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マクラーレン、アイルトン・セナの“チャレンジし続けるDNA”を受け継ぐ「マクラーレン セナ」日本初公開

車両重量1198kgでパワーウェイトレシオは668PS/t

2018年5月22日 開催

67万5000ポンド

「マクラーレン セナ」とマクラーレン・オートモーティブ アジア 日本代表 正本嘉宏氏

 マクラーレン・オートモーティブは5月22日、3月のジュネーブ・モーターショーで世界初公開した“アルティメットシリーズ”の最新モデル「マクラーレン セナ」を、東京都港区の大本山 増上寺で日本初公開した。

 マクラーレン セナは、マクラーレンのマシンにも数多く搭乗してレース界にその名を刻むF1ドライバーの故アイルトン・セナの名を車名に使い、マクラーレンが「究極と呼ぶにふさわしいパフォーマンスのサーキット指向型ロードカー」とするモデル。2017年12月に「67万5000ポンドで500台が限定生産される」とアナウンスされたが、日本円で約1億円という価格設定ながらその時点ですでに所有者が決定した“完売状態”となっていた。

マクラーレン セナ
ボディサイズは4744×2051×1229mm(全長×全幅×全高。全幅はミラー格納時)、ホイールベースは2670mm。車両重量は1198kg
左右のドアはAピラーの付け根とルーフの2カ所にヒンジを備え、斜め前方に向けて開くスタイル
ドアパネルにも空力パーツを多数装着し、フロントフェンダーの後方側も兼ねている
タイヤサイズはフロントが245/35 ZR19、リアが315/30 ZR20。写真のピレリ「P ZERO Trofeo R」のほか、無償オプションとして「P ZERO」も用意される。アルミ製のブレーキキャリパーは、フロント6ピストン、リア4ピストンで、リア側には駐車用のサブキャリパーも装備する
マクラーレン セナ日本初公開の席でプレゼンテーションを行なった、マクラーレン・オートモーティブ エンジニアリング・デザイン・ディレクターのダン・パリー・ウィリアムズ氏(左)、マクラーレン・オートモーティブ アジア・パシフィック担当マネージング・ディレクターのジョージ・ビッグス氏(中央)、マクラーレン・オートモーティブ アジア 日本代表の正本嘉宏氏(右)

チャレンジし続けるDNAが「マクラーレン」と「セナ」共通のDNA

マクラーレン セナについて説明する正本氏

 プレゼンテーションでは、最初にマクラーレン・オートモーティブ アジア 日本代表の正本嘉宏氏が登壇。正本氏は「この『マクラーレン セナ』ですが、マクラーレンが過去何十年にもわたって培ってきたレーシングテクノロジー、そしてそれを最新の技術とマテリアルの粋を尽くして作り上げた『究極の、最新のマクラーレン』です。その伝統と革新という2つの究極の融合を皆さんに御体感いただくために選んだ会場が、この増上寺です。マクラーレンはこの日本で、2012年に『MP4-12C』というわずか1つのモデルでスタートしたまだ若い会社でございます。しかし、現在では3つのプロダクトレンジを持つスーパーカーカンパニーに成長しております」。

「スーパーカーのパフォーマンスをスポーツカー分野で実現した『スポーツシリーズ」、マクラーレンの本当のDNAを体現する『スーパーシリーズ』、そして今回ご紹介いたしますマクラーレン セナは、マクラーレンのトップエンドに位置する究極の『アルティメットシリーズ』の最新バージョンになります」。

「マクラーレンにとって、この『セナ』というブランドは、単にお互いにとって栄光のモータースポーツの歴史を築いた絆があるというだけではなく、お互いの根底にいつの時代もチャレンジし続けるというDNAがあります」とコメントし、マクラーレン セナのコンセプトを紹介した。

会場ではアイルトン・セナ選手がマクラーレンのF1マシンをドライブし、果敢なチャレンジで勝利を目指すシーンをムービーで紹介。チャレンジし続ける点を共通するDNAであるとした
マクラーレン・オートモーティブのWebサイトでも公開されているマクラーレン セナPRムービー「The McLaren Senna-Challenge the Impossible」(1分46秒)
マクラーレンの開発エッセンスや事業状況について紹介するビッグス氏

 正本氏に続いて登壇したマクラーレン・オートモーティブ アジア・パシフィック担当マネージング・ディレクターのジョージ・ビッグス氏は、直前に流れたムービーを「アイルトン(セナ)は限界を上まわるものであり、その思想はわれわれの取り組みそのもの」と表現。また、英国の「マクラーレン・テクノロジーセンター」にはF1マシンなどのレース車両を展示していることを紹介し、これが「われわれが目指すべき基準を日々思い起こさせてくれるもの」と解説、この取り組みを受けてユーザーの期待に応え続けていると述べた。

 こうした取り組みにより、マクラーレンは4年連続で成長を続け、2017年はグローバルで3340台を販売。この3分の2が新たにラインアップに追加したスポーツシリーズのモデルであり、自分たちのブランドにとって多くの新規ユーザーを獲得しているとアピールしている。2016年からはマクラーレン・テクノロジーセンターで2シフト制度を導入しており、現在は20台/日体制を構築しているという。

 また、日本は戦略的に非常に重要な国であるとビッグス氏は位置付け、2017年にはスポーツシリーズの販売台数で世界3位であり、受注台数が前年比78%増と大きく成長していることを紹介。東京で2カ所目となるディーラーが今年後半に開店予定となっているなど、取り組みを強化していると語った。

「マクラーレン・テクノロジーセンター」でF1マシンなどを展示して、自分たちが目指す基準としていることを説明
2017年にグローバルで3340台を販売
「日本は戦略的に非常に重要な国」とビッグス氏は位置付ける
オープニングでは重要無形文化財 総合認定保持者である、能楽囃子大倉流太鼓の大倉正之助氏が演奏を披露
マクラーレン セナで重要なのはラップタイムだと語るウィリアムズ氏

 今回のマクラーレン セナだけでなく、これまでにも「P1」「675 LT」「720S」といったマクラーレンの歴代モデルで開発に携わってきたマクラーレン・オートモーティブ エンジニアリング・デザイン・ディレクターのダン・パリー・ウィリアムズ氏が車両解説を実施。

 ウィリアムズ氏はマクラーレン セナの開発コンセプトを「公道仕様のレーシングカー。それも究極のマシンを作ること」と紹介。開発時には車両ごとにDMAに基づき属性分けをして開発していくが、マクラーレンでは全てのモデルで同じDNAを備えおり、異なる属性を持つことによってモデル分けされているという。

 マクラーレン セナの解説では、「車両重量」「エアロダイナミクス」「エルゴノミクス」「パフォーマンス」の4つの属性別に説明。重量についてウィリアムズ氏はニュートンが定義した「運動の第2法則」について語り、「加速させるためにはパワーウェイトレシオをしっかりとさせなければならない。これは簡単に思われるかもしれないが、根本的な課題だ」と述べた。実際にマクラーレン セナでは最高出力800PS、最大トルク800N・mを発生するV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンをボディのリアミッドに搭載しながら、車両重量は1198kgを実現。これは既存モデルで最軽量の675 LTより100kg軽い数値で、パワーウェイトレシオは668PS/tとなっている。

 一方、ウィリアムズ氏は「最高速はわれわれにとって重要ではない。それはこのモデルがトラックカーであり、重要なのはラップタイム。その目標のためには加速力、減速力、高いコーナーリングスピードを実現することが大切だ」とコメントした。

開発時に掲げられた基本コンセプト
マクラーレン セナの特徴を4つの属性別に解説
さまざまな物理法則が根本的な課題
カーボンファイバーの複合素材で構成するフロントフェンダーは、十分な強度を持たせながら厚さを1mmまで抑え、片側0.66kgを実現
リアタイヤに強大なダウンフォースを発生させるリアウイングは、ブレーキング時に角度を立たせて制動距離を短縮するといった可動ギミックを備えつつ、重量は4.87kgとなっている
乾燥重量は1198kg
エアロダイナミクスについては、実際の開発で使用したCFDのモデルデータを紹介。ボディ周辺の空気を乱すことなく後方に流しつつ、強力なストッピングパワーを生み出すブレーキ、800PS/800N・mを発生するエンジンなどを効果的にクーリングする設計としている
ウィリアムズ氏は実車の形状を示しながらエアロダイナミクスについて説明した
エアロダイナミクスの開発ターゲットとなる4つの要素
公道走行可能なマクラーレンのモデルとして歴代最高となる計800kgのダウンフォースを手にした
「M840TR」型のV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンは、最高出力800PS/7250rpm、最大トルク800N・m/5500-6700rpmを発生
7速SSG(シームレスシフト・ギヤボックス)で後輪を駆動し、0-100km/h加速2.8秒、0-200km/h加速6.8秒、0-300km/h加速17.5秒をマーク
マクラーレン P1との比較で、200km/hからの静止距離を16m短縮
フロント側ではヘッドライト下に「アクティブ・フロント・エアロブレード」を設置。走行状況に合わせて内側2枚のフィンが開閉し、ドラッグとダウンフォース、クーリングなどの状態を変化させる
フロントノーズには大型のラジエターを斜めに配置
サイドインテークはエンジンルームのクーリングのほか、ボディ内に空気を通すことで乱気流を抑える役割も持つ
スワンネック型の大型リアウイングは、支柱の内側に油圧ピストンを設置してウイング面をすばやく角度変更できるようにした
六角形スタイルの“スラッシュカット”エキゾーストパイプの配置は、「最も効率的で効果的なソリューション」とのこと
エアフローを重視して開口部の多いリアエンド。ハニカムメッシュのパネルに「SENNA」のロゴマークを設定
ルーフ上に「シューケル型」のエアインテークを設置
クリアタイプのハッチ下にV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンを搭載
ドアミラーはボディから離れた位置にレイアウトされる
ドアウィンドウ後方にあるリッドは、右側がラジエターフルード用、左側が給油口となっている
マクラーレン セナのインテリア
エルゴノミクスを追究し、視野を3つのゾーン別に管理。適切な距離感でメーターなどを配置しているほか、ヘルメットを装着している場合は下側が死角になることも配慮。運転中に必要な情報を高い位置にまとめている
カーボン製の大型パドルをステアリングに設定
センターコンソールの「アクティブ・ダイナミック・パネル」で「コンフォート」「スポーツ」「トラック」の3種類でハンドリング・パラメーターを管理
軽量化のポイントにもなっているバケットシート。カーボンシェルの上に体圧分散を計算してクッションを設置。また、レーシングスーツの着用を想定して、高いクーリング性も与えている
会場ではアイルトン・セナゆかりのヘルメットやレーシングスーツなどを展示
MOET製シャンパンの空き瓶には複数のサインが入っている
会場となった増上寺の大殿前に、マクラーレンのラインアップモデルが展示された