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フォルクスワーゲン新型「ティグアン」デビュー! 第3世代の性能進化に迫る
- 提供:
- フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社
2024年12月18日 00:00
新型ティグアンのパワートレーンは2種、グレードは3種展開
フォルクスワーゲンの中で世界一売れている「ティグアン」がフルモデルチェンジした。第3世代となったその進化を体験するべく、2台の2WD(FF)モデルでロングドライブを試みた。
新型ティグアンのラインアップを説明すると、エンジンは直列4気筒1.5リッターターボに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた「1.5eTSI」(150PS/250Nm)と、直列4気筒2.0リッターディーゼルターボ「2.0TDI」(193PS/400Nm)の2種類。前者は2WD(FF)モデルとなり、このあと導入予定の2.0TDIには4MOTION(4WD)が組み合わされる。
トリムグレードは3種類あり、一番ベーシックなモデルが「Active(アクティブ)」、上級モデルは「 Elegance(エレガンス)」と「R-Line」となった。これまでのグレード体系になぞらえるとエレガンスの上位グレードがR-Lineと思いがちだが、今回からはその名のとおりキャラクターが区別され、それぞれに上質さとスポーティさが演出されているという。
ということで今回は、この中からエレガンスとR-Lineの2台を借り出して、それぞれの違いを比べてみた。
まず最初に走らせたのは、オイスターシルバーのボディカラーが凜々しいR-Lineだ。とはいいながらもまずはその見た目について言及すると、エレガンスとの違いは前後バンパーの形状がアグレッシブなところだ。グリルの下端はそれぞれがメッキトリム化されており、フロントはスポイラーのような形状で輪郭を引き締める。
対してリアは、ディフューザーっぽい見た目に力強さを加えている。試乗車はボディカラーの関係で割と落ち着いた印象だが、これがパーシモンレッドであればかなりスポーティさが強調されるだろう。そして足下には、エレガンスよりも2インチ大きい20インチサイズの大径タイヤが装着されている。
スリーサイズは全長が4540mmと、先代モデルに対して25mm長い(エレガンスは30mm)。そしてこのエクステンションによって、荷室容量が37Lアップの652Lとなった。かたや全幅はR-Lineで1860mm、エレガンス(およびアクティブ)は1840mmと据え置かれ、全高は30mm増の1655mmとなった。ホイールベースも2680mmのままだ。
全体を見た印象は、ボンネット先端部分のボリューム感が増え、全長が伸びたこともあってさらにたたずまいが強く、たくましくなった。とはいえ無駄に大きい感じがしないのは、ボリューム感のあるボディの前後フェンダー部分に、鮮烈なキャラクターラインがビシッと入っているからだろう。またグリル上部からヘッドライトにかけて跳ね上がるデイタイムランニングライトも、そのシャープさを上乗せしている。
室内に乗り込むと、真っ先に目に飛び込んで来るのはインフォテインメントの充実ぶりだ。その主役はなんといっても15インチの巨大な“Discover Pro Max”だろう。またドライバー側の“Digital Cockpit Pro”はメーターがフード型ではなく、10.25インチのデジタル端末をそのままザクッと取り付けたかのような、シンプルで現代的な見た目となった。
ちなみに助手席側はインテリアアンビエントライト仕様になっているが、将来的にはここまで前面モニター化できるのではないか? と思わせる未来感がある。そしてこのデジタル機器を収めるインパネの、彫刻のように立体的な造形がすばらしい。
快適性と奥深いコーナリングワークを見せるR-Line
ということでスタートボタンを押し、走らせよう。
ひと転がしして感じるのは、同セグメントの国産SUVでは得がたい、どっしり感だ。そして静粛性の高さ。この2つがインテリアの質感と相まって、いいクルマに乗っているという気持ちを盛り上げる。
おどろいたのは、20インチタイヤの剛性をまるっと受け止める足まわりの懐の深さだ。もちろん幅はそれなりにあるから、路面のアンジュレーションによっては細かい横方向の揺さぶりは起こる。しかし垂直方向の入力に対しては、その衝撃が低速走行時でもみごとにダンピングされている。そして速度を上げるほどに、フラットで気持ちよい乗り心地になる。
このライドフィールに大きく貢献しているのは、新機構を採用したアダプティブシャシーコントロール“DCC Pro”(1.5eTSIではR-Lineに標準装備)だ。今回からそのダンパーはカヤバが手がけており、伸び・縮みそれぞれの減衰力が別々に電子制御されるようになった。そのダンパー制御が、走りだけでなく乗り心地面にも大きく効いているのである。またSUVならではのサスペンションストロークと、大径ながらも55扁平のエアボリュームを確保したタイヤの組み合わせも、そこにトーンを合わせている。
なおかつティグアンは静かだ。パワーユニットは1.5リッターの小排気量ターボにベルトドライブ式スターターモーターの組み合わせだから、この重たいボディを引っ張るために日常領域でもエンジンはまわす。しかし車体側の遮音性や振動吸収性が非常に高いため、不快なNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)が車内に侵入しないのだ。
エンジンは低回転におけるノイズが抑えられ、ほどよい音量で整ったサウンドだけが聞こえてくる。そして街中では気付かぬうちに、ACT(アクティブシリンダーマネジメント)が2気筒を休止させてエココースティング走行を行なっている。ちなみにその燃費性能は15.6km/L(WLTCモード)と、国産ハイブリッドにこそかなわぬものの、マイルドハイブリッドとしては立派な数値だ。
また、ロードノイズについても耳障りな周波数帯がカットされている。徹底的に音を消そうとして漏れ聞こえるノイズが気になるよりも、効果的に雑音を消しているという印象だ。
そして感心したのは後部座席の居住性だった。身長171cmの筆者が座っても膝まわりには余裕があり、ヘッドクリアランスやエルボークリアランスも上々。乗り心地はほどよくしっかり感があり、風切り音やロードノイズも前席に負けず劣らず整っている。
しかしなんと言ってもR-Lineの本質は、走りにある。高速巡航時における直進性の高さは、さすがの欧州仕込みだ。レーンチェンジにおける操作の正確性、レーンを移り終えたときの収まりのよさにも感心させられてしまう。大きなRを描く中速コーナーも、とても気持ちいい。ターンインでの姿勢変化に唐突なところが1つもなく、ターンミドルまでに姿勢がきちんと決まる。ジワーッとロールスピードをコントロールしたあと、吸い付くようにコーナーをクリアしてくれる。
ならばとワインディングまで足を伸ばしてみたが、ここでもおどろかされた。曲がり込んだコーナーに合わせてステアリングを切り込んでいっても、タイヤのグリップが追従し、ベタ足で地面を捉えて曲がり込んでいく。与えた荷重やGに対してダンパーが減衰力を高めるときは高め、緩めるべきところは緩めて旋回姿勢を作り出してくれるのだろうが、それすら悟らせないほど制御は自然。そして極めてしなやかだ。
ノーマルモードとスポーツモードの違いは、さほど大きくない。EPS制御は若干重たさを増してステアリングの切り込みすぎを防いでくれるが、ダンピングは基本もっちりとしたままで、無理やり硬めてタイヤに入力を押しつけるような子供っぽさもない。
ターンインが気持ちよく決まると、アクセルを踏むタイミングも早まって運転が楽しくなる。直列4気筒1.5リッターのパワーは150PS/250Nmと決してパワフルではないが、路面をべったりとつかむ足まわりのおかげでそれを安心して合わせ込むことができる。7速DSGが歯切れよく、そしてテンポよくこの加速をシフトアップでつなげていく。
あえて重箱の隅をつつくとすれば、その走りに対してブレーキキャパシティがやや足りないところだが、つまりはそう思わせるほどR-Lineのティグアンはよく走る。エアサスいらずの快適性と、奥深いコーナリングワークの両立。アジリティよりも奥深さを大切にしたティグアン R-Lineは、とても大人っぽいスポーティグレードだ。
動きがさらにしなやかなエレガンス
20インチタイヤを履いたR-Lineがここまでよいと、エレガンスを選ぶ理由はどこにあるのか? それは単なる内外装違いの下位グレードなのか? 最初はそんな風に感じた筆者だったが、ティグアンはそんなに底の浅いSUVではなかった。エレガンスはTDIのみアダプティブシャシーコントロール“DCC Pro”を標準装備しているため、その足まわりはいわゆる固定式ダンパーだ。またタイヤも235/55R18インチと2インチ小さい。
よってワインディングのような高G領域だとそのコーナリングレベルは確かに一段低くはなるが、動きそのものはさらにしなやか。そして高速道路のようなシチュエーションだと、この柔らかさがさらに生きてくる。バネ下のタイヤを積極的に動かしながら、フラットライドを少し越えて、コンフォートな乗り心地が得られるのだ。
そして120km/h付近の高速領域では、それまでフレキシブルに動いていた四肢の動きがビタッとまとまりを見せる。レーンチェンジや中・高速コーナーでは安定感が抜群に高まり、とても気持ちよく走ることができるようになる。おそらくここから150km/hあたりが、標準サスを付けたティグアンのスイートスポットなのだろう。
ティグアンがこうした快適な乗り心地と高い操安性を両立できるのは、ボディおよびサブフレームまわり、アームまわりの取り付け部における高い剛性があってこそだ。ちなみにそのプラットフォームは、先代MQBアーキテクチャをさらに進化させた「MQB evo」。それが果たしてどのように鍛え上げられたのかは分からないが、少なくとも先代シャシーを懐事情からキャリーオーバーするのとは全く違う感じがする。また4WDの「TDI」や、後に登場するであろう「R」の設定ありきで作られたプラットフォームを共用できるからこそ、1.5eTSIの走りがすばらしく上質なのだと思う。
ちなみに高速道路ではACCを使ってみたが、これもかなりのところまで操舵支援が追従するようになっていた。コーナーの進入で減速制御までは行なわないものの、曲がり込んだカーブでの操舵支援がとてもなめらかで正確だ。こうしたハンドルさばきができるのはカメラやレーダーの精度だけでなく、操作に対して足がきちんと動き、ボディがなめらかにロールするからだろう。
こうした性能を備えながら、1.5eTSI エレガンスで547万円、eTSI R-Lineで588万9000円という価格はかなりのインパクトだ。輸入車に乗る特別感だけでなく、本物の走りの質というものを味わう上でも、新型ティグアンは推しの1台である。
Photo:安田 剛