試乗記
ヒョンデ新型「コナ N Line」初試乗 静粛性とフットワークのよさはそのままにスポーティさをプラス
2024年9月4日 07:10
- 2024年8月23日 発売
- 506万円
世界第3位の自動車メーカー「ヒョンデ」のKONA(コナ)が日本にやってきたのは2023年11月。使いやすいサイズ、バッテリEV(電気自動車)のSUVとしてユニークな存在感を放つ。
Hyundai Mobility Japanとしては「IONIQ(アイオニック)5」に続く2台目のバッテリEVになる。そして、今回紹介するのはスポーティな「N Line」。KONAの上級グレードであるLounge(ラウンジ)をベースとして内外装に手を入れたモデルだ。価格はLoungeの489万5000円に対して、16万5000円プラスの506万円にとどまる。
“N”はヒョンデのパフォーマンスモデルを示すもの。日本にも「IONIQ 5 N」で強いメッセージを届けたが、N LineはそのNのエッセンスを取り込んだライトなスポーティグレードとなる。
エクステリアには多くの専用パーツが使われている。中でもインパクトが大きいのはリアのウィングタイプスポイラー。ブラックアウトされた左右2分割のスポイラーは、空気を整流するとともにKONAにこれまでとは違った印象を与えている。
同時にフロントとリアのバンパーのデザインが変更され、フロントは踏ん張り感があり、リアはデュフェーザーをモチーフにしたスピード感を強調したデザインになった。サイドシルにもスカートが追加され、下半身が強化された印象となってオリジナルKONAよりも格段とスポーティさが増している。
インテリアではNのロゴの入ったシートに赤いステッチが入り、インテリアも赤のアクセントストライプで、ベースとなったLoungeからガラリと変わって新鮮だ。
ヌメリとしたデザインと全高がやや高いKONAは大きく見えるが、サイズは4385×1825×1590mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2660mmと日本でも使いやすい大きさだ。小まわり性もよく街中でのフットワークも良好。
ラゲッジスペースはセカンドシートを使用した状態で466L。6:4で倒れるバックシートで積むものに応じてスペースを変えられる。フルフラットにすると1300Lのかなりの容積だ。バックドアはキーを持っていればハンズフリーで開けられ、開閉の高さも調整できるのでガレージの中でも便利に使える。
また、バッテリEVならではなのは、ボンネットの下にも27Lのトランクがあり、意外と収納性が高い、パワーコンポーネントを低く抑えた恩恵が現れる。
一方、パワートレーン、サスペンション、EPSなどは、標準のKONAと共通となる。KONAは本国にはガソリン車もあるが、重量のあるバッテリEV(と言っても1790kg)にも対応できるモノコックとしており十分な剛性を持っている。追加でブレスを入れる必要性はなかったとの説明だった。確かに剛性感は高く、どっしりしたSUVらしさを感じられる。
走り出しは滑らかで、バッテリEV特有の静粛性と振動のない伸びやかな加速力が魅力。ガソリン車と共用のプラットフォームはバッテリEVのKONAでは少しだけフロアが高め。しかし、ルーフが高くヘッドクリアランスは十分に取れている。視界も若干見下ろす感じで好ましい。ただドライビングポジションはステアリングのチルト量に限界もあるため、身長によってはもう少しチルト量に余裕がある方がいいかもしれない。
デビュー時には硬いと感じたリアからの突き上げは、N Lineでは角が取れた乗り心地になった。ヒョンデらしくキビキビした設定だが、細かい凹凸はサスペンションで吸収してくれる。大きな凹凸ではややバタバタしたところがあるもののバネ上は比較的フラットに保たれ好印象だった。
装着タイヤも標準モデルと同じくクムホ「ECSTA PS71」でサイズは235/45R19 99Vを履く。こちらも思いのほかしなやか。接地形状はオーソドックスに感じたが、シッカリ路面をつかむ感触は好ましい。またロードノイズはフロアにバッテリを収めるKONAでは遮音効果もあり、キャビンの静粛性は高い。耳を澄ますとCピラーから入るノイズは前席よりは大きいが、静かなクルマだけに気が付くと言ったところか。唯一大きいのはインバータノイズだが、これもノイズというよりもバッテリEVらしさを感じさせる音だった。
ステアリング操舵力は重め。アシスト力はもう少し欲しいところだ。ちなみに操舵力はドライブモードにかかわらず同じということだった。
ドライブモードは「NORMAL」「ECO」「SPORT」「SNOW」が選べる。N Lineらしく走らせるならSPORT。アクセルのピックアップがちょうどよく、しかも過敏ではないので普段使いでもドライバーは神経質にならない。なかなか巧な設定だ。
パドルシフトは左パドルを引くと0-1-2-3-iPedal、右は逆にiPedal-3-2-1と変化する。回生力を変えることでエンジンブレーキを使うのと同じ要領で使えるので長い下り坂ではフットブレーキへの負担を減らして回生エネルギーを有効に貯め込める。iPedalは回生ブレーキを積極的に使うポジションでモーター駆動車ならでは。慣れると節電になりワンペダルドライブもできる。システムは凝っており、前方の交通量に応じて回生力を変え減速コントロールを自動的に行なうことだ。
パワートレーンは64.8kWhのリチウムイオンバッテリと最高出力150kW(204PS)/最大トルク255Nmのモーター(EM16)で構成される。駆動方式はFFだ。バッテリEVの立ちあがり時の大きなトルクもよく抑えられ、FFでもトルクステアはほとんど感じない。しかも加速は俊敏で高速道路の流れにも自然に乗れる。
ナビゲーションは目的地を設定するとARで行き先に従って案内をしてくれる。ヒョンデ車はOTA(Over The Air)でソフトウェアを更新でき、ナビソフトもそれに含まれて常に最新のマップになる。
IONIQ 5で驚かされたバッテリEVならではのクルマの作り方、装備の面白さ、使い他の工夫などはKONAにも受け継がれており唸らせるところがある。