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いよいよ日本でも開幕。世界統一仕様で戦う「GLOBAL MX-5 CUP」第1戦レポート

その差0.128秒の激戦! 記念すべき開幕戦は山野哲也選手が優勝

2017年4月8日~9日 開催

「GLOBAL MX-5 CUP」の開幕戦がスポーツランドSUGOで開催された
GLOBAL MX-5 CUP出場メンバー

 マツダ「MX-5(日本名:ロードスター)」を使用する「GLOBAL MX-5 CUP」の開幕戦が、4月8日~9日に宮城県のスポーツランドSUGOで開催された。両日とも「マツダファン 東北ミーティング 2017 inSUGO」も開催されていて土曜日から多くの来場者があり、GLOBAL MX-5 CUPカーの走行時間になると大勢のギャラリーがコースサイドに集合。賑わいのある開幕戦となった。

 GLOBAL MX-5 CUPについてはCar Watchでも何度か紹介しているように、世界統一の車両やルールを導入することで世界戦が行なえる仕組みとなっている。2017年は10月にアメリカ カリフォルニア州にある「マツダレースウェイ・ラグナ・セカ」で世界一決定戦が開催される予定。日本のGLOBAL MX-5 CUPからはシリーズチャンピオンが参戦することになっている。

 なお、日本戦では世界戦への参加資格のある「GLOBALクラス」に加え、世界戦への参加資格はないが、1レース1台のクルマを2人のドライバーで乗る「EMBLEMクラス」という独自のクラスを設けてより参加しやすい環境を作っている。

 さて、スポーツランドSUGOの開幕戦には13台のエントリーがあり、内訳はGLOBALクラスが11台、EMBLEMクラスが2台。競技は2日に分けて行なわれ、8日は公開テスト走行が2回と車検が行なわれた。そして9日に30分間の予選があり、決勝が45分のスプリントレースで開催されるという段取りである。では、記念すべきGLOBAL MX-5 CUPの開幕戦エントリーしたドライバーを紹介していこう。

5号車 今村大輔/KIMInternational
7号車 山野哲也/CABANA Racing
8号車 DAISUKE/NILZZ Racing
15号車 神取彦一郎/NILZZ Racing
19号車 吉本晶哉/バースレーシングプロジェクト(BRP)
21号車 高田匠/OVER DRIVE
36号車 ワッパヤ/KOTA RACING
56号車 大井貴之/Team“Be a racing driver”
84号車 桧井保孝/HM RACERS
88号車 村上博幸/村上モータース
740号車 吉田綜一郞/KOTA RACING
33号車 加藤仁・藤田一夫/CLUB ZONE ROUGE(EMBLEMクラス)
57号車 佐藤考洋・壺林貴也/Team“Be a racing driver”(EMBLEMクラス)

 スポーツランドSUGOの週末の天気予報は曇り時々雨といういま1つのものだったが、それでも公開テストが行なわれた土曜日はときおり薄日が差す程度に天気は持ってくれた。そのため、エントリー各車は30分×2回の走行時間を使い、クルマのセットアップと練習走行を精力的に行なっていた。この日のトップタイムは公式テスト2回目に56号車の大井選手が記録した1分36秒776。出走13台中、唯一の36秒台だった。

 そして日曜日。GLOBAL MX-5 CUPの予選は8時30分から9時までの30分間と、ワンメイクレースとしては長めの時間。また、エントリーが13台なのでクリアラップも取りやすい状況。それだけに予選は各車とも余裕を持ったコースインになるかとの予想もあったが、この日のスポーツランドSUGOはいつ雨が降り出すか分からないような空模様。そのため予選開始時間になるとほとんどのクルマが早めにコースインした。

 予選では序盤から5号車、7号車、56号車がトップタイムを競う展開になったが、後半になると心配されていた雨がパラつき始めた。そのため各チームとも時間を残したままアタックを中止。その結果、1位に56号車、2位に7号車、3位に5号車となった。ところが56号車が予選後の再車検に不通過。タイム抹消という事態になったが、不具合個所を直し、車検を受け直すことで決勝は最後尾グリッドからスタートできることになった。

 これを受けてGLOBAL MX-5 CUP第1戦の正式な予選順位は1位が7号車の山野選手、2位は5号車の今村選手、3位は740号車の吉田選手という結果になった。そして決勝レースは45分間のスプリント。スタート時刻は11時50分29秒。この決勝の模様は写真で紹介していく。

予選トップは1分36秒693をマークした7号車の山野選手
予選2位は1分36秒928の5号車、今村選手
予選3位は740号車の吉田選手。タイムは1分37秒319
雨が降り出す前にタイムを出すため、予選開始直後から各車アタックに入る。当初は56号車の大井選手がトップだったが、予選後の再車検で車重が規定より軽かったことが分かり、車検不通過。ポールのタイムは抹消された
GLOBAL MX-5 CUPの決勝はスタートに先がけて役員挨拶、選手宣誓、国歌斉唱などコース上で開会式が開催された。グリッドは大井選手の降格により1番グリッドが空きの状態で整列となった
GLOBAL MX-5 CUPはローリングスタート方式。スタート直後の1コーナーはトラブルなくクリア
序盤は7号車と5号車のトップ争いになった。そこに740号車が加わって3台でのトップ争いになった
7周目に5号車がトップに立つが、9周目に再び7号車が前に出る。同一仕様車のレースらしく白熱した展開
最後尾スタートだった56号車だが、なんと10周目には4位まで順位を上げてきた
5号車、740号車、56号車が競うすきに7号車がリードを広げる。56号車は740号車をパスして3位に。そして14周目の1コーナーで2位に順位をアップ
スタートから約20分経過時にEMBLEMクラスの33号車がドライバー交代。この頃は雨が降り出していてコースはウェットになっている。GLOBAL MX-5 CUPカーはスリックタイヤを履いているので、ウェットになったことでペースダウンやスピンなど起こってきた
ついにトップに追いついた56号車。果敢に攻めるが7号車の山野選手もウェット路面を巧に走り抜いてチャンスを与えない。7号車 vs 56号車の争いは15周目に56号車が2位に上がってから最終ラップの27周まで続く、レース後半の見どころになった。26周目のストレートでは車間が大きく開いて通過
そしてゴール。26周目の差は一気に縮まり、タイムは0.128秒という僅差だった
日本初開催のGLOBAL MX-5 CUP表彰式。優勝は7号車の山野哲也選手(CABANA Racing)、2位は56号車 大井貴之選手(Team“Be a racing driver”)、3位は5号車 今村大輔選手(KIMInternational)。優勝した山野選手は暫定表彰式で「イコールコンディションが整っているレースだけに、とても楽しく走れました。今村選手とのバトルも楽しかったし、大井さんを抑え切るのも楽しかったです。途中から雨になりましたが、降り始めはドライのラインを走っていました。しかし雨量が増えてきてからは少しずつ探りながらラインを変えて走り切りました」と感想を語った
EMBLEMクラスの表彰式。1位は33号車 加藤仁選手と藤田一夫選手(CLUB ZONE ROUGE。中央左)、そして2位は57号車 佐藤考洋選手・壺林貴也選手(Team“Be a racing driver”。中央右)
2017 GLOBAL MX-5 CUP JAPAN 第1戦決勝結果

1位:山野哲也 CAVANA Racing
2位:大井貴之 Team“Be a racing driver”
3位:今村大輔 KIMInternational
4位:吉田綜一郎 KOTA RACING
5位:村上博幸 村上モータース
6位:高田匠 OVER DRIVE
7位:ワッパヤ KOTA RACING
8位:桧井保孝 HM RACERS
9位:神取彦一郎 NILZZ Racing
10位:加藤仁・藤田一夫 CLUB ZONE ROUGE(EMBLEMクラス)

マツダとキャロッセにGLOBAL MX-5 CUPについて聞く

マツダ株式会社 グローバル販売&マーケティング本部 ブランド戦略部主幹 上村昭一氏

 GLOBAL MX-5 CUPについて、マツダのグローバル販売&マーケティング本部 ブランド戦略部主幹 上村昭一氏からコメントをいただけたのでそちらも紹介しよう。上村氏は「このGLOBAL MX-5 CUPを始めたゆえんですが、そもそもマツダには『走る喜び』というのをできるだけ多くのお客様に提供したいという想いがあります。その一環としてロードスターの発売以来続けているロードスターのワンメイクレースというものがありますが、もう1つ上のレベルを目指したいという方もいらっしゃいます。そこで導入したのがGLOBAL MX-5 CUPです。アメリカで以前からナンバーなしのロードスターによるワンメイクレースが開催されていましたが、ND型に切り替わるのをきっかけにそのレースをぜひグローバルに展開しようということになりました」とコメント。

 続けて「マツダには自分のクルマのドライブをもっと楽しんでいただくためのドライビングアカデミーがあり、もっと本格的に楽しみたい人のためにパーティーレースがあります。そしてGLOBAL MX-5 CUPがその上のレースとなり、さらにスーパー耐久という参加型モータースポーツのピラミッドがあるのです。こうしたステップを構築することで、できるだけ多くのお客様にモータースポーツにチャレンジしていただきたいと思っています」と語った。

 そして「グローバルに浸透していてファンも多いのがロードスターというクルマです。そのロードスターを使い、まったく同じ仕様のクルマでイコールコンディションで戦えるレースがGLOBAL MX-5 CUPです。イコールコンディションだけに、お客様が自分のウデを磨くことが可能でそこは重要だと思っています。また、このGLOBAL MX-5 CUPカーは本格的なレースカーで世界統一仕様となっていますが、必要以上に参加コストが掛からないのも特徴です。統一仕様という点もフェアな戦いをするためのポイントです。そしてクルマの規定だけでなく、世界一を決める世界一決定戦まで開催するところが大きな特徴になっています」と語ってくれた。

 ちなみに本場のアメリカではMX-5カップの人気が高く、車両は120台以上販売されていて1レースに40~50台がグリッドに並ぶという状況。プロへの登竜門的なレースとして認識されているという。さらにアメリカには多くのサーキットがあるが、そのサーキット自身が5~10台くらいのMX-5カップカーを導入し、レンタルレースカーとして貸し出しも行なっているという。

株式会社キャロッセ 代表取締役の長瀬努氏

 GLOBAL MX-5 CUPカーを輸入販売している日本のパーツメーカー「キャロッセ」の長瀬努社長も現地にいたので、カップカーの輸入についてのお話を伺った。

 GLOBAL MX-5 CUPカーは米Long Road Racingがアメリカ仕様のMX-5をベースにして製作しているが、日本へは直接販売していない。そこで日本のスポーツパーツメーカーであるキャロッセがアメリカで作ったクルマを輸入し、日本のGLOBAL MX-5 CUPのエントラントへ販売している。車両は完成車の状態で輸入されるが、日本に入ってからはキャロッセのファクトリーで不具合がないかのチェックを受ける。また、カップカーには専用のパーツが使用されているので、それもキャロッセが窓口となって輸入。国内で販売するというものだ。

 そもそもキャロッセがGLOBAL MX-5 CUPの車両デリバリーを行なうことになった理由について伺ったところ、長瀬社長からは「このレースは世界戦ではありますが、レースのステップとしては低いところにあたる世界戦だと思います。それだけに色々なドライバーが世界に向けて挑戦できるものだと思っています。我々はそこに面白さや応援したいという気持ちを持ったのでこの仕事を受けています。キャロッセという会社は創業以来、モータースポーツに関わる業務を行なっていて、キャロッセとしても国内の各種モータースポーツや海外ラリーにも参戦しています。また、マレーシア プロトンの『サトリア NEO』をという比較的安価でスポーツ走行向きのクルマをモータースポーツベースに使って欲しいという思いからプロトンと契約し、正規輸入元として車両販売もしています。GLOBAL MX-5 CUPの車両やパーツのデリバリーもそれと同様に日本のモータースポーツ活性化につながる業務と考えています」とのことだった。

【お詫びと訂正】記事初出時、EMBLEMクラスの結果に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。