが延長されていた
B席スタンドを背景に入れて撮影。雨の金曜平日なのにB2席の観客がカラフルなのもよい

 逆バンクのイン側に移動。ガードレールの支柱にEF300mm F2.8L IS II USMをレンズのストラップでつるし、足下にはEOS R7+RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMを置いて、もう1台のEOS R7にRF24-105mm F4 L IS USMを装着して撮影開始。常設の看板はF1開催中は幕で囲われたりして見えない。逆バンクの看板はF1スポンサーの看板に変更されていた。ギリギリ看板がフレームに入るようにシャッター速度1/60秒で撮影した。

左がサンニッパ単体。右がR7と100-500mm。ラフにレインカバーを掛けているのでレンズはかなり濡れた
焦点距離35mmで看板を入れて撮影。上段の看板は右からDHL、Emirates、Heineken、aramco、PIRELLI、チラッとROLEXだと思われる。写っていないさらに右側にMSC、salesforce

 S字2つ目付近まで移動し逆バンクに進入するマシンを背後から撮影。逆バンクの観客は写っている本人なら○色のポンチョは自分と分かるかも。

シャッター速度1/800秒で自動追尾で撮影。背景のスタンド上段はカメラマンエリア

 最後はS字進入付近で2コーナーから立ち上がってくるマシンを正面からEF300mm F2.8L IS II USMで撮影。決勝スタートをここで撮る予定だが、決勝が快晴になると(金曜日の天気予報は日曜晴れ)ピントの合焦率が落ちるかも、と考えて小雨のこのセッションで撮っておくことにした。

最後はS字進入をEF300mm F2.8L IS II USMで撮影。悪天候でもAF合焦率が高いお気に入りのレンズだ

 雨の金曜日、FP1、FP2の撮影が終了した。筆者も撮影機材もずぶ濡れ。FP1終了時と同様にキヤノンプロサービス(CPS)の人に機材のメンテナンスをしてもらうも「ロッカーに置いて帰るより、ホテルのエアコンで乾燥させた方がいい」とのアドバイス。機材一式を名古屋の自宅に持って帰ることにした。

 と言うのも2週間前のMotoGPは2日目の予選日が豪雨。日曜朝のウォームアップ走行で撮影を開始するとレンズ内に残っていた水分が太陽光で蒸発しレンズが曇る現象に見舞われた。セッション中にCPSに駆け込むと“天日干し”を勧められ、他のレンズで撮影しながらリアキャップを外して乾燥させる事態となった。セッション中にレンズの曇りはなくなり撮影できたが、今回は一晩かけて乾かすこととした。

金曜夕方の渋滞

 例年どおり、金曜日の夕方は四日市市内が帰宅ラッシュとF1が重なり激しく渋滞していた。Googleマップは名古屋の自宅まで新名神 鈴鹿PAスマートICを利用することを最短ルートとして表示している。ライターの笠原氏は四日市のホテルに宿泊。通常は近鉄白子駅で落とすかホテルまで乗せていくかの2択だ。

 鈴鹿PAスマートICから新名神に乗って伊勢湾岸道 みえ川越ICで一旦降りてIC付近の近鉄の駅で降ろすルートを提案をするが却下。鈴鹿PAスマートICから離れる方向となるが白子駅へ。

 ドライブレコーダーの映像で確認してみた。18時13分に交通センターの駐車場をスタートするも駐車場内が渋滞し18時20分に駐車場を出てサーキット道路を右折。金曜日は中勢バイパスが使えるので左車線を進むと右車線が停止状態。右折レーン渋滞でパチンコ店付近から中勢バイパスを津方面に向かう右折車が停止状態、直進車線はすいていた。

パチンコ店付近から右折渋滞

 左折して中勢バイパスの側道に入ると激しく渋滞。筆者たちはいつもどおり合流せずに左折。中勢バイパスの渋滞を横目に見つつ側道を進み、稲生高校を左回りでしばらく行くと普段はない渋滞に出くわすが5分ほどで抜けサーキット周辺の渋滞を抜け出した。

中勢バイパス(四日市方向)は大渋滞。筆者はここで左折
渋滞を横目に側道を進む

 白子駅に向かうバス通りはやや混雑。お試しでチャレンジャーな道を選択するとそこそこ正解で、国道23号の直前でバス通りに戻り少し混雑に付き合って、18時47分に白子駅近くで笠原氏を降ろした。

白子駅付近。左の背中が笠原氏

 さて、どこを通って鈴鹿PAスマートICに行くか。白子駅まで来るとGoogleマップも鈴鹿PAスマートICを目指せとは言わず、海沿いのルートを最短と提案してきた。無難なルートだったので県道6号線を北進するルートで名古屋を目指すこととした。

 Googleマップは途中で県道6号線と国道23号の間を通るルートを勧めてきたが無視して海沿いを進み、鈴鹿川のもっとも海に近い橋を渡ることとした。理由は、12年前にデジカメWatchの連載で工場夜景を撮ったことがあり、この付近に何度も通っていて少し土地勘があったからだ。

鈴鹿川を渡る橋の右方向にチラ工場夜景

 県道6号線のすき家付近は渋滞していたので回避して塩浜駅前を通過。近鉄と県道6号の間をゴソゴソと進み、大井の川端南詰交差点の手前で県道6号線に戻り、四日市から先はそれほどの渋滞ではなかったので国道23号に合流。四日市競輪近くのなか卯を19時33分、四日市・いなばポートラインは使わずみえ川越ICを19時42分、名古屋高速 呼続ランプを20時3分に降りて帰宅した。白子駅から1時間20分ほど。金曜日の渋滞を考慮するとまずまずだろう。

記憶にないくらい久しぶりに塩浜駅前を通過

 最後の写真はおまけの1枚。ご存じの人も多いと思うがマックス(フェルスタッペン)のF1デビューは2014年の日本グランプリのFP1。スポットでトロロッソをドライブした。そのFP1の写真を掲載して前編を終了したい。

2014年、F1日本グランプリのFP1でデビューしたフェルスタッペン