まるも亜希子の「寄り道日和」

プログラミング体験もある親子セミナー「親子電気レーシングカート組立体験&最新EV試乗」

セミナーでは最新EV&PHVの試乗もできます。今回はカーライフエッセイストの吉田由美さんと一緒にインストラクターを務めました。参加者の皆さんと車内でいろいろとおしゃべりするのも、とっても楽しい時間です

 東京 お台場にある日本科学未来館は、宇宙や生命、情報といったさまざまなスケールから最先端の科学技術を体験することができ、大人も子供も楽しめるアクティビティやイベントが盛りだくさんの、まさに未来を身近に感じることができる場所。

 ここでは定期的に日本EVクラブがセミナーを開催していて、私もよくインストラクターとして参加させてもらっています。通常は、EV(電気自動車)に関する知識を深めて仕事に生かしたいという社会人の方々、レポートや就活のために学びたいという学生さんの参加が多いのですが、2018年から新たにスタートした「EVの楽しさ発見シリーズ」第1弾、「親子電気レーシングカート組立体験&最新EV試乗」というセミナーでは、小学生以上の子供とその保護者を対象として開催しています。3月、4月に開催されたこの親子セミナーは、募集開始とともにキャンセル待ちが出るほどの大人気。第3回となった先日も、「3回目の応募でようやく参加できました~」という方がいらっしゃったほどでした。

日本科学未来館で開催された、日本EVクラブの「親子電気レーシングカート組立体験&最新EV試乗」は今回も満員御礼。男の子も女の子もたくさん集まりました

 一番の目玉は、ヨーロッパでもいよいよシリーズ戦が開幕するというEVカートを、子供たちが自分で組み立てに挑戦して、その構造と特徴をナマで感じられるということ。そしてPCにつないで、小・中学校で始まった「プログラミング」が体験できるのも魅力の1つです。

 親子セミナーは朝10時にスタート。教室に入ってみると、まだ少し緊張気味の子供たちが、日本EVクラブ代表・舘内端さんのお話を熱心に聞いていました。参加する子供は男の子が多いのかなと思いきや、女の子もけっこういて嬉しい!

 舘内さんは、若かりしころは東大宇宙航空研究所に勤務していたほどの秀才なのに、なぜかレーシングカーの設計に夢中になり、日本のモータースポーツ史とともに歩んできたといってもよいほどのお方です。20年以上前に初めてお会いした時、すでに「EVの時代が来る」と語っていた舘内さん。私はその話が面白くて、スゴイなぁと尊敬しつつ、でもホントなのかなぁ?と半信半疑で聞いていたものでした。それが今、すべてが舘内さんの言う通りになっているのですから、もう疑問はなくただただ尊敬しています(笑)。

 そんな舘内さんは、大人でも理解が難しいことを、とっても面白く、優しく、深く、漫談のように話してくれるので、聞いている子供たちもだんだんと、緊張がほぐれてきているようでした。

 そしていよいよEVカートの組み立て講座です。最初はフレームにシート、ステアリング、前後のカウル、バッテリーが取り付けられた状態。このままではモーターに電気が送られず、タイヤも回りません。そこから、子供たちが工具を使って部品を作り、タイヤを装着し、モーターを動かすための配線をつなげていきます。

EVカートの組み立て作業は、特殊な工具を使ってパーツを作るところからスタート。子供たちの真剣な眼差しが印象的です

「これがどうやったら動くようになるの?」と、まだ不思議そうな表情の子供たちに、長くEVに携わってきた日本EVクラブのスタッフが、手取り足取り解説しながらまずは部品作り。お父さんが手を貸そうとすると「僕がやる!」と早くもやる気マンマンの子供もいて、意外にテキパキと作業が進んでいきます。私なんかは、頭では分かっていてもいざ自分で組み立てろと言われたら、けっこうモタモタしてしまいそうなのに、やっぱり子供ってすごいですね。1度お手本を見ただけで覚えてしまうカンのよさといい、バッテリーのボルト留めなんかは子供の小さな手の方が適していたりして、みんなメカニック顔負けでビックリです。

タイヤの装着は、表と裏を間違えないように、曲がらずまっすぐ入るように。一生懸命な背中を応援したくなりますね
バッテリーの配線は、狭い隙間に入りやすい子供の手が大活躍。プロのメカニックより早いかも?という上手な子供もいました

 こうしてすべての作業を終えたら、いよいよスイッチを入れて動作確認。子供たちが期待いっぱいの瞳で見守る中、ウォンウォンウォンー!と元気なモーター音が教室に響き渡り、タイヤがグルグルと回って一気にみんなの顔が輝きました。

 でも実は、同じ教室で2台の組み立てを同時に行っていたのですが、それぞれのモーター音がぜんぜん違うことに子供たちも気付いていたよう。その種明かしが「プログラミング」です。PCにつないで数値を入れ替えるだけで、自在にモーター特性が変えられるというEVの特徴にも、子供たちは興味津々の様子でした。

完成したEVカートをPCとつないでプログラミングの講習。これにはお父さんたちも熱心に聞き入っていました

 そしてEVカートの組み立ての後は、外に出て最新EVやPHV(プラグインハイブリッドカー)に親子で試乗タイム。今回は日産自動車「リーフ」、三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」、BMW「i3」の3台です。私はそのインストラクターを務めたのですが、その時の子供たちの感想がとても面白い! 「パパにはさっきのEVの方が合ってるんじゃない?」とか、「こっちの方が乗り心地がいいね」とか、EV&PHVにもそれぞれの特徴や乗り味がしっかりあるってことを、ちゃんと感じているんだなぁと思います。

 保護者の方々も、同じ条件・同じコースで乗り比べができる機会はなかなかないので、真剣に購入を検討しているパパがいたり、リーフやi3のワンペダル走行を初体験して賛否両論あったり。普段はあまり運転しないというママが、「私も運転してみたい」とハンドルを握って楽しそうにしている姿もありました。

 こうした参加者の皆さんとの交流を通して感じるのは、実際にEVに乗ってみる前と後ではかなり印象が変わるんだなということ。バッテリーの寿命や航続距離などのネガティブな情報が先行していた人でも、それを上回る面白さがあることに気付いてくれる。それが、私はとてもいいことだなぁと思います。

 買う・買わないは別にして、私たちは今、これだけ大きな変革期の真っただ中に生きているわけで、その核となっているEVを知ろうとしないなんてもったいない。知ればもっと世界が広がるはずですよね。

 そして子供たちにとっては、EVカートの組み立てで早いうちにその仕組みを理解しておくことで、これからの社会の動きに対しても興味が湧くし、もっとその先を想像できる人になれるんじゃないかな、と思うのです。

 次回の親子セミナーは8月くらいに開催予定だそうですよ。今度は組み立てたEVカートで実際にサーキットを走れるかもしれないとか! 詳細は日本EVクラブのWebサイトをチェックしてみてくださいね。ちょうど子供たちの夏休みの自由研究にもよさそうだし、どんどん変わっていく時代の波に、親子でしっかりノッていこうじゃないですか♪

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。