事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム

第23回:自転車ジャーナリストがクルマに乗るときに注意する3つのポイント

自転車ジャーナリストが語る、クルマ対自転車の事故が起きやすいポイントとは

 クルマの運転をしていれば必ずついて回る事故の可能性。でもそんな可能性は少しでもゼロに近づけたい!! そこでいろいろな人に、普段運転で気をつけていることを紹介してもらおうというのがこの「事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム」です。最近自転車通勤の人が増えているとのことで、今回は自転車ジャーナリストの難波賢二氏執筆で、テーマは「自転車ジャーナリストがクルマに乗るときに注意する3つのポイント」です。サイクリストの視点から見た注意すべきポイントとは?


 コロナ禍以降のここ半年、クルマを運転していて自転車、スクーターが危ないな? と思った人も居ることでしょう。自転車ジャーナリストで、クルマ、スクーターにも詳しい筆者もそう思っている1人です。もちろん自転車、スクーターそのものが危ないと言っているのではなく、ごく一部、危ない乗り方をしている人がいるように感じている、ということです。コロナ禍で公共交通機関の代替手段として自転車などに乗る人が多くなったのでそう感じるのかもしれません。そんな中で、社会が落ち着くまでどうやって安全にクルマに乗っていくのか、もしくは自転車に乗っていくのかについて筆者が日々行なっていることを紹介したいと思います。

 このコラムを読んでいる人のほとんどが自動車ユーザーだと思うので、左折禁止の場所やUターン禁止の場所、一旦停止の意味についてはご存知のハズ。でも自転車の交通ルールや法規は? となると、習ったのが小学校の頃の話なのでひと通り完全に覚えていますという人は少ないのではないでしょうか?

 例えば自転車横断帯(自転車マークがついている部分)が存在しない横断歩道があった時に、やむを得ず歩道を走ってきた自転車は、法規としてどのように走るべきか? と聞かれて正確に即答できる人は極めて少ないと思います。

 その前提で話すと、自動車免許を持って普段クルマを運転している人でさえもあやふやな自転車の交通ルール・法規ですが、これを自動車免許も持っていない、あるいは長年のペーパードライバーがコロナ禍以降やむを得ず自転車、もしくはスクーターなどに乗り始めたとすると、当然学ぶべき知識が足りておらず知らないうちに市街地で危険な走りをしていてもおかしくありません。

 自転車は車道を左側通行することすら知らない人がいる、と考えると、クルマを運転している人にとって、自転車のルール無視の走りに対するお怒りはごもっともですが、まずは心を落ち着けて、どうすれば安全に走れるのかについて考えてみましょう。

 資料を調べてみると自転車とクルマの事故のほとんどは交差点で発生しています。その中でも多いパターンが3つあります。1つは、クルマの左折時に直進してきた自転車、もしくはクルマの死角にいた自転車を巻き込むパターン、もう1つはクルマが右折する時に、対向直進側の車両(特にトラック)が通り過ぎて右折したらクルマの陰に隠れていた自転車がいて、衝突してしまうパターン。そしてもう1つが見通しのわるいT字路での出会い頭の衝突です。

 筆者なりに色々考えた結果、交差点を曲がる数を減らせば事故に合う確率が減らせるんでないの? ということで、通勤やスーパーへの道程など、まずは日々のよく走るルートをもう一度よく考えて、上記の3つのパターンが起こりそうな交差点をできるだけ使わないルートを考えて走るようにしています。これはクルマに乗るときもそうですが、自転車、そしてスクーターに乗るときも同じ。とにかく君子危うきに近寄らずという事で、危ないと分かっている場所を通らない(通っても直進する)ようにしています。

 左折時の巻き込みは、車道を走ってくる自転車、スクーターのみならず、歩道を走ってくる自転車にも極めて気を使って、2度目視を行なうことで自分なりにリスクを低減しているつもりです。もちろん自転車、スクーターを乗る時はクルマの死角に入らないことを極めて注意しています。

 ブラインドのT字路がある所を直進するときは、常に自転車(もしくは歩行者)が飛び出してくるもの、と考えて飛び出してきても停車できるスピードに必ず事前に減速して走行するようにしていますが、それよりも前に、そもそもそうした場所を通らないようにはしています。

ブラインドのT字路、一時停止しない自転車も多い

 あとは、この半年で特に行なっていることとしては、都市高速・高速道路が使える区間があるならできる限り自動車専用道路を使う事です。当然交差点が存在しないので、事故のリスク自体を大幅に減らせると考えています。

 実はコロナ禍以降に自転車に乗り始めた人のために、街中での自転車の危険な条件について知ってもらいたいという思いで、自転車メーカーであるミヤタサイクルと一緒に啓蒙ビデオを作りました。自転車はもちろんドライバーの皆さんにも少しはためになる内容となっていると思いますので、是非ご参考までにご覧になって頂ければ幸いです。(本文中の写真は、このビデオからの切り出しです。)

安全に乗ろう!街中に潜む危険箇所!(14分07秒)

難波賢二

1979年生まれ、モビリティジャーナリスト、自転車ジャーナリスト。自転車、モーターサイクル、自動車、船などに造詣が深く、各種専門誌やWebサイトに寄稿。日本バイシクル・オブ・ザ・イヤー選考委員。e-bike大賞2019(インプレス 家電 Watch)選考委員。自動車を中心に各種乗り物を紹介するYouTubeチャンネル「RIDE NOW」を島下泰久氏と共催している。