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ホンダアクセスの新型3カメラドライブレコーダーは、なぜ「前方1カメラ&後方2カメラ」なのか? 開発陣にその理由を聞いてみた

「純正アクセサリー」としてのこだわりを貫いた3カメラモデルの神髄に迫る!

今回ドライブレコーダーについてお話をうかがった、株式会社ホンダアクセス 開発担当の斉藤愛歌さん(左)と下境啓介さん(右)

ユーザーの声から3カメラのドライブレコーダーを開発

 クルマを運転中に遭遇する不本意なできごとに「録画」という手段で対応するカー用品が「ドライブレコーダー」だ。一般的に使用されてからまだ10年ほどしか経っていない製品だが、今や新車も中古車も問わず装着率は高く、カー用品メーカーだけでなく自動車メーカーも純正オプションとしてラインアップしている。

 ホンダ車用の純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスは、2008年に自動車メーカー純正としては初となるドライブレコーダーを発売し、その後も信頼性重視の製品を作るうえでもユーザーの声はとても重要な情報源ということで、常にユーザーの声をリサーチして製品開発に役立てている。

 そして、あおり運転や追突事故に遭ってしまったときの状況も記録できる「前後2カメラモデル」の発売以降に聞こえてきたのが「クルマの側方の状況も記録できる製品」を望む声。そこでホンダアクセスは「Honda純正ドライブレコーダー前後車内3カメラモデル」(以下、3カメラモデル)を開発したという。

ホンダアクセスの3カメラモデルのドライブレコーダー

 まずは開発スタッフから詳細を聞く前に、商品の性能や仕様を確認しておこう。

車内とクルマ周辺を撮影できる3つ目のカメラを追加

 ホンダアクセスが2022年5月に発売した3カメラモデルのドライブレコーダーは、前後をこれまでどおり2つのカメラで撮影し、新たにカメラを追加して、車内と両サイドのウインドウ越しに外の状況を撮影できる製品。各カメラのレンズの性能にもこだわっていて、すべて解像度1920×1080ピクセルのフルハイビジョン(約200万画素)、フレームレートは28FPSで蛍光灯やLEDのちらつきを抑制し、Honda純正ナビゲーションシステム「Gathers(ギャザズ)」と連動するタイプと、単独で動くタイプをラインアップ。価格はいずれも6万7100円だ。

フロントカメラ(前方撮影用)装着イメージ
水平110°×垂直70°の広角をカバーする前方撮影用のフロントカメラ
リアカメラ(後方撮影用)装着イメージ
後方撮影用のリアカメラも水平110°×垂直70°と広角を撮影できる
リアカメラ(車内および周辺撮影用)装着イメージ
車内および周辺撮影用のリアカメラの画角は水平180°×垂直70°という超広角レンズを採用する

 撮影画角はフロントカメラとリアカメラが水平110°×垂直70°の広角をカバー。また、リアカメラにはある速度域で一定以上の車間に詰めてきた車両がいた場合に検知し、録画データにフラグ(アイコン)をつけることで、あおり運転などの証拠を探しやすくする「後方車両検知録画機能」も備わっている。そして、新たに追加した3つ目のカメラは、水平180°×垂直70°という超広角レンズで、後方から車内はもちろん左右の窓の外まで撮影でき、幅寄せなど威圧的なドライバーの危険行為まで記録できる。

後方車両を検知した録画データはオレンジ色のアイコンで分かりやすく表示してくれる

 ナビと連動するタイプは、純正アクセサリーの「11.4インチ Honda CONNECTナビ」とリンクさせることが可能で、ドライブレコーダーが記録した映像を11.4インチのモニターでいつでも確認できる。そのため、もしもの場面に遭遇しても、その場ですぐに状況確認ができ、安心感も高い。ナビから位置情報を取得しているので、どの場所の映像なのかも分かりやすくなっている。

純正ナビ画面で録画映像や撮影場所を確認できる
純正ナビ画面からドライブレコーダーにアクセスできる
ドライブレコーダーからmicroSDカードを取り出すことなく録画した映像を見ることが可能
ドライブレコーダーの各カメラが常時録画している映像も確認できる

 一方、純正ナビとのリンク機能がないタイプは、録画データの入ったmicroSDカードを、無料の専用ソフトをインストールしたWindowsパソコンに取り込んで視聴可能。このソフトを使うと、すべてのカメラの映像や車両の速度、加速度、GPSの位置情報の入った地図など、多くのデータと組み合わせた表示も可能となる。もちろん、純正ナビとリンク機能を持つタイプも、同様にパソコンを使っての確認も可能だ。

本体には「ミュートボタン」と、突発的に映像を保存したいときに使用する「イベントボタン」の2つのみ。押しやすいように大きなボタンを採用している
microSDカードを取り出しやすくするため、本体のスロット部分には指で押しやすいように凹みを設けている
同梱されている専用microSDカードは、夏は暑く冬は寒いなど車内特有の過酷な使用環境や繰り返しの録画に対応する専用品
パソコンで専用ビューアーソフトを使用すれば、3カメラのそれぞれの映像や位置情報、車両のスピードや加速度なども表示できて分かりやすい(パソコン表示画面)

 また、無料のスマートフォン用アプリ「DR Viewer S」を使えば、記録してある映像をスマホで見ることができるほか、アプリからドライブレコーダーの設定の変更も行なえる。

スマホで録画データを見た状態。マップと映像のほかに時間、速度、加速度も表示される
録画された映像は日付と時間で分けられているので探しやすい
G検知や駐車記録も確認できる
純正ナビとのリンク機能がないタイプでも、ドライブレコーダーの電源が入っている状態であれば、スマホアプリから各種設定変更が可能。また、車外からドライブレコーダー内の映像が確認できるので、トラブルに遭っても車外の安全な場所に避難している状態で映像の確認ができる(※クルマからの距離に制限あり、距離は周囲の状況によって変動する)

 さらに、別売の追加配線をしなくても、あらかじめ「駐車時録画モード」も標準搭載していて、自宅だけでなくコンビニやショッピングモールなど、駐車場におけるトラブルも駐車後約30分間記録してくれる“駐車時録画”に加え、録画が終了した後も衝撃を感知すると約60秒間録画してくれる“駐車時録画プラス”も備えている。これらの「駐車時録画モード」は衝撃検知の感度調整はもちろん、乗員が降車の際の振動を検知しないようイグニションオフ後どれくらいの時間(30秒/1分/3分)が経過してから録画を開始するのかの設定も可能と細かく利便性を追求している。

純正ナビ画面から駐車時録画のさまざまな設定を変更できる

なぜ「前方1カメラ&後方2カメラ仕様」になったのか?

 さて、今の時代ドライブレコーダーは数多く発売されているので、きちんとした「付けたくなる理由」がなければ、ユーザーの「購入検討リスト」には入れない。そこでまずは純正ドライブレコーダーは何がすごいのか? 開発担当者であるホンダアクセスの下境氏と斉藤氏に製品の特徴やこだわりポイント、さらに「3カメラモデル」開発話を聞いてみた。

ドライブレコーダーの開発を担当している株式会社ホンダアクセス 下境啓介氏

 ドライブレコーダーを購入する際、カメラのスペックや付加機能を気にして選ぶユーザーも多いというが、ホンダアクセスがドライブレコーダーを開発するときに重視しているのは「確実に記録を撮れること」だという。これはずばり、ホンダのクルマづくりにつながる「品質のよさ」を求めるものだ。

 ホンダアクセスの手掛けるドライブレコーダーは、現在発売されているホンダ車に適合するもので、開発陣はすべて実際に装着して最適な取り付け場所を確認しているという。その基準は運転の障害にならないことはもちろん、エアバッグやHonda SENSINGのカメラ、センサーなど安全装置の動作に影響がないことまで入念に調べ上げている。

ドライブレコーダー開発担当の株式会社ホンダアクセス 斉藤愛歌氏

 例えばフロントカメラなら、テレビのアンテナやETC受信機など電子パーツが近くに配置されていることが多く、こうした場所は他の機器の電気ノイズの影響を受けるだけでなく、ドライブレコーダーが他の機器に影響を与えてしまう可能性が高い。そこで開発段階から「シールドルーム」という特殊な実験室にドライブレコーダーを持ち込んで、他の電波に対しても影響が出ないかの試験もして、装着場所もノイズの影響がないか実際に装着して調べるという徹底ぶりだ。

 また、新たに追加した3つ目のカメラは、車内やクルマの左右の周辺を確実に記録するのが目的のため、必然的にカメラの取り付け位置はフロントかリアになる。しかし、自動車のフロントウインドウの中心部にはルームミラーや先進安全機能Honda SENSING用のカメラがあるため、左右どちらかにかなりオフセットする必要があり、またカメラへの写り込み影響を加味し、3つ目のカメラの取り付け場所として適当でないと判断。後方用カメラと一体化してリアウインドウに配置することにしたという。

取り付け用の両面テープも「確実に記録が撮れる」という基準を満たすため、事故など強い衝撃があっても剥がれにくい製品を採用しているという

 この車内を向いたカメラは、ただ画角が広いだけではダメで、周囲の環境を確実に読み取れる性能が求められる。そこで360°カメラを含めて何種類かのカメラを検討した結果、360°カメラではフロントカメラと車内カメラ機能を合わせることはできるが、ドライブレコーダーとして大切な前方視認、ナンバープレートの視認性が劣ると判断。フロント/リア/車内へそれぞれカメラを搭載した3カメラ仕様とし、水平180°×垂直70°という超広角レンズを持つカメラに決定した。後方から車内はもちろん左右の窓の外まで撮影でき、幅寄せなど威圧的なドライバーの危険行為までしっかり記録してくれる。さらに、後方からの撮影なので運転手や同乗者の顔が写りづらく、プライバシーを守りやすいのも特徴の1つだ。

 加えて、車内と車外のように明暗の差が大きい場所を撮影すると、どちらか一方が白飛びや黒つぶれを起こして見えにくくなりがちだが、純正アクセサリーとして外の状況が分かることを前提に、車内が暗く映りすぎないようレンズとセンサーとパラメーターのチューニングで対策を行なっているという。

車種ごとに最適な取り付け位置を探し出して設定するという
配線は内張りのなかを通すのでほとんど見えないが、純正アクセサリーは車種ごとにノイズ影響を加味し、配線を通す場所まで決めて指定している
配線やカプラーの品質も自動車メーカーと同レベルで要求して、それを満たす製品のみを使用している

過酷なクルマの車内環境に合わせたカメラ選び

 また、今はもっと高性能なカメラがたくさんあるのに、なぜそれを使わないのか? カメラの性能がよければもっと鮮明な画像が撮れるのではないか? と、ついつい考えてしまう。

車内を広角で撮影でき、車載SPECを満たすカメラを開発陣は採用したという

 もちろん、開発段階で多くのカメラを試している。しかし、クルマの車内は高温から低温、乾燥に湿気などさまざまな状況になる過酷な環境で、さらにウインドウに取り付けるドライブレコーダーは、直射日光にさらし続けられることで非常に高温になる場合もある。そんななかでも「確実に記録が撮れること」が、純正アクセサリーで使用するカメラに求められる「高性能さ」となる。つまり、いくら高画質であってもこの点が開発陣の要求以下では使えないということ。そうした視点で精査した結果、選ばれたカメラが搭載されているのだ。

 この「確実に記録が撮れる」ことに対して徹底的にこだわっているのがホンダアクセスの手掛けるドライブレコーダーであり、Honda純正を選ぶ最大のメリットといえるだろう。

3つ目のカメラは、車内とクルマ周辺の状況を撮影することが最大の目的。そこで現在発売されているホンダ車すべてに有効な場所を探ったところ、リアウインドウへの取り付けが最善だと分かり、前方装着よりも後方装着のほうが撮れる画のバランスもいいという

 今回は新型「ステップワゴン AIR」に装着されていた「3カメラモデル」のリアカメラ映像を見せてもらったが、シートの下側など暗い部分もそれなりに見えつつ、明るさが大きく違う車外は予想以上に鮮明に映っていた。まさしくホンダアクセスの「確実な記録を撮る」という狙いどおり。また、リアカメラはウインドウのほぼセンターに付くように設定されているため、画角の左右とも均等に周辺の状況が撮れるので、左右どちらかが見えにくいといったこともない。

新型ステップワゴン AIRに装着された「3カメラモデル」の車内カメラの映り

 こういった部分は製品紹介や仕様欄には記載されていないが、実際に何かあったときは確実に役立つもの。ドライブレコーダーはスペックが高いこともさることながら、「有効な画像を確実に撮れていること」が重要で、ホンダ車ならホンダアクセスの純正ドライブレコーダーを選ぶことが一番の安心につながるだろう。また、車内や周辺の記録までは不要という場合は、2カメラモデルも併売しているので、用途に合わせてチョイスしよう。

前後2カメラモデルも並行してラインアップしている

3カメラモデル

品番DRH-229NDDRH-229SD
タイプナビ連動単独
カメラ数前後車内3カメラ
価格67,100円
型式一体構造(モニターレス仕様)
容量64GB
駐車時録画エンジンOFF後約30分+衝撃検知
画像サイズ1920×1080
画角(前方・後方)110°(水平)×70°(垂直)
画角(車内)180°(水平)×70°(垂直)
画素数約200万画素
画像処理技術HDR・フリッカーレス
常時録画(録画時間)標準モード約300分/長時間モード約400分
イベント記録時間約20秒(前約12秒、後約8秒)
イベント記録件数20件
後方車両検知録画時間約20秒(前約12秒、後約8秒)
後方車両検知録画件数50件
記録方式動画MP4、静止画JPEG
フレームレート28FPS(フリッカーレス撮影機能付き)
自車位置記録ナビ内蔵GPS機能本体内蔵GPS機能
スマホ連携(Wi-Fi接続)
パソコン動作環境(推奨OS)Windows8.1/10/11
パソコン動作環境(再生ソフト)専用ビューアーソフト

2カメラモデル

品番DRH-224SD
タイプ単独
カメラ数前後2カメラ
価格51,700円
型式一体構造(モニターレス仕様)
容量32GB
駐車時録画エンジンOFF後約30分+衝撃検知
画像サイズ(標準モード)1920×1080
画像サイズ(長時間モード)1280×720
画角128°(水平)×70°(垂直)
画素数約200万画素
画像処理技術HDR・フリッカーレス
常時録画(録画時間)標準モード約180分/長時間モード約330分
イベント記録時間約20秒(前約12秒/後約8秒)
イベント記録件数20件
記録方式動画MP4、静止画JPEG
フレームレート30FPS(フリッカーレス撮影機能付き)
自車位置記録本体内蔵GPS機能
スマホ連携(Wi-Fi接続)
パソコン動作環境(推奨OS)Windows8.1/10/11
パソコン動作環境(再生ソフト)専用ビューアーソフト

 新型3カメラドライブレコーダーの詳細については「コチラ」

photo:堤晋一
(※撮影時のみマスクを外しています)