イベントレポート

【ジュネーブショー 2019】マツダ「CX-30」の深化した魂動デザインについてチーフデザイナーの柳澤氏に聞く

2019年3月5日~17日(現地時間)開催

Palexpo

マツダがジュネーブショー 2019で発表した新型コンパクトクロスオーバーSUV「CX-30」のデザインについて、マツダ株式会社 デザイン本部 CX-30チーフデザイナー 柳澤亮氏に話をうかがった

 マツダは、2010年にデザインテーマとなる「魂動-Soul of Motion」を発表し、そのデザインテーマに沿ったコンセプトカーの「マツダ靱(SHINARI)」を公開した。その後、2012年より市販化された新世代商品群はこの魂動デザインをベースにしていて、全世界で多くの賞に輝くことになった。

 幅広い支持を集めてきた魂動デザインは年を追うごとに深化を続ける。2015年に登場した「RX-VISION」や2017年に発表した「VISION COUPE」では、引き算の美学の考えをもとにして、要素を削ぎ落とした強いフォルムと周囲の光と影を写し込むリフレクションを取り入れた。より自然な生命感を表現するようになった深化した魂動デザインによって生み出されたのが、新型「Mazda3」であり、ジュネーブモーターショーで初公開された「CX-30」になる。

 新型Mazda3から始まる次世代商品の第2弾モデルであり、初のSUVとなったCX-30。どのようなコンセプトで内外装を造り上げたのか、チーフデザイナーの柳澤亮氏にうかがった。


マツダ株式会社 デザイン本部 CX-30チーフデザイナー 柳澤亮氏

──2012年に登場した新世代商品群の後半から魂動デザインの深化ということで、余計な要素を削いでいく引き算のデザインや、リフレクションを使った新しい表現方法を用いてきました。新型Mazda3からスタートした次世代商品の初のSUVモデルがCX-30になります。どのようなところに気遣って魂動デザインを表現したかを教えてください。

柳澤亮氏:今回のテーマは「Sleek&Bold(スリーク&ボールド)」です。ボディ下部にクラッディングを用いているのが目に付くかと思うのですが、下半身をブラックアウトすることでボディが浮いているように見えると思います。そして、上半身をスリークかつ力強いデザインにしているので、SUVらしい印象を受けるはずです。SUVとしてオフロードなどの世界観を拡げる部分も重要ですが、都市生活の中でも使うので、洗練された部分も持ち合わせて両方のバランスを考えました。新型Mazda3や今までのコンセプトカーとは違うアプローチになります。

──リフレクションという表現は今の魂動デザインの中でも大切なものだと思うのですが、光と影の陰影やその移ろいはどういうところを考えていますか?

柳澤氏:デザインテーマの1つとなるのが「止め」と「払い」です。書道の筆使いにインスピレーションを受けています。リフレクションの入り方は、フロントフェンダーのところに力が溜まって、リアタイヤに向かって放出していきます。新型Mazda3はショルダーからのリフレクションが急激にリアタイヤに入っていくのに対して、CX-30はフロントフェンダーから放出していく形なので、リフレクションが逆向きなのです。リフレクションを取り入れるという考え方は一緒ですが、このあたりが新しいアプローチとなります。

──ボディ下部のクラッディングの厚みはCX-30の特徴ですよね。

柳澤氏:最初に目に入るのはクラッディングの厚みだと思います。モーターショーの会場だと暗くて見にくいですが、屋外で見てもらうと厚みや迫力がよく分かると思います。

──フロントとリアまわりのデザインについても教えてください。

柳澤氏:フロントまわりのデザインは比較的、新型Mazda3と近い顔立ちをしています。また、これまでのCXシリーズとも似通わせたイメージも持たせて、新型Mazda3とCXシリーズの融合を意識しました。グリル部分のシグネチャーウイングはこだわってデザインをしています。また、全体の伸びやかさを表現するために、切れ長のヘッドライトにしています。

 リアは「CX-3」に比べて居住性を高めています。しかし、けっして四角い箱ではなく、非常に流麗なリアエンドが完成したと思います。正面からはワイドなスタンスで4輪が踏ん張ったようなデザインでいて、非常に艶やかな造形をしています。荷室容量はありますが、決してボックスのスタイルではないです。特にリアを正面から見たときのショルダー張り出しなどは、かなり魅力的ではないでしょうか。

──リアはCX-30の個性的なところだと思いますが、フロントまわりはあえて現行のCX-5や新型Mazda3に近い印象に仕上げたということですよね?

柳澤氏:グリルは三角形の立体をリピートさせるデザインになっていて、遠目で見ると新型Mazda3のメッシュに近いデザインになっていますね。ですが、近くで見てもらうと変化が分かるはずです。あえてリアほど車種の個性は出していません。マツダブランドの顔は残しつつデザインしています。

──フロントでCX-30とパッと見て分かるのは、奥行き感のあるライトまわりですか?

柳澤:シグネチャーウイングは、前後方向に深いウイング状の翼を広げたような立体的なデザインを施しました。飛行機のウイングレットのようなデザインで、遠目からはマツダだね、近くで見ると少し独特なところがあるね、という感覚で作り上げました。

CX-30のエクステリアデザインでもっとも注力したというのが、フロントフェンダーからリアへと流れるリフレクションの入り方。ショー会場のライトの下だとリフレクションの移り変わりが分かりづらいが、自然光の下だと艶やかで躍動感のある動きが見えるはず

──CX-30は佐賀主査に聞いたところ、パッケージングがキモとおっしゃっていました。規定のサイズ内に収めながらもデザインしていく難しさがあったかと思います。

柳澤氏:寸法に入れていくのは難しいですが、チャレンジするという楽しさもありました。全幅は新型Mazda3と同じです。基本的にはCX-30の方が新型Mazda3より大きなタイヤを履かせるので全幅が拡がるのですが、このクルマは大きなタイヤを履かせても同じ1795mmというサイズに収めました。もっともチャレンジングだったのは、リフレクションをどういうように作り込んでいくかでした。具体的には、ドアヒンジのレイアウトやサイドインパクトビームのレイアウトが詰まっていて、その中でどうやってリフレクションを動かすかが課題でした。開発の初期の段階でエンジニアの人に「サポートしてください」とお願いして、ドアのエンジニアと共創活動を行ないました。

──フロントからリアへと揺らいでいくリフレクションは注目ですね。

柳澤氏:クルマが動くとリフレクションがユラユラと動くので、“あっ”と言わせるポイントにはなっていると思います。

──ホイールベースが短ければ、リフレクションの作り込みは難しくなっていくのですか?

柳澤氏:全長やホイールベースの影響は少ないです。それよりも全幅が狭いクルマの方が難しいので、CX-30は挑戦的でした。ホイールベースと全長を抑えて4400mm以下でもこれだけ伸びやかに見せられたのは、クラッディングを付けた恩恵が大きかったですね。

──インテリアは横基調のデザインで、コクピットを包み込むような造形は新型Mazda3と同様ですか?

柳澤氏:シートの考え方や造形に関しては新型Mazda3と基本的に同じです。人間中心の思想で、コクピットは完全に左右対称、運転に集中しやすいようなコクピットにしています。新型Mazda3と異なるのは助手席まわりです。新型Mazda3の助手席まわりは、引き算で要素を削いで水平に抜けるようなテーマになっています。CX-30はインパネのアッパーをドアで包み込むようなデザインにしているので、優しく包み込まれるような居心地のいい空間を目指しています。ポイントでステッチを使うことによりクラフトマンシップも感じ取ってもらえるはずです。新型Mazda3はドライバーズカー、CX-30は4人で乗る心地よい空間を提供したいという思想の違いがあります。

コクピットまわりの左右対称なデザインや、スイッチとエアコン吹き出し口の横基調は新型「Mazda3」と同様となる。CX-30の特徴は、助手席側からダッシュボード上部に回り込み、空間を包み込むようなデザイン。パッセンジャーカーとして居心地のよい室内を生み出すために施された、独自のインテリアとなる

──カラーリングなどでCX-30オリジナルのポイントはありますか?

柳澤氏:レザーシートではダッシュボードのアッパー部分が茶色で、シートカラーはホワイトとブラックの2種類があります。ファブリックシートのシートカラーはグレージュとブラックの2種類で、ダークブルーのインパネが組み合わされます。ダークブルーとグレージュはおしゃれな組み合わせになりますし、どちらもお客さまのライフスタイルに合わせて選択してもらえるはずです。

──カラーのこだわりがあれば教えてください。

柳澤氏:新型Mazda3は赤を基調にしたなかに黒を投入するカラーリングですが、CX-30はお客さまのライフスタイルに合わせて選んでいただけるようにバリエーションを増やしています。

──最後に、完全な新規モデルとなるCX-30を任せられ発表に至りましたが、現在の心境を教えてください。

柳澤:プレッシャーもありましたが、デザインも造形も楽しんで取り組みました。以前担当していた「デミオ」も寸法の制約が厳しく、5ナンバーに入れなくてはいけなかったので、デミオのときの経験も活かせたと思います。とてもいい経験でした。

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。