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レクサス、新型バッテリEV「RZ」発表会 「チームレクサスがつくるBEVの本気度が必ず伝わると確信している」

2022年4月20日 発表

新型「RZ」を世界初公開

トヨタテクニカルセンター下山でクルマと人を鍛える

 レクサス(トヨタ自動車)は4月20日、ブランド初のBEV(バッテリ電気自動車)専用モデル新型「RZ」を世界初公開するとともに、レクサスインターナショナル プレジデント/CBOの佐藤恒治氏、新型RZ チーフエンジニアの渡辺剛氏が出席してのオンライン発表会の模様を公開した。

 新型RZは、レクサス初のBEV専用モデルとして電動化技術がもたらすレクサスらしいクルマをデザイン、走りの面で体現したというモデル。レクサスでは2030年までにすべてのカテゴリーでBEVのフルラインアップを実現し、2035年にはグローバルでBEV100%の販売を目指しており、今回の新型RZはBEVを軸とするブランドへの変革の起点に位置付けられている。

The New RZ オンライン発表会

 その車両開発は愛知県豊田市と岡崎市の山間部にあるトヨタの新研究開発施設「トヨタテクニカルセンター下山(TTCS)」で行なわれており、クルマを「走らせては直す」ことを幾度となく繰り返し、クルマを鍛え、クルマをつくる人も鍛えているという。

 新型RZのボディサイズは4805×1895×1635mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mm。エクステリアではエンジン冷却用のラジエーターを必要としないBEVの特徴を最大限活かした低いフードデザインやフロントグリル開口の最小化に加え、グリルシャッターを採用。冷却風を必要としない場合、グリルシャッターを閉じることにより空気抵抗を低減する。

ブランド初のBEV専用モデルとなる新型「RZ」(写真は全てプロトタイプ)

 床下もアンダーカバーをフラット化することで空気抵抗を低減させつつ、走行安定性にも寄与させた。フロント側のカバーにはディンプル形状を設け、微小渦を床下に発生させることにより接地感を高めるとともに、スタビリティを高めている。また、特徴的なルーフスポイラーを用いており、スポイラーサイド部の形状により発生させた縦渦が横風発生時のボディに働く空気力を抑え、走行安定性を確保。ルーフ中央部は傾斜させたリアガラス面から車両後方へ段差なくスムーズに風を流す形状とし、トランクエンドのダックテール形状は後流の風流れバランスを整えることにより空気抵抗を低減させている。

 リアまわりではクリーンでシンプルな水平基調のデザインに、張り出したタイヤを強調する造形を組み合わせ、BEVのトルクフルな走りを支える力強いスタンスが際立つデザインを採用。また、一文字リアコンビネーションランプと「NX」から続く新たなLEXUSロゴを採用。センター部で段落としした赤色レンズ部がロゴを際立たせ、シャープさも強調しているという。

新型RZのボディサイズは4805×1895×1635mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mm

 プラットフォームはレクサス初のBEV専用となる「e-TNGA」を採用し、バッテリを車両フロア下に搭載することで低重心・低慣性モーメントという運動性能の素性に優れた特徴を活かし、操縦安定性と乗り心地を高い次元で両立。また、気持ちのよい走りのために、ラジエータサポート部の補強とV字状のブレースを追加することでボディを強化するとともに、タワーバーとフェンダーブレースによってステアリングの応答性を、ロアバック部の補強によってリアの追従性をそれぞれ向上させた。グレードによりフロント、リアにパフォーマンスダンパーも設定する。

 また、操縦安定性や乗り心地の向上を目的に、ボディ骨格の接合にレーザースクリューウェルディング(LSW)や構造用接着剤、レーザーピニング溶接技術を積極的に採用。リアのラゲッジ開口部では変形を抑えるために二重環状構造に加え、高剛性発泡剤を取り入れることで歪みにくい構造とした。また、航続距離の伸長へ貢献するためフロントとセンターピラー、フロントレールへ1.8GPa材と1.5GPa材を重ね合わせたパッチワーク工法を採用。さらにルーフセンターリインフォースメントへの1470MPaの引っ張り強さを持つ冷間圧延鋼板、フードへの軽量アルミ、ドアモールディング/ホイールアーチモールディング/バックドアガーニッシュへ発泡樹脂成型を採用するなど、徹底した軽量化にも取り組んだという。

 サスペンションはフロントにマクファーソンストラット式、リアにトレーリングアーム式ダブルウィッシュボーンを採用。路面入力の周波数に応じて伸び側ストロークの減衰力を変化させ、乗り心地を損なうことなく高い操縦安定性を提供する周波数感応アブソーバー「FRD II」をレクサスとして初採用した。

新型RZのBEVシステム

 一方、インテリアではカウルからドアへの連続感ある全体造形に低く配置したインパネを組み込み、ドライバー席と助手席へと抜ける空間を設けたコンソール、シンプルなドアトリムなどを用いて開放的でクリーンなイメージに仕上げた。また、ウルトラスエードを施したドアトリムオーナメントやシート、木目調のコンソールアッパーパネルにより、上質なおもてなし空間を実現している。

 また、ロングホイールベースによって1000mmのカップルディスタンスを確保したゆとりのある後席空間を実現するとともに、後方にピークを持たせたキャビンシルエットにより、圧迫感のない後席ヘッドクリアランスが乗員に開放感を提供。加えて、パノラマルーフ仕様ではさらなる開放感と前後への抜けのよさを引き立てているという。

 コクピットまわりでひと際目立つのは、従来の円形ステアリングとともに用意された異形ステアリング。この異形ステアリングでは、ドライバーとクルマが一体となった走りを実現するために進化したステアリング制御とステア・バイ・ワイヤをレクサス初採用。ステアリング操舵角を約±150°に設定し、交差点やUターン、車庫入れ、ワインディングなどの運転シーンにおいて、ステアリングを持ち替える必要のない運転操作を可能とし、ドライバーの負荷を大きく軽減するという。また、持ち替え不要になったことでステアリング形状とメーターの配置を機能に基づき抜本的に見直しており、運転中のドライバーの視線移動を最小化し、ドライバーの目線を自然と前方へ誘うことでよりクルマと対話できるコクピット空間を実現させている。

新型RZのインテリア。従来の円形ステアリングとともに用意された異形ステアリングが目を引く

 パワートレーンについては、ドライバーの意図に沿った気持ちのよい走りを実現するために新開発した四輪駆動力システム「DIRECT4」と、新たに開発した高出力モーター「eAxle」を採用。

 DIRECT4の駆動力配分制御は車輪速センサー、加速度センサー、舵角センサーなどのセンサー情報を用いて、前輪:後輪=100:0~0:100の間で制御し、発進加速性、操縦安定性の向上、低電費に貢献。発進時、直進加速時は車両のピッチングを抑え、ダイレクトな加速感が得られるように、前輪:後輪=60:40~40:60程度で制御する。コーナリング時には車速、舵角などの情報を用いて、走行状態に合わせて駆動力配分を最適に制御することで優れた操縦安定性に寄与する。ステアリングの切り始めにはフロント寄りの駆動力配分(75:25~50:50)、コーナー脱出時はリア寄りの駆動力配分(50:50~20:80)とすることで、トラクション性能の確保や車両のピッチングを抑えながら、スッとクルマが曲がる気持ちのよい旋回フィーリングを実現しているという。また、システムの最大効率で前後駆動力配分をコントロールするなど、消費電力を抑制するRangeモードをレクサスとして初採用している。

フロント(上)とリア(下)のeAxle

 また、航続距離、広い車内空間、優れたデザイン性を実現するためモーター、トランスアクスル、インバーターを完全一体化し、コンパクトな構造が特徴のeAxleを新開発。フロントのeAxleは前後方向に短いシステム配置とし、リアのeAxleも低背な配置により室内や荷室空間の拡大につながるパッケージとした。また、リアにはSiC素子を使った高効率なインバーターを用いることで航続距離を伸長させているという。

 なお、新型RZのバッテリ容量は71.4kWhで、モーターの出力はフロントが150kW、リアが80kW。航続可能距離は約450kmとしている。

今夏発表の新型モデルはDIRECT4を搭載したHEVに加え、PHEVもラインアップ

レクサスインターナショナル プレジデント/CBOの佐藤恒治氏

 オンライン発表会で登壇した佐藤プレジデントは、2021年12月に発表したカーボンニュートラル社会の実現に向けた新しい電動化戦略について触れるとともに、「電動化技術によりクルマの可能性を最大限引き出し、ドライビング体験の楽しさを追求します。スポーツBEVはそれを象徴するモデルです。LFAの走りの味を継承し発展させ、他のモデルにも展開していくことでBEVブランドへと進化させてまいります。スポーツBEVは未来のシンボルですが、RZはその変革の起点となるモデルです」とあいさつ。

 新型RZでは鍛え上げられた基本性能、四輪駆動力システム「DIRECT4」はレクサスならではの乗り味を高い次元まで引き上げているとし、「リニアな加減速、ブレーキのフィーリング、気持ちのよいハンドリングによりレクサスらしい走りを実現します。RZは新しいテストコース『トヨタテクニカルセンター下山』の過酷な走行条件下でテストを繰り返してきました。BEVの走行性能と静粛性はドライバーの感性を刺激するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けて歩みを進めていきます。このBEV『RZ』が提供する価値をお客さまのお1人おひとりにご体感いただきたいと願っています」と述べた。

スポーツBEV

 そしてチーフエンジニアの渡辺氏は、「カーボンニュートラル社会の実現に向けて、クルマ屋レクサスが取り組むべきこと、それは自然や地球環境を大事にしながらもBEVならではの特性を活かした楽しいクルマを追求し続けることだと考えています。静かで心地よく、クルマとの一体感を感じられるリニアでダイレクトな走り。電動化技術でレクサスらしいデザインと走りをさらに飛躍させ、クルマを操る楽しさを提供し続ける。RZはそんなレクサスの電動化の未来を体現したモデルです。2030年に全カテゴリーにBEVフルラインアップを完成させるというビジョン実現に向けクルマ屋レクサスの新拠点であるここトヨタテクニカルセンター下山で開発を着々と始動させています」と述べるとともに、新型RZについて紹介。

新型RZ チーフエンジニアの渡辺剛氏
新型RZはトヨタテクニカルセンター下山で鍛えられた

 また、新型RZの走行性能については「レクサスの走りの進化はこのRZからさらに加速していきます。まず、RZにはLexus Electrifiedのコアテクノロジーである四輪駆動力システム『DIRECT4』を搭載し、前後のモーターの駆動力を4輪の接地荷重に応じて自在に配分することで、ドライバーの操作に対し素早く、リニアで、正確なクルマの応答を実現します。それにより、どんな運転シーンにおいても安心して操ることができ、レクサスがもっとも大事にしているクルマと対話できる、自然で一体感のある走りを実現しています。また、このDIRECT4の強みを最大限に引き出すべく、BEV専用のe-TNGAプラットフォームをベースにクルマの素性を徹底的に鍛え上げ、レクサスらしい走りの味づくりを進めてまいりました」と解説するとともに、デザインや居住性については「走りの進化や機能的本質に根差したプロポーションや独自性を追求しています。フロントフェイスはBEV化に伴い大きなグリル開口が必要なくなったことを機に、これまでのスピンドルグリルから新たなレクサスのアーキテクチャであるスピンドルボディへ進化しています。コクピットは、『人間中心』の思想のもとドライバーの操作性にこだわった『TAZUNA Cockpit』を採用。視線移動や煩雑なスイッチ操作をすることなく運転に集中できる空間を提供します。そして、運転に集中できるコクピットに、シーンに応じて自在にステアリング制御が可能なステア・バイ・ワイヤを組み合わせることで、BEVならではのレスポンスのよさとリニアでダイレクトな走りを高次元で融合した、新たな運転体験を提供します。リア席は外形からは想像もつかない広いスペースと調光機能付きパノラマルーフにより自然をより近くに感じられる解放感を実現しています。乗って安心感があり、触れて心地よく、操って楽しいレクサスらしいBEVの実現を目指して開発を進めてまいりました。ぜひ運転してみてください。チームレクサスがつくる、BEVの本気度が必ず伝わると確信しております」とアピール。そして新型RZは2022年後半からデリバリーを開始する予定であるとした。

DIRECT4の強みを最大限に引き出すべく、BEV専用のe-TNGAプラットフォームをベースにクルマの素性を鍛え上げ、レクサスらしい走りの味づくりを進めたという
フロントフェイスはBEV化に伴い大きなグリル開口が必要なくなったことを機に、これまでのスピンドルグリルから新たなレクサスのアーキテクチャであるスピンドルボディへ進化
「人間中心」の思想のもとドライバーの操作性にこだわった「TAZUNA Cockpit」を採用
自在にステアリング制御が可能なステア・バイ・ワイヤを組み合わせることで、BEVならではのレスポンスのよさとリニアでダイレクトな走りを高次元で融合した

 そして再び登壇した佐藤プレジデントは、「世界各地の地域と連携してお客さまのための充電インフラを整備しています。家庭用充電器の開発、充電ネットワークとの提携、そしてディーラーネットワークの活用を進めています。BEVによって、1人ひとりのためのラグジュアリーを作り出し、お客さまに心の豊かさを提供します。BEVへのシフトは、お客さまにとって全く新しい可能性を切り拓くチャンスです。2030年までに全てのカテゴリーでBEVラインアップを構え、2035年までにグローバルでBEV100%を目指します。また、世界各国や地域のニーズに応じて適宜多様なパワートレーンを提供することでカーボンニュートラル社会の実現を目指していきます」とし、その一環として今夏に新型モデルを発表することを予告。そのモデルにはDIRECT4を搭載したHEVだけでなく新型NXのようなPHEVも搭載する予定であることが明らかにされた。

 最後に佐藤プレジデントは「RZの開発で培った電動化技術を全てのレクサス電動車に展開していきます。そして、これからもレクサスのクルマづくりと走りの味を進化させていきます。また改めて、これからのレクサスについてお伝えできることを楽しみにしています」として締めくくっている。

今夏に発表する新型モデルは、DIRECT4を搭載したHEVだけでなくPHEVも搭載する予定