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「SUZUKA 10H」はハッキネンが乗る「Planex SmaCam Racing」に注目

McLaren 720S GT3にカメラを搭載してNTTドコモがMECの実証実験

2019年8月23日~25日 開催

ハッキネン選手(左)と久保田選手(右)

 8月23日~25日に鈴鹿サーキットで開催される「2019 第48回サマーエンデュランス『BHオークション SMBC 鈴鹿10時間耐久レース』」(以下:SUZUKA 10H)まで10日あまりとなった。2輪レースの夏の祭典が「鈴鹿8耐」、4輪レースの夏の祭典は「SUZUKA 10H」だ。

 この記事では、F1で世界チャンピオンを獲得したミカ・ハッキネン選手の参戦や、参戦マシンの「McLaren 720S GT3」に2台のカメラを取り付けてMEC(Multi access Edge Computing)の有効性を検証するNTTドコモの実証実験など、今回のSUZUKA 10Hで注目の集まる「Planex SmaCam Racing」について掘り下げてみたい。

ハッキネン選手が18年ぶりに日本でレース参戦

 Planex SmaCam Racingが注目される最大の理由は、F1で世界チャンピオンを獲得したミカ・ハッキネン選手の参戦だ。1998年と1999年にハッキネン選手は、最終戦の日本グランプリで2年連続チャンピオンを決定している。特に1999年は怪我で戦線離脱したミハエル・シューマッハ選手に代わり、フェラーリのファーストドライバーとなったエディ・アーバイン選手を最終戦の鈴鹿で逆転しチャンピオンを獲得した。2001年シーズンを最後にF1から離れることになるが、F1最後となったレースも鈴鹿の日本グランプリだった。

1999年は最終戦の鈴鹿で4ポイント差を逆転しチャンピオンを獲得した

 F1引退後はDTM(ドイツツーリングカー選手権)で活躍。2017年の鈴鹿ファン感謝デーで16年ぶりに鈴鹿のファンの前に帰ってきた。2018年10月のF1日本グランプリではデモ走行を行ない、11月のSound of Engineにもゲストとして登場したが、鈴鹿で本格的にレースに参戦するのは2001年以来18年ぶりとなる。

2017年のファン感謝デーでは川井一仁氏やアレジ親子とトークショーを行なった

同じチームに石浦宏明選手

 ハッキネン選手と同じくPlanex SmaCam Racingから参戦するのが石浦宏明選手。石浦選手は2007年にSUPER GTのGT300クラスにTOY STORY apr MR-Sで参戦しシリーズチャンピオンを獲得。2015年、2017年にはP.MU/CERUMO・INGINGからスーパーフォーミュラに参戦しシリーズチャンピオンを獲得している。

2007年にトイ・ストーリーレーシングでチャンピオンを獲得した
2015年、2017年にはスーパーフォーミュラでチャンピオンを獲得

 2019年シーズンはSUPER GTのGT500クラスにLEXUS TEAM ZENT CERUMOから参戦し第2戦で優勝。スーパーフォーミュラにも参戦するなど日本を代表するドライバーだ。

2019年のSUPER GT第2戦で優勝した
2019年もスーパーフォーミュラに参戦中

チームオーナー兼ドライバーの久保田克昭選手

 もう1人のドライバーはチームオーナーでありジェントルマンドライバーの久保田克昭選手だ。PC WatchやINTERNET Watchを読まれている読者は、ネットワーク機器を扱うプラネックスコミュニケーションズ(以下:プラネックス)という会社をご存じだろう。プラネックスの代表取締役が久保田克昭氏だ。

 久保田氏は企業経営と並行して長年に渡りドライバーとしてレース活動を行なっている。様々なカテゴリーのレースに参戦しているが、その中で目を引くのが、昔のF1マシンを使用してレースを行なうFIA Masters Historic Formula One Championshipへの参戦だ。

 海外で行なわれたHistoric Formula One Championshipで優勝経験もあり、2018年11月に鈴鹿サーキットで開催された「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2018」のレース2では2位となり表彰台に立っている。その表彰式のプレゼンターはハッキネン選手だ。

2018年のSUZUKA Sound of ENGINEではLotus 91で表彰台に立っている

 プラネックス(=久保田氏)は長年に石浦選手をサポートしている。2015年の写真も今シーズンの写真も石浦選手ヘルメットにはPlanexのロゴを見ることができる。

マシンはMcLaren 720S GT3

マシンはMcLaren 720S GT3。青を基調としたデザインで、スマカメは見守りカメラのブランド名

 SUZUKA 10HでPlanex SmaCam Racingが走らせるマシンはMcLaren 720S GT3。ハッキネン選手は6社とブランドアンバサダー契約を結んでいて、その1社がマクラーレンだ。また、ハッキネン選手と同じフィンランド出身のバリテリ・ボッタス選手(マクラーレン・メルセデス)の育成にも関わっており、McLaren 720S GT3による参戦は必然と言えよう。

 マシンのカラーリングはハッキネン選手のヘルメットのブルーのラインを意識して青を基調としたデザインになったとのことだが、プラネックスのコーポレートカラーも青なので、青以外の選択肢はなかったと思われる。マシンのボディサイドにドンと描かれた「スマカメ」はプラネックスの主力製品である見守りカメラ(ネットワークカメラ)のブランド名だ。

2日間のプライベートテストを実施

ハッキネン選手(左)と久保田選手(右)

 SUZUKA 10Hに向けてPlanex SmaCam Racingは8月6日~7日にプライベートテストを実施した。主にハッキネン選手がマシンに慣れることを目的としたが、6日には2分6秒63(チームの手動計測)を記録した。6日の走行は17時30分~19時で、夕闇の走行、初めてステアリングを握るマシン、ユーズドタイヤを考慮するとまずまずのタイムだ。7日のラップタイムは公開されなかったが前日を上回るタイムを記録した模様。セッティングを煮詰め、現役バリバリの石浦選手がドライブすれば、上位に食い込めるタイムが期待できそうだ。2日間のテストの様子は写真でご覧いただきたい。

McLaren 720S GT3のコクピットにおさまるハッキネン選手
取材に応えるハッキネン選手

マクラーレンにカメラを搭載しNTTドコモが実証実験

ドライバーの右側(助手席側)に2台設置されたカメラ

 鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドとNTTドコモは、5Gなどの情報通信技術を活用した「新たなモータースポーツの観戦スタイルの創造」に向けて取り組んでいる。SUZUKA 10HではPlanex SmaCam Racingのマシンに2台のカメラを取り付け、MEC(Multi access Edge Computing)の実証実験を行なう予定だ。

 MECは5G時代の低遅延技術。インターネット上に設置されるサーバーを、キャリア網内に設置することで遅延を減らすシステムだ。マシンに搭載した2台のカメラ映像を、1つは通常のLTE通信網からインターネット網へ伝送、もう1つはLTE通信網からMEC折り返しによる伝送を行ない遅延を比較する。この実証実験は西ストレート自由席で閲覧することができるそうだ。詳細はこちらの記事を参照いただきたい。

 プライベートテストで既にカメラはマシンに搭載されていた。ドライバーの右側(助手席側)に2台設置されたカメラが比較用と思われる。それとは別に助手席ドア側にドライバーを映すカメラがあり計3台が搭載されていた。

ドライバーの右側(助手席側)に2台設置されたカメラ
助手席ドア側にドライバーを映すカメラ

 8月6日~7日に行なわれたプライベートテストでハッキネン選手が周回する映像がYouTubeのプラネックス公式に公開されている。録画された映像なので、遅延の度合いは分からないが興味のある方は参照いただきたい。

スマカメ実験中!(スマカメ2 LTE)

 今回マクラーレンに搭載されたカメラは2019年3月にプラネックスから発表された「スマカメ2 LTE」。防水・防塵のネットワークカメラでWi-Fi接続ではなく、データSIMカードを使用し通信回線を使用して映像の閲覧やカメラの設定を行なうことができる。Wi-Fiの届かない駐車場や工場の通用門、倉庫などへの設置に適している。市販のネットワーク(見守り)カメラをマシンに搭載してどのような映像が録れるか興味深い。「スマカメ2 LTE」の詳細はケータイWatchINTERNET Watchの記事を参照いただきたい。

 様々な面で話題豊富なPlanex SmaCam Racingが今年のSUZUKA 10Hの注目のマシンであることは間違いない。加えて、谷口信輝選手、片岡龍也選手、小林可夢偉選手のゴールデントリオで参戦する「Mercedes-AMG Team Goodsmile」や「LM corsa Porsche 911 GT3 R」で参戦する脇阪寿一選手など見どころ満載のSUZUKA 10Hは8月23日~25日に開催される。

 カッコイイGT3マシンのバトルをたっぷり10時間、見ることも撮ることもできるSUZUKA 10Hを鈴鹿サーキットで堪能していただきたい。