イベントレポート CES 2020

Faurecia、Microsoftと協業。Microsoft Connected Vehicle Platformでコクピットなどの革新へ

2020年1月6日(現地時間) 発表

Faurecia パトリック・コラー CEO

 世界最大の技術見本市「CES 2020」において、大手サプライヤーであるFaureciaはプレスカンファレンスを実施。Microsoftとの協業などについて説明。Faureciaのパトリック・コラー CEOと、Microsoft エグゼクティブバイスプレジデント兼グローバルセールスマーケティング&オペレーション担当のジャン フィリップ・クルトワ プレジデントが出席した。Faureciaは、日立製作所からクラリオン事業を買収。第4の事業部門として、Faurecia Clarion Electronicsを、2019年4月に設立している。

 会見では、Faureciaが提供する新たなプラットフォームサービスにおいて、Microsoftの「Microsoft Connected Vehicle Platform」(以下、MCVP)を活用する協業を発表。これを自動車メーカーに提供することになる。Microsoftのクルトア プレジデントは、「MCVPは、接続された自動車向けソリューションを提供し、モビリティ体験を加速するように設計されたプラットフォームである」と説明。「安全で、手頃な価格で、パーソナライズされたドライブを実現できるプラットフォームである」とした。

Microsoft エグゼクティブバイスプレジデント兼グローバルセールスマーケティング&オペレーション担当のジャン フィリップ・クルトワ プレジデント

 MCVPは、自動車メーカーが、ユーザーに対して付加価値サービスを提供するためのデジタルシャシーと位置づけており、Microsoft Azureで提供される約40のサービスなどで構成されている。自動車のさまざまな利用シナリオに合わせてカスタマイズでき、「車内エクスペリエンスの実現」「自動運転の支援」「高度なナビゲーションの提供」「カスタマー エンゲージメントとインサイトの提供」「テレマティクスと予測サービスの提供」「接続性の実現によるOTAの推進」といったことを目指しているという。

 今回の提携で、FaureciaはMCVPを活用して、同社の次世代インフォテイメントシステム「Cockpit of the Future (未来型コクピット)」に、パーソナライズされたコネクテッドサービスを組み込み、すべての搭乗者に向けて、車内エクスペリエンスを一新できるという。

MCVP

 ヘッドレストに設置されたノイズキャンセリング機能を持ったオーディオシステムを利用して、車内でビデオ会議を行い、生産性の高いコラボレーション実現するほか、クラウドによるストリーミングサービスを通じた各種インフォメテイメントの利用などが可能になる。

 具体的には、車内において、映画やゲームなどを楽しむことができるほか、Teamsなどを利用して、車内をオフィスのようにして利用することができるという。

 Faureciaのコラー CEOは、「新たな車内コミュニティサービスを、世界に提供できるようになる。これらのサービスは、車内のすべての人の理解して提供するものであり、一人一人の快適性や安全性などを実現することができる。また、プラットフォームにサービスを追加し続けることで、今後拡大する様々なニーズに対応できるようになる。これは、クラウドを活用したコネクテッドサービス領域において、エキスパートであるMicrosoftとの提携だからこそ、実現するものである。そして、データ保護という観点でも優れているMicrosoftのクラウドを活用できる点も大きな意味がある」などとした。

 Microsoftが持つクラウド、人工知能、エッジコンピューティングなどの技術を活用することで、これらのサービスを提供し、個人に最適化したものにできるという。

 両社によると、柔軟性に優れたオープンなプラットフォームを活用することにより、市場競争力のあるコネクテッドカー向けのサービスを提供できるようになるほか、インフラ構築にかかるコストと期間を削減でき、優れたアイデアをスピーディに製品化。サービスによる継続的な収益モデルの構築を実現できる。

デジタルフィードバックループ

 Microsoftのクルトア プレジデントは、オートモーティブ市場における同社のフォーカスエリアとして、「接続された自動車ソリューションの開発を促進」「自動運転機能の開発を加速する」「スマートモビリティソリューションの開発を支援する」「接続されたマーケティング、セールスおよびサービスソリューションの強化」「インテリジェントなサプライチェーンの構築により、スマートな製造を可能にするサービスを提供する」の5つの点を挙げ、「Microsoftは、自動車分野に対して、最高のAIデバイスと、最高のIT、未来に向けた技術を提供できる。企業がより多くのことを達成したり、ブランド力を高めたりできるように、その実現に向けたプラットフォームを提供する役割を担う」などとし、「今回の協業により、車内において、視覚的にも優れた会議を行うことができるオフィス環境を実現できる一方で、没入型のゲームをプレイする環境も実現する。この2つの環境を実現するには、共通のテクノロジーの部分が多く、お互いにじゃまをするものではない。また、スピーカーやカメラなど、事前に車内に設置されているハードウェアを活用しながら、ソフトウェアを組み合わせることで、継続的にサービスを進化させることができる」などとした。

 また、「Microsoftは、プラットフォーム企業であり、データをマーケティング手段や広告の洞察を使用することはない。顧客と合意したサービスを提供するためにのみ利用する。安心して利用できるデータプラットフォームを提供している」などと述べた。

大河原克行