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「今後動くモノはすべて自律動作マシンに」。NVIDIA 副社長 大崎真孝代表の基調講演レポート
「自動運転開発パートナーが5カ月で50社増えた」と急速な進展をアピール
2018年4月5日 20:45
- 2018年4月4日 開催
自動運転やAI(人工知能)向けの半導体&ソリューションメーカーであるNVIDIAの副社長 兼 エヌビディア合同会社 日本代表 大崎真孝氏が、4月4日から東京 有明の東京ビッグサイトで開催されている「AI・人工知能 EXPO」の基調講演に登壇し、同社の戦略などについて説明した。
この中で大崎代表は、「NVIDIAの強みはハードウェアとソフトウェアのスケーラビリティとソフトウェアの互換性だ」と述べ、先週行なわれた「GPU Technology Conference 2018」で発表されたGPUが16基搭載されて2PFLOPSの性能を発揮するスーパーコンピュータ「DGX-2」からシングルGPUのTITAN Vなどの開発ボードまで1つのソフトウェアでサポートできるスケーラブルなアーキテクチャと、それをサポートするCUDAベースのソフトウェアがNVIDIAのAI・自動運転では強みになっているとコメント。
また、NVIDIAの技術をベースに自動運転技術の開発を行なっている企業、組織などが370を越えていることに言及し、CES時点での320から数カ月の間に急速に増えたとし、順調に普及や開発が進んでいることをアピールした。
NVIDIAの強みはハードウェアとソフトウェアのスケーラビリティとソフトウェアの互換性
NVIDIA 米国本社副社長で、NVIDIAの日本法人であるエヌビディア合同会社(通称NVIDIA Japan)の日本代表を務める大崎真孝氏はAI・人工知能 EXPOの基調講演に登壇し、同社のAIコンピューティングの最新動向を紹介。大崎氏は「NVIDIAの社員は1万1000人で、CEOは半導体を製造するハードウェアメーカーではなく、ソフトウェアを提供するメーカーだと言っている。社員のうち9000人はエンジニアだが、そのうちの3000人はソフトウェアのエンジニアだ」と述べ、近年のNVIDIAはCPUを利用した汎用演算のプログラミングモデルであるCUDAをはじめとしたソフトウェアに多大な投資を行なっており、それが強みになっていると強調した。
そのNVIDIAのビジネスの特徴について、大崎氏は「特徴は2つある。1つはハードウェアとアーキテクチャのスケーラビリティ。我々のGPUは単一のアーキテクチャで、異なる産業に展開している。コンピュータの拡張カードとしてサーバーに差さったり、我々自身がスーパーコンピュータを製造するなどしている。もう1つはCUDAをベースにしたソフトウェアで、同一のツールセットを用意して横展開しており、それを自動車にもAIにも利用できるようにしている」と述べ、CUDAを中心としたソフトウェア開発環境と、スケーラブルなアーキテクチャになっているGPUというハードウェアの組み合わせが現在のNVIDIAのAIや自動運転開発の強みになっているとした。
その上でAIのビジネスについて触れ、「我々が提供するGPUの汎用演算はムーアの法則を越えて性能向上を実現している。AIの多くは行列演算になっており、GPUで実行するのが最適だ」と述べ、そのAIの活用のアプリケーションとして、今NVIDIAが力を入れて取り組んでいる領域として医療関連を紹介し、同社が「Project Clara」と開発コードネームで呼んでいる医療機器にAIの機能を活用する取り組みを紹介した。大崎氏によれば、Project Claraは既存の医療機器の外部出力を、NVIDIAのデータセンターに接続してディープラーニングを活用して画像を3D化するといった処理を可能にするという。
また、GTC 2018で発表したDGX-2についても触れ、NVSwitchというGPU-GPU間のインターコネクトになるNVLinkを拡張するコントローラを利用して、従来は最大で8個までしかスケールアップできなかったGPUを、16個までスケールアップできるようにしたことを紹介した。これにより、DGX-2は前世代の倍となる2PFLOPS(FP16/半精度)という性能を実現している。
大崎氏は「このDGX-2を利用すると、従来型のCPUベースのクラスターサーバーに比較してコストは8分の1、設置面積は60分の1、消費電力は8分の1になる。我々のCEOはGPUを買っていただいたほど、もっと節約できると表現している」と、DGX-2によりコストや消費電力を大幅に削減できるとアピールした。
今後動くモノはすべて自律動作マシンになっていく
また、大崎氏は自動運転に話題を移し、「今後動くモノはすべて自律動作マシンになっていくと考えている。例えば米国での自家用車は2億5000万台あるが、そのために8億台分のパーキングが確保されている。それを減らせばもっと土地を有効活用できる」と述べ、今後は自家用自動車に限らずトラック、配送用の車両、バス、農業機械などが自立的に動く時代が来ると予想した。
そうした自動運転時代向けに、NVIDIAはDRIVE PX2などのプラットフォームを提供していると説明したほか、GTC 2018で発表したDRIVE SIM AND CONSTELLATIONを紹介。DRIVE SIM AND CONSTELLATIONについて大崎氏は「仮想的な道路環境やセンサー情報をCONSTELLATIONで作り上げていく。ECUが開発途中であっても、開発を回せるソフトウェアインループも可能。今後は自動車がソフトウェアベースになっていくと、ソフトウェアのアップデートをOTAで行なうが、それらの開発に時間がかかるものの、それを短縮する目的でも利用できる」とコメント。実際、米国でNVIDIAが20台の車両で1年間実証実験を行なったところ、160万kmしか走れなかったことを例に挙げ、そのような状況でも開発を前に進めるためにDRIVE SIM AND CONSTELLATIONが重要になると紹介した。
また、NVIDIAの自動運転の開発パートナーが370を越えたことを紹介し、「CESから数カ月で50社も増えて、我々も驚いている」と述べ、まだパートナーとなっていない企業にも一緒に自動運転技術を開発していこうと呼びかけた。そして、NVIDIAがDRIVE Pegasusの後継としてORINなどを計画していることなどのロードマップを説明し、DRIVE Pegasusで作成したソフトウェアはそのままORINや、それ以前のプラットフォームで動かすことができ、それが自動車メーカーや部品メーカーにとってのメリットになると述べた。
最後に大崎氏は「今まで日本が培ってきたクラフトマンシップとAIが出会って融合されることで、日本のもの作りが世界で輝く。AIはどのような産業でも必ず必要になる」と述べ、講演をまとめた。