ニューヨークショー 2018

【インタビュー】新型「フォレスター」のデザインについて、スバル デザイン部主査の大関氏に聞く

株式会社SUBARU 商品企画本部 デザイン部 主査 大関透氏

 スバルは第5世代となる新型「フォレスター」を米国 ニューヨークで世界初公開した。スバル共通のデザインフィロソフィー“DYNAMIC x SOLID”に基づきながら、エクステリアでは“モダンキュービックフォルム”というキーワードでSUVらしい逞しさや躍動感、豊かな荷室空間や機能性の高さを表現したという。

 また、一部仕様ではエクステリアやインテリアにアクセントカラーを取り入れるとともに専用装備を採用して、SUVらしい逞しさと精悍さを強調する仕様を設定している。

 新型フォレスターが発表された現地ニューヨークで、スバル 商品企画本部 デザイン部 主査 大関透氏に話を聞いた。


──フォレスターとして変えなかった部分と変えた部分について。

大関氏:現行フォレスターもお客さまの支持をいただいて、いい商品であると思っている。ただ、私達の商品を趣向されるお客さまが、アクティブな趣味を持っていたり、ライフスタイルもアクティブなものに変化しているということで、もっとSUVとしてしっかりと見える、佇まいや機能を含めて進化させ、我々では“アドベンチャラス”という言葉を使っていて、そういったクルマにした。スバルの車全体にも言えるが、乗員全員が快適に乗れるための根幹となる安全であったり、運転しやすいという部分は変えずに、しっかりと守った。

第1世代フォレスター
第2世代フォレスター
第3世代フォレスター
第4世代フォレスター

──今回、ボディサイズはあまり変わらなかったが、デザイン面で苦労したことは?

大関氏:グローバルなクルマなのでお客さまが乗られる状況はいろいろあるが、取りまわしがよくて乗りやすくないと、クルマに乗っていて楽しめないということでボディサイズが大きくなるのは最小限にした。限られた寸法のなかでSUVらしい力強さをどのように表現するのか、我々がチャレンジしてカタチにしようというマインドだった。一般的に室内の容積を広くしてくとクルマは四角くなってしまうが、“DYNAMIC x SOLID”に加えてモダンキュービックフォルムとキーワードで、キャビンとボディの一体感を出しながら、フェンダーの張り出しにより、単なるハコにならないようにデザインしている。

新型フォレスター(北米仕様)

──街乗りを意識したスポーティなSUVモデルもあるが、そういった方向にいかなかったのは?

大関氏:スポーティといってもさまざまな考え方があるが、フォレスターで考えているのは、アウトドア・アクティビティのスポーツ。アクティビティをするために家族を乗せ、その先で使うものを載せて楽しめるクルマ。リアゲートを寝かしたり屋根を下げたりすると、お客さまがアクティビティに使うものが積めないだとか、そこに移動するまでが窮屈なものになってしまう。このクルマでは室内空間と荷室の空間は大事にした。

新型フォレスター(北米仕様)

──他メーカーのSUVも登場する中、少しコンサバな印象を受けるが?

大関氏:スバルが提供するクルマは、長い期間持っていても飽きが来ないロングライフデザインと言っているが、キャッチーではあるがしばらくすると飽きが来るものよりは、長くずって持っていても愛着が湧いて飽きがこないものを考えている。フォレスターはお客さまが自分のライフスタイルを充実させるために購入される方が多く、クルマそのものが主張するよりお客さまに寄り添って、お客さまのライフスタイルでどのように役に立つのかと考えている。

新型フォレスター(北米仕様)

──印象の異なる2タイプの仕様を用意した理由は?

大関氏:1つはSUVとしてのしっかり感をだして、インテリアも質感を上げてすべての乗員におもてなしを考えたモデル。もう1つはパッケージは一緒で、よりアウトドアスポーツやクルマでドライブしたいというマインドが強い方に向けて用意したモデル。アウトドアツールをイメージして、アンダーガードやルーフレールといった機能のあるところにオレンジの差し色を配して、よりワクワクしていただくために用意した。内装にもシフトまわりやベンチグリルといった、機能のある場所に同じカラーをとり入れている。

標準仕様に加えて、アクセントカラーを取り入れた仕様を用意

オレンジの差し色を機能部品のある場所に採用した

──乗員認識技術「ドライバーモニタリングシステム」を導入するにあたって、デザイン面で取り組んだことは?

大関氏:顔認証するためのカメラを収納するバイザーのサイズや位置は吟味して採用している。(顔認証をするドライバーは)5名まで登録ができて、登録のためのアイコンもアウトドアのアクティビティの画になっていたり、自分はどういった人だからこれがいいといったことを楽しめるようにデザインしている。

──インテリアではインプレッサのインパネを基本にしているが、フォレスターとして取り組んだところは?

大関氏:インテリアでは、インパネからドアにまでまわりこむラウンドで、お客さまを守る安全なシェルをイメージしている。インパネに使用する素材は幾何学模様の素材を組み合わせてSUVらしさとクラフトマンシップを感じさせるものにこだわった。また、いままでのフォレスターではシフトの位置が下にある印象があったが、お客さまの中で小柄な女性がシートを上げて座ってしまうとシフトが遠いですという声があり、シフト位置を17~18mm上げて、それとともにコンソールの厚みを出して幅も広げた。乗る人全員が快適に過ごすといったとき、ドアトリムでは肩から腕まで体と接する部分にソフトパッドを採用した。厚みを感じてしっかり感じられるように、SUVの頼もしさと乗った人がしっかり守られている感じがする造形になるよう作り込んでいる。

ドアトリムは肩から腕まで体と接する部分にソフトパッドを採用

編集部:椿山和雄