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シェフラー、燃費36.4km/Lの新型フィット ハイブリッドに採用された「i-DCD」基幹技術説明会
ホンダとの共同開発でハイブリッドカー向けの新型DCTを実現
(2013/10/10 00:00)
シェフラージャパンは10月4日、ホンダの新型フィット ハイブリッドのトランスミッション「SPORT HYBRID Intelligent Dual Clutch Drive(スポーツ・ハイブリッド・インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ:i-DCD)」に採用された同社の新技術などに関する記者説明会を実施した。
説明会では、まずシェフラージャパン 自動車事業部 代表取締役社長 四元伸三氏からシェフラーとシェフラージャパンについて説明。シェフラーは第2次世界大戦が終わって間もない1946年にドイツで創業。焼け野原になったドイツで木製トロッコを生産するメーカーとして起業したシェフラーは、戦後復興に貢献するために限られた資材を無駄遣いしないという企業文化を持っているという。ニードルベアリング加工で金属加工に事業展開するときもこの精神により、切りくずを出さないために鍛造技術を選択。これが生産技術の進化に繋がって現代に至っているという。また、同社は創業家であるシェフラー家が現在でも会社運営の中心を担う同族企業で人材を大切にする会社となっており、中長期の視点で人材育成に力を入れ、ドイツの「マイスター制度」との相乗効果で“匠の技”を重視する現場第一主義を企業文化としている。これらから四元氏は「シェフラーは日本企業に通じる精神性を持っており、親和性が高い」と表現する。
具体的な会社概要としては、シェフラーは2012年の全世界での売上高が111億ユーロで従業員数は7万6000人以上という企業。ヨーロッパ市場を中心に自動車事業、産業機械事業を開発・生産しており、自動車事業では「INA」「LuK」「FAG」の3ブランドでエンジンシステム、トランスミッション、シャシーシステム、アフターマーケット製品などを手がけている。また、シェフラージャパンは1987年に設立され、外資系企業ながら単純な日本支社にとどまらず、日本国内の企業に対して主体的に事業展開を実施。これが今回のi-DCD開発プロジェクトへの参入に繋がっている。
ヨーロッパと日本の得意分野が融合して生まれたi-DCD
i-DCDに投入された技術やコンポーネントについては、シェフラージャパンの担当者が解説を実施。まず、エンジンテクノロジー技術部 執行役員の栗城剛氏は「i-DCDはヨーロッパで熟成されてきたDCT(デュアル クラッチ トランスミッション)の技術と、日本で発展してきたハイブリッド技術の組み合わせという新しい発想が革新的」と語り、この異なる2種類を融合させることに苦労したと明かす。開発ではハード面でのセッティングも当然ながら、ハイブリッドカーならではの多彩な走行モードに応じたクラッチ制御で作りこみが必要になり、ホンダとの密接なコラボレーションによって完成にたどり着いたという。この作業を通じてホンダの開発スピリットを体感し、今後の日本における事業展開で強みになるだろうと語った。
このほかに栗城氏はIHS(インフォメーション・ハンドリング・サービシズ)がまとめたデータを引用し、世界の自動車市場におけるDCTのシェアが2020年には全体の12%、自動変速機としては24%を占めるようになるとの市場予測を紹介。また、2012年に市場で販売された380万台のDCT搭載車のうち、300万台のDCTにシェフラー製のコンポーネントが利用されているとアピールした。
技術面での詳細を解説したトランスミッションテクノロジーグループの中澤智一氏は、従来のDCTは内燃機関エンジンとの組み合わせのみということで、ギアシフト、クラッチ制御のみをコントロールすればよかったが、i-DCDはミッションとエンジン、さらにモーターが組み合わされるほか、「EVドライブモード」「エンジンドライブモード」「ハイブリッドモード」「回生モード」という4種類の走行モードを状況に応じて使い分ける必要がある。さらにクラッチはモーターの締結/切り離しも担当するだけに、ハード/ソフト両面で従来技術から新規開発する部分が多かったと解説。とくに制御ソフト開発の部分ではホンダの技術者と密接な協力が不可欠となり、シェフラーのドイツ人エンジニアとホンダの日本人エンジニアが長い時間を掛けて開発に携わったと解説した。
発表会には、ホンダ側からも本田技術研究所 四輪R&Dセンターの齋藤進主任研究員が解説者として登壇。新型フィット ハイブリッドに搭載されたi-DCDでは、小型車に最適なワンモーターの軽量・コンパクトなハイブリッドシステムを構築するため、シェフラーから提供されたクラッチ技術が非常に重要で大きな役割を持っていると紹介。フィット ハイブリッドの全体像なども紹介しつつ、i-DCDの「高出力モーターの内側にプラネタリーギアを配置して1速ギアとして利用」「モーターをトランスミッション内に配置することで油冷化が可能になり、従来の2倍以上の22kWを出力」「デュアルクラッチをはじめとする5部品を採用し、ソフトウェアと合わせてDCTで実績あるシェフラーのノウハウを投入」といった特徴を紹介。走行性能では発進時やクルージング走行、減速回生時などにはデュアルクラッチでエンジンとモーターを切り離し、非常に効率のいいEV走行や回生発電が可能になるとしている。