レビュー

【タイヤレビュー】ダンロップの次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を試す ドライ&ウェットでの操縦性や乗り心地は?

ダンロップが開発を進めていたアクティブトレッドを搭載した新オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」をドライ&ウェット路面で試す

「シンクロウェザー」をドライ&ウェットで試す

 従来のオールシーズンタイヤから、さらに一歩踏み出した夏タイヤと冬タイヤの境界を広げるダンロップの次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。

 今回は試乗の舞台を冬の旭川から部隊を初夏の岡山県に移して、ダンロップの主力テストコースである津山でドライとウェットのハンドリング、乗り心地の試乗機会を得た。注目のオールシーズンだけに夏タイヤ性能も期待される。

次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」

 テストコースでの試乗車は、今回もトヨタ自動車のカローラツーリングがメインで、装着タイヤサイズは雪上と同じ195/65R15。対比するタイヤは、サマータイヤの「ル マン ファイブプラス(Le Mans V+)」と、エントリースタッドレスタイヤの「ウインターマックス(WINTER MAXX)02」だ。それぞれ周回路とスキッドパッドのウェット円旋回で試乗する。それに加えて輸入車のフォルクスワーゲン・ゴルフも用意され車種違いでも比較ができるほか、一般道の試乗も含まれる。

 ちなみに周回路は、40~50km/hで走る連絡路と100km/h以下で走る周回路、110Rと150Rのコーナーと操安路を組み合わせた複合コースで、自在に音やハンドルの正確性などがチェックできるのはありがたい。路面はいずれも完全ドライで格好の条件だ。

試乗会は岡山県津山にあるダンロップのテストコースで行なわれた

 次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」の特徴をおさらいすると、気温と水をセンシングすることで、ゴムの特性が変わるという新開発の「アクティブトレッド」を搭載。雪や氷のような低温でもトレッドゴムが硬くなりにくい機能を実現したほか、水に触れるとゴム分子内のポリマー結合がほどけてゴムの性質が軟らかく変化するという、これまでにない特性を持つタイヤとなる。

アクティブトレッドとは
水で軟らかくなる仕組み

まずはドライ路面で操安性などをチェック

 ル マン ファイブプラスは、ダンロップのベーシックタイヤだけに、操縦性や乗り心地などの性能がバランスされていて、誰が乗っても満足できる基本性能を持っている。最初の転がり感も軽やかで気持ちがいい。また特殊路に設けられた凹凸路ではショックが強めだが、その分上下収束が早く気にならない乗り心地だ。

 ロードノイズも適度で、ゴー音が全体のノイズをマスキングして、結果的に静粛性に突出したノイズは感じられない。ハンドリングで感じたのは素直さで、路面をつかむ力強さはないが、応答時の反応も穏やかで角がないのが好ましい。

周回路の直線でロードノイズや乗り心地を確認

 一方シンクロウェザーは、走り始めは少し重い感じがするものの、速度が少し乗ると夏タイヤに近いフィーリングになり、“冬”を感じさせるものはほとんどない。ル マン ファイブプラスに比べるとロードノイズは大きいものの、スタッドレスタイヤが出す高周波のパターンノイズや路面をたたくロードノイズはよく消されており、この点では夏タイヤに近かった。

 60km/hで通過した特殊路での乗り心地は、凸路での突き上げ感が丸くなっており、衝撃も小さい。ル マン ファイブプラスとは性格が異なるが、乗り心地は穏やかで上下収束もゆったりしている。ダンロップのしなやかな味は、シンクロウェザーにも受け継がれていた。

白線の上を50km/h前後でトレースして操安性をチェック。シンクロウェザーだけでなく、ル マン ファイブプラスやウインターマックス02も同様に走行を行なった

 続いてハンドリングでは、速い操舵での応答遅れは小さく、しかも穏やかに追従するので安定感がある。トレッド面とタイヤ剛性のバランスが程よく取れており、応答性と舵の効きが素直だ。例えば高速での少し早めレーンチェンジでのヨー方向の収束性、一定舵角で旋回する高速コーナーでのグリップ感など、急な腰砕けがなくて乗りやすいタイヤだった。

 トレッド剛性の効果もあり、夏タイヤとしてもカローラスポーツでもゴルフでも相性がよく、リプレイスタイヤとしての価値も高そうだ。

フォルクスワーゲンのゴルフでも違いを確認

スキッドパッドのウェット路面で定常円旋回を試す

 ウェットスキッドパッドもカローラツーリングで実施。スタッドレスの苦手な路面となり、ウインターマックス 02はハンドル一定で徐々にアウトへ流れていくが、同じ速度でもシンクロウェザーはグリップが抜けず、さらにハンドルを切るとインに切り込んでいく。大きな余力があった。

シンクロウェザーはV字型パターンのおかげで水はけがよい

 トレッド剛性がスタッドレスより高く、V字型パターンで大量の水が外に吐き出される効果大だ。スタッドレスのゴム硬度だと軟らかく腰砕けになってしまう所がアクティブトレッドの効果で高いウェット旋回力を手にしていた。冬タイヤ性能と同時にウェットにも強いのは心強い。

速度が数km/h違うだけでグリップ力は大きく異なる

一般道のドライ路面での乗り味はいかに?

一般道の試乗はレクサス「NX」とメルセデス・ベンツ「GLC」の2台

 テストコースを出て一般道で試乗したのは、レクサス「NX」とメルセデス・ベンツ「GLC」の2台のSUVモデル。タイヤサイズはいずれも235/60R18だ。一般道での自然な荒れた路面で、優しく路面にタッチする乗り心地はなかなか心地よい。荒れた路面もゴツゴツではなくヒタヒタといつの間にか走り抜けてしまう。

荒れた路面でもゴツゴツ感はない

 また、遮音のよいメルセデス・ベンツとレクサスだが、それにしてもタイヤの発するロードノイズはよく抑えられており、高周波音も気にならないレベルに仕上げられていたのに感心した。パターンを見なければ夏タイヤだと思うだろう。

ロードノイズを抑え、高周波音も気にならないレベル

 ただ、夏タイヤとは違ってブロックが大きいパターンのシンクロウェザーは、車種によって向き不向きはあるかもしれないが、進化した全天候型タイヤとして注目されるユニークなタイヤだった。まずは2024年10月に15インチ~19インチの全40サイズをラインアップし、2025年以降も順次サイズを拡大していくそうだ。

シンクロウェザーの性能グラフ
シンクロウェザーの発売は2024年10月の予定
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。