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アルファ ロメオ歴史博物館館長のロレンツォ・アルディツィオ氏、オンラインで創立110周年を語る

アルファ ロメオが110年続いた秘訣とは?

2020年5月18日 発表

イタリア アルファ ロメオ歴史博物館館長のロレンツォ・アルディツィオ氏がオンラインでプレゼンテーションを開催

 アルファ ロメオは6月24日に創立110周年を迎える。それを記念して、アルファ ロメオの公式ヒストリーを記したE-Book(電子書籍)を公開することが発表された。

 その内容は1910年に公開された24馬力の初代「A.L.F.A.」に始まり、1960年代後半に登場したレース用のホモロゲーションモデルの「ジュリア GTA」。そして、今後市場に導入されるクロスオーバーモデル「トナーレ」に至るブランドの歴史が紹介されている。本書は5月18日に英語版がリリースされ、日本語版は6月24日に公開される予定だ。

 今回、この発表に向けて、イタリアにあるアルファ ロメオ歴史博物館館長のロレンツォ・アルディツィオ氏が日本の報道陣に向けてプレゼンテーションを行なったので、その模様をレポートしよう。

Alfa Romeo 110 Anniversary Video Lorenzo Ardizio(4分9秒)

なぜここまでアルファ ロメオは人々に愛されているのか

 当初、6月24日に彼の地ミラノで盛大なイベントが開催される予定であった。しかし新型コロナウイルス感染拡大を受け、この予算と企画全てをオンラインの電子書籍、E-Book作成に振り向けることになったのだ。本書は5月18日に英語版がリリースされ、日本語版は6月24日に公開予定だ。

 その内容は、まさに110年の歴史を振り返るもので、アルファ ロメオ歴史博物館に所蔵されている膨大な資料(詳細は後述)をもとに作成。そのポイントはアルファ ロメオのバリュー(価値)であるという。アルディツィオ氏は「その価値とは、当然クルマはもとより、テクノロジー、関わった人々、レース、歴史などです。それらを取り上げることで、なぜこれほどまでにアルファ ロメオが人々に愛されているのかを突き詰めたかったのです」と述べる。

アルファ ロメオ歴史博物館
アルファ ロメオ公式ヒストリーE-Bookは英語版のほか日本語版も公開予定

 愛される一例として、アルディツィオ氏はエンブレムを挙げる。その最初のアイデアはA.L.F.Aのデザイナーだったロマーノ・カッツァーノ氏が発見した。「ミラノを走っているトラム14番の停車場、カステッロ広場に彼はいました。そこにあるフィラレーテタワーを眺めていると、中世ミラノを支配していたヴィスコンティ家の紋章である“ビスコーネ・ヴィスコンテオ”が目に入ったのです。これが全ての始まりでした」と述べ、机の上からではなく、人の目と手で生まれたことはまさにアルファ ロメオらしいと説明する。このエンブレムとアルファ ロメオのもう1つの象徴である盾のグリルのヒストリーは、E-Bookの巻末に変遷が描かれており、「110年の間、レースの勝利や社会現象も含めての歩みが分かってもらえるでしょう」とコメントした。

アルファ ロメオが人々に愛される1つにエンブレムを挙げる

 そのほか、アルファ ロメオは1950年に開催された最初のF1世界選手権で年間チャンピオンに輝いたメーカーで、翌年の第2回選手権ではフアン・マヌエル・ファンジオ選手がドライバーズタイトルを獲得したことや、エンツォ・フェラーリ氏が自らの会社を設立する以前は、アルファ ロメオのレーシングチームに所属していたことなど、詳細にわたって触れられている。

ミュージアムの役割はメーカーとユーザーの仲介者

 さて、今回本書を監修したロレンツォ・アルディツィオ氏は、前述の通りアルファ ロメオ歴史博物館の館長だ。そこで、このミュージアムについて少し語ってもらおう。

 このミュージアムは2017年にリニューアルオープン。「ユーザーを始めアルフィスタや専門家など全ての人に対して、メーカーとの繋ぎ手、仲介者としての役割を担っています」とその目的を説明。現在280台を収蔵し、そのうち70台が常設展示。100基に余るエンジンも所有している。「事前に予約をすれば、この280台は全て見ることが可能です」とアルディツィオ氏。この催しは最近始められたばかりで、「現在は新型コロナウイルスの影響でミュージアム自体は休館していますが、再開した折にはより力を入れていきたいことの1つです」という。

 所蔵している280台は動態保存を基本としており、1年に1回エンジンをかけて隣接されたコースで走らせ、メンテナンスは同館常駐の2人のメカニックによって行なわれている。

ミュージアムは「タイムライン」「ビューティー」「スピード」の3ゾーンで構成される

 ミュージアムは「タイムライン」「ビューティー」「スピード」という3つのゾーンに分かれている。タイムラインは会社の歴史、19台の車両の展示によってテクノロジー、歴史などを紹介。

 ビューティーはあえて“Bellezza”とイタリア語で表記され、英語に訳していない。これは「あえてBellezzaという言葉の中に含まれる意味に注目したからです。それはデザインなどの美しさばかりではなく、メーカーとしての役割にも“美”があることを語るためにそのままにしているのです」とのこと。

 最後はスピードだ。モータースポーツを中心にパフォーマンスや性能、ドライビングの喜びを理解してもらうために設置されたもので、戦前から戦後にわたるさまざまなレーサーなどが展示されている。

タイムラインゾーン
ビューティーゾーン
スピードゾーン

 そしてもう1つ、この博物館の大きな特徴はアーカイブだ。そこには「クルマや船などの資料は当然のこと、関係したエンジニアなどの全ての資料が網羅されています。このアーカイブの資料を並べると6000mもの長さになるほどで、そのほか400以上の写真と1000以上のビデオがコレクションされています。そのほかにも細かな車両1台1台のテクニカルデータや、各クルマに関する全ての詳細な情報が記されたドキュメントもここに保管されているのです」とアルディツィオ氏。

アーカイブ

 そのコレクションの中には、エンツォ・フェラーリ氏がアルファ ロメオに採用された時の書類や、エンジニアのカルロ・キティ氏がアウトデルタ時代に活躍したときの資料も保管され、そこにはカルロ・キティ氏自らのサインも入っている。

エンツォ・フェラーリ氏のドキュメント
カルロ・キティ氏のドキュメント

 そのほかにもミュージアムではさまざまなイベントも行なっており、2015年に発表されたジュリアのプレゼンテーションはここで開催。さまざまな企画展も行われている。アルディツィオ氏は「今後も日本を含めた世界中の“パッショナート”たちを喜ばせるようなイベントをたくさん考えています」と語った。

 最後にアルファ ロメオが110年続いてきた理由と、そのDNAは何かを問うてみよう。アルディツィオ氏は、「まずは1本筋が通っているということが挙げられます。常にテクノロジーとデザインを融合させ、そのデザインには機能性も有しています。これが110年継続の秘訣です。そしてもう1つはこのアイデンティティを失わずに新しいことにトライしていることです。地に足をつけて新しい試みをすることが110年継続のもう1つの秘訣なのです」と話す。

 そしてDNAについては、「ミュージアムのセクション分けにも通じるのですが、歴史とビューティーとパフォーマンスです。特にアルファ ロメオの場合はビューティーとパフォーマンスは重要で、そのパフォーマンスとはイノベーション、例えば軽量化やドライビングファンが挙げられます。これらがアルファ ロメオの合致したDNAなのです」と語った。

今後市場に導入されるクロスオーバーモデル「トナーレ」