インプレッション

BMW「2シリーズ クーペ/カブリオレ」(ドイツ試乗)

日本には導入されないxDriveとディーゼルに試乗

 手ごろなサイズとパワー、現実的な価格帯、そして何よりこのクラスで貴重なFR。日本でも間もなくマイナーチェンジ予定の2シリーズ クーペおよびカブリオレに期待している人は大勢いることだろう。7月中旬、BMWの本拠地であるドイツ ミュヘンで、ひと足早くテストドライブする機会に恵まれた。

 ポイントは内外装デザインだ。前後ランプにLEDを用いた新しいタイプとしたほか、グリルやバンパーのデザインも開口部を広げた、よりスポーティな意匠となった。ホイールも新しいデザインとなり、ボディカラーのバリエーションも変わった。

 より大きく変わったのはインテリアだ。ひと目見て「おっ」と感じるほど上質な雰囲気になっていて、車格がワンランク上がったような印象を受けた。これまでもわるくなかったが、新しいほうが断然いい。iDriveは最新世代に進化し、タッチスクリーンの採用や、コネクティビティの強化も図られている。

 走りに関する変更は伝えられておらず、すでにマイナーチェンジの前にパワーユニットのアップデートが行なわれたのはご存知のことだろうが、シャシーについては「すでに完成度の高いものができているので手を加える必要がなかった」と開発関係者は述べている。

本国では5月に発表され、7月に発売となった新型2シリーズのクーペ&コンバーチブル(写真は「M240i クーペ xDrive」)。今回のマイナーチェンジでは内外装デザインの変更が行なわれ、ヘッドライト&テールランプをLEDを用いた新しいタイプにするとともに、グリルやバンパーのデザインを刷新。ボディカラーには新たに「メディテレーニアンブルー」「シーサイドブルー」「サンセットオレンジ」という3色が追加されている
「M240i クーペ xDrive」が搭載する直列6気筒3.0リッターターボエンジンは最高出力250kW(340PS)/5500rpm、最大トルク500Nm/1520-4500rpmを発生。0-100km/h加速は4.4秒
「M240i クーペ xDrive」のインテリア。メーターパネルやトリム、エアベントなどのデザインが新しくなった

 2シリーズのクーペとカブリオレの本国でのパワートレーンの設定は、かなりワイドバリエーションだ。ガソリンが「218i」「220i」「230i」「M240i」「M240i xDrive」、ディーゼルが「218d」「220d」「220d xDrive(カブリオレに設定なし)」「225d」と、クーペだけで実に全9機種におよぶ。

 その中から今回ドライブしたのは「M240i クーペ xDrive」と「220d カブリオレ」。約1時間ずつ市街地やミュンヘン郊外の田舎道、速度無制限区間を含むアウトバーンなどを走ることができた。実のところ、xDriveやディーゼルが日本に導入される予定は、これまでどおりないようなのだが、本国にはこんなモデルもあり、それがなかなかよかったことをお伝えしたいと思う。

「220d カブリオレ」。ソフトトップは約20秒で開閉動作を行なうことができ、50km/hまでであれば走りながらでも開閉できる
「220d カブリオレ」が搭載する直列4気筒2.0リッターディーゼルターボエンジンは、最高出力140kW(190PS)/4000rpm、最大トルク400Nm/1750-2500rpmを発生。0-100km/h加速は7.5秒とアナウンスされている
「220d カブリオレ」のインテリア

実は「M240i」が2シリーズ クーペの最量販

「M240i」は、なんといってもまずエンジンが魅力的だ。それは始動した瞬間から始まり、アクセルを踏むたびに味わうことができる。力強い加速とスムーズな吹け上がり、いまやBMWの中でも貴重になってきたストレートシックスならではの調律されたサウンドに、ホレボレさせられる。実は2シリーズ クーペの中でも世界でもっとも売れているのが、この「M240i」らしい。やはり比較的軽量でコンパクトな車体に、340PSの3.0リッター直列6気筒ターボという組み合わせに魅力を感じるのは、誰しも同じということのようだ。

 アウトバーンでは、強力な動力性能と素晴らしいフットワークの仕上がりにあらためて感心。ハイレベルなトラクションと操縦安定性は、xDriveによりもたらされる部分も小さくないのだろう。

 郊外の一般道では、道幅はあまり広くなく、それでいて制限速度自体も高めで標識のないところは100km/hまで出してよいドイツゆえ高めの速度域で走るわけだが、コンパクトな車体と正確性に優れるハンドリングのおかげで意のままに操ることができる。タイトなコーナーでもアンダーステアを感じさせることなく、後輪駆動車となんら変わらない感覚で入っていけるし、これほどパワフルでありながら立ち上がりにかけてアクセルを開けても横に逃げることなく前へ前へと進んで行き、ニュートラルステアを維持する。

 公道なので限界走行を試したわけではないが、ずっと安心感があるので、全体的に早めにアクセルを踏めるような感じがした。ホイールベースが短めな2シリーズで、ハイパワーな「M240i」となれば尚のこと、4WD化のメリットがより大きいことが期待できるのは言うまでもない。

カブリオレとディーゼルの相性は?

 そして「220d カブリオレ」。所要時間は約20秒で、50km/hまでなら走りながらでも開閉できるソフトトップを開けてフルオープンで走る解放感は、やはり格別。それを手ごろなサイズながらMAXで4人の乗員で共有でき、むろんBMWらしい“駆けぬける歓び”とともに味わうことができるのが、このクルマならではの特典に違いない。サイドウィンドウを上げておけば、アウトバーンを飛ばしても風の巻き込みはそれほど気にならないレベルだ。

 2シリーズ カブリオレのディーゼルに乗ったのは今回が初めて。BMWのディーゼルの完成度が高いことは、すでに他モデルでも体感しているが、これだけ音や振動が気にならず爽快に走ってくれるのなら、カブリオレのような性格のクルマでも大いにアリだと思った次第。むろん出来ばえに自信がなければBMWも出さないだろうけれど。

 日本では2シリーズ カブリオレ自体の販売台数はあまり多くないし、輸入車のオープンカーでディーゼルというのはイメージ的に難しいものがあるので、導入されることはなさそうだが、よいものであることはぜひここでお伝えしておきたいと思う。

 2台をドライブして、2シリーズがさらに魅力的に進化したことがよく分かった。実は今回、ミュンヘンの工場を見学し、あたかも競技車両のような溶接打点の多さや構造へのこだわりなど、いかにホワイトボディがしっかり作り込まれているのかも目の当たりにし、BMWの走りがよい理由がうかがい知れたわけだが、マイナーチェンジでの変更を具体的にアナウンスせずとも、いわゆるランニングチェンジによる改良を頻繁に行なっていると聞く。今回も、乗り心地や操舵時の反応などの微妙なところに、それらしき成果が感じられた。

 2シリーズは、BMWの中ではエントリーモデルではあるが、今回の改良でサイズだけ小さいプレミアムモデルという雰囲気がより高まったように思える。このカテゴリーには競合車も数多く存在するわけだが、FRという強みに加えて、視覚面や装備面での優位性が高まり、より魅力的に成長を遂げた。そんな新しい2シリーズの日本導入を楽しみにして待ちたい。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。