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ホンダF1 田辺TD、初優勝の地メキシコで1-3-4フィニッシュという結果を出せたことがうれしい

2021年11月5日~7日(現地時間) 開催

ホールショットを決めてアウトから1コーナーにトップで入っていくマックス・フェルスタッペン選手

残り4戦、今シーズンもいよいよクライマックスへ突入していく

 ロシアGP、トルコGPと2連敗し、アメリカGPで優勝という直近3レースの後で、セルジオ・ペレス選手の地元レースとなるメキシコGPを迎えたレッドブル・ホンダとアルファタウリ・ホンダのホンダ・パワーユニットを利用する2チームは大活躍をみせた。レッドブル・ホンダはマックス・フェルスタッペン選手が優勝して2連勝を達成し、王者争いの直接のライバルとなるメルセデスのルイス・ハミルトン選手に19点の差をつけた。

 チームメイトのセルジオ・ペレス選手も3位表彰台を獲得し、レッドブル・ホンダは3戦連続2台が表彰台に上るという活躍をみせ、コンストラクターズ選手権でメルセデスに1点差に詰め寄った。さらに、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリー選手は4位に入り、アルピーヌとのコンストラクターズ選手権争いで同点に追い付くなど、スタートで他車とのアクシデントに巻き込まれる形でリタイアとなった角田裕毅選手を除けば、ホンダ勢が1-3-4フィニッシュと大活躍を演じてみせた。

F1第18戦メキシコGP、ホンダ・パワーユニットが1-3-4フィニッシュ フェルスタッペン9勝目でメルセデスとの差をさらに拡大

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1364359.html

 フェルスタッペン選手のメキシコGPの優勝は、ホンダ・パワーユニットとしては1989年の故アイルトン・セナ(マクラーレン・ホンダ)以来となり、シーズン9勝目は、ホンダ・パワーユニットを搭載して走行したドライバーとしては1988年のセナの年間8勝を上まわる最多勝となる(年間最多勝の記録は2004年のミハエル・シューマッハ氏が記録した13勝)。

 なお、メキシコGPは1965年にホンダがF1で初優勝した地としても知られており、そうしたメキシコでF1最終年に優勝できたことはホンダとしても感慨深い優勝になったようで、レース後の囲み会見に応じたホンダF1 テクニカルディレクター 田辺豊治氏は「ホンダF1の長い歴史の中で、第一期に初優勝したこの地でいい形のレースをできて優勝したことはうれしく思っている」と述べた。

 F1は残り4戦(ブラジルGP、カタールGP、サウジアラビアGP、アブダビGP)が残るだけで、ホンダラストイヤーとなる今年、そのドライバーであるマックス・フェルスタッペン選手とレッドブル・ホンダが、ドライバー選手権およびコンストラクターズ選手権で悲願の王者を獲得できるのか、いよいよF1もクライマックスへ向かっていくことになる。

セルジオ・ペレス選手の地元でものすごい応援の中、より強くなったレッドブル・ホンダを見せることができた

4位に入ったアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリー選手

──それでは田辺氏より今日のレースの振り返りを。

田辺氏:予選ではレッドブル・ホンダの2台はセカンドローの3位と4位、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリー選手は5位でレースをスタートした。レーススタートで、マックス・フェルスタッペン選手が1コーナーまで長いストレートをうまく活用して、2台のメルセデスのスリップストリームに入り、ブレーキングで前に出て1コーナーをトップで入った。セルジオ・ペレス選手も3番手、ガスリー選手も4番手で1コーナーを回っていった。

 この3人に関して言うと順調なレースを展開した。特にペレス選手は母国GPで、2番手のハミルトン選手に何度となく接近してオーバーテイクを試みたものの、惜しくも追い越すことはできなかったが、ダブル表彰台でよいレースを展開でき、ガスリー選手もずっと4位で走りきった。それによりホンダ・パワーユニット搭載車が1-3-4になった。角田選手は1コーナーでボッタス選手がスピンするなどの混乱の中で逃げ所がなくてそのままリタイア。マシンもよかったので、最後まで走ってもらえればいいところを見せられると思っていたが残念だった。

 ドライバー選手権では、フェルスタッペン選手がトップをキープしてリードを拡大したので、そのままの調子で残り4戦戦っていきたい。コンストラクターズ選手権は2位のままだが、1ポイント差まで詰め寄ることができた。アルファタウリはコンストラクターズ選手権で5位のアルピーヌに並んだが、優勝回数の差で6位になっている。それぞれがよい形で機能しており、残りのレースでも弾みをつけて戦っていきたい。まだまだ長い戦いだが、よい戦いをしていきたい。

──メキシコは1964年初優勝した思い出の地。そこで優勝できたことに対しては?

田辺氏:このメキシコはホンダF1の長い歴史の中でも第1期のときに初優勝を達成した地。そうした初優勝の地でよい形で優勝できたのはうれしく思っている。今回のメキシコGPでは観客もフルに入っていて、われわれのチームのドライバーである地元のセルジオ・ペレス選手がいることで、ものすごく応援を受けた。その中でペレス選手もいいレースを見せことができた。前回と同じ1-3だが、より強くなったレッドブル・ホンダを見せることができてうれしく思っている。

──今回高地のメキシコということで、ホンダ・パワーユニットのターボの強みを見せることができたと思うが、田辺氏自身の評価は?

田辺氏:パワーユニットと車体、ドライバーを切り離して考えることはできない。特にパワーユニットと車体は難しい。その前提で、メキシコという高地で、レッドブル・ホンダ、アルファタウリ・ホンダがパッケージとして非常に強かったということだと考えている。しかし、ハミルトン選手もペレス選手に追われていたとはいえ、確実に2位を獲得しており、簡単にわれわれの方がメルセデスより優れているとは言えないと思う。

セルジオ・ペレス選手

──レース中にペレス選手が(レッドブルの)エンジニアに対して「エンジンはどうか?」という質問をしていてエンジニアが「調子いいよ」と答えているシーンがあったが、そのときにホンダ側の受け止めはどうだったのか? また、フェルスタッペン選手はほぼ1人旅という状況だったが、彼のパワーユニットの状況はどうだったのか?

田辺氏:レース中に「エンジンが……」という無線でコメントが出るときには大抵調子がわるいということなので、一瞬ホンダ側のメンバーは全員ドキッとした。しかし、レース中は常にデータをモニタリングしていて、異常がないことは確認できていたので、ここから行く気だな、プッシュするのだなと思った。フェルスタッペン選手のパワーユニットには何も問題がなかった。

──レース後半にハミルトン選手に一度追い付いた後、少し離れたシーンがあったが、パワーユニットの冷却などが苦しかったのか?

田辺氏:それはなかった。

──次戦のブラジルに向けてはどういう戦い方をしていくのか?

田辺氏:過去にはいい戦いをした(筆者注:例えば2019年には、レッドブルのフェルスタッペン選手が優勝、アルファタウリのガスリー選手が2位)というのはあるが、実際には行なってみないと分からない部分はある。このブラジルは標高800m程度で、パワーユニットからすると「プチ高地」となり、オーストリアなどと少しの差という程度の高地になる。戦い方はいつもと同じで、できる準備をしていって、いろいろなオプションを準備しながら走り、データを見ながら最適化していく。

表彰台の様子、左が優勝したマックス・フェルスタッペン選手、右が3位のセルジオ・ペレス選手


 今回のメキシコGPが終了した時点で、今週末に行なわれるブラジルGP、そして来週末に初めて開催されるカタールGPが連戦で行なわれた後、12月にこちらも初開催となるサウジアラビアGPに、最終戦のアブダビGPを迎えることになる。

 ドライバー選手権に関しては、フェルスタッペン選手が2位のハミルトン選手に19ポイント差をつけたことで、仮にフェルスタッペン選手が1レースでリタイアに終わってハミルトン選手が優勝したとしても6~7点差となり、2位にいられる状況になったため、フェルスタッペン選手がやや有利になったということは言うことができるだろう。仮に次のブラジルGPでフェルスタッペン選手が優勝し、ハミルトン選手が2位だとすると、1レース分での最大獲得ポイント(優勝25ポイント+ファステストラップ1ポイント)と同じ差をハミルトン選手につけることになる。その意味では、次戦のブラジルGPが重要な一戦になることは間違いない。

 そして、3戦連続でフェルスタッペン選手とペレス選手の2人が表彰台に上がっていることも重要なポイントだ。トルコGP(2位/3位)、アメリカGP(優勝/3位)、メキシコGP(優勝/3位)と、コンスタントに3位に入っている。それがコンストラクターズ選手権でレッドブル・ホンダがメルセデスとの差を1ポイントに追い付いた原動力になっている。その意味では今後の4レースでもペレス選手が確実にメルセデスの1台の前でゴールすることが重要になる。そうなれば、ホンダにとって1991年以来となるドライバー選手権、コンストラクターズ選手権の2冠獲得でホンダラストイヤーを終えることが現実味を帯びてくるだろう。