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パイオニアの“会話するドライビングパートナー”「NP1」を付けてみた

第2回:声でやり取りするおもしろさと分かりやすさ

筆者のN-VANに装着したパイオニア「NP1」。使い始めて約3か月、まだまだ機能の一部しか使えていないが今回はナビ機能の印象を中心に感想をお伝えしようと思う

 スマート音声ナビをはじめ、前方、車内/後方をカバーするカメラを持った次世代通信型ドライブレコーダーも装備。さらにカーライフサポート機能やクルマWi-Fiを持つ多機能な車載器がパイオニアの「NP1」。そしてこれらの機能を実現するために使われているのがインターネットを使ったクラウドサービスだ。

 NP1は電源がONの状態では常時通信しているので、音声認識の精度や返答のバリエーション、それに情報の量や質などが適時アップデートされるようになっている。また、年に4回、OTA(Over The Air)での大型アップデートも行なわれるので、従来の車載器のように「買ったときが最新であとは古くなる」ではなく、「購入後に機能が増え使い勝手が向上する」ものなのだ。

パイオニア NP1。通常時の価格はベーシックプラン(通信+サービス利用料1年分付き)で6万5780円。バリュープラン(通信+サービス利用料3年分付き)は9万3500円だったが、2023年8月23日までの期間でベーシックプランを対象としたキャンペーンがあり、期間中は6万5780円が4万9800円となる
NP1本体。サイズは118×36×93mm(幅×高さ×奥行き)で、取り付ける場所はフロントウィンドウの上縁となる
付属品。電源はアクセサリーソケットから取る。なお、前回はNP1購入時の特徴的なサービスである「出張取付サービス」について紹介しているので、こちらもあわせて読んでいただきたい
パイオニアオンラインショップ限定のサービス「NP1出張取付」は、技術者が自宅まで来てくれてNP1を装着、セットアップしてくれるというもの。このサービスを使った場合、電源は外から見えないよう処理してくれる。受け付けには諸条件があるので詳しくはパイオニアオンラインショップを参照のこと

声でのやり取りはどんな感じ?

 さて、今回はNP1の使い勝手を書いてみようと思うのだが、筆者にとってメインの用途はカーナビなので、本稿ではカーナビのことを中心に紹介したい。

 NP1は複数の機能を持つ車載器だが、ドライブレコーダーとしての役割もあるため、取り付ける位置はフロントウィンドウの法律で定められたエリア。運転席の前、もしくはウィンドウ中心部などに付けるのが一般的だ。でも、ドライブレコーダーと比べると少し大きめな筐体なので、運転席の前に付けるとクルマやドライバーの体格によっては視界に入って気になってしまうこともある。

 そんなときは助手席側に付けることになるのだけど、音声のやり取りを考えるとドライバーとNP1との距離感が気になるところ。離れてしまうと「声のやり取りがしにくくなるのでは?」と思う人もいるだろう。

 そこで運転席、助手席それぞれに座っての発話に対する反応を見てみた。N-VANの場合はウィンドウ上縁、ややセンター寄りに取り付けているが、その位置でのNP1への指示は日常会話レベルの声量でいいし、かなり小声でも認識したくらいだ。これはNP1のマイクシステムに発話者にフォーカスした集音が可能な「ビームフォーミング」という技術を搭載しているからとのこと。

 とはいえ、発話者の正面に付いていれば認識がいいのは当然でもあるので、今度は助手席側に座り、運転席で発したのと同じくらいの声量でNP1(運転席側に付いている)に指示を出したところ問題なく反応。何度か繰り返してみたが、この実験では毎回発話を認識できた。このことからNP1の声を聞き取る能力は高いと思うが、運転席から離れて付ける場合、NP1を固定をする前に通常の声量での発話に答えるかのテストはしておいた方がいいだろう。

NP1のマイクとスピーカーはドライバー側にある。以前は取り付け位置によっては声の認識性が低かったときもあったようだが、現在はマイク性能がアップデートされているので音声認識性能は向上しているとのこと

 つぎにNP1からの声の聞こえ方だが、NP1のスピーカーはドライバー側に向いて付いているためか、遮音性がよくないN-VANであっても運転席、助手席ともに音声はよく聞こえる。ちなみに音量の初期設定を確認すると初期設定では最大値にセットされていたので、車内の静粛性が高いクルマであれば音量を下げて使うといいと思う。

 このように聞こえ方には不満がないNP1だが、静かな状態、騒がしい状態などいろいろな条件のなかで使っているうちに気がついたことがある。それが音量があるだけでなく、音の(声の)響き方に広がりがあるということだ。

 そこで思い出したのが、以前、NP1の開発者から聞いた音の鳴らし方の工夫だった。NP1はコンパクトなサイズに収めているので内部に大きめのスピーカーは使っていないが、その代わりにアンプの性能を高めたり、筐体の内部空間をスピーカーの共鳴枠として上手く利用したりすることで音の広がりを最適化していた。こうした作りになっているためかNP1の声は「とおりがいい」という感じの聞こえ方なのだ。

 また、NP1の音声はプリインストールされた「女性」と「男性」のボイスのほか「コエ替え」機能によってNP1の「声」が選べるのだけど、筆者はこれを声優の悠木碧さんボイスにしている。理由はシンプルに悠木碧さんのファンということだが、使っていて思うのは他の声(女性)より、声の感じや抑揚の違いからか、悠木碧さんボイスの方が聞き取りやすい印象だ。

 まあ、推しの声優さんの声だから「自然と耳に入ってるんじゃない」と言われたら「う~ん、そうかも」となるのだけど、それはそれとして、声でやり取りする機器なので「聞きやすい声」が選べるのは大事な機能であると思ったりする。そんなことから「コエ替え」は賑やかし的な機能として存在するのではなくて、ユーザーの心理的な面から聞き取りやすい声(つまり好みの声)が選べるという新しい視点の機能ともいえる。かなりおもしろいことなので、ここはもっと充実してほしいところだ。

NP1のボイスは選択ができる。筆者は2022年のOTAで追加された声優の悠木碧さんの声に設定している。プリインストールされているボイスと比べると声のとおりがよく、聞き取りやすい印象

 なお、最近のNP1は月の終わりにその月にNP1を使用した時間を教えてくれるし、使用時間を順位付けして「エリアで何位」なども知らせてくれる。また、起動時には「今日は何の日」といった小ネタも教えてくれるし、時間や天気を尋ねると答えてくれる。このように案内などとは別にコミュニケーションを取る機能が増えてきているので、「なにをしゃべるようになるか」を待つのも楽しみの1つとなっている。

マップがなくても本当に困らない?

 NP1をナビとして使うときは「NP1、〇〇に行きたい(NP1+行き先だけでもOK)」というだけ。するとNP1は「考え中です」と返答して目的地を探しルートをひくと「目的は〇〇です。〇〇のルート(ルート探索の初期設定によっていい方が変わる)で案内します」と言って案内を開始する。

 そして曲がる地点に近づいていくとそのポイントの案内が始まるのだが、まだ距離があるときは「距離+場所(交差点など)+進行方向」で案内し、曲がるポイントが近くなると「通過する信号の数+進行方向」の案内に変わるのだが、実はNP1を導入するにあたって決め手になったのがこの案内の仕方だった。

 というのも筆者は「残り距離」の案内に以前から疑問を感じていた。10mくらいの距離であればその長さは想像しやすいが、100m、200m、300mになると日常的に意識する長さではなく、距離感がつかみにくいのだ。そんな理由から「残り距離」は案内用の情報としてはあまり有益でない気がしていたのだ。

 それに対してNP1。案内ポイントまで距離があるときは「残り距離」で案内をするが、近づいて来ると案内の仕方が切り替わり「通過する残りの信号の数+進行方向」になる。この案内は分かりやすいだけでなく、信号の数を見るというのは前方確認と同時に行なえるので、距離で言われていたときより落ち着いて運転できる印象を受けた。

 また、案内中は指示されたところを曲がったあと「そのあと、○側の車線がお勧めです」という補足情報もくれるので、つぎに来る案内に対して「どっちかな?スムーズに寄れるかな?」といった気の回しは不要だし、そういった情報を探すためモニター(地図)をチラチラ見る必要がない。周辺の交通量が多かったり、車線や分岐が複雑な個所ではこうした案内は非常に便利と感じている。

ルート探索の初期設定は「おすすめ」だが、この設定では「回り道」と感じることもあったことから「到達時間が早い」にした。普段から最短ルートを意識して走っている人であれば、最初からこの設定がお勧め。違和感を感じにくいだろう。設定の変更はスマホアプリの「My NP1」で行なえる
曲がるポイントを信号の数で教えてくれるのは分かりやすい。運転に対する注意力が削がれないのでお店があったり脇道があったりと気を配らなければいけないポイントでも落ち着いて運転できる印象だ

地図が見たいときにはアプリがある

 移動の目的によっては行きたい場所に着くだけではなくて、周辺の地理も知りたいときもあって、そんなときには「声だけ」の案内では不便さを感じたりする。そこで活用するのが「My NP1」というスマホアプリ。NP1起動時にこのアプリを立ち上げているとスマホ画面にマップ表示ができるので、行き先だけでなく周辺の地理も知りたいときにはこの機能も併用している。

 また、ナビでの案内を利用中にMy NP1を立ち上げていれば、アプリ側で取得した道路情報もナビの案内に追加されるので、進行方向に渋滞があるかを知りたいときには「NP1、この先渋滞はある?」と聞くと渋滞の有無、長さ、通過時間を答えてくれるのだ。

 この情報は進路の確認的な意味で使うこともあるのだけど、約束の時間ギリギリか確実に遅れるというピンチの際には別の使い方のために参考にすることもある。どんなものかというと、一縷の望みをかけて迂回路を選ぶかどうかという決断をするときだ。

 役に立ったかはまあいいとして、渋滞の有無や状況を前もって知れることはなにかと有意義なので、筆者はわりと頻繁にNP1に道路状況を聞いている。

My NP1アプリのマップ画面。マップのみの表示もできる
有料道路を降りてから、どの車線に行けばいいかも表示
交差点はこのように表示
高速道路走行中の表示。次の目標ポイントまでの時間や距離が出る
SAの施設情報も出る。給油ポイントについては音声での案内もある
タップするとこのような選択ボタンが出てくる
My NP1を使う場合はスマホホルダーの取り付け位置も重要。視線の移動が少なく見やすい位置に付けたい。なお、My NP1の画面は縦固定で横表示に対応していない
名称検索では認識されない(名称の登録がない)こともあるが、そんなときはMy NP1に住所や電話番号を打ち込むという従来の方法でも検索ができる。目的地が公共の施設であれば、住所や電話番号を話しかけての検索が可能

 つぎに使って便利だと感じる機能がルートの再検索だ。筆者はルート案内の設定を「到着時間優先」にしているので、基本的に有料道路を使用するルートになる。でも、場合によっては一般道でいいときもあるし、高速道路を走行中、途中で一般道に降りたいと思うときもある。

 そんなとき従来のナビでは停車できる場所を探して、そこで止まってから画面の操作という手順が必要だったが、NP1では走行しながら声で「一般道で案内して」と指示すれば一般道を使うルートを再設定してくれるので、ルートの再検索をする手間が掛からないし時間的なロスも最小限だ。それだけにNP1を使い始めてからルートの再検索をすることが増えた。

調布市あたりから東京駅を検索した場合の「到着時間が早い」案内
同じところから「NP1、一般道で案内して」と呼びかけるとこのようなルートを引いてくれる。有料道路と一般道との所要時間の差を見たいときにもこの検索は使える

 ルート再検索と同じように、コンビニに寄りたいときは「NP1、コンビニ」と言えば周辺のコンビニを近い順に教えてくれる。なお、コンビニだけでなくガソリンスタンドなども同様に探せるし、変わった使い方としては走行中に眠気が出たときは「NP1、眠い」と呼びかけると、いちばん近い道の駅などの休憩施設(高速道路ならPAやSA)までの距離と時間を教えてくれるのだ。

2023年6月26日からのアップデート情報

 NP1は修正や新機能が適時アップデートされるが、その内容はパイオニアが考えるだけでなくSNSに上げられた感想や口コミサイトへの書き込み、そしてユーザーへの聞き取りなども参考にしているという。それだけに使い続けているとどんどん使いやすくなってくるのがNP1なのだ。なお、NP1のアップデート状況はユーザー向けサイトの「My NP1サイト」で確認することができる。

 では、直近の2023年6月26日から実施されたアップデートを紹介しよう。NP1は新しい機種なのでユーザーの多くがまだ音声のみでの案内に慣れていない。とくに交差点やカーブなどが多い一般道をナビの指示に沿って走る場合は地図があったほうがいいという声があった。

 そこで一般道を案内する際、従来のカード表示に加えて、地図表示が選択できるようになった。以前の仕様でも画面をタップして操作すれば地図表示はできたけど、その際は案内表示の上に出ている情報のないものだったので、案内表示ではなくて単なる地図表示だったので、このアップデートで見やすさは向上したということだ。

ナビの案内画面に誘導画面パターンが追加された。選択はメニューボタンをタップして行なう

 つぎもMy NP1アプリに関することだ。音声での指示ではなくてMy NP1の検索バーに文字を打ち込む際の操作の簡素化を図る機能が追加。検索バーをタップすると以前の検索履歴や絞り込み検索のメニューが表示される。そして検索バーへ文字を入力すると言葉に応じて候補が表示されるようになった。こうした機能の追加により、アプリ経由での目的地検索がより便利になった。

My NP1から目的地検索をする際に操作の簡素化を図る機能が追加された。アプリへの文字入力もスマホ側の音声入力を使えばこちらも「声」での操作ができるので、それとあわせるとアプリでの検索も以前より便利になっている

 もう1つが有料道路の利用設定をあらかじめON/OFFできる機能だ。NP1のルート検索では「距離が短い」「料金が安い」「道が広い」「到着が早い」など、ユーザーの好みに合わせたルートを案内できるが、地理によってはどのパターンでも有料道路を使った案内になることはあった。

 でも、状況によっては有料道路を使いたくないこともある。そんなときは前にも書いたように、一度ルート検索したあとに一般道での案内を再度検索することで有料道路を使わない案内としていたのだけど、アプリの画面操作にて有料道路を使う案内自体をON/OFFできるようになった。基本的に一般道を使うという人にとって、有料道路ありきの案内をされてしまうのはわずらわしかったと思うだけに、そういった使い方が多い人にとってこの機能は使い勝手を向上させるものになるだろう。

有料道路を利用しない移動が多い人にとって、有料道路ありきの案内が基本であるのはわずらわしいこと。そんな声に応えて追加されたのが有料道路を使う案内をOFFにできる機能が追加された

 以上がNP1のナビ機能を使った印象と新しいアップデートの情報だ。NP1は今後もアップデートが続き、どんどん使いやすくやれることも増えるので、大型アップデートの時期などに「そのときのNP1」をまた紹介しよう。