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【ニュル24時間 2019】モリゾウ選手、スバル&STIやレーシングプロジェクトバンドウのピットを激励に

2019年6月20日~23日(現地時間) 開催

インタビュアーの質問に答えるモリゾウ選手。予選終了後、各チームのピットを激励に巡ってまわった

 いよいよ6月22日15時30分(現地時間、日本時間6月22日22時30分)から決勝レースが始まる「第47回 ニュルブルクリンク 24時間レース」。21日に行なわれた予選2回目終了後、日本勢のパドックピットにはちょっとしたざわつきが起きていた。

 TOYOTA GAZOO Racingの90号車GRスープラ(佐々木雅弘/ウヴェ・クリーン/ヘルフィ・ダーネンス/モリゾウ組)にエントリーしているモリゾウ選手は、よく知られているように、トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏であり、現在は日本自動車工業界の会長も務めている。改めて説明するまでもないが、トヨタ自動車は世界でも有数の自動車メーカーであり、自工会会長と言えば日本の自動車業界の代表者となる。

 その日本の自動車業界を代表する人物がモリゾウ選手としてニュル24時間の予選に取り組んでいるのも話題なのだが、予選後もモリゾウ選手として各ピットの激励に励んでいるのにも驚かされた。

 レーシングプロジェクトバンドウのピットを激励に行ったときも、スバル&STIのピットを激励に行ったときも、チーム首脳陣だけでなく各チームのドライバーと積極的にコミュニケーションを取ろうとしていたのが印象的。スバル&STIのピットでは平岡 STI社長や辰己総監督と談笑した後、ドライバーにニュルの走りのコツを聞くなど、自身がドライバーとしてさらに成長しようとする意欲を見せていた。

レーシングプロジェクトバンドウのピットを激励に
こちらはスバル&STIのピット

 記者は、自工会の会見やトヨタの決算報告会なども取材しているのだが、そこで見せる豊田章男としての顔と異なる表情がモリゾウ選手にはある。モリゾウ選手自身が参戦ドライバーでもあるためか、とくにプロドライバーとのコミュニケーション時には楽しそうな表情となっている。極端な話、ただのクルマ好きのおっさん(失礼!!)が、各チームのピットを訪ね歩いてニュルを楽しんでいるだけと言ってもよいだろう。

スバル&STIドライバーの話を真剣に聞くモリゾウ選手(右)

 モリゾウ選手のドライブする90号車GRスープラは予選99位。市販車を少し耐久仕様にしただけというファインチューンのクルマであり、目標は24時間レースの完走だろう。新型スープラの開発責任者である多田哲哉氏は、「社長の豊田章男がマスタードライバーとして、最終に近いプロトタイプをニュルブルクリンクでドライブしてもらって、『これならスープラだよね』」と語るなど、豊田章男氏のスープラにかける思いは強いだろう。正直、豊田章男氏自身がニュル24時間にスープラで参戦したいが故に、多田氏にスポーツカーを開発させたのでないかと思うほどだ。

 ただ、それはまったく間違った見方であるのを多くの人は知っている。トヨタが「86」という形でスポーツカーを復活させたのも、多田氏がスポーツカーを作りたいと提案し、当時販売担当の副社長だった豊田章男氏が、「本気でトヨタがスポーツカーを作るなら、本気で売る」と責任ある決断をしたからだ。そうして86の開発はスタートした。当時の多田氏の提案と豊田副社長の決断がなければ、世界の街中にエントリースポーツカーである86/BRZが走っている風景はないだろうし、新型スープラの誕生もなかった。

 豊田章男氏にとっては何年もかかってやっと作り上げることのできたニュルを走れるスポーツカーであり、モリゾウ選手にとってはそのクルマでニュル24時間に参戦できるのは至福の時間なのかもしれない。ニュル24時間レースは日本時間6月22日22時30分に決勝レースがスタートする。モリゾウ選手と90号車GRスープラ、そして日本勢の戦いに注目していただきたい。

90号車GRスープラ(佐々木雅弘/ウヴェ・クリーン/ヘルフィ・ダーネンス/モリゾウ組)