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トヨタ、6月26日同時発売の“初代コネクティッドカー”新型「クラウン」「カローラ スポーツ」説明会
ニュルで実力を試したクラウン、若者ターゲットのカローラを開発主査が解説
2018年6月26日 16:00
- 2018年6月26日 発売
- 460万6200円~718万7400円(クラウン)
- 213万8400円~268万9200円(カローラ スポーツ)
トヨタ自動車は、6月26日に発売した新型「クラウン」「カローラ スポーツ」の説明会を開催した。価格は新型クラウンが460万6200円~718万7400円、新型カローラ スポーツが213万8400円~268万9200円。
15代目となるクラウン、12代目カローラシリーズの先陣を切るカローラ スポーツは、ともに“初代コネクティッドカー”としてデビュー。それぞれ車載通信機「DCM(Data Communication Module)」を全車に標準装備し、遠隔で走行アドバイスや車両診断を受けられる「eケアサービス」「LINEマイカーアカウント」といったコネクティッド機能を搭載するのが新しい。コネクティッド機能については別稿で紹介しているので、そちらを参照いただきたい。
新型クラウンでは「TNGA(Toyota New Global Architecture)」に基づいてプラットフォームを一新し、パワートレーンには従来モデルから出力を向上させた直列4気筒DOHC 2.0リッター直噴ターボ+8速AT、クラウン初採用となる直列4気筒DOHC 2.5リッター直噴+モーター+電気式無段変速機(THS II)、トヨタブランド初採用となるV型6気筒DOHC 3.5リッター直噴+モーター+10速AT(マルチステージハイブリッドトランスミッション)という3種類を設定した。
エクステリアでは、ロングノーズのFRらしいプロポーションに6ライトウィンドウを組み合わせるとともに、タイヤの張り出しを強調して低重心でスポーティな骨格を表現。2WD(FR)車のボディサイズは先代モデル(アスリート/2WD車)比で15mm長く、5mm高い4910×1800×1455mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは70mm延長され2920mmとした。
また、新型カローラ スポーツはこれまで「カローラ ハッチバック」(仮称)とされていたが、正式名称としてスポーツの名が与えられた。
新型カローラ スポーツのパワートレーンは、直列4気筒1.8リッター「2ZR-FXE」型エンジンにモーターを組み合わせるハイブリッド車と、「C-HR」で採用される直列4気筒1.2リッター直噴ターボ「8NR-FTS」型エンジンを搭載するガソリン車の2種類。ガソリン車のトランスミッションについては、日本では初採用となる6速MTの「iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)」が用意され、こちらのモデルは8月に導入することが予告されている。
エクステリアデザインは、TNGAプラットフォームの採用により低重心でワイドなスポーティシルエットを実現し、トレッドを拡大してタイヤを外側に出すなど踏ん張り感のあるスタイルが特徴。ボディサイズは4375×1790×1460mm(全長×全幅×全高。全高はシャークフィンあり)、ホイールベースは2640mmとなっている。
国内専用車にも関わらずニュルで走行テスト
説明会では新型クラウンのチーフエンジニアである秋山晃氏、新型カローラ スポーツのチーフエンジニアである小西良樹氏が登壇して各モデルの概要を説明した。
はじめに登壇した秋山氏は「クラウンは1955年1月1日、“日本初の純国産乗用車”として誕生しました。日本人の頭と腕だけで世界に誇れるクルマを作るんだ、このような創業者・豊田喜一郎の思いを実現したクルマです。それ以来、14代にわたりクラウンは常に新しいことにチャレンジし、60年余りの長い間、日本のモータリゼーションをけん引してまいりました。まさにクラウンの歴史は挑戦と革新の歴史であります」と、クラウンの歴史について紹介。
その秋山氏は13代目のクラウンから開発に携わり、14代目のマイナーチェンジからチーフエンジニアとして就任。14代目のクラウンについては「新しい革新にチャレンジし、従来のクラウンのお客さまからは絶大なご支持をいただいたのですが、残念ながら新しいお客さまのご支持が得られないという悩みがありました」と振り返るとともに、「このような中で15代目のクラウンの開発を始めたわけですが、私はこれまでのクラウンの壁をぶち破るため、世界中どこに出しても戦えるクルマにしたい、世界基準を全て凌駕するクルマにしようと心に決めたのです。欲しくなるものというのは、人を惹き付けるオーラがあります。15代目クラウンは人を惹き付け、心に響くクルマにしたいという思いを開発陣全ての人と共有し、細部にわたりわれわれ作り手の思いをギュッと凝縮したクルマにしてまいりました」と語る。
また、「まず最初にお伝えしなければならないのは、クラウンを1つの方向に絞ったということです。これまではショーファー向けのマジェスタや法人ユースのロイヤル、パーソナル向けのアスリートと、価値観の異なるバリエーションを揃えてまいりました。しかし、これ自体がクラウンの保守的なイメージをぬぐえない一因であると考え、今回は“次世代リーダーを魅了する究極の1台”という方向に凝縮しました。デザインや走り、安全性能の進化はもちろんのこと、今回はクルマの機能を拡張するコネクティッド技術を採用し、“初代コネクティッドカー”として生まれ変わりました。新型クラウンは車載通信機のDCMを全車に標準搭載しており、クルマやドライバー、街全体がつながることで、より安全でより便利な社会を目指してまいります」と述べるとともに、新型クラウンの特徴である「世界で戦えるデザインの革新」「世界で戦える走りの革新」「先進安全技術の充実」という3点について解説を行なった。
まずデザインについては、「エクステリアでは6ライトウィンドウを採用してフロントタイヤを70mm前出ししました。これにより、かつてない流麗なフォルムを実現しました。アルミホイールは5本スポークの大胆な意匠とし、走る楽しさを予感させます。従来型と比較するとエレガントなシルエットにアクセントの効いた大人のスポーティさが際立ちます。リアクォーターについては、キャビンを融合させながらリアまわりを大きく絞り込み、これによってタイヤの張り出し、しっかりした踏ん張り感を演出しています。また、フロントはセンターの水平な押し出しとタイヤに巻き付くフェンダーの造形で、これまでの分厚い顔、威圧的な顔を改め、ワイド&ローの引き締まった表情としました。ヘッドライトも薄くシャープな造形とし、多段LEDを採用してAHS(アダプティブハイビームシステム)の高い機能性を合わせてアピールします。リアコンビネーションランプはヘッドライトと同じモチーフで、シャープでエレガントなイメージを強調しました。また、新型クラウンはデザインのカッコよさだけでなく、日本のお客さまのために全幅が1800mm、最小回転半径も5.3mと、道幅が狭く小回りの必要な道路環境においても運転しやすいパッケージに徹底的にこだわりました」。
「また、私はお客さまがドアを開けて乗り込み、クルマを発進するわずかな間にもその質感の高さを感じていただきたいと考えました。例えば、最初に触るドアハンドルはお客さまが握ったときに手に最もフィットする形状、角度などを追求しました。ドアを閉めた際には重厚感のある音が響くように、ドアパネルの発音面積を大きくして低音を響かせるパワーを増幅させています。また、高音やばたつきを抑える対策をいたるところに施しました」と、質感、静粛性にもこだわったことをアピール。
インテリアデザインついては「シンプル&エモーション」をキーワードに掲げて開発を進めたことを紹介するとともに、「薄型のインパネで開放感あふれる空間を、シンプルで質感の高い加飾パネルとファブリックで演出しました。また、運転中も視線移動が少なく、見やすいダブルディスプレイを採用し、ダイレクトタッチで操作性を改善しています。新開発のメーターについては、メモリや文字が浮いているように見えます。これにより先進的かつ視認性に優れるものにしました。コンソールの触感やスイッチ類の操作フィーリング、カップホルダーのしっとりとした動きなど、どれをとっても質感の高いものに仕上げてあります。触感だけでなく、先ほど説明しましたドア閉まり音など五感に響く品質を1つひとつこだわりを持って丁寧に仕上げてまいりました」と、特徴について語っている。
一方で「世界で戦える走りの革新」について、今回の新型クラウンでは「TNGA(Toyota New Global Architecture)」に基づいてプラットフォームから新しくしており、ボディ剛性や衝突安全性能を進化させた。走行性能で狙ったのは「一発で決まる正確でシャープなステアリング」「低速から高速までどのような状態でも目線が動かない安定した走り」とし、秋山氏は走行テストを行なったドイツ ニュルブルクリンクサーキットでの動画を流しつつ、「プラットフォームの開発というのは、通常10年ほど熟成にかかると言われています。私はこのクルマのポテンシャルをグッと大きく引き上げようと、(クラウンが)国内専用車にも関わらずニュルに行ってまいりました」と述べた。
参考までに、プレゼンテーションの後に関係者にニュルでの走行について聞いたところ、今回の走行ではリミッターは解除せず、タイム計測も行なわなかったという。あくまでドメスティックなモデルの新型クラウンがどれくらいの実力を持っているのか、それを試したかったそうだ。また、ニュル周辺の郊外路でも走行チェックを行なっており、制限速度が100km/h区間もあるここでの走行も満足いくレベルだったという。
その仕上がり具合については、動画内で秋山氏が語った「ニュルというのは世界一過酷なサーキットと言われています。われわれはそのニュルにプラットフォームのポテンシャルを試しに来ました。ブレーキ、ステアリング、アクセル、駆動系の全てのつながり、それを満足いくレベルにして持ち込んだのですが、正直言ってこれほど走れるとは思っていなかったんです」「一番重視したのは目線を動かさないこと。目線をビタッと動かさずフラットに走らせて、しかもハンドルを切ったらしっかりと動いてくれる。これは欧州車にも負けません」という言葉からもはっきり伝わるものだった。
そして全車で標準装備した第2世代の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)」の説明を行なった秋山氏は、「このように新型クラウンはあらゆる面でクルマ造りを見直し、世界基準を凌駕すべく開発陣の熱い思いを結集したクルマになっています。そして人とクルマの新しい関係、クルマの未来は新型クラウンと新型カローラ スポーツから始まります」と述べ、プレゼンテーションを終えた。
カローラを若い人たちに!
次いで登壇した新型カローラ スポーツのチーフエンジニアである小西良樹氏は、はじめにカローラの歴史について紹介し、1966年に誕生したカローラは現在は150以上の国と地域で販売され、全世界での累計販売台数は4600万台。生産工場は世界16拠点(2018年3月末時点)で行なわれているとし、「今まで販売させていただいた台数を時間で割ると、ざっと10秒間に1台がお客さまに届けられるというグローバルな商品になっています」と紹介。
そして12代目にあたる今回の新型カローラ スポーツでは「カローラを若い人たちに」をキーワードに開発を進めたという。その背景には、国内での現行カローラ アクシオ(セダン)のオーナーの平均年齢が70歳、カローラ フィールダー(ワゴン)のオーナーの平均年齢が60歳と、かなりの高齢化が進んでいることが挙げられ、「カローラは2016年に50周年を迎えておりますが、今回のカローラは次の50年(100周年)に向けて打ち出すモデルです。今のお客さまも大変大切ですが、やはり若い人たちに響く商品を作りたいという思いでやってまいりました。ターゲットユーザーは20代~30代の女性、男性、カップル。新世代ベーシック層をターゲットにして開発しております」と説明する。
また、新型カローラ スポーツでは「コネクティッド」「クルマ本来の楽しさ(デザイン・走り)」という2軸で開発が進められ、この2軸を支えるのが「コネクティッド」「スタイリング」「ドライビング」「セーフティ」「エンバイロメント」の5点という。
まずスタイリングについては、「スポーティでワイド&ローなクルマを狙って開発を進め、フロントではフードまわりをラウンディッシュにして、ヘッドライトは薄目のものを採用しました。グリルは台形をモチーフに低重心さを表現しました。リアから見ると、ひと言で言うと“ラグビーボール”をイメージしており、色々なキャラクターラインが後方(テールゲート)のトヨタマークにつながっていくようなデザインに仕上げています」と紹介。ボディカラーは新開発の「オキサイドブロンズメタリック」「スカーレットメタリック」の2色に加え、「シアンメタリック」「ホワイトパールクリスタルシャイン」「ブラキッシュアゲハガラスフレーク」「スーパーホワイトII」「シルバーメタリック」「アティチュードブラックマイカ」の全8色を設定している。
インテリアではシンプルで上質な造形、広々感を目指し、ドアパネルからインパネセンターを水平基調にするデザインを採用。シートは「スポーティシート」と「スポーツシート」の大きく2種類があり、スポーティシートではブラック基調のファブリックとベージュ基調のレザー/ファブリック、スポーツシートではブラック基調のファブリックとレザー/ウルトラスエードが設定されている。
走行性能については、プリウス、C-HRに続くTNGAのGA-Cプラットフォーム(コンパクト車用)を用いる。小西氏は「TNGAは進化している」とし、一例としてステアリングフィールを改善するべくシャフトの剛性を高めるとともに、スムーズな乗り心地を実現するため新開発のショックアブソーバー(トヨタ初採用)を採用していることを紹介。加えてコーナリング時にフロントのブレーキをつまんでコーナリングをサポートする「ACA(アクティブコーナリングアシスト)」、走行状況に応じて減衰力を変化させて自動的に最適化する電子制御サスペンション「AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)」、シフトダウン時に自動的にエンジン回転数を合わせてくれる自動ブリッピング機能付きの「iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)」を採用したことが報告された。
また、先進安全装備については第2世代の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を全車に標準装備。歩行者検知(昼間・夜間)・自転車運転者検知(昼間)を行ない衝突回避支援または被害軽減を図る「プリクラッシュセーフティ(PCS)」、前方車の追従走行を支援する「レーダークルーズコントロール(全車速対応)」、レーダークルーズコントロール使用時に同一車線内中央を走行できるよう操舵を支援する「レーントレーシングアシスト(LTA)」、ハイビームとロービームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム (AHB)」、カメラで認識した道路標識をディスプレイに表示することで道路標識の見落としを減らし、安全運転を促す「ロードサインアシスト(RSA)」などが装備されており、小西氏は「カローラは大衆車です。大衆車だからこそこうした装備をしっかり付けていかないとという思いで標準装備させていただきました」と、安全装備についても抜かりがないことをアピールした。