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「この指止まれ!」とトヨタ 豊田章男社長が自動車の未来について熱く語った、新型「クラウン」、新型車「カローラ スポーツ」発表会
「コネクティッド技術の進化によって、お客さまに寄り添うことができるようになった」
2018年6月27日 18:48
- 2018年6月26日 開催
トヨタ自動車は6月26日、東京・お台場にあるトヨタのショールーム「メガウェブ」にて、新型「クラウン」と新型車「カローラ スポーツ」の発売に合わせ、コネクティッドカーについての考え方を伝えるイベント「THE CONNECTED DAY」を開催した。車両やコネクティッドサービスについての詳細は別記事ですでにお伝えしているとおり。本記事ではイベントの模様をお伝えする。
THE CONNECTED DAYは、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の全国7会場で同時に行なわれたイベント。東京のメガウェブのステージと各会場を中継で結び、「これからのトヨタ」を全国で共有してもらうというもの。全国の会場には事前の公募で510名が参加。ステージがある東京会場には200名が集まった。このステージの中継映像は7会場のほか、全国120の販売会社で放映され、トヨタのグローバイルニュースサイトなどで現在も視聴できる。
レーザーを使った派手な演出の中ステージに登壇したのは、トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏。今、自動車産業は100年に1度の大変革を迎えているとして、自動車産業の歴史をスライドで貴重な写真などを映しながら振り返った。そして自動車とは全く違ったテクノロジーカンパニーがライバルとして登場し、クルマの未来が変わる局面を迎えたとした。
また、トヨタの歴史として、1955年に純国産技術による本格的乗用車としてデビューした初代「クラウン」、1966年の初代「カローラ」など、その誕生を秘話を交えながら紹介。そしてモータリゼーション発展の理由は「クルマで移動するのが楽しかった」からだと主張。豊田社長は「私は社長である前にマスタードライバーである」とし、マスタードライバーとして新型クラウンと新型カローラに乗り、その時エンジニアに伝えたことは「いいね!」のひと言で、本当に楽しいクルマに仕上がったと自信に満ちた表情をした。
これからのクルマに求められているのは、「走る」「曲がる」「止まる」という性能に加えて「つながる」であると豊田社長は語る。「トヨタの持つバーチャルとリアルが融合した、新たな世界をご覧ください」と紹介すると、新型クラウンと新型車カローラ スポーツがステージに登場した。
最新のレーシングカーは最先端のコネクティッドカー
続いて登壇したのは、トヨタ自動車 副社長 友山茂樹氏。友山副社長は、コネクティッドカーとして、何がどうつながるのかを、「ル・マン24時間レース 2018」でトヨタが初優勝したことに絡めて解説。「最新のレーシングカーは最先端のコネクティッドカー」として、トヨタ TS050-HYBRIDに試乗した際のエピソードを披露。コントロールセンターが常に状態をモニターしながら、設定をリアルタイムに変更する。全くの素人が何の訓練もなく、安心、安全に乗れ、エキサイティングな体験ができたのはコネクティッドカーだったからとした。
そして、TS050-HYBRIDのパワーユニットを継承した「GRスーパースポーツコンセプト」について、TS050-HYBRID同様のコネクティッドカーだと解説。GRスーパースポーツコンセプトのルーフにある「T-CONNECT」と書かれたアンテナを通じ、リアルタイムの走行データに基づくドラビングサポートやリモートメンテナンス、車載プログラムの自動更新などが行なわれる予定だという。
また、GRスーパースポーツコンセプトが次世代の競走馬とするなら、次世代の幌馬車にあたるのが「eパレット コンセプト」として、コネクティッド技術と自動運転技術で実現する未来のモビリティサービス、それを利用する企業や人を繋ぐ「MSPF(モビリティサービスプラットフォーム)」について紹介した。
続いてトークセッションとなり、豊田社長と友山副社長がそろって登場。豊田章男社長は手に持っていた帽子を掲げ、「これ覚えてる?」と友山副社長に聞くと、「これって、(ル・マンの)表彰台の時にかぶる帽子」と答えた。この帽子はトヨタがル・マン24時間レースで優勝した際に友山副社長がかぶっていたもので、シャンパンまみれになって表彰台に置いてきてしまったものを、豊田社長が洗濯して持ってきた帽子だという。
引き続き、ル・マンへの挑戦の話を展開。その後、全国の会場と中継をつないで会場の様子をモニターに映し出した。そして、ステージのある東京会場にはスタートアップのベンチャー企業がたくさん参加しているということで、数人の参加者とどのようなことをやっているかをやりとり。物流の配送計画をしているベンチャー企業には「今度、プレゼンに来て下さい」とエールを贈った。
続いて、現状調査をしている際、トラックを追いかけて豊田社長が乗り込んだとか、GAZOOは元々中古車の画像(GAZOO)検索システムから始まったなど、豊田社長と友山副社長の出会いから今日に至るまで、愉快なエピソードを交えながら紹介。トークセッションの最後は、豊田社長お得意のセルフィーで、会場の参加者とともに記念撮影をして盛り上がった。
100年に1度と言われる大変革の時代。トヨタは“モビリティカンパニー”にモデルチェンジ
イベントを締める挨拶として豊田社長が三度登壇。会場の参加者、中継を見ている人、そして世界に向けて熱く語った。
「先日、福岡の販売店に行ってまいりました。そこにはお客さまのおクルマを1秒でも早く、安心、安全な状態に仕上げるサービスエンジニアの姿がありました。それは普段、私がサーキットで見る風景と似通っていました。何よりも私が一番うれしかったのは、ガラス張りになったサービス工場で、お客さまが安心して見守られていた姿でした」。
「創業のころから、トヨタの販売店には、“1にユーザー、2にディーラー、3にメーカー”という信条がございます。コネクティッド技術の進化によって、私たちはもっとお客さまに寄り添うことができるようになりました。これからは、お客さまとの接点となるラストワンマイルが勝運を分ける時代です。しかし、お客さまとの接点は一朝一夕に作れるものではありません。豊田喜一郎による創業から80年以上、販売店での業務改善を始めてから20年以上。お客さまに向き合い続けてきたからこそ、実現できる世界があることを改めて感じました」。
「クラウンやカローラなど、長年に渡り多くのお客さまに愛されてきたロングセラーを作り続けてきた“リアル”。トヨタ生産方式「TPS」において、よりよいものをより安く、より多くのお客さまにお届けしてきた“リアル”。そしてトップ自らがクルマを愛し、GAZOO Racingを作って、世界の道を走り込み、命をかけて、安心安全でエモーショナルなクルマを作り込んできた“リアル”。これらはすべてリアルの世界で、現地現物で積み上げてきたものでございます。特にクラウンとカローラは、トヨタにとって特別なクルマです。新しいクラウンとカローラ スポーツにコネクティッド技術を搭載するということは、コネクティッドカーの普及に本気で取り組むということです。お客さまと向き合い、お客さまに寄り添う中で、これまでにない新しいサービスが生まれます。お客さまの声が自動運転などの新しい技術を進化させ、未来のモビリティを生み出すのです」。
「トヨタは自動車会社でありながら、トヨタコネクティッドや、トヨタ・リサーチ・インスティテュートといったバーチャルな世界を開拓していく会社を持っております。私は、リアルとバーチャル、両方の世界を持っていることが、これからのトヨタの強みになると思っております」。
「最後になりますが、100年に1度と言われる大変革の時代を生き抜くために、私はトヨタを自動車を作る会社から、“モビリティカンパニー”にモデルチェンジをすることを決断致しました。モビリティカンパニーとは、移動に関わるあらゆるサービスを提供する会社です。いつの時代も世の中を変えていくのは、未来をもっとよくしたいという情熱を持った人たちです。私はクラウンとカローラ スポーツを出すことによって、ベンチャー精神を持った仲間が集う場所を作りたいと思っております。多くの仲間が出し合った新しいアイデアが、技術によってクラウンとカローラ スポーツがどんどん進化していく。みんなで一緒に未来のモビリティを作っていきたいと思っております」。
「ある方から、これからの時代に求めるられる思考と行動について教えていただきました。『行動の主因は前例踏襲ではなく、スピードと前例無視。求められるリーダーシップは根回しでなく、この指止まれ』だそうです。皆さん、私たちと一緒に自動車の未来を作りませんか?」
「ご賛同いただける方、この指止まれ!」と、豊田社長は指を大きく上に掲げた。