インプレッション
日産「エクストレイル ハイブリッド」
Text by Photo:安田 剛(2015/4/16 00:00)
FFベースで国内初導入となる1モーター2クラッチ式ハイブリッド
現行「エクストレイル」に新たなるパワーユニットが加わった。これまで現行モデルが登場しながらもディーゼルエンジンを搭載した旧型が併売されていたため、次なるパワーユニットと聞けばやはりディーゼルだと思っていた人もいるかもしれないが、実は今度のモデルはハイブリッド。それも「フーガ」や「スカイライン」でお馴染みとなったインテリジェントデュアルクラッチコントロールシステムと呼ばれる1モーター2クラッチタイプを採用し、モーターだけでの走行も可能にしている。ただし、FFベースのクルマでこのシステムを搭載するのは国内として初(北米では「パスファインダー」がすでに搭載)。組み合わされるトランスミッションはCVTとなっていることも特徴的だ。
これにより燃費は大幅に向上。ガソリンモデルが16.4km/L(4WDは16.0km/L)だったがハイブリッドモデルは20.6km/L(4WDは20.0km/L)を達成。エコカー減税により免税(100%減税)措置が適用される。とはいえ、エクストレイルといえばタフギアなわけで、最高出力がアップしたところも注目したいところ。ガソリン車が108kW(147PS)だったのに対し、ハイブリッドモデルはシステム合計で138kW(188PS)。エンジンのスペックは同様で、30kW(41PS)のモーターパワーが加わったというわけだ。
そんなエクストレイル ハイブリッドを見てみると、外見上はこれといって変更点が見られない。エンブレムが違うくらいのもので、ハイブリッドだからと変に気張ってはいない。ただ、実際に中身を見てみると、ラゲッジスペースはほんのちょっとかさ上げされており、そこにバッテリーを搭載していることが理解できる。
ちなみにラゲッジ下にはガソリン車と同様テンパータイヤが備えられている。これはエクストレイルの性格上、テンパータイヤを備えていたほうがよいという答え。悪路を走ってパンクした際、パンク修理キットでは力不足だという考えがこの造りになっている。これによりハイブリッド車では7名乗車仕様がラインアップされない。ただ、可能であればテンパータイヤを除いてバッテリーをそこに押し込み、7名乗車モデルもラインアップして欲しかったような気もする。7名乗車はエクストレイルのウリの1つなのだから……。
それ以外にも興味深かったのは、ボディー下部の両サイドに空力を考えたカバーが備えられていたことだ。床面をフラットにして少しでも燃費を稼ぎたい、ガソリンモデルではなかった貪欲なまでの燃費に対する姿勢がそこで見て取れるのだ。これにより最低地上高はカタログ上ではガソリン車に対して10mmダウンするが、これで悪路走破性が失われるほどのものではないだろう。
重厚感溢れる走り
その実力を試すためテストコースで走ってみると、走り出しからスムーズな加速を見せてくれた。まずはモーターで動き出し、その後エンジンが始動してグッと前へと出るその感覚はなかなか。低速域ではエンジンが始動しないため、当然ながら静粛性もかなり高い。そして何より感心したのが、その一連の動作がかなり滑らかだったことだ。1モーター2クラッチとCVTのマッチングはかなり良好。アクセルオフにすれば速度域が高くてもエンジンがすぐにストップし、燃費をとことん稼いでいる。モード燃費の走行状況では4分の3をモーターで走行するというから、どれだけ長くエンジンがストップしているのかがご理解いただけるだろう。ただ、減速時にブレーキのフィーリングがスポンジーだったことはやや残念なところ。このあたりはガソリンモデルのほうが自然だ。
しかし、燃費のよさだけを追いかけていない一面があることも事実。いざアクセルを踏み込めば力強い加速を見せてくれる。かつてエクストレイルはガソリンモデルにターボを組み合わせたグレードが存在していたが、エクストレイル ハイブリッドの加速はアノ俊敏さを思い出すほど。ガソリンモデルでパワーフィールに物足りなさを感じていた人にも、このハイブリッドはオススメできる仕上がりだ。
ハイブリッドシステムを搭載するため、およそ130kg重たくなったところもあるが、それは決してネガになっていないようにも感じる。S字カーブのようなところを駆け抜ける時にガソリン車のキビキビとした感覚のほうが魅力的であることは事実だが、対してハイブリッドはドッシリとした乗り味を手に入れたとも受け取れる。それが上質な感覚となり、乗り心地もわるくない。むしろ重厚感溢れる走りとなり、車格が引き上げられたようにも受け取れるのだ。
新たなるパワーユニットを手にしたことで、より一層充実のラインアップになったエクストレイル。なんでディーゼルじゃなかったの? とお嘆きの方々もいるかもしれないが、そこにはきちんとした回答が備わっていることは間違いない。環境性能と力強さをきちんと両立したことを、皆さんも一度試乗して体感してみては?