試乗記
進化したルノー「アルカナ E-TECH HYBRID」に試乗 内外装の変更とともに走りはどうなった?
2024年10月23日 15:40
RSにかわって「esprit Alpine」が登場
輸入車SUVとしては珍しいフルハイブリッドのE-TECH HYBRIDを搭載するルノー「アルカナ」がフェイズ2へと進化した。ルノーが独自に開発を行なったドッグクラッチを用いた変速システムを搭載。最低地上高200mmを達成しつつ、スポーティなファストバックスタイルを実現している。内容から見た目まで他に類を見ない存在感は相変わらずだ。
今回はRS(ルノースポール)の終焉とともにRSラインが廃止され、「esprit Alpine」なるグレードが登場となった。スポーティ、プレミアム、そしてフレンチタッチをテーマとしたこのグレードは、造形が複雑な19インチホイール(従来型は18インチだった)を採用しているところが特徴的だ。
大きく変化したのはエクステリアに採用された新たなるフラットデザインの二次元ルノーロゴと、ハーフダイヤモンドを用いることで立体的に浮かび上がる斬新なフロントグリル。一方、テールまわりはクリアなレンズに改めたところもこれまでとは違っている。エキゾーストフィニッシャーやエンブレムなどはブラックアウトすることでかなり引き締まったイメージに変化したことがうかがえる。
インテリアもダッシュボードやドアインナーパネルのマテリアル変更によりスポーツシックな雰囲気に。そこにステアリングやドアインナーパネルに対してトリコロールステッチを奢ることで華やかさを与えている。シートはこれまで本革を採用していたが、レザーフリーとした。ステアリングはTEPレザー。前席は10%生物由来のTEPレザーとスエード調。リアはTEPレザーとなっている。動物保護を考えた時代に沿った変更と言えるだろう。
また、E-TECH HYBRIDにも進化が見られた。これはフェイズ1の後期モデルから追加されたものだが、E-SAVE機能が追加されたのだ。フェイズ1前期モデルでは上り坂が続くようなシーンでバッテリ残量が少なくなると加速力が鈍っていたのだが、そこを解消しようという狙いがあるようだ。
「E-TECH HYBRID」を走らせる
そんな新生アルカナを走らせてみると、動き出しはモーターということもあり相変わらずスムーズな感覚だ。その後、エンジンの動力が加わるという考え方だが、その一連の動きに滑らかさが増したような感覚がある。エンジンが始動したとしても回転が跳ね上がらず、静粛性が高まったところも進化のポイントだ。
このトランスミッションはエンジン側に4速+ニュートラルの5つ、モーター側に2速+ニュートラルの3つの選択肢を持ち、それを掛け合わせることで12通りの組み合わせが可能。5×3なら15となりそうだが、ニュートラル×ニュートラルはゼロということと、ダブるギヤ比が2つあるため、結果的に12通りということのようだ。しかしいずれにしても複雑怪奇なシステムであることに変わりはない。また、ドッククラッチを作動させているにも関わらず、緻密に動かすことで、ショックを感じさせないところはさすがの仕上がりである。ただし、高速巡行に入り、最終段に入るシーンではショックこそ少ないがやや遅れが見えた。それもスムーズさを追求したからこそなのかもしれない。それ以外はアクセルにダイレクト感があふれており、走りを意識したことが感じられる。
燃費は静かに走っているときに21.8km/Lを記録。後述するE-SAVEモードを使い積極的に走っていたときで19.4km/Lだった。いずれもエアコンを使っての数値だから、かなり優秀と言っていいだろう。運動エネルギーの95%を回収する設定だという回生ブレーキは、やや慣れが必要なところがあり気になったが、ここまで燃費がよいのであればそれも目をつぶれるかもしれない。
E-SAVEモードはエンジン回転を少し上げて発電主体となる制御を行なっているようだ。スポーツモードでも同様の動きがあるが、その際は回生ブレーキも強力になる仕様となり、アクセルも敏感に変化してしまう。そうではなく、エンジン回転のみを引き上げて次なる加速にスタンバイできることは、ロングドライブではありがたい機能となるだろう。この機能を使った場合、バッテリ残量が30~40%に減ると積極的に発電を行ない、それ以上減らないようにコントロールしているようだ。
19インチ仕様となったシャシーは、以前よりもキビキビとした応答性がありつつも、しなやかさを忘れていない絶妙さが感じられる。SUVでありながらもノーズの素直な動きやボディとの一体感を味わえるあたりがルノーらしさかもしれない。スポーティな見た目通りの仕上がりがそこにあった。