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三菱自動車、デリカシリーズ50周年&一部改良した「デリカD:5」説明会
デリカ スペースギアのレイアウトにはエスティマが関係? 開発OBが当時を振り返る
2018年4月26日 00:00
- 2018年4月25日 開催
三菱自動車工業は4月25日、同日に一部改良して発売したミニバン「デリカD:5」の説明会を都内で開催した。
この説明会では、1968年に「デリカ トラック」を発売して2018年でデリカシリーズが50周年を迎えることから、商品戦略本部 チーフプロダクトスペシャリストの大谷洋二氏がデリカシリーズの50年の歩みを紹介するとともに、4代目「デリカ スペースギア」の開発OBの今崎剛氏から同モデルの開発時のこだわりなどが語られた。
また、会場となった三菱自動車本社には、新型デリカD:5とともに初代「デリカ バン」、2代目「デリカ スターワゴン」、3代目「デリカ スターワゴン」、4代目「デリカ スペースギア」と、歴代モデルがズラリと展示された。
1968年に登場した“デリバリーカー”の歩み
はじめに登壇した大谷氏からは、デリカシリーズの歩みが紹介された。
「デリバリーカー」を車名の由来にするデリカが登場したのは1968年。「さまざまな道路状況において、確実に乗員や荷物を目的地まで運ぶクルマ」として、初代モデルのデリカ トラックは商用車として高度経済成長時代の物資輸送を担った。
1979年に登場した2代目のデリカ スターワゴンは「人気(スター)」のワゴンとの意を込めて名付けられ、ワンボックス乗用車としての道を歩み始める。1982年には小型キャブオーバータイプとして日本初の4WD車を追加し、「パジェロ」とともにアウトドアブームの火付け役になったという。
と、ここで1983年の総理府広報室「国民生活に関する世論調査」の内容を紹介。「今後生活のどのような面に力を入れたいと考えているか」との問いに対し、それまで「住生活」が1位となっていたが、同年から「レジャー・余暇生活」が上まわったという。
こうした国民の意識背景を鑑み、1986年に登場した3代目のデリカ スターワゴンではモノコック構造を採用してより快適で便利さを追求。3代目の開発は1983年春ごろからはじまり、衝突安全性とウォークスルーを可能にするセミキャブオーバー式という構想もあったというが、結果として従来と同様にスペース効率に優れたフルキャブオーバー式が採用された。
1994年にデビューした4代目は、日常生活やレジャーのための身近な“道具(ギア)”感覚をもってもらえるよう「スペースギア」の名称が与えられた。
エンジンレイアウトをそれまでのフロントシート下に配置するのではなく、ノーズ部に収めるフロントエンジンレイアウトを採用し、前面衝突安全性を高めたのが大きな特徴。また、前席から後席キャビンへのウォークスルーを実現するとともに、セカンドシートでは横向きや対座など多彩なシートアレンジを用意した。
そして2007年に登場した現行モデルとなる5代目のデリカD:5は、「アウトランダー」のプラットフォームや電子制御4WD、環状骨格構造「リブボーンフレーム」など、高い安全性と走破性を武器にしたワンボックスタイプのミニバンへと進化。2013年1月には歴代デリカのディーゼルファンからの強い要望を受け、クリーンディーゼルエンジン搭載車を追加したといったことが振り返られた。
また、今回の一部改良の内容については関連記事に詳しいが、フロントマスクにアンダーカバー一体型のフロントバンパープロテクターを採用するなどフロントまわりのデザインを変更した。
合わせて、新たに設定された特別仕様車「ジャスパー」では、夏の山や森林をイメージしたという専用色の「ディープシーグリーンマイカ/アイガーグレーメタリック」を設定するとともに、ダーククローム調塗装の18インチアルミホイール、メッキ加飾が施されたフォグランプベゼル/ウインカー付電動格納式リモコンドアミラー/アウタードアハンドルを装備。
また、インテリアでははっ水機能を追加した専用スエード調人工皮革(ブラウン&シルバーステッチ)をシート表皮に採用してアウトドアシーンでの使い勝手を高めるとともに、ピアノブラック加飾を与えたアッパーグローブボックスとパワーウィンドウのスイッチパネルにより特別感を高めている。
そのほか、2017年4月に発売された特別仕様車「アクティブギア」の継続販売も発表されている。
なお、マーケティング推進部 志治幸奈氏からは、4月25日からスタートした「デリカ誕生50周年キャンペーン」の紹介が行なわれた。
このキャンペーンでは、デリカ誕生50周年の感謝をこめて、「遊びの歴史を積んで走れ。」をテーマに特設サイトの公開をはじめ、アウトドアギアのプレゼントキャンペーン、デリカファンが集まるイベント「デリカファンミーティング2018」への出展、フォト投稿キャンペーン(6月スタート予定)などを実施することを発表。
特設サイトで行なわれる「合計500名様に当たる!デリカ誕生50周年プレゼントキャンペーン 第1弾」(4月25日~6月17日)は、クリエイティブディレクターのアクタガワ タカトシ氏が厳選した、春夏のアウトドアで活躍するデリカ誕生50周年アニバーサリーロゴ入りのアウトドアギア6種を合計500名にプレゼントするというもの。詳細は特設サイトをご覧いただきたい。
デリカ スペースギアのレイアウトにはエスティマが関係していた
次に登壇した同社OBの今崎剛氏からは、4代目デリカ スペースギアの開発当時のこだわりなどが語られた。
デリカ スペースギアの企画にあたっては、アウトドアなどのイベントに開発担当が参加し、ユーザーの生の声を直接聞くことを重視したことを語るとともに、「社内にもデリカユーザーがたくさんいたので、デリカ スペースギアを見てもらって評価してもらったり、意見要望を積極的に出してもらってそれを反映していきました。こういったユーザーニーズを一番に取り入れたデリカ スペースギアはそれなりの評価をいただいたのですが、実はスペースギアでは問題がありました。スペースギアはフロントにエンジンを置いたのですが、ある程度(企画が)まとまったころに実はトヨタさんの『エスティマ』『ルシーダ』というモデルがエンジンを傾斜させてフラットフロアのクルマを発売されました。我々としては、フラットフロアというのはユーザーニーズがあったものですからこれは非常にまずいとなりました」。
「開発費というのは膨大にかかるのでパジェロとのコンポーネント(エンジン、足まわり、パワープラント関係など)の共用を進めていたので、どうしても新エンジンの開発とか、足まわりを新しくするといった投資が追いついていかないとなっていたのですが、新型エスティマの登場によって『これでは我々の商品力はなくなる』となり、この時点ではじめてフロントにエンジンを置くことの決心がついたのです。それからフルフラットシート、ウォークスルーというのを実現できました。ただ、そのとき問題になったのはフロントエンジンはフロントヘビーで重量配分がわるくなること。それで足まわりを含めた新コンポーネントができたのです。逆に言えば、新型エスティマが出たおかげでフロントエンジンというレイアウトや、ユーザーニーズが一番高かったウォークスルーが実現できたのです」と、デリカ スペースギアのレイアウトには意外にもエスティマが関係していたことなどについて語った。
また、それまで例がなかったという120品目もの用品が開発されたことを紹介するとともに、「スターワゴンとスペースギアは、実は併売していました。我々のパジェロとスターワゴンとスペースギア、これをどういう風に販売していくのかという問題がありましたが、ユーザー調査をしていく中でそれぞれをすみ分けできるという結論になりました。パジェロとスターワゴンのユーザー層は非常に近く、スペースギアのユーザーはちょっと離れているイメージでした。スペースギアの発売のタイミングで、スターワゴンのボリュームがどんどん上がってきたということもあり、併売に至ったのです」と、当時の思い出を振り返った。